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「デルセー」の新戦略 ラゲージではなく“モビリティソリューション”ブランドへ

Image by: FASHIONSNAP

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 2026年に創業80周年を迎えるフランス発プレミアムラゲージブランド「デルセー(DELSEY PARIS)」が、「ラゲージ会社からモビリティソリューション会社へ」の転換を掲げる新たなタグライン「DESIGNED TO MOVE YOU」の下、グローバルで新戦略を推進している。約10ヶ月前にCEOに就任し革新を進めるジル・バリギアン(Gilles Bariguian)氏に、グローバル市場の現状から新戦略、そして今後のプロダクト構想までを聞いた。

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ジル・バリギアン(Gilles Bariguian)CEO

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旅行市場は拡大、でも「短距離化」は進む

 デルセーは、カメラ用の革製ケースを作っていたデラハエ(DELAHAYE)とタイプライターやレコードプレーヤーのケースを作っていたセインヘーヴ(SEYNHAEVE)が合併して1946年に誕生。社名は、両者の名前から3文字ずつを取って名付けられた。両者の知見を組み合わせ、当時はまだ珍しかったプラスチック製のスーツケースを開発したことからラゲージブランドとしての歴史が始まった。

 現在は世界110ヶ国、約6000店舗で展開しており、業界順位は「リモワ(RIMOWA)」、「サムソナイト(Samsonite)」に次ぐ3位。グローバルでの売り上げをけん引するのは、アメリカ、本国のフランス、そして中東だ。経済的な急成長を遂げている中東地域とは40年以上にわたってディストリビューターとパートナーシップを組み注力しており、UAEのドバイを筆頭に、サウジアラビア、カタールを中心にシェアを拡大している。

 IATA(国際航空運送協会)は、2050年までに世界の旅行者は2024年時点の2倍以上に成長すると予測している。旅行者が増えればラゲージの需要も高まることから、ラゲージブランドにとっては好機だ。バリギアンCEOによると、コロナ禍では一時的に売り上げが減少したが、外出が自粛されたことの反動から、コロナ後にはラゲージの販売数は急増した。ラゲージの平均購入サイクルは6〜7年で、コロナ禍以降に爆発的に拡大したニーズに対する「買い替え需要の波」が数年以内に訪れると同氏は考える。

 こうした追い風もある一方で、見逃せない直近の動向としては、中東情勢の悪化が挙げられる。現在の国際情勢による燃油高高騰や航空会社のフライト数削減は、長距離旅行者数を約5%減らしているという。このほか、旅行のスタイルが短距離・短期間にシフトしており、従来デルセーが得意としていた大きなスーツケースよりも、バックパックや座席の下に入る小型製品への需要が高まっていることも大きな変化だ。

CHATELET AIR 2.0シリーズのバッグパックとラゲージ

単なるラゲージブランドからの脱却

 こうした環境の変化を受けデルセーは「ラゲージ会社からモビリティソリューション会社へ」の転換を掲げる。旅行だけでなく、通学や通勤、レジャー、アクティビティなど人々のあらゆる「移動」に寄り添い、イノベーションを起こすことを目指す。新たなタグラインである「DESIGNED TO MOVE YOU」という言葉には、“移動する”と“感動させる”のふたつの意味を込めた。

新タグラインを表現したキーヴィジュアル

Image by: DELSEY PARIS

 ブランドの刷新に合わせ、新たな方向性を体現する限定コレクションを発表。6月下旬には、1970年代に誕生した「AirStyle」から着想を得てデザインを再構築した定番の「CADENCE」の限定モデル(4サイズ展開、7万3700円〜)を、7月下旬にはシグネチャーである「CHATELET AIR 2.0」の初の限定カラーとして、モダンな印象を与えるベージュローズ、パウダーブルー、ディープバーガンディの3色(4サイズ展開、9万200円〜)を発売する。このほか、移動の快適性向上のために新たに開発した新素材を使用したブランド史上最軽量モデル「HELIUM ULTIMATE」(3サイズ展開、6万8200円〜)と、初のアルミニウムコレクション「ALU’R」(2サイズ展開、9万9000円〜)が登場。HELIUM ULTIMATEは8月中旬、ALU’Rは9月下旬ごろの発売を予定している。

CHATELET AIR 2.0 80TH ANNIVERSARY EDITION ベージュローズ

Image by: DELSEY PARIS

 このほか6月から12月にかけて、約90種類の新作アイテムの発表を予定しており、ラゲージに限らず、バックパックやデイリーバッグも拡充していく。なお、ブランドの世界観を明確化するにあたり、旧体制時に取り組んでいたライセンス事業は全て終了した。

日本は「心が近い」市場

 新たなタグライン設定に伴い「デルセーらしさ」の再定義も行った。バリギアンCEOは、「私たちはリモワでもサムソナイトでもない。もっとエモーショナルで、遊び心があり、“パリらしい”楽しさがある。他社にはないデルセーらしいエレガンスを、私たちは“パリジャンフレア”と呼んでいる」と説明する。

 バリギアンCEOは、デルセーが目指す新たなブランド像と日本は親和性が高いと話す。「日本は世界で最もエレガントな国の一つであり、デルセーは世界で最もエレガントなラゲージブランドだと思っている。ここには確かな親和性があり、同時に可能性がある」とし、「多くのフランス発ラグジュアリーメゾンは日本で成功を収めている。消費者の目が肥えていて競争が激しいと言われる日本で成功したらグローバルでも成功する、という考えはデルセーでも同じ」と国内で存在感を高めていくことへの意欲を見せた。

 現在国内では丸の内KITTEと表参道・キャットストリートに2つの旗艦店を構えている。日本でのシェア拡大に向けては、直近で店舗数を増やすのではなく、まずは既存店の店頭空間を新しいブランドアイデンティティに合わせて刷新していくことから着手する。このほか日本の消費者のニーズに合わせた日本独自企画の開発も検討していくという。

最終更新日:

◾️デルセー:公式オンラインストア

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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