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Kバレエのプリンシパル・堀内將平 バレエの「今」を体現する王子【連載:BODY MAGIC】

バレエダンサーの堀内將平

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Kバレエのプリンシパル・堀内將平 バレエの「今」を体現する王子【連載:BODY MAGIC】

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 「BODY MAGIC」は身体表現のプロフェッショナルに、「身体と装い」について語ってもらう連載企画。今回登場してくれたのは、バレエダンサー・堀内將平だ。ルーマニア国立バレエ団など海外で活躍し、2015年にKバレエ カンパニーに入団。2020年にプリンシパルに昇格し、「ロミオとジュリエット」のロミオや「蝶々夫人」のピンカートンなどを演じた。今秋、創立25周年記念 熊川版 新制作「眠れる森の美女」の公演を控える堀内が自身の身体、そして衣裳の力について語る。

 堀内將平は、日本のバレエ界をリードしてきた熊川哲也率いるKバレエ トウキョウ(今年9月よりKバレエ カンパニーから名称変更)のプリンシパルだ。プリンシパルとは最高位のダンサーのこと。バレエ団の顔として主役を演じ、その繊細かつエレガントな踊りで観客を魅了している。まさに生粋の「王子様」という印象だが、素顔はいたってフレンドリー。根っからの国際人でもあり、この日も「インド旅行から帰ってきたばかり」と屈託のない笑顔を見せた。型にはまらない自由な発想と行動力が、彼の表現の礎を支えている。

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「バレエって、イケてるかも」

 バレエを始めたのは10歳で、決して早いわけではない。もともとは親が共働きで「放課後、子どもを一人にするわけにはいかない」という理由で、7歳から体操教室に通うことになった。その後、引っ越しで体操をやめることになり「男の子でそんなに身体が柔らかいんだったら、バレエをやったら?」という周囲からのアドバイスをきっかけにバレエ教室の門を叩いた。「そこのロシア人の先生が僕のことをすごく気に入ってくださって、2回目のレッスンで『あなたはプロになれるから、毎日来なさい』って。そんなふうに認めてもらったのが子ども心に嬉しくて、何も分からないまま『バレエ、イケてるかも』と始めちゃった感じです」。

 恵まれた体格はもちろん、柔軟性や音楽性、筋肉の記憶力など、あらゆる素質を持ち合わせていた堀内はすぐに頭角を現した。14歳になると「あなたは海外でちゃんと勉強した方がいい」と恩師から告げられ、留学することに。「その頃、僕はバレエをやっていることを周囲に隠していたんですよ、ずっと。男の子がやるものじゃないと思っていたので、やっぱり恥ずかしかったんですね。だから中学校では突然『堀内くんが留学します』と発表されて、みんな『えー!』みたいな感じ」と、当時を振り返る。少年は人知れずバレエへの情熱を育み、単身世界へと飛び出した。

 その後、堀内はウズベキスタン、モナコ、ドイツ、ルーマニアなど様々な国で学び、活躍することとなる。しかし海外のレベルの高い環境で踊ることは、喜びばかりではない。「ドイツのバレエ団はモデル体型のダンサーしか入れないところだったので、男性も身長180cm以上の人ばかり。僕も若い頃は"物理的な美しさ"を目指していたところもあって、コンプレックスには悩まされました。今はそれよりもっと表現や踊りなど集中すべきことがあるので、それだけじゃないと思えるようになりましたけど」。

美の基準は変わってもいい

 「バレエダンサーに求められる身体とは何か?」は今でも堀内を悩ませるテーマだという。「バレエって"美しい型"が細かく決まっているんですよ。手足が長くてスタイルが良くて、足の形も膝が入っていて甲が出ていて......みたいな。そういうストイックな削ぎ落とされた美しさはもちろん綺麗ですが、肉体に対する厳しい基準にこだわるのは今っぽくないな、と思っています。美の基準って時代によって変わってきているから」。

 その鍛え抜かれた身体で雑誌「ターザン(Tarzan)」のカバーモデルも務めた堀内だが、本人は「もうちょっと内面的なもの」を目指していると語る。「バレエは本来、何かを表現するものであるべきだから。"綺麗だから好き"ばかりじゃなく、"表現が好き"っていう部分を大事にしたいんです」。

TikTokも"感動を得られるツール"

 2015年に帰国し、Kバレエ カンパニーにアーティストとして入団。Kバレエの持つ、高いエンターテインメント性に共感したのが理由の一つだという。「熊川(哲也)芸術監督はエンタメがお好きなんです。僕も大好き。以前、B’zのライブ演出を手掛けている方にこんな話を聞きました。友人に仕方なく連れてこられた人、それも何万人規模のホールの一番後ろの席に座っている人に『今日、楽しかったね』と言ってもらえることを毎回目標にしている、って。Kバレエも同じなんですよ。バレエを分からない人が見ても『よかった、感動した』と言ってもらえるような舞台を作っているんです」。

 堀内自身は本業の傍ら、TikTokやインスタグラムで日々バレエを発信し、人気YouTuberとのコラボにも応じる。「SNSも言ってみれば、ほんの一瞬だけど感動が得られるツールなわけじゃないですか。誰かそれを見て『バレエダンサーってすごい!』と引っかかって、繋がってくれたらいいなと思いますね」。この日も撮影の合間にセルフィーを撮影。今の時代感覚を活かしたアプローチが、幅広いファン層を獲得している。

バレエに新たな角度からアプローチ

 しかし海外で活躍したダンサーだからこそ、日本におけるバレエ文化の立ち位置に葛藤を抱くことも。「パリ・オペラ座のエトワールになれば、『ディオール(DIOR)』がスポンサーについて、衣裳は『シャネル(CHANEL)』が作ってくれて......というような世界。40歳で年金が出て、日本でいう人間国宝みたいなものに認定されるんですよ。日本にも素晴らしいダンサーは沢山いるのになぜ評価されないんだろう?ってずっと考えていて、もっと多様な見せ方があったらいいのかも、と気づいたんです」。

 例えば「白鳥の湖」は「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」とともに3大バレエと呼ばれる古典だが、イギリスの演出・振付家のマシュー・ボーン(Matthew Bourne)は、男性が演じるスワンと王子の悲恋物語としてストーリーを再構築。その斬新な改訂版は90年代にセンセーションを巻き起こし、ロングランを記録した。「ああいうのも、とても面白いと思います。それで僕もバレエの演出や照明、衣裳、ヘアメイクを変えてみようとパンデミック中に企画したのが『BALLET TheNewClassic(バレエザニュークラシック)』です」。

バレエとハイファッションの類似性

 「バレエザニュークラシック」は、堀内が写真家の井上ユミコと共に立ち上げたプロジェクト。バレエファンならば誰もが知る古典作品を再解釈し、"新しい定番"の形を提案した。舞台と客席の距離はたった2.26mで、「チカキサダ(CHIKA KISADA)」による衣裳やプロジェクションマッピングなど、現代的な要素を融合させた。現役のプリンシパルダンサーが舞踊監修するダンス公演ということもあり、チケットはあっという間にソールドアウト。「次回はもうちょっと自分たちが届けたい層に届けられたらいいなとは思っています。一番振り向いてほしいのは、やっぱりファッションの人とか、クリエイターの人たちかな」。

 バレエとハイファッションの類似性を堀内は指摘する。「バレエは元々ハイカルチャーと呼ばれるもので、王族などが楽しんでいました。今はもっと広がってきているけど、どこか届かない存在・憧れであり続けてほしいとも思います。ファッションにしても、憧れのオートクチュールやランウェイルックがあって、それが市場に広がっていくという形ですよね。あとバレエはやっぱり小さい頃からやっていないとできないものなので、そういう意味でのストイックさや厳しさも似通っているかなと思います」。敷居の高さは保ったまま、裾野を広げていく。それが文化を継承していくための大事なポイントなのかもしれない。

こだわるのは踊りだけじゃない

 踊り手だけでなく、公演をプロデュースする側になって学んだ点も多い。「ダンサーって『踊れればいい』と思っているところがあります。衣裳や音楽は自分では変えられないし、メイクもある程度決まった型があるので。でもその中で『どこまでそれをいいものにできるか?』というところが本当の仕事。やっぱり細かいところまでこだわらないといけないんだな、とあらためて気付きました」。中でも特に力を入れているのは、舞台メイク。劇場には専属メイクがいるが、基本的には全部自分でこなす。役柄ごとに全く違う表情を引き出し、踊りのニュアンスを増幅させている。

 また、衣裳も踊りを引き立てる大きな要素だ。「ある意味、その役柄を一番視覚的に表現するものなので、音楽よりも何よりも視覚的な影響は大きいのかな。スタジオで踊るときは稽古着なので、舞台で照明が入って衣裳を着た時に『あ、こういう世界観なんだ!』と実感して、一気に次のレベルにいく感じがします」。ちなみに堀内が今まで着用した中で気に入っている衣裳は「ロミオとジュリエット」のものだそう。「ロミオはずーっと踊りたい役だったので、その分思い入れが強いです」。やはり根底には、クラシックバレエへの深い愛とリスペクトがある。

「眠れる森の美女」の新たな王子像

 現在は、創立25周年記念として上演される「眠れる森の美女」のリハーサル中だ。熊川芸術監督による新たな解釈で、ストーリーもアレンジされている。「今までの『眠れる森の美女』の王子は、終盤に突然出てきてお姫様にキスして結婚!みたいな強引な展開でしたが(笑)今回はもっと掘り下げられています。呪いにかけられて間違ってお姫様を死に導いてしまったり、そういう苦悩もあって、もう少し人間らしさのある王子像なのかなと思います」。

 衣裳を担当するのは、世界の名だたる劇場で演劇やオペラのデザインを手掛けるアンゲリーナ・アトラギッチ(Angelina Atlagic)。豪華さと繊細さ、古典と現代的センスを併せ持つ彼女の衣裳が、作品にさらなる深みを与えそうだ。

アンゲリーナ・アトラギッチによる「眠れる森の美女」衣裳デザイン画

アンゲリーナ・アトラギッチによる「眠れる森の美女」衣裳デザイン画

Imaged by K-BALLET TOKYO

 かつてはバレエへの情熱を周囲に明かせなかった堀内少年だが、今はバレエ界を率いるトップダンサーの一人。「バレエは自分の存在価値、意義みたいなものになりましたね。僕にとって身体とは、自分を表現するための手段です。舞台では、お客様に感動してもらうのが一番。その役に共感してもらえるような舞台にしたいです」。バレエ以外では、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2021年)に"死のダンサー"役で出演し、新境地を切り開いた。「もしお話があれば、俳優にも挑戦してみたいですね。僕は基本、なんでもやってみたいので」と貪欲さも垣間見せる。

バレエは日常に溢れている

 一般的に、バレエと聞くと「敷居の高いもの」と身構えてしまう人も多い。だが、「バレエに関するものって、意外と日常に溢れているんですよ」と堀内は語る。「例えばソフトバンクのCMに使われている音楽も『ロミオとジュリエット』。街中でみんなが穿いているチュールのスカートもバレエのチュチュから発展したものだったりします。バレエを見たり習ったりすると、思った以上にいろんな繋がりがあることを感じられるはず。それこそTikTokを通してでもいいので、肩肘張らずに楽しんでほしいですね。そこから理解を深めていただけたら、それも嬉しいです」。

 「眠れる森の美女」に続き、今冬は「くるみ割り人形」で王子役を演じる。先人へのリスペクトを守りつつ、自らの美意識を活かしながら挑戦する堀内。バレエはもちろん、日本のエンタメや社会通念にも変化をもたらしてくれそうだ。

堀内將平(Shohei Horiuchi)

東京都生まれ。2008年ジョン・クランコ・バレエ スクールに留学。2012年よりルーマニア国立バレエ団に在籍。2015年にKバレエ カンパニーに入団し、2020年にプリンシパルに昇格。主な出演作は「ロミオとジュリエット」のロミオ、「くるみ割り人形」のくるみ割り人形/王子/雪の王/アラビア人形、「白鳥の湖」のジークフリード/パ・ド・トロワ/マズルカなど。初演キャストとしては、熊川振付「蝶々夫人」のピンカートン、「カルミナ・ブラーナ」のダビデ、「死霊の恋」のロミュオーがある。

<今後の公演スケジュール>

■K-BALLET TOKYO 25周年記念シーズン ラインナップ
新制作「眠れる森の美女」

[東京] Bunkamuraオーチャードホール 
2023年10月8日(日)・10月9日(月・祝)・10月14日(土)・10月15日(日)
[東京]東京文化会館 大ホール 
2023年10月24日(火)~10月29日(日)
[大阪]フェスティバルホール
2023年11月3日(金・祝)
[福岡]福岡サンパレスホテル&ホール
2023年11月7日(火)

熊川版「くるみ割り人形」
[東京]Bunkamuraオーチャードホール 
2023年11月25日(土)・11月26日(日)・12月2日(土)・12月3日(日)・12月9日(土)・12月10日(日) 
[愛知]愛知県芸術劇場 大ホール 
2023年12月13日(水)
[香川]レクザムホール(香川県県民ホール)・大ホール 
2023年12月22日(金)
[岡山]岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
2023年12月24日(日)

■TV番組
K-BALLET TOKYO 「眠れる森の美女」緊急特番「熊川哲也 20年前にやり残した宿題」(TBS)
2023年9月10日(日)16:00〜16:30(関東ローカル)

<スチール>パンツ 7万1500円(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)、パールネックレス(ロング)233万2000円、パールネックレス 140万8000円、イヤリング 69万6300円(TASAKI)、ビジューネックレス 16万5000円(tanakadaisuke)
<ムービー>バンツ 3万800円(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)、ネックレス 93万2800円、イヤリング 33万円(TASAKI)

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 03-5454-1705
TASAKI 0120-111-446
Harumi Showroom(tanakadaisuke)03-6433-5395

ballet dancer: Shohei Horiuchi
stylist: Hiromi Nakamoto
hair & make-up: Takae Kamikawa(mod's hair)
photographer: Hiroyuki Ozawa (FASHIONSNAP)
videographer: Ota Uzuka(FASHIONSNAP)
composition & text: Fuyuko Tsuji (FASHIONSNAP)
撮影協力:Kバレエ トウキョウ

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