自動化進む物流倉庫 残る課題は「段ボール箱とホコリ」

ウォルマートのストックトン次世代フルフィルメントセンター内部。段ボール箱が行き交う搬送設備は、従来の12工程を5工程へ再編する物流改革を支える。一方、既存倉庫の自動化では、箱の寸法やホコリまでが課題となっている。最新設備の能力を引き出すには、長年の作業習慣も作り替えなければならない。写真は新施設の内部であり、不具合が報じられた現場ではない。

ウォルマートのストックトン次世代フルフィルメントセンター内部。段ボール箱が行き交う搬送設備は、従来の12工程を5工程へ再編する物流改革を支える。一方、既存倉庫の自動化では、箱の寸法やホコリまでが課題となっている。最新設備の能力を引き出すには、長年の作業習慣も作り替えなければならない。写真は新施設の内部であり、不具合が報じられた現場ではない。

ウォルマートのストックトン次世代フルフィルメントセンター内部。段ボール箱が行き交う搬送設備は、従来の12工程を5工程へ再編する物流改革を支える。一方、既存倉庫の自動化では、箱の寸法やホコリまでが課題となっている。最新設備の能力を引き出すには、長年の作業習慣も作り替えなければならない。写真は新施設の内部であり、不具合が報じられた現場ではない。

予告されていた5番目の次世代物流が動き出した
ウォルマートは10月8日、カリフォルニア州ストックトンに5カ所目の次世代フルフィルメントセンターを開設した。
施設は90万平方フィート超(約2万5,300坪)。ネット注文の商品を保管し、集め、梱包して発送する巨大拠点である。
当ブログでは2023年6月20日に大型次世代施設を、2024年5月28日には4カ所目の開設を紹介した。
その際に予告されていたストックトンが、実際に動き出したのだ。
12工程を5工程にする仕組み
次世代施設の特徴は、従来の12工程を「荷下ろし、入庫、ピッキング、梱包、出荷」の5工程へ整理したことにある。
入庫した商品を専用容器へ移し、高密度の自動倉庫に収める。注文が入ると、必要な商品が作業者の持ち場まで運ばれる。
商品に合ったサイズの発送箱を用意し、梱包後は封かん、ラベル貼り、配送先別の仕分けへ進む。
人が商品を探して歩く倉庫から、商品が人のところへ来る倉庫への転換である。ただし、工程数が減った割合だけ人件費も下がる、という意味ではない。
巨大倉庫はアプリの約束を支える
ストックトンでは1,000人超の雇用を見込む。自動化しても人は必要であり、仕事の中身が変わるのだ。同施設は西海岸の配送能力を増強し、出店事業者の商品発送にも利用される。
次世代施設と既存網を組み合わせ、全米人口の95%へ翌日または2日以内に発送品を届けられる体制を目指す。
顧客がアプリで見る「いつ届くか」は、画面の工夫だけでは実現しない。アプリの便利さを最後に保証するのは、注文どおりに商品を動かす物流である。

10月8日に開設された、カリフォルニア州ストックトンの次世代フルフィルメントセンター。90万平方フィート超(約2万5,300坪)の施設で、1,000人超の雇用を見込む。スマホに表示される「いつ届くか」という約束を支えるのは、こうした巨大施設と、機械を動かし続ける人の仕事である。
段ボール箱とホコリが立ちはだかる
ところが直近の報道では、自動化の難所を明らかにした。長年使ってきた段ボール箱が設備に合わず、寸法の変更が必要になった。商品を運ぶロボットは、ホコリの蓄積でも停止するという。
一方、シンボティック(Symbotic)によれば、修理中の機体割合は改善している。これはストックトンの故障報告ではなく、別の施設や設備も含めた物流改革全体の話だ。
新設施設の成果と、既存倉庫の苦戦を混同してはいけない。
人間が吸収してきた「少し違う」の正体
人なら箱が少し膨らんでいても、持ち方や置き方を変えられる。商品が引っ掛かれば向きを直し、通路に障害物があれば避ける。
こうした小さな判断を、従来の物流は作業者に任せてきた。自動化すると、その曖昧さが設備停止や例外処理として表面化する。
人間の融通で動いていた現場を、機械が安定して処理できる条件へ整える必要がある。
ロボット購入だけで終わらず、箱の規格、清掃、保守、停止時の復旧手順まで投資対象になるのである。
営業しながら倉庫を作り替える難しさ
今回の報道では、1980~90年代に建設された倉庫への後付け導入も課題として挙げられた。商品の種類や作業によって、異なるメーカーの設備を組み合わせる必要もある。
新設なら機械に合わせて建物を設計できるが、既存施設には柱も高さも動線も制約がある。
しかも店舗へ商品を送り続けなければならない。営業中の厨房で、注文を止めずに調理設備を入れ替えるようなものだ。
機械単体の速度より、既存業務とつないだときの安定性が問われる。
店裏のロボ倉庫400店舗構想も途上にある
当ブログは今年8月20日に次世代小型自動倉庫「シンマイクロ(SymMicro)」を紹介した。「6.5秒に1品」という処理能力と、400店舗への展開構想が注目点だった。
ただし、大型フルフィルメントセンターと、店舗で受取・宅配注文を処理する小型設備は別の仕組みである。
シンボティックとの契約も、所定の性能条件を達成した場合に、400拠点へ複数年で導入する内容だ。
初号機の設置、性能の検証、多店舗での安定運用は、それぞれ違う段階なのである。
倉庫の効率ではなく、買物全体の効率を測れ
日本の小売企業が学ぶべきは、ロボットが何秒で商品を運ぶかだけではない。倉庫で箱詰めの手間が増えても、店舗での品出し時間が大きく減るなら、全体では利益になる。
逆に倉庫内の処理が速くても、例外商品の処理や配送待ちが増えれば顧客は待たされる。保守費、電力、復旧時間、欠品、誤出荷まで含めて評価すべきなのだ。
視察でも「何台導入したか」に加え、「止まったときに誰が、何分で戻すのか」を聞く必要がある。
自動化の最後に残るのは経営の覚悟だ
ウォルマートの苦戦を見て「やはり人手が一番」と安心していては、改革の途中を結論と取り違える。
一方、巨大なロボ倉庫を見ただけで成功と判断するのも早計である。
問われているのは、機械の都合に合わせて現場へ負担を押しつけず、顧客までの仕事を組み直せるかだ。
AIは更新できても、長年使った箱と仕事の習慣は簡単には更新できない。
日本の小売企業が持ち帰るべき問いは「どのロボットを買うか」より先に、「そのロボットを働かせるために、我が社は何を変えられるか」である。
ウォルマートが物流を12工程から5工程へ減らす一方、別の倉庫では段ボール箱やホコリが自動化を阻んでいます。
この話は日本の小売企業にも、そのまま当てはまります。
最新設備を買えば仕事が変わると思いがちですが、実際には仕事のやり方を変えなければ最新設備が働けません。
高性能な食洗機を買っても、食器を何でも重ねて放り込めば汚れが残るのと同じです。
箱の規格、清掃の頻度、故障時の対応まで整えて、初めてロボットの能力を引き出せます。
しかもウォルマートは、店舗への供給を続けながら倉庫を改修しています。
営業中の厨房でコンロを交換するような難しさです。米国流通視察でも、ロボットが軽快に動く映像を撮って満足してはいけません。
「止まったら誰が直すのか」「店舗の品出しは何分減ったのか」まで問いたいところです。
若い社員に学んでもらうべきなのは、機械の華やかさと、それを支える地道な仕事の両方です。
ロボットは「昔からこうしています」と反論しません。その代わり、合わない箱を渡すと黙って止まります。説得する会議を開くより、箱を替えた方が早そうです。
最終更新日:
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