ダンサーの柿崎麻莉子
Image by: FASHIONSNAP

ダンサーの柿崎麻莉子
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「BODY MAGIC」は身体表現のプロフェッショナルに、「身体と装い」について語ってもらう連載企画。今回登場してくれたのは、ダンサーの柿崎麻莉子だ。現代ダンス界を牽引するバットシェバ舞踊団のメンバーとして活躍。 その後、L-E-Vダンスカンパニーに所属し、世界中の舞台で踊った。さらにミュージックビデオやファッションショーへの出演など、幅広いジャンルで活躍中。そんなトップダンサーが見つめる身体、そして衣装の魅力とは?
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田舎にダンス教室なんてなかった
湧き上がる衝動とエモーション。彼女が踊り始めると、スタジオにいた誰もがその動きに釘付けになった。人間はこんな自由に動けるものなのか——。
柿崎麻莉子は香川県出身。自然豊かな田舎で生まれ育ったという。「幼稚園の頃から自分で音楽をかけて踊っていましたね。母親が新体操の先生だったので、家に色々なCDがあったんです」。小学4年生から新体操クラブ「エンジェルRGカガワ日中」に通い始め、6年生の時には全国大会に3人1組で出場して優勝。身体能力の高さは幼い頃から抜きん出ていた。
「自分が踊ることが好きだっていうのは、もう早い段階で分かっていたんです。でも田舎だからダンス教室なんてないし、どうやって始めていいか分からなくて」。その後、進路を決める際に「大学 ダンス 一番」とネットで検索。検索結果の一番上に出てきたダンスの名門・筑波大学に入学し、そこでコンテンポラリーダンスと出会った。「それまで新体操しかやってなかったので、身体性の違いには苦労しましたね。新体操は技で点数を取る競技なので」。

“ラッキーなことに”膝の前十字靭帯を断裂
大学1年の秋、膝の前十字靭帯を断裂し入院。病室では「こんな身体じゃジャンプもできないし、もうダンスをやめるのかな」と落ち込んでいたという。その時、手を差し伸べてくれたのは大学の先輩だった。「今は振付家として活躍している黒田なつ子さんが、座ったまま踊る機会をくれて。10分弱の作品で、長いドレスを着て脚立の上に座り、手だけをゆっくり動かす役でした。それはきっと新体操をしていた時の感覚では絶対に踊れなかったダンス。その時『そうか、足を上げなくても踊ることはできるんだな』ということに気づいたんです」。怪我をしたからこそ、新たな身体性を学ぶことができた。柿崎にとってそれは大きな転機になったという。

イスラエルのダンスに衝撃を受ける
「自分が一生やっていきたいダンス」を見つけるため、大学の夏休みにはヨーロッパやニューヨークのダンスシーンを見て回る。一番衝撃を受けたのは、バットシェバ舞踊団(Batsheva Dance Company)の来日公演だった。バットシェバはイスラエルを拠点とする世界的なダンスカンパニー。美の既成概念に捉われず、振付家のオハッド・ナハリン(Ohad Naharin)が編み出した「ガガ(Gaga)」というダンスメソッドを使って、独自の身体性を育てていく。
「『ガガ』は枠組みのないアプローチで、人によってまったくバラバラな動きが出てきます。それが私がバットシェバを初めて見たときにすごく惹かれた部分。ゴツゴツした筋肉質の人もいれば、華奢なバレリーナみたいな人もいて、それぞれが全然違うリズムで同じ舞台に立っていました。色々な動物が踊っているようなワイルドさを感じて『これならやってみたい!』ってゾクゾクしたんです」

「特異な身体性」でオーディションに合格
「自分がここに所属する未来が見えた」という柿崎は翌年イスラエルまで出向き、「ここで働きたい」とオハッドに直談判。大学を卒業する2012年にオーディションを受けて、念願のバットシェバに入団した。「オーディションに参加していたのは幼少期からずっとダンスを頑張っていた人ばかりでした。私は全然ダンス技術もなかったけど、新体操の経験はあったから特異な身体性に見えたんだと思います」と分析する。
バットシェバのメンバーは半分がイスラエル人で、もう半分がインターナショナル。そんな中で、体型の違いにも気づかされた。「身長が高いプロダンサーたちの中で、私は背が一番低くて、足の長さだってみんなの半分くらい(笑)でもそれをネガティブなことにはまったく感じなかったんです。だって私は“ここにいる”んだから」。

自分の身体性をほかの誰かと比較して落ち込んだことはないという。「国が違えば、美の基準も変わります。もし今、身体に対する社会の呪縛を感じているとしたら、別の場所やコミュニティに行けばいいと思います。呪縛と戦うのはすごいことだけど、それは戦える力がある人に任せたらいい。身体に正解はないから、周りと比較する必要はないと思います」。
最終更新日:
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