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「女性の声はなぜ排除されてきたのか」 ケイト・ブランシェットと川上未映子が東大で対談

文・菅原まい

ユニクロのアンバサダーを務める俳優のケイト・ブランシェット

Image by: FASHIONSNAP

ユニクロのアンバサダーを務める俳優のケイト・ブランシェット

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ユニクロのアンバサダーを務める俳優のケイト・ブランシェット

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 「ユニクロ(UNIQLO)」が10月29日、グローバルプロジェクト「ストーリーズ シー テルズ(stories she tells)」の始動を記念し、東京大学の総合図書館でリーディングイベントを開催した。トークショーには、俳優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)、作家の川上未映子、林香里東京大学理事・副学長、東京大学の学生2人が登壇。「つながり(Connection)」をテーマに、文学や映画が持つ力、女性が自らの経験を言葉にすることの意義について語り合った。

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 ストーリーズ シー テルズは、女性の書き手を支援し、その声をより多くの人々に届けることを目的とした取り組み。東京大学を最初の大学パートナーに迎え、2027年秋には文芸マガジンの創刊を予定している。

女性が自分の声を殺さずに、誰かとつながるために

 冒頭のスピーチでブランシェットは、読書を「一人で行うものでありながら、同時に誰かとつながることのできる体験」と表現し、文学が時代や国境を超えて人々を結びつける一方で、歴史的に女性の視点や経験が社会の主流となる議論から排除されてきたことを指摘。「世界最古の長編小説とされる『源氏物語』が、11世紀に日本の女性である紫式部によって書かれたというのは、皮肉なことでもあります」と語り、女性たちの声が十分に届けられてこなかった現状を問いかけた。自身も文学を通じて孤独を和らげ、勇気を得るとともに既存の価値観や思い込みを問い直してきたといい、女性の物語を社会に届ける同プロジェクトの意義を強調した。

ケイト・ブランシェットの当日の衣装はすべて「ユニクロ」のもの。

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 続くトークセッションでは、ファシリテーターを務めた林理事が「あなたにとって『つながり』とは何か。映画や文学は人々の間にどのようなつながりを生み出すのか」と問いかけた。これに対してブランシェットは、他者とのつながりを考える前に、まず自分自身と向き合うことの重要性を強調。「私たちは他人の人生やニーズを優先するよう促される一方で、自分自身の本能や欲望、野心と向き合う機会を失いがちです」と説明。自身の創作活動についても、「自分にとって意味のないものが、他の誰かにとって意味を持つことはないと思います」とコメントし、自分自身に対して深く、誠実であればあるほど、観客とも親密で開かれた関係を築くことができると強調した。

 川上もこの考えに共感を示し、日本の女性には自分の気持ちを外に出し、他者とつながることに積極的になれない傾向があると前置きしつつ、「助けてほしいという気持ちも含めて、まずは自分が感じていることを共有することが大切。そのためには、書かれたものを読んだり、自分の中にあるものを言葉にしてみたり、いろいろな方法があると思います」と語った。

左から林理事、川上未映子、ケイト・ブランシェット

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「女性の物語は女性だけのものではない」 文学が揺さぶる無意識の偏見

 イベントでは、ブランシェットが川上の小説「夏物語」の英語版「Breasts and Eggs」の一節を朗読する場面も。母親の巻子と娘の緑子が感情をぶつけ合う場面を読み上げると、川上は「ある物語が言語を超え、違う人の声によって新しく浮かび上がり、豊かになっていくことを感じて感激しています」と感想を述べた。

 ブランシェット自身も「夏物語」に魅了された読者の一人だという。作品を知ったきっかけは2人の息子からの勧めだったといい、「女性作家の作品は女性だけに向けられたものだと思われがちですが、息子たちが深く共感していたことが嬉しかった」と振り返った。なかでも心を動かされたのは、普段は見過ごしてしまいそうな人々の人生が丁寧に描かれていること。「街ですれ違っても気付かないような人々にも、それぞれの物語がある」とし、川上にそうした人々を描く理由を尋ねた。

 これに対し川上は、「誰もがそれぞれ語るべき物語や経験を持っている」と回答。社会的な特権や豊かさを持つ人だけでなく、日々の生活を送る人々にも物語があるという考えは、自身にとって自然なものだったという。また、弱さを表現することと文学の関係について問われると、「小説はメッセージそのものではありません」とコメント。意見を直接伝える言葉とは異なり、物語には読者の心に何かを残し、作品と読者の間に独自のつながりを生み出す力があると説明した。

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 話題は、ブランシェット自身の価値観や創作活動に影響を与えた文学作品にも及んだ。ブランシェットは、自身の価値観に影響を与えた作品として、イギリスの作家ナターシャ・ブラウン(Natasha Brown)の小説「Assembly」を紹介。ロンドンでキャリアを築いた黒人女性を主人公に、人種や階級をめぐる葛藤を描いた作品で、「自分ではオープンな人間だと思っていましたが、人種についてまったく違う視点から考えるきっかけになりました」と、自身の思い込みを見つめ直す機会になったことを明かした。

 また、マギー・オファーレル(Maggie O'Farrell)の回想録「I Am, I Am, I Am」にも言及。著者が経験したさまざまな死の危機を描いた同作を通じて、女性が日常の中で直面する危険や困難について考えさせられたといい、「私たちは職場などで問題を起こさないように社会に適応しようとするあまり、自分が直面している困難を見過ごしてしまうことがあります。作家がそうした経験を恐れずに語る姿から、勇気をもらうことがあるのです」と語った。

会場外では、山梨県北杜市の八ヶ岳南麓に位置する書店「のほほんBOOKS&COFFEE」による選書が揃うブックフェア「One-Day Bookshelf」を開催。国内外の女性作家やアーティスト、写真家による書籍が揃った。

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「服は脱げても、体は脱げない」 東大生と語った女性の選択肢

 トークショー後半では、東京大学で地方出身女性のエンパワーメントに取り組む学生団体「#YourChoiceProject」副代表の上野悠と、月経教育に取り組む学生団体「Aile for Period」代表の星野亜希が議論に参加した。

 地方出身の上野は、東京大学の女子学生比率が約2割にとどまり、地方出身の女子学生はさらに少ない現状に言及。自身が東京大学への進学を決めた背景には、受験を勧めてくれた塾の先生の存在があったと振り返り、人との出会いが新たな選択肢を切り開くきっかけになると語った。一方、星野さんは自身がPMS(月経前症候群)に悩んだ経験から、月経に関する知識を広める活動を始めたことを紹介。自分の抱えていた問題を言葉にしたことで、同じ関心を持つ仲間と出会い、活動へと発展していったという。

左からケイト・ブランシェット、上野悠、星野亜希

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 2人の話を受けて川上は、「服は脱げても、体は脱げない」と印象的な言葉を残した。「体について考えることは、時間について考えることであり、生きることや死ぬこと、社会の構造について考えることにもつながります」と語り、自分の身体を知り、その経験を言葉にすることの大切さを強調。ブランシェットも、女性の身体について理解を深めることは男性にとっても必要だとし、性別を超えて互いの経験を共有する意義を訴えた。

 イベントの締めくくりには、ブランシェットがブラジルの作家クラリッセ・リスペクトル(Clarice Lispector)のエッセイ「Belonging」を朗読した。同作は、著者が幼い頃から抱えてきた「どこかに属したい」という切実な思いを綴った作品。ブランシェットは朗読に先立ち、「つながりがもたらすものの一つは、コミュニティや自分自身、あるいは場所に属しているという感覚だと思います」と語り、国籍や性別を問わず、誰もが帰属意識を求める瞬間があると説明した。朗読では、書くことによって自分自身に少しだけ属することができたという一節や、誰かに属したいという願いが弱さだけでなく、自分の持つ力を誰かのために役立てたいという思いからも生まれることが語られ、イベントを通じて議論された「つながり」というテーマを改めて印象付けた。

最終更新日:

文・菅原まい

Mai Sugawara

FASHIONSNAP 編集記者

2002年、東京都生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業後、2025年に新卒でレコオーランドに入社。中学生の頃から編集者を志し、大学生時代は複数の編集部でインターンとして経験を積む。特技は空手。趣味は世界中の美味しそうなお店をGoogleマップに保存すること。圧倒的猫派で、狸サイズの茶トラと茶白を飼っている。

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