Image by: FASHIONSNAP
スペイン バルセロナ発のブランド「デシグアル(Desigual)」が、デザイナーのステラ・ジーン(Stella Jean)との初コラボレーションコレクションを発売しました。モデルとしてのキャリアを持つステラ・ジーンは、2011年にAlta Romaとイタリア版「VOGUE」が主催するファッションコンテスト「Who’s On Next」を受賞したことを契機に、2012年から自身の名前でブランドをスタート。イタリア出身の父親とハイチ出身の母親を持つ多文化なルーツをクリエイションの核にしながら、大胆なグラフィックプリントを用いたヴィヴィッドなコレクションで世界から注目を集めています。今回は、ステラ・ジーンにコラボに込めた想いを聞きました。
―モデルとして活動し、その後ファッションデザイナーとしての道を歩み始めたそうですね。デザイナーとしての道を選んだきっかけを教えてください。
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ファッションモデルとして、初めてファッションデザイナーのスタジオを訪れた時に「ここでわたしは自分の本領を発揮できる」と直感的に感じたんです。ファーストコレクションは、スケッチをしない代わりに稀有な才能を持ったイタリアの裁縫師との出会いから、テーラーのサンプルや自分でドレーピングした生地を服へ翻訳するような実験的な方法で形にしました。そこから、ある日ファッション界の新たな才能を発掘するコンテスト「Who's On Next」の募集広告を「VOGUE ITALIA」で見て、ワクワクしながら応募しました。でも、結果は残念ながら不合格。それで翌年も応募したのですが、不合格。めげずに自分の粘り強さを糧に、3度目の応募にもチャレンジしました。
―3度目となると強い覚悟も必要ですね。応募の際に意識したことはありますか?
コンテストのスカウトマンであるシモネッタ・ジャンフェリーチ(Simonetta Gianfelici)に「君が粘り強さや頑固さに欠けているわけではないことは理解しているが、もし本当にもう一度応募したいなら、今度は君だけのものを持ってくるように。また断られる可能性がないとは言い切れないが、もし断られたとしても、少なくとも自分だけの物語を持って断られたことになるのだから」と言われた言葉が胸に響きました。その瞬間に、自分が弱みだと感じていたものをあえてコレクションを通して伝えようと決心しました。
―それが自身のルーツだったと。
わたしのルーツであるハイチの黒人の象徴であるワックス生地を、イタリアの伝統的なテーラリングと組み合わせたんです。コレクションの中では父親がよく使っていたストライプのシャツを核にして、家族との物語を視覚的に語りました。その結果、自然とマルチカルチュラリズムが生まれ、コンテストで2位を取ることができました。そのコレクションは「VOGUE ITALIA」の元編集長のスージー・メンケスをはじめとする多くの審査員の目にとまり、ストーリーに耳を傾けてくれたことによって、一気に人生が変わりました。
―今回のデシグアルとのコラボにおいて、どのようにデザインを進めていったのでしょうか?
私たちの世界観とDNAは自然発生的に融合していきました。さまざまな色彩を使うことに対してお互い遠慮がないので、その分、ある種のリラックスした状態で文化的なシンクロニシティを表現して楽しむことができましたね。誰かとデザイン制作するとき、まず「どのようなカラーパレットを使うか」と尋ねられることがあるのですが、実はわたしにとって一番難しい質問なんです。でも今回デシグアルは、まるでわたしのカラーパレットを本能的に理解して共有しているかのように一切そういった質問はなくて。その代わり、パピルスを使って可能な限り幅広いカラーをひとつに変化させるプロセスを踏むことで、一見最もありえないと思われるような組み合わせから次々とベストなものが生まれました。
―自身のブランドのシグニチャーでもあるバティックをイメージしたプリントが印象的ですね。今回のコラボの中で、一番印象的だったデザインについて教えてください。
わたし自身のメッセージを全面的に反映させながら、デシグアルの本拠地であるバルセロナのお土産の要素も吹き込みました。ハイチへの旅はマドラス生地やジンジャーブレッドハウスを表現したプリントから始まり、そしてナイーフやバティックの要素を経てスペインへと旅立つようにグエル公園で見られる白と青の陶器を再解釈したパッチワークを使っています。最後にはイベリア半島の他の地域へ移動する、といったようにハイチとスペインを行き来しながらも広がりがあるコレクションになりました。また、フリルは喜びの感情を呼び起こすものとしてふんだんに使いましたね。フリルには自分のスペースを確保して、他者から見られる喜びを感じるような、ある種の頑固さと決意、大胆なエネルギーを強く感じるのです。
―「Fresh Coffee」と描かれたグラフィックデザインも特徴的ですね。
ハイチを代表する歴史的建造物、ジンジャー・ブレッド・ハウスを表現したプリントも然りですが、コーヒーのグラフィックでもその場所本来の素晴らしさを伝えたいと思ったんです。影ばかりがクローズアップされ、過小評価されがちな場所の美しさを語ることは大切ですよね。ファッションを通して、間違ったイメージを払拭するように光の部分を表現しなければいけないと強く感じて。なので、すべてのプリントに、あらゆる緯度におけるライフスタイルの共時性と文化を反映させていて、それを通じてそれぞれのルーツに誇りを持って頂けたらと考えました。同時に、あらゆる文化は過去の遺産の積み重ねの結果であるからこそ、独自の多文化主義が生まれていることも感覚的に理解して頂けるかと思います。つまり私たちの国と文化の独自の美しさは、まさに物語と物語の出会いの結果による架け橋の連続であって、決して壁の連続ではないんです。
― 近年、世界情勢や環境問題などさまざまに社会が変化していますが、ファッションデザイナーとしての自身の役割についての考えを教えてください。
個人的な歴史と経験の範囲でしか自分のことを話すことができないですが……わたしにとって、ファッションは従来持たれる華やかなイメージから抜け出し、私たち一人一人が住んでいる現実のグローバルな世界へと接続すべきだと強く思います。グローバルな多文化主義の不可逆性を含む、世界の新しい道を切り開こうとするブランドとのコラボは今後も取り組んでいきたいですし、国際的な協力関係も大切なことだと思います。それは、ファッションが象徴する社会構造全体の信頼性を維持するために、弱者の声に耳を傾けてレスポンスすることと同時に、長い間無視されてきたマイノリティグループの尊厳を回復させることも含んでいます。
ーご自身にとってファッションとはどのような存在ですか?
世界に向けた強力なメガホンですね。ファッションはただ単純に表面的な美学として理解されるべきものではなく、むしろ美を通じてあらゆる人の視線に新たな切り口を与えることができるものだと考えています。「服」は言葉よりも大きな声で語ることができ、何かしらの形で注目を集められる力を持っています。今回のコラボコレクションには、そういった文字通りの「服」の意味以上のコンセプトを込めました。
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