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フランス発フレグランスマガジン「Nez」がおくる香料辞典:Vol.3 ウード

ウードの香料のイメージ

Image by: Nez

ウードの香料のイメージ

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ウードの香料のイメージ

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 盛り上がるフレグランスカルチャー。ショップやイベント、日本に上陸するブランドが続々と増え、自分の好きな香りや気になる香りを見つける人も少なくないはず。ブランドの歴史や香りの種類、まとい方などさまざまな情報が発信され、少し詳しくなってきた人もいると思います。そこで、フレグランスについて、“ちょっと詳しく知りたい”人向けに、香りの元となる「香料」について特集。フランス発のフレグランスマガジン「ネ(Nez)」(以下、ネ マガジン)の協力を得て、奥深い香料の世界を、全3回の短期連載でお届け。産地や香料として使うための加工・製造、そこに携わる人たちの話など、少しニッチな内容も。最終回は、高級香料のひとつ、ウードについて。

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(出典:Nez)

「液体の金」と呼ばれるほど貴重なウード

 ウードは、フレグランス香料の世界では「液体の金」として知られています。その希少性と世界的な需要の爆発的な増加により、市場で最も高価な天然原料のひとつとなっているのです。香りで神秘と熱狂を伝えるこの豪奢な成分は、強い嗅覚的個性を備え、熱狂は衰える気配を見せません。

ウードの正体は、菌に感染することで生まれる樹脂

 ウード(アラビア語名で、英語ではアガーウッド)は聖書にも言及され、アジアやアラビア半島では昔から燻煙やノンアルコールの混合物として使用されてきました。現在では、特に中国の投資家たちが収集用の希少なピースに投資し、価値を見出しています。また、中東の香水産業でも非常に高く評価され、強い原料を好むこの地域でウードは重宝されています。

 ここ15年ほどの間に、西洋の香水界もこの豊かで多面的な成分に魅了されました。ウードは本物志向や異国情緒を演出するために用いられていますが、その香りの多様性により、広告的表現、東洋的な影響に触発された自由な創作、本物のウードオイルを実際に使っているフレグランスの区別は難しくなっています。

 ウードの香りは、ウッディ、レザー、ハチミツ様のノートから、動物的で汚れたような、あるいは凝乳臭(ロックフォールチーズのような香り)まで幅広く、西洋の嗅覚には強烈に感じられることもありますが、中東では非常に人気です。

 ウードは「アクイラリア」という木から始まります。これはアッサム(現在のバングラデシュを含む地域)原産で、今では東南アジア一帯に広がっています。クラスナ種とマラッケンシス種は、フィラオフォラ・パラジティカという菌に感染すると香りのある樹脂を分泌します。この樹脂を含んだ木がウードと呼ばれるのです。

 サンスクリット文献にも登場することから、ウードの蒸留は西暦1000年頃には始まっていたと考えられています。アッサムではアクイラリアは非常に貴重で、1本の木が代々受け継がれることもありました。伝統的には、森林の中で傷のある木を病気とみなし伐採していましたが、後には釘を打って人工的に感染させ、樹脂を作るようになりました。

 こうした方法は収益性が低く、20〜30年前から植林による栽培が主流に。ウードの栽培には市場の即応性に合わないほどの忍耐が必要とされます。アッサムのシレット地方では、香料会社大手のフィルメニッヒ社が「ジャラリ・アガーウッド」という家族経営の企業と提携し、約90ヘクタールに50万〜60万本の木を植え、アッサム産ウード特有の複雑でウッディかつハチミツのようなオイルを生産しています。

 一方、ベトナムやラオスのウードは、チーズに似た、より力強くレザー調のプロファイルを持ちます。アッサム産ウードは現在、地理的表示の登録が進められ、何十年にもわたる時間と厳格な伝統が生み出す価値を持っています。

 菌の感染には非常に長い年月がかかり、10年未満の木から得られるエッセンスは、年配の木から採れるそれとは比べ物になりません。伝統的な方法では釘を打ち込み、約40年後に伐採されます。

 伐採された木はまず丸太にされ、樹脂の濃度に従って分類。その後、蒸留前に細かく砕かれ、数週間水に漬けてマセレーションを行い、香りを引き出します。

 フィルメニッヒの天然素材調達責任者ドミニク・ロック氏によると、健康なアクイラリアの木にも固有の香りがあり、それは脂っぽく酸味のあるチーズ(ヤギチーズ)のようで、調香師はこのノートを「biquette(ビケット=子ヤギ)」と呼びます。

 感染した木材はさらにウッディやレザー調の強弱を持ち、熟成期間の長さによって香りの複雑さも変わってきます。そのため、産地、品種、木の年齢、樹脂の濃度が香りの完成度に大きく影響し、ウードは非常に幅広い嗅覚的表現を持つ素材となっています。

 フィルメニッヒの調香師ファブリス・ペレグラン氏は「ウードは生き生きとして多面的なキャラクターを持ち、ウッディノートのパレットに多くの彩りを与えてくれる」と語ります。前述の「ヤギのようなノート」を持つウードは、西洋では取り入れにくいものの、東洋では不可欠な要素となっています。

ウードの香りを得る5つのステップ

  1. 栽培
    木を伐採した後、丸太にカットし、細断。一部は無傷のまま残され、収集家や燻煙用に販売されます。
  2. 感染
    自然界では毛虫が木に穴を開けますが、16世紀以降は釘を使って感染を促し、樹脂の生成を高めています。
  3. 樹脂濃度の分類
    木材は黒、茶、淡茶、白(健康な木)に分類。熟成期間によって香りの仕上がりが変化します。
  4. 抽出
    チップ状にされた木を蒸留し、ウードエッセンスを抽出してオイルに溶かします。価格は1キロあたり最大で3万5000ドル(約540万円)に達することも。インドネシア、ベトナム、カンボジア、ラオスが最大の輸出国です。

■ウードが香る、フレグランスセレクション

 フレグランスを文化的、芸術的な側面から捉えるネ マガジンが、ウードが特徴的に香るフレグランスをセレクション。

イヴ・サンローラン・ボーテ「M7 ウード アブソリュ」(2002年誕生:アルベルト・モリヤス、ジャック・キャヴァリエ)

おまけ:妄想香水劇場(The fantasy perfumery)

 Nezならではのフレグランスの夢のブティック「THE FANTASY BOUTIQUE」。フィクションの登場人物たちが、ある日、現代の香りを求めてフレグランスブティックの扉を開けたとしたら?コンサルタントが物語の舞台やキャラクターの性格、スタイルに合わせた香りを提案します。今回は、1956年のニューヨーク、日付は11月3日。お客さんは、世界で最も著名な芸術家のひとり、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)が訪れました。

 最近、私たちはあなたが映画「ピカソ 天才の秘密」で創作する姿を拝見しました。作品の中であなたは、あなたは「画家になりたかった。でもピカソになった」とおっしゃいましたね。
 そして今日は、ピカソのための香水を。あなたの天才にふさわしい香りをご提案します。ムッシュー、私があなたにご提案するのは、「カーナー バルセロナ(Carner Barcelona)」の「メガリウム(Megalium)」です。これは熱き血潮を持つ香りです。香りの中心には、威厳あるシナモンが力強く香り、とても明快で具象的。ですが、描き方は決して常識的ではありません。ペイストリーのような甘さは皆無で、魅惑の旋律はすぐにホワイトペッパーの野性味にかき消されます。獣のように、いや、闘牛士に突進する雄牛のように。そしてそのシナモンは、熱く鋭いチリペッパーによって変貌し、姿をゆがめていきます。しかし、奇跡のようにそのシナモンはすぐさま色彩を変えるのです。もはや茶色ではなく、バラ色へと。この炸裂的な香りの構成に反して、バラが香りに意外なひねりをもたらします。それは開かれた、無防備な誘惑そのもの。フローラルで、アプリコットのようでもあります。背景には、乳香とミルラの樹脂が静かに香り、この香りにミノタウロスのような熱く筋肉質な生命感を与えています。ユニークで、誇り高く、そして奔放。メガリウムを纏ったその瞬間、ヴィルトゥオーゾは天上へと突き抜けるのです。

最終更新日:

香りと嗅覚をテーマとする定期刊行雑誌。科学論文、インタビュー、調査、批評など、香りを中心に据えたユニークな内容で、“鼻”を使って世界を探求する助けとなるようなコンテンツを紹介している。2024年に、ニッチフレグレンス専門ショップ NOSE SHOPが日本語版の版権を取得。フレグランスや香水業界の動向、プロダクトレビュー、芸術遺産の提唱といったさまざまな分野の深い洞察を掲載している。

Crédit photo : Julien Lévy / Illustrations flacons, Crédit : Atelier Marge Design / Boutique imaginaire, Crédit : Clément Charbonnier
November 2017 © Nez
Japanese translation rights arranged with Agence Deborah Drubathrough Japan UNI Agency, Inc.

(企画編集:平原麻菜実)

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