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古巣帰還で新たな幕開け 「フェンディ」マリア・ グラツィア・ キウリのデビューショー

2026年秋冬コレクションをレポート

2026年秋冬コレクション

Image by: FENDI

2026年秋冬コレクション

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 2026年2月25日、ミラノの「フェンディ(FENDI)」オフィス。シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)の後任として新たにチーフ クリエイティブ オフィサーに就任したマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)によるデビューコレクションが、ついにそのベールを脱いだ。

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 キウリの輝かしい軌跡は、奇しくもフェンディから本格的に幕を開けた。イタリア・ローマに生まれ、ドレスメーカーの母の背中を見て育った彼女は、ヨーロッパ・デザイン学院(Istituto Europeo di Design)のローマ校で学んだのち、1989年にフェンディの門を叩く。24歳の時だ。ここで後に長年の盟友となるピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)と運命的な出会いを果たし、両者はアクセサリー部門を力強く牽引。1990年代にブームを巻き起こした名作「バゲット(Baguette)」の誕生に多大な貢献を果たした。

 その後、1999年にはピッチョーリと共に「ヴァレンティノ(VALENTINO)」へ移籍。2008年、創業者ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)氏の引退というメゾンの転換期において、共同クリエイティブディレクターの座を託される。そして2016年、「ディオール(Dior)」において、ブランド創設史上初となる女性アーティスティック・ディレクターに就任。一貫して「女性のエンパワーメント」をテーマに掲げ、約9年間「世界を注視し、現代女性にふさわしいファッションを作ること」を追求し続けた。「ブック トート」や「サドルバッグ」の復刻など、アイコンバッグを生み出したことは記憶に新しい。そして、ディオールを退任し、次なる動向に世界中から熱い視線が注がれるなか、彼女が選んだのは原点であるフェンディへの帰還であった。

 デビューとなる2026年秋冬コレクションで、彼女が掲げたモットーは、「Less I, more us("私"よりも”私たち”)」。フェンディ家の5人姉妹が築き上げたクリエイティブな結束力と、イタリア的かつ女性的な仕事の流儀に対する深いオマージュである。そして、新生フェンディの幕開けは、メゾンの視覚的アイデンティティの刷新から静かに、そして力強く始まった。イタリアのグラフィックデザイナー、レオナルド・ソンノリ(Leonardo Sonnoli)と共に、幾何学的で独創的なプロポーションを持つロゴに刷新したのである。

新ロゴ

Image by: FASHIONSNAP

 ジャケットとパンツを起点に「フェンディに明確なシルエットを与えること」に集中し、フェミニンとマスキュリンの概念を対立構造から「共有される資質」へと昇華させたという今シーズン。端正なテーラリングのタキシードやミニマルなジャンプスーツが構築的な規律を描き出す一方で、繊細なレースドレスやスパンコール、レーザーカットを施したレザーワンピースが衝動と欲望を可視化する。さらに、バイカージャケットやカーゴパンツ、ウエスタン調のデニムやサファリテイストのルックが躍動感を与え、ゼブラや虎柄、足元を飾る豹柄の靴が野生的なエレガンスを主張した。首元にはつけ襟チョーカーが添えられ、多様な要素が交錯するワードローブを見事に完成させている。

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 同コレクションの知的で概念的な深みは、異なる世代の女性アーティストたちとの対話によってもたらされた。一人目は、彫刻家ミレッラ・ベンティヴォーリオ(Mirella Bentivoglio)だ。今季は、彼女が1970年代初頭にデザインしたジュエリーを忠実に再現し、「身につけられる詩の作品」として昇華させた。さらに、「Foulard(スカーフ)」を「fou(狂気)」と「lard(脂肪)」に分解するなど、彼女特有のウィットに富んだ言葉遊びをグラフィックとしてウェアに落とし込み、言葉を身体でまとう新しい経験へと変換している。二人目は、かつてキウリ率いるディオールのランウェイも歩いたアーティスト兼アスリート、サグ・ナポリ(SAGG Napoli)である。「Rooted but not stuck(根ざしているが、とらわれていない)」といった力強いメッセージを、フットボールスカーフやTシャツにデザイン。集団への盲目的な服従や自己犠牲を良しとせず、自立した個人の絆としての新しい「シスターフッド(女性同士の連帯)」のあり方をストレートに表現した。

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 そして、フェンディのアイデンティティであり真髄であるファーに対しては、「Echo of Love(エコー・オブ・ラブ)」というアプローチを提示。クローゼットの奥に眠る毛皮製品を熟練の職人の手で解体し、現代的なフィット感とボリュームへと再構築する試みである。衣服を「記憶のアーカイヴ」として再評価し、ユーザーにとって長期間にわたり深い意味を持ち続ける「感情的な耐久性」を高めるこの取り組みは、天然資源を保全する循環型経済への貢献であると同時に、オートクチュールの精神に通じる職人技の証明でもある。

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 「ワードローブは身体の欲望を支配するのではなく、それを受け入れ、寄り添う」。キウリの言葉通り、本コレクションは衣服を日常生活に不可欠なものとして捉え直す試みであった。マリア・グラツィア・キウリが古巣で放った第1弾は、メゾンの輝かしい歴史と職人技への深い敬意、そして現代を生きる「私たち」への力強い連帯のメッセージに満ちた、極めて格調高い幕開けとなった。

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

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