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AIがナンバーを自動記録 万引き防止と監視社会の境界線

ダラスにあるセブンイレブンの実験店「エボリューションストア」。駐車場には、太陽光パネルと伸縮式マストを備えた移動式防犯監視カメラが設置されている。小売DXは売場や決済だけではない。買物客が入店する前の駐車場でも、防犯のデジタル化が進んでいるのだ。

ダラスにあるセブンイレブンの実験店「エボリューションストア」。駐車場には、太陽光パネルと伸縮式マストを備えた移動式防犯監視カメラが設置されている。小売DXは売場や決済だけではない。買物客が入店する前の駐車場でも、防犯のデジタル化が進んでいるのだ。

ダラスにあるセブンイレブンの実験店「エボリューションストア」。駐車場には、太陽光パネルと伸縮式マストを備えた移動式防犯監視カメラが設置されている。小売DXは売場や決済だけではない。買物客が入店する前の駐車場でも、防犯のデジタル化が進んでいるのだ。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

入店前から始まる防犯

米国の小売店舗では、買物客が売場へ入る前から監視されている。

視察先のセブンイレブン前に置かれていたのは、太陽光パネルと伸縮式マスト、複数のカメラを備えた移動式監視塔であった。

電源工事や通信ケーブルを必要とせず、駐車場の死角や犯罪多発地点へ短時間で配置できるのだ。

青色灯やスピーカーを目立たせることで、録画より先に犯罪を思いとどまらせる「見せる防犯」とも言える。

監視塔から車両識別へ 

2023年に当ブログで取り上げた当時、移動式ソーラー電源型監視カメラの主な役割は、広い駐車場の映像を遠隔監視し、不審行動を発見することだった。

現在はAI解析、LTE通信、夜間撮影、自動警告に加え、ナンバープレート読取まで統合されつつある。

防犯カメラは「現場を見る装置」から、「車両を識別し、過去の記録と照合するデータ端末」へ変わったのである

アルタに消費者の反発 

美容チェーンのアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)が、一部店舗でフロック・セーフティ(Flock Safety)の自動ナンバープレート読取システムを利用していることが確認され、SNSで反発が広がった。

導入は全米約1,500店の1%未満で、家主が管理する駐車場に設置されているという。同社によれば顔認証は使わない。

だが買物客、特に女性客にはどの車が、いつ、どの店舗へ来たかを記録される事実そのものが不気味に映るのだ。

常習犯を入口で検知 

フロックのシステムはナンバーだけでなく、車種や色、走行方向などを読み取り、検索可能な記録に変える。

組織的な小売犯罪では、複数店舗を車で回って盗品を運ぶケースがあるため、既知の容疑車両を監視リストへ登録すれば、駐車場へ入った段階で警告を出せる。

アルタでは、複数店を狙った事件の容疑者逮捕に同社のデータが利用された例もある。

レジを突破してから映像を調べる「事後防犯」ではなく、売場へ入る前に察知する「予測防犯」なのである

12万台の巨大ネットワーク

フロックは約12万台のAIカメラを全米49州で展開しているとされる。

1店舗だけの映像なら点だが、自治体、警察、住宅地、商業施設のカメラがつながれば、車両の移動を追える線になる。

小売企業には店舗をまたぐ常習犯への強力な武器となる一方、買物、通院、集会など犯罪と無関係な行動まで記録される危険を抱える。

ロウズなどの小売施設でも利用をめぐる懸念が報じられ、防犯設備の問題が社会インフラの監視問題へ拡大した。

規制側がブレーキ

反発はSNSだけではない。フロリダ州はプライバシーやデータ乱用への懸念から、州道上にある自動ナンバー読取カメラの許可を取り消し、撤去を命じた。

テキサス州でも公費による追加導入にブレーキがかかり、契約を打ち切る自治体も出ている。

フロックは標準のデータ保存期間を30日から7日へ短縮し、捜査時の案件コードや利用監査を強化した。

もっとも、保存期間を短くしても、誰が検索でき、どこまで共有できるのかが曖昧なら不安は消えない

ロボット警備も次段階へ 

2025年には、ウォルマートの駐車場で刑務所や公共施設でも使われるタイプの自律走行型警備ロボットが目撃されたことを当ブログで紹介した。

現在の警備ロボットは、決められた経路を巡回するだけでなく、360度映像、熱源、音声、人物や車両の異常を検知し、遠隔監視員へ送る方向へ進化している。

警備ロボット大手ナイツコープ(Knightscope)は、AIロボット、現場警備員、3Dデジタルツイン型の管理ソフトを統合する構想を掲げる。

固定カメラ、移動式監視塔、巡回ロボットが別々に動く時代から、1つの司令系統で駐車場全体を監視する時代へ入りつつある

省人化には別の請求書 

ソーラー監視塔も警備ロボットも、広い駐車場を24時間歩き回る人件費を抑え、従業員が危険人物へ直接対処するリスクを減らせる。

しかし省人化で浮いたコストの裏側には、情報管理、誤認、説明責任という新たな請求書が届く。

盗難車と同じ車種や似たナンバーをAIが誤って警告すれば、善良な顧客が店頭で疑われる可能性もある。

機械の判断をそのまま警備員や警察の行動へ直結させてはならない。

日本の小売業への宿題

日本でも顔認証やAIカメラによる万引き対策は広がっている。

導入時に必要なのは検知精度や費用対効果だけではない。

撮影範囲、取得情報、保存期間、第三者提供、誤認時の訂正手続き、店頭での告知まで設計すべきである。

防犯DXの成否は、何人の不審者を見つけたかだけでなく、何万人の普通の顧客を容疑者扱いせずに済んだかで測られる

安全な店をつくる技術が、安心して行けない店をつくってしまえば本末転倒である。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

フロック・セーフティと、以前紹介したライブビュー・テクノロジーやロットコップは、太陽光と通信回線で駐車場を監視する点では同じ系統です(ロットコップはライブビュー製機材を運用・管理するサービス)。

大きな違いは、従来型が高いマストと青色灯で存在を示し、映像監視や音声警告で犯罪を抑止するのに対し、フロックはナンバー、車種、色を読み取り、店舗を越えた検索や警察との連携まで行えることです。

監視塔が「見張り番」なら、フロックは車の足跡を調べるネットワークです。

アルタ・ビューティでホームデポやウォルマート以上に騒ぎが広がったのは、導入規模が大きいからではありません。

対象は約1,500店の1%未満です。女性客との信頼で成り立つ美容店だったことに加え、女性や性的少数者を支援する団体の運動がSNSで拡散し、中絶希望者や抗議参加者の追跡に悪用されるとの懸念と結びついたためです。

防犯DXは犯罪を入口で止められますが、普通の顧客まで追跡すれば、信頼の万引きに遭います。

美容店だけに、防犯も厚塗りしすぎるとクレンジングされますね。

最終更新日:

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