
7月9日、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)本人の私物アーカイブを出品するオークション「Martin Margiela: Personal Archives」がパリで開催された。本人ゆかりの貴重な作品やオブジェクトに世界中から入札が相次ぎ、全195ロットの落札総額は約138万ユーロ(約2億5500万円、諸手数料込み)に到達。想定されていた最高額の最大41万2000ユーロ(約7600万円)を大幅に上回る、白熱した競売となった。
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「長年にわたりアーカイヴ資料をあちこちへ移動させ、その後は展覧会のために貸し出しを行ってきましたが、私のファッションの思い出の一部を、そろそろ手放す時期が来たのではないかと感じました。このコレクションは1984年から2008年までの期間にわたり、写真、ドローイング、そしてさまざまなオブジェクトで構成されています。中には、コロナ禍という後年の時期に制作されたものもあります。熟考を重ねた末、複数のコレクターや機関に喜んでもらいたいという思いが、最終的にこれらを世に送り出す決断をさせてくれました」——マルタン・マルジェラ
オークション会場には、世界各国からコレクターやバイヤー、美術館関係者らが集結。電話やオンラインからも次々と入札が入り、約5時間にわたって195ロットの競りが繰り広げられた。


会場の空気が一段変わったのが、「グラフィティ・タビ(Graffiti Tabi)」が登場した瞬間だった。1991年にパリ市立ガリエラ宮美術館で開催された展覧会「Le Monde selon ses Créateurs」で、白くペイントされたタビブーツに来場者が自由に文字や絵を書き込んだ一点物。現存する3足のうち、個人所有が可能な唯一の一足とされている。
落札価格は36万4000ユーロ(約6800万円)で、マルタン マルジェラ関連の作品としてオークション史上最高額を更新。入札終了のハンマーが打たれた瞬間、会場から拍手が沸き起こった。落札したのは、ブランド買取の「なんぼや」などを運営する日本のバリュエンスジャパンで、同社は今後、作品の一般公開を予定しているという。
会場では、特にマルジェラ本人の痕跡を残す作品に熱い視線が注がれた。1991-92年秋冬コレクションの名作「ソックスニット」をもとに、マルジェラ本人が2020年頃に再制作した一点物は11万7000ユーロ(約2160万円)で落札。
本人が約20年にわたって制作現場で着用した直筆サイン入りの白衣は4万1600ユーロ(約770万円)、白くペイントされたダイヤル式電話機も1万3000ユーロ(約240万円)で競り落とされた。
ほとんどのアイテムが当初のエスティメートを大きく上回り、本人制作によるアーカイヴ作品への評価の高さを改めて印象づけた。
今回のオークションは、1984年の初期作品からメゾン マルタン マルジェラ時代の資料、母親が大切に保管していたエルメス在籍時代のコレクションまで、全195ロットを出品。会場デザインも本人が監修し、自身のスタジオを思わせる展示空間が広がる。単なるヴィンテージオークションではなく、創作の軌跡をたどる展覧会のような空間が演出されていた。




会場で印象的だったのは、入札者の国際色だ。欧州勢に加え、日本、中国、韓国からの参加者の姿も目立ち、特に海外からの入札が相次いでいた。電話担当者のもとには世界各国のクライアントから絶えず連絡が入り、次々と価格を書き換えていく様が印象的だった。


マルジェラのアーカイヴが作品として、さらには文化的価値を持つ存在として、世界中で評価されていることを、改めて目の当たりにする一日となった。
※本文中の落札価格は、手数料を反映した金額。1ユーロ=約185円で算出。
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