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Beautyインタビュー・対談

【インタビュー】ジャン・ミシェル・オトニエルがディプティックと作った"目に見えない"アート バラの香水に込めた想い

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 「ディプティック(diptyque)」から、現代アーティスト ジャン・ミシェル・オトニエル(Jean Michel Othoniel)とコラボレーションしたフレグランスとキャンドルが登場する。バラの繊細さとスパイシーさが引き立つ香りは「オトニエル ロザ(Othoniel Rosa)」と名付けられ、世界に先駆け日本では7月に発売が決定。ムラーノガラスを用いた作品で広く知られる彼が新たに挑戦した、目に見えない「香り」というアート。「香り作りは儚い感情を作るようなことだった」と語る彼の、繊細な美意識に迫った。

ジャン・ミシェル・オトニエル(Jean Michel Othoniel)
 1964年1月27日フランスのサン=テティエンヌ生まれ。パリ在住。5年に一度行われるドイツ・カッセルで開催される現代美術の大型グループ展ドクメンタで1992年に展示。その後ムラーノ島で作られる「ムラーノガラス」を用いた作品を制作し、自身の作品を象徴するシグネチャーとなった。日本では、六本木ヒルズ毛利庭園内にある「Kin no Kokoro」や「シャネル(CHANEL)」銀座店3階の吹き抜け部分に設置されたオブジェなどを制作している。

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― 新型コロナウイルスの影響によるロックダウン期間中、オトニエルさんは毎日何をして過ごしていましたか?

 自宅のテラスで育てているバラや木、花など植物の手入れに時間を費やしていました。 ガーデニングは私の唯一の趣味なんです。花はまだ表現方法が潤沢でなかった時代から、人々の想像力を手助けするものだったと思います。私も制作したい世界のイメージやその手助けを探して、花を眺めることが多いんです。

 また、9月にペロタン東京で開催予定の個展に向けて制作に取り組んでいました。日本の花を主題に絵画や彫刻など、これまでにない新しい展示をする予定です。

― 新型コロナウイルスはアート界にどのような変化をもたらすと考えていますか?

 アートの世界は、新しい日常に適応し、例え一定の距離があっても感情を共有できるような、見る人と作品の新しい関係を創り出す必要があると思います。誰にも見せない個人的趣味のようなアートでも、反対に多くの人に見られるようなパブリックアートを作る場合にしても同様だと思います。1人のアーティストとして、クリエティブな考えの全てを注いでこのパンデミックと闘わなくてはなりません。世界に喜びや希望を取り戻したいです。

― これまで影響を受けた人物はいますか?

 視覚芸術家のフェリックス・ゴンザレス・トレス(Felix Gonzalez Torres)です。彼が亡くなる前、展示会を共にする機会がありました。彼は先見の明を持っており、我々のミニマルアートの考え方を大きく変え、新たな美と楽しみの可能性を拓いた存在だと思います。

 フェリックス・ゴンザレス・トレスは、キャンディなど身近にある題材を用いて作品を展開。視覚的要素を最小限にとどめたミニマルアートを継承し、素材やコンセプトまでも最小限に切りつめていった「ネオミニマリズム」の代表的な作家として知られている。

― パリでお気に入りの場所はありますか?

 コレット広場のパレ・ロワイヤル=ミュゼ・デュ・ルーブル駅です。20年前に駅入り口のパブリックアート「夢遊病者のキオスク」を制作する機会がありました。作品は私にとって永遠であり、パリでもっとも魔法がかった場所だと言えます。パリはロマンチックな街ですよ。

 また、サンジェルマン大通り沿いにあるディプティックの店舗も思い出の場所。私が学生の頃、寝室用のキャンドルを買うために通っていたんです。それが私にとって唯一の贅沢でしたし、それは今も変わっていません。香りやグラフィックデザインの創造性があるディプティックは、ユニークな香りのキャンドルを作る、フランスを象徴するブランドだと思っています。

― 今回ディプティックと初めてコラボレーションしてみていかがでしたか?

 香水を作ってみたいという思いは長年持っていたので、実現できてとても嬉しいです。私の作品を愛してくれる人々のプライベートな空間に入り込めるのは夢のようなことでしょう。

― 出来上がったのはバラの香りですね。

 今回の香りは「ローズ オトニエル」というバラからインスピレーションを受けた香りなんです。「ローズ オトニエル」は今回のコラボの数年前に、私の作品を見たバラ栽培家の方が「君が選んだ花に、君自身の名前をつけよう」と新しく開発したバラの写真を見せながら提案してくれたことをきっかけに生まれました。私が選んだバラは、バラらしい可憐なバラではなく花びらが少ないシンプルなものでしたが、優雅さとピュアな姿を兼ね備えた太陽のような美しさに心が惹かれました。一方で力強い香りを放っており、その素直さとクリアさに驚きました。

― 完成した「オトニエル ロザ」の香りはいかがですか?

 エネルギーや喜び、新鮮さが波のように押し寄せてくる香りです。身につけるとゆったりと感情が変化すると思います。

 「オトニエル ロザ」の香りはオードトワレ(100mL/2万1300円)とキャンドル(190g/8900円/すべて税別)の2種類を用意。ブラックペッパーやアンブレット シード、アキガラウッド、ピュアなパチュリが加えられ、ローズのスパイシノートを引き立てる。 ベチバーのウッディノートがローズの繊細さを表現し、マダガスカル産ブラックペッパーが、ディプティックらしいエッセンスを創り出している。

―「香り」は、これまでの作品と比べると"目に見えない"という点で大きな違いがありますよね。

 フレグランスを作ることは彫刻や絵画とは反対に「儚い感情」や「思い出」に取り組むことに似ています。今回の経験を機に、今後はパフォーマンス、演劇作品、映画など人々の心の中に存在し、残り続けることのできるプロジェクトにも取り組んでみたいなと思うようになりました。

バラという鮮やかなカラーイメージを裏切るような、モノトーンのグラフィックデザインも印象的です。

 グラフィックは、ルーヴル美術館に収蔵されているルーベンス作「マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式」の中に描かれている階段のステップに散らばった小さなバラからインスピレーションを受けています。ルーベンスのバラを黒いインクで描いた6枚の連作「ルーヴルのバラ」のうち、1枚をボトルデザインにしました。

 この作品は香水が元々持っているエネルギーと、バラが持っているクリアで素直な力強さを書道のような形で昇華し、表現しました。ルーベンスの描いたバラこそがルーヴル美術館を象徴する花だと私は考えています。

 ルーベンスの「マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式」をイメージして制作された「ルーヴルのバラ」はホワイトゴールド箔に黒いインクで描かれ現在ルーヴル美術館に常設展示されている。

― 今後挑戦したいことはありますか?

 現在、パリの近くのモントルイユで新しいスタジオを作っています。私のスタジオという形ではありますが、他のクリエーターが様々なコミュニティーと交流できるプラットフォームのような場所にしたいという思いもあります。

― 最後に、オトニエルさんの制作におけるフィロソフィーを教えてください。

 座右の銘は、ウィリアム・シェイクスピアの「It is not in the stars to hold our destiny but in ourselves.(運命は星が決めるのではない、我々の思いが決めるのだ)」という言葉。素材などアプローチの仕方が変わることはありましたが、私の仕事に対する姿勢は決して変わりません。

■「Othoniel Rosa」

【価格】
オー ド トワレ 100mL 2万1300円
フレグランスキャンドル 190g 8900円(すべて税別)
7月2日(木)から直営店と公式オンラインストアで限定発売
(オー ド トワレは世界に先駆けて日本で先行発売)

>>ディプティック:公式サイト

(聞き手:古堅明日香)

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