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「値段は人ではなく商品に付ける」 ウォルマートCEOが署名した3つの約束とは

ウォルマートの売場に掲げられた「Everyday Low Price(毎日安い価格)」のプライスカードと、その下にずらりと並ぶ1ドルの電子棚札。棚札は本部から一瞬で書き換えられるが、ファーナーCEOは「値段は人ではなく商品に付ける」と約束した。このプライスカードの文字どおり、誰が来ても、いつ来ても同じ値段であり続けるかが問われている。

ウォルマートの売場に掲げられた「Everyday Low Price(毎日安い価格)」のプライスカードと、その下にずらりと並ぶ1ドルの電子棚札。棚札は本部から一瞬で書き換えられるが、ファーナーCEOは「値段は人ではなく商品に付ける」と約束した。このプライスカードの文字どおり、誰が来ても、いつ来ても同じ値段であり続けるかが問われている。

ウォルマートの売場に掲げられた「Everyday Low Price(毎日安い価格)」のプライスカードと、その下にずらりと並ぶ1ドルの電子棚札。棚札は本部から一瞬で書き換えられるが、ファーナーCEOは「値段は人ではなく商品に付ける」と約束した。このプライスカードの文字どおり、誰が来ても、いつ来ても同じ値段であり続けるかが問われている。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

「値段は人ではなく商品に付ける」

ウォルマートのジョン・ファーナーCEOが25日、客とサムズクラブ会員に向けた公開書簡を出した。核心は「私たちは人ではなく、商品に値段を付ける(We price the product, not the person.)」の1行だ。

所得、購買履歴、急ぎ具合、支払えそうな金額など、そうした客の事情で値段を変えれば、会社の土台である「エブリデー・ロー・プライス(Everyday Low Price)」の約束を破ることになる、と書いたのだ。

CEOが署名した3つの約束

書簡の約束は3つある。

1つ目は、客が誰か、何時に来たかで値段を変えないこと。

2つ目は、AIアシスタント「スパーキー(Sparky)」などに客が話した情報を、値上げや安い選択肢を隠すことに使わないこと。

3つ目は、より個別の手助けのために情報を出すかどうかは客が決め、使い道を明示して守ることである。

価格は引き続き人間が監督し、技術が約束どおり動いているかを検証するとも付け加えた。

「電子棚札にはカメラもマイクも顔認識もない」とわざわざ明記している。

すでに否定していたのに、なぜ今なのか

当ブログは4月、電子棚札の全店導入を報じた際、ウォルマートがダイナミック・プライシングへの悪用を明確に否定し、エブリデー・ロー・プライスを守ると断言していたことを伝えた。

同社は7月にも価格方針を公表し、監視価格も需要に応じた急騰価格も使わないと書いている。

中身は新しくない。新しいのは、CEO本人が名前を出したことと、約束の範囲がAIまで広がったことだ。

それだけ疑いの声が、繰り返しの説明では収まらない水準に達したのである。

発端はインスタカートの「価格実験」だった

火種は昨年12月にさかのぼる。

コンシューマー・レポート(Consumer Reports)などの調査で、インスタカート上の同じ店、同じ商品の値段が、客によって約4分の3の商品で違っていた。

背後には、客が「どこまでなら払うか」を測るAIがあった。

インスタカートは実験の中止に追い込まれたが、「アプリの値段は自分だけ違うかもしれない」という疑いは、業界全体に残ったのだ。

州、市、議会、労組が一斉に動いた

その後の1年で、規制は一気に広がった。

メリーランド州が4月に全米初の禁止法に署名し、10月1日に施行される。

コネチカット州が続き、ニュージャージー州は7月、監視価格の禁止に加えて電子棚札の新規設置を1年止める法律を成立させた。

8月には連邦上院の司法委員会が監視価格の公聴会を開き、連邦取引委員会(FTC)は個別価格の開示を求める方針案を公表した。その意見募集が締め切られたのが、奇しくも書簡と同じ9月25日である。

9月にはシアトル市議会が、大手スーパーによる監視価格を禁じる全米初の市条例を7対2で可決した。

労組も攻勢を強めている。

全米食品商業労働組合(UFCW)は電子棚札そのものの禁止を訴え、米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)系の研究機関は9月、電子棚札の普及で店舗従業員の賃金が最大69億ドル(1兆1,040億円)失われ、雇用が最大19万1,000人減ると試算した。

食品通路の棚という棚に並ぶ電子棚札。紙の値札を張り替える作業は消えたが、労組はその分の賃金と雇用が失われると訴え、消費者は値段が裏で動くのではと疑う。

とどめは「ツナとマヨネーズ」だった

書簡の前日、エリザベス・ウォーレン上院議員がXに投稿した。ツナ缶をカートに入れた瞬間、マヨネーズの価格があなただけ値上がりするかもしれない、と。

根拠は、ウォルマートのスマートカート特許に書かれた例だという。

同社が取得した値下げ自動化や需要予測の特許についても、専門家は「個人ではなく商品単位の価格調整」と読んでいる。

だがツナとマヨネーズの例え話は、理屈より早く広まった。

批判の側は、スパーキーの利用者が前年比70%増え、使う客は使わない客より1回の買い物額が40%多いことにも注目する。

「いつまでに必要ですか」という何気ない質問が、急ぎ具合というデータになるというわけだ。

書簡があえて「急ぎ具合で値段を変えない」と書いたのは、この点への答えである。

なぜ米国人は「金額の急変化」にアレルギーを持つのか

理由は大きく3つある。

1つ目は、情報の非対称だ。店は客の履歴を知っているのに、客は値段の根拠を知らない。隣の客の画面は見えず、比べようがない。

2つ目は、弱みに付け込まれる感覚である。雨の日のライドシェアの割増料金、コンサートチケットの高騰、ファストフードの「時間帯で値段を変える」発言への炎上。米国人は、需要が高まる瞬間に値段が跳ね上がる体験を何度も味わってきた。

3つ目は、食品が生活必需品だということだ。航空券なら旅行をやめられるが、牛乳や卵は買わずに済まない。インフレで家計が疲れた今、逃げ場のない商品で値段を動かされることへの警戒は強い。

ここで混同されやすい2つの言葉を整理しておく。

ダイナミック・プライシングは、時間や需要に応じて全員の値段が同時に動くことだ。

パーソナライズ・プライシングは、人によって値段が違うことである。

電子棚札は前者を、アプリとAIは後者を可能にする。客から見ればどちらも「値札が信用できない」という同じ不安に行き着く。

値札は「誰にでも同じ値段」の約束だった

そもそもプライスカード(値札)は、客ごとに値段を交渉する商売をやめ、誰にでも同じ値段で売るという約束として広まった。

AIは客一人ひとりを理解できる。だから便利なおすすめもできるし、支払える上限の推定もできる。

同じ技術が、客の味方にも財布の値踏み役にもなる。

ファーナーCEOの書簡は、ウォルマートがどちらの側に立つかを、社長の署名入りで宣言したものだ。

ただし書簡は、個人向けクーポンや、スパーキー上の広告枠の扱いには触れていない。

値上げはしないと約束したが、「あなただけの割引」をどう運用するかは、これからの行動で示すしかない。

日本の電子棚札は説明の言葉を持っているか

日本でも電子棚札の導入が進むが、語られるのは作業時間と食品ロスの削減ばかりだ。

米国では、同じ機械が価格の公正さを問われ、CEOが署名入りの手紙を書くところまで来た。

技術を入れる前に、客に向けて「何のために使い、何には使わないか」を言えるかどうかが問われている。

値札の数字を変えるのは一瞬だが、値札への信頼は一度崩れると、書簡1通では戻らない。

本日のレート1ドル=160円

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

ウォルマートのファーナーCEOが「人ではなく商品に値段を付ける」と署名入りで約束しました。

インスタカートの価格実験をきっかけに、州法、市条例、上院の公聴会、労組の電子棚札反対、そしてウォーレン議員の「ツナとマヨネーズ」投稿と疑いが広がり、社長自ら値札の信頼を守りに出たわけです。

これは対岸の火事ではありません。

日本でも電子棚札の導入が進み、スーパーやドラッグストアのアプリには購買履歴に応じたクーポンが並び始めています。

棚札は値段を一瞬で書き換えられ、アプリは客一人ひとりを見分けられます。

つまり、ダイナミック・プライシングとパーソナライズ・プライシングのツールは、日本の売場にもすでに揃っているのです。

問題は、日本の小売業がそのツールを「作業削減」の言葉でしか説明していないことです。

包丁を買ってきて「よく切れます」とだけ言い、何を切らないかを決めていない台所のようなものでしょう。

客が値札を疑い始めてから説明しても、手遅れになります。

ちなみに、アメリカの消費者はマヨネーズの値段まで疑い始めました。

日本でも、お隣さんのアプリに自分より多いクーポンが出ていたら、その日のうちにLINEで町内に知れ渡るはず。法律ができるより、ご近所の口コミのほうがずっと早いでしょうね。

最終更新日:

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