ファッションとメイクの密接な関係。それが如実にわかるファッションショーのバックステージをレポート。2025年春夏コレクションを発表したファッションブランドのショーの裏側で、メイクアップ、ヘアメイクを手掛けたアーティストたちに、見どころやアプローチについて聞いてみた。第4回は「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」。メイクアップアーティストのAsami Taguchi氏にインタビュー。
■Asami Taguchi
2002年渡米。NYでStephane Marais氏に師事後独立。17年間ニューヨークをベースに活動し、2020年秋帰国。現在は、東京をベースに国内外ブランドや雑誌、広告などを手がける。
ADVERTISING
Image by FASHIONSNAP
⎯⎯ 今回のメイクアップのテーマやイメージは何でしょうか?作った人物像があれば合わせて教えてください。
ショーのテーマが「My Garden」だったので、そこから“ティーパーティに集まった不思議なゲストたち”をイメージしました。ファンタジーな雰囲気を演出するために、個性を活かしながらもふんわりとしたメイクに仕上げました。
⎯⎯ メイクアップをデザインする時に最初に決めた部分はありますか?
Image by FASHIONSNAP(Ippei Saito)
今回は特定のパーツというよりも、色を最初に思い浮かべました。ヴィヴィアーノのアイテムは柔らかいチュールが使われていることが多いので、テーマの「My Garden」と合わせ、淡い雰囲気になるようにパステルカラーを使おうと決めました。
⎯⎯ メイクアップのポイントとなる部分と、そこで使用したアイテムを教えてください。
Image by FASHIONSNAP(Ippei Saito)
ポイントはパステルカラーのアイメイクです。「クリオラン(KRYOLAN)」のクリームベースのペイントカラーと「メイクアップフォーエバー(MAKE UP FOR EVER)」のプロ用のパレットで目元に色をのせました。ファンタジーな雰囲気を出したい時には、クリオランのアイテムをよく使用しています。
アイカラーは目周りだけでなくこめかみの方に向けて伸ばしながら、肌に溶け込んだようにふわっとなじませました。今シーズンのヴィヴィアーノのキーカラーが「緑」だったので、パステルグリーンで目元を彩ったモデルもいます。また幅広い国籍や年齢のモデルが集められていたので、一貫したメイクで統一性を持たせるよりも、それぞれの個性を引き立てるさまざまなカラーを使った方が面白いと思って、モデルが着用するアイテムに合わせながら、ブルー、ピンク、オレンジなども使いました。
Image by FASHIONSNAP(Ippei Saito)
ベースメイクは本当にナチュラルに仕上げました。ほんの少しカバーしただけのモデルや、そばかすを生かした素肌のモデルもいます。リップは基本的にじんわりとした血色感を宿す程度に抑えましたが、アイシャドウをラメだけにしたモデルにはパステルパープルを乗せ、遊びを効かせました。
Image by FASHIONSNAP
⎯⎯ “ファンタジー”という感覚的な部分を表現するときに、どのようなことを考えて具現化していますか?
これまで観てきた映画や絵を思い浮かべて、「こういう世界観かな」と考えてからデザインしています。今回はティム・バートン監督(Tim Burton)の「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)が着想源。お茶会の要素もそうですが、登場人物の“変わった雰囲気”を考えながらデザインしました。
後は、身につける衣装とモデルの個性だけでなく、ショー会場や時間帯のことも考えますね。そこからテーマが浮かぶこともあります。今回のメイクテーマの“ティーパーティ”は、会場を見て決めました。会場の小笠原伯爵邸はスパニッシュ様式の建物で、自然光が幻想的に入る絵本のような世界観が特徴的。まさに“ティーパーティ”がぴったりだったんです。
⎯⎯ 今回のメイクアップを日常に取り入れるためのアドバイスがあれば教えてください。
Image by FASHIONSNAP(Ippei Saito)
メイクの中心にするカラーを取り入れたい場所にまず乗せてみて、そこから周りを合わせていくと良いと思います。ヴィヴィアーノのショーで中心になったのはアイメイクですが、リップやチークでも応用できます。目元を中心にメイクしたい時は最初にアイカラーを、口元を中心にメイクしたい時は最初にリップを。勢いよく乗せてその後に周りを合わせていくと、意外とバランスが取れていくと思います。
⎯⎯ ショーでメイクをするときに、Asamiさんが大事にしていることを教えてください。
“顔にとらわれない”ということを大事にしています。先ほど言った「場所」についてもそうですし、衣装もそう。1度作って、服も合わせてモデルさんに着せてみて、また作ってまた着せて…。その上で会場も見て、全部が「うん、できた」と思えるまで、引いて見ることを繰り返します。“ティーパーティに集まった不思議なゲストたち”というアイディアも会場を見て出てきたものなので、あくまでもアイテムを軸にしながら、全体を隈なく見ることを大切にしています。
⎯⎯ 最後に、Asamiさんにとって“ファッションショー”とは何ですか?
世界を作る場所です。デザイナーさんが表現したい世界を、メイクアップやヘアメイク、モデル、場所…すべて合わせて作っていく。デザイナーさんの話を聞いて、その世界でやってみたいことを伝え合ったり、膨らませたイメージを投影したり、掛け合うことで作り上げられていく世界だと思っています。
Image by FASHIONSNAP(Ippei Saito)
(企画・編集:藤原野乃華)
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection