何かとストレスが溜まりやすい現代社会。ストレス緩和などを目的に、日本でもCBD(カンナビジオール)を配合した商品に注目が集まり、ライフスタイルショップやセレクトショップでも見かける機会が増えた。さまざまなブランドが急速に登場する中で、昨年日本に上陸したイギリス発のCBDブランド「オト(OTO)」は、特にCBDによる良質な睡眠のサポートを訴求。本国イギリスをはじめグローバルでアワードを受賞するほか、ケイト・モスなどセレブの顧客も抱え、高品質でスタイリッシュという「ラグジュアリーなCBDブランド」として人気を集める。日本でも今後存在感を増すであろうオトとはどんなブランドか?来日した共同創設者兼コマーシャルディレクター、アジアでのマネージングディレクターを務めるトム・ロリマー(Tom Lorimer)に話を聞いた。
Tom Lorimer:イギリスのブリストル大学で政治学を学ぶ傍ら学部長に選出。アーティストイベントマネージメントのビジネスを開始し、2015年にロンドンに移住。キャリアチェンジを考え、一流プレミアムアイスクリーム事業のPOPS創設パートナーになる。2018年のPOPS買収を機に退任し、スタートアップ飲料ブランドのコンサルタントとして活躍。これまでに音楽・フード・カンナビスに渡る幅広いジャンルでキャリアを積む。その後、睡眠トラブルを抱えはじめことをきっかけにCBDに出会う。2019年にGemmaとJamesの夫婦デュオとともにオトを設立。
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ーCBDブランドの勢いは年々増しています。トムさんたちがオトを創業した理由は?
まず、私自身がCBD製品を使ってライフスタイルが充実した経験があったのが理由のひとつ。オトを始める前もいくつか事業を手がけていてプレッシャーがかかる生活だったので、睡眠障害を抱えていました。処方薬も含めてさまざまな手段を試しましたが自分に合うものに出合えなかったのですが、CBDを使うようになってからは、入眠がスムーズになった実感があったんです。ただ、機能性は素晴らしくても舌下摂取タイプのものは苦かったり、デザインもしっくりくるものが無かったりと、使い続けたいと思えるものがあまりありませんでした。共同創業者のジェマとジェームズともその点で意見が一致したので、私たちで機能性が高くラグジュアリーなCBDブランドを作ろうと話したんです。
ー確かに、現代社会は何かとストレスを受けやすいですよね。
そう感じますね。でも個人的な意見としては、睡眠障害などストレスによるダメージを受けたからこそ、日々自分の状態に向き合うようになり、疲れている時は無理をせず休息をとってリフレッシュできるようになったので、今は辛い時を乗り越えた意義があるとも思っています。
ー近年は世界的なCBDブームで新しいブランドも続々と登場していますが、オトの特徴は何でしょうか。
オトでは睡眠を特に重要だと考えていますが、質の良い睡眠のためには1日のリズムが大事です。そこで1日を起床後、お昼時、夜のリラックスタイムといった3つに分け、毎日のルーティーンの中で、時間帯ごとに最適な状態へと導けるようなラインナップを構成しました。実はCBDには質の良い睡眠をサポートするほか、抗酸化やアンチエイジングも期待できるんです。商品開発では、こうした副次的な側面も実感できるような機能を重視しました。
ーブランド名の「オト」は日本語の「音」が由来なんですよね?
そうです。ジェームズが来日した時に東京を散策していたら、大通りから一歩路地に入ると静寂が広がっていて、都会の喧騒と静寂が同居する様子がとても気に入ったと言っていました。その経験から、多忙な日常の中で静寂と自分の内なる「音」に耳を傾ける瞬間を最大限に感じ、ブランド名をつけるとともに、ニュートラルな状態を保てるようなブランドの世界観を作り上げていきました。
ー日本の文化が参考になった点はほかにもあるでしょうか。
日本語にしかない表現で「木漏れ日」という言葉がありますよね。自然が生み出した美しい情景でありながら、とても繊細な状態を表していると思いますが、この絶妙なバランス感をオトでも大事にしています。
ー数あるCBDの中でもユニークなコンセプトだと思います。成分や処方にも特徴はありますか?
これは私が一番好きな質問です(笑)。ウェルネスをサポートするラグジュアリーなCBDブランドを作りたいと思って始めたので、市場調査や商品開発にはかなりコストを費やしました。すでに多くのCBDブランドが存在する中で、たとえCBD成分が入っていなかったとしても高機能で価値のあるブランドに育てることが、ブランドの価値につながると考えました。
ーつまりはどういうことでしょうか?
すべての製品は100%ヴィーガンでクルエルティフリー。香りにもこだわっていて、エッセンシャルオイルはインドのアーユルヴェーダを参考にしたブレンドで、1日のシーンの中でマインドをサポートできるようなものに仕上げました。これだけでも十分、高品質な製品として発信できますが、加えてCBD成分はピュアCBDと呼ばれるものを厳選し、最適な濃度に調整したものを採用しています。
ーご自身の経験から特に睡眠にこだわった商品が豊富ですね。
さまざまなライフスタイルに寄り添いたいので、その人にとって取り入れやすいものを選んでもらえるように睡眠をサポートするアイテムには特に力を入れました。舌下摂取タイプのオイルは就寝時に使っても不快感を感じないように「えぐみ」を最小限に抑えていますし、こめかみや手首に塗布するロールオンタイプで夜におすすめな香り「バランス」は、ラベンダーやカモミール、カジェパットをブレンドし、安らかな夜の休息を助けてくれます。それから、市場にはあまりなかったCBD入りのピローミストを開発しました。就寝前に枕にひと吹きするだけなのでとても簡単に取り入れられます。
ーより良い睡眠のためにCBDを訴求するブランドは多いですが、ピローミストが少なかったのは意外です。
ほかのブランドのことは分かりませんが、私たちが研究から開発まで基本的にインハウスで行うからこそ実現できたのではないかと思います。私たちが使うCBDは天然由来のためとても不安定で、ほかの成分との組み合わせると安定させるのはさらに難しいんです。どの商品もCBDにエッセンシャルオイルと有効成分を取り入れて一番良い状態に保てるように研究を重ねています。就寝時のお供としてピローミストはどうしても作りたくて、何度も試作を重ねて商品化できました。
ー商品デザインではモノクロを基調に文字のゴールドがアクセントになっていて、落ち着いた雰囲気ですね。
ブランドのクリエイティブを担当するジェマはセントラル・セント・マーチンズ出身で、ファッション業界でも活動してきたので、プロダクトデザインとマーケティングの知識が豊富です。ユニセックスで使えて、ベッドサイドやバスルームに置いても洗練されたラグジュアリーなムードがあり、ブランドの世界観も落とし込まれたもの。例えば、両開きのディスカバリーセットは、箱を開く時に極力ノイズが発生せず、左右に箱をスライドして中央から静かに商品が現れる様は、「喧騒と静寂のはざま」をも表現しています。
ーこだわりのデザインや成分・処方によって、イギリスではハロッズやセルフリッジなど高級百貨店で展開していますが、なぜ日本での販売を決めたのですか?
先ほどブランド名の由来を説明しましたが、ブランドの起源から日本とは深い結びつきがありますから、いつか進出したいと考えていました。ビジネス的には海外に比べてCBD市場の伸び代があるのも理由のひとつです。また、日本は先進国の中でも平均睡眠時間が少ないというデータもあるので、私たちが心地よい睡眠の手助けをできたらと思ったんです。
ーコロナによって世界的に人々のストレスは高まり、CBDへの注目度も高まったように思いますが、ビジネスに影響はありましたか?
ブランドを創業した2019年以来、急速に成長してきましたが、イギリスはロックダウンがあったので、それまでの戦略をガラリと変える必要がありました。投資の選択と集中ということで売上が期待できる店舗を残して、積極投資したことでダメージは最小限に抑えられたと思います。コロナ禍で人々がストレスを感じる場面が増え、リラクゼーションアイテムへのニーズは急激に高まったこともあり、売上も大きく落ち込むことはありませんでした。全てをストップするのではなく将来性を考えて進み続けました。実はアメリカや香港への進出もコロナ中に決めたことでした。今年の売上はグローバルで400万ポンド(約6億6000万円)を見越しています。
ー今後はどのような商品を構想中ですか?
日常で感じるストレスに対して、私たちがどうやって手助けできるかを常に考えています。需要や効果の調査を経て、そうした悩みをサポートできる商品を展開していきたいですね。睡眠以外に更年期にも注目していて、CBDを軸にオトの姉妹ブランドのような形でラインナップできないか考え中です。イギリスでは更年期を迎えた人に向けたキャンペーンを実施済みで、ファッションデザイナーとコラボレーションした扇子を作りました。ホットフラッシュで辛くなった時に、素敵なデザインの扇子でクールダウンして少しでも気分を晴れやかにしてもらいたかったんです。
ー更年期ケアアイテムでは、ヘルスケア領域に参入するイメージでしょうか。
CBDは薬品ではないので、ウェルネスのカテゴリーになるなと思います。オトと合体して相乗効果を生めるようなテクノロジーや素材の研究は常に進めているので、健やかな生活を長く続けてもらうためにプロダクトで寄り添っていきたいと思っています。
ー今後の日本市場についてはどう考えていますか?
日本のマーケットに合う成分やプロダクトレンジを検討していきます。すでに販売中のアイテムでも、テクスチャーを日本向けに変更したものもあるんですが、日本市場については引き続き勉強中です。ありがたいことにお取引先さんとは密にコミュニケーションを取れていて、日本のお客さまの方向を向いて、需要に応えられる商品を開発したいと思っています。せっかく日本語をブランド名に冠していますから、これからもっと積極的に関わっていきたいと考えます。
(聞き手 福崎明子、編集 平原麻菜実)
■OTO:ジャパン公式サイト
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