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「ザ・リラクス」デザイナーの視点から紐解く、デザインの裏側【A2ジャケット】

「戦わなくていいミリタリー」という発想

リラクスのA2ジャケット

リラクスのA2ジャケット
リラクスのA2ジャケット

 「ザ・リラクス(THE RERACS)」とセレクトショップ「ワンエルディーケー(1LDK)」、「F/STORE」によるコラボシリーズの第6弾が10月24日に発売されます。コラボコレクションのリリースに際し、「ザ・リラクス」ディレクターの倉橋直行さんとデザイナーである倉橋直実さんに、それぞれのアイテムの魅力を解説してもらいました。今回は、「ザ・リラクス」のコンセプトである「スクラップ&ビルド」を体現したA2ジャケットに着目し、モチーフになったアイテムや“最大公約数を叶えた”というシルエット、さらには別注のポイントまで多岐にわたる内容をお届けします。

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ミリタリーだからではない、A2ジャケットをモチーフにした理由

リラクスのジャケット


リラクスのジャケット


 「ザ・リラクス」はミリタリーをモチーフにしたアイテムを展開しているブランドだと思われがちですが、実はそうではありません。スポーツでもミリタリーでもアウトドアでも、カテゴリーはなんでもいい。特定のデザイナーがおらず、必要性に迫られて自然に進化してきたものである「アノニマスデザイン」が、私たちのクリエイションの出発点になっています。今回紹介するA2ジャケットも、「ザ・リラクス」の定番として知られるハリントンジャケットも、誰かひとりのデザイナーが生み出したものではなく、機能と実用の積み重ねによってその形になっていった。作者が誰かは分からないけれど必要性に迫られて進化してきたアイテムに惹かれ、私たちはモチーフに採用しているのです。

 例えば、グルカパンツもその典型です。もともとは英国の兵士が着用していた機能的なトラウザーズが起源でありながら、今や国内外のブランドが定番として取り上げ、広くファッションシーンに定着し、歴史が服として生き続けている。その点に、「ザ・リラクス」がブランド設立当初からグルカパンツを展開してきた理由があり、A2ジャケットも同じ文脈の中にあります。私たちはそうしたアイコンが積み上げてきた文脈を正面から受け止めたうえで、素材やシルエット、デザインをアップデートしていくことでブランドらしく現代的に仕上げているのです。

コンセプトは「戦わなくていいミニタリー」

リラクスのジャケット
リラクスのジャケット
リラクスのジャケット
リラクスのジャケット

 A2ジャケットを製作するうえで、私たちはまず既存の仕様を徹底的に理解するところからスタートしました。アイコニックなデザインだけではなく、脇行きの縫い代やアームホールの処理、ポケットの袋布、留め裏の補強布、裾のステッチ幅、ドットボタンの位置などの細部にわたりそのすべてを一度頭に叩き込みました。ただし、実際にデザインをする時にはそれらを引用しない。なぜなら既存の仕様は大量生産のために最適化されたものだからであり、私たちの仕事はこれらのディテールをもとに、最も相応しいベストの設計を選んでいくことにあるからだと考えているからです。

リラクスのジャケット
リラクスのジャケット

 この文脈から言うとA2ジャケットは、ほとんどが新しい設計と言っても過言ではありません。ポケットフラップの形状やリブといった象徴的なディテールはリスペクトを込めて残しつつ、エポレットなど現代では不要なディテールは削ぎ落としています。アイテムのコンセプトは「戦わなくていいミリタリー」。かつての貴族のように、肉体で戦う必要のない現代のエリートが身に纏うブルゾンをイメージして製作しています。本来は防風性のための分厚い革で作られていたものを、上質な素材で柔らかく、かつ美しいシルエットに仕立てる。アイコン的なディテールは残しつつ、不要なものは削ぎ落とすことで「ザ・リラクス」のテーマである“スクラップ&ビルド”を表現しています。

“最大公約数”を実現したフリーサイズのシルエット

リラクスのルック

Image by: THE RERACS

リラクスのルック

Image by: THE RERACS

 今回の別注においてはメンズ・ウィメンズともにフリーサイズで展開しています。「ザ・リラクス」の設計には、さまざまな体型の方にフィットする「最大公約数」のような考え方があり、それはバストの寸法をある理論に基づいてコントロールすることで、小柄な方から大柄な方まで誰が着てもはまるようなパターンのことです。ただ大きいだけだとだらしなく見えますが、肩やアームホール、袖のパターンとのバランスを緻密にコントロールすることで、フリーサイズで体型や性別問わず綺麗に見えることを可能にしています。

 メンズとウィメンズも単にサイズを調整するのではなく、パターンごと変更を施しています。共通しているのは「ジャストサイズに近いセミドロップオーバー」という方向性。胸周りやアームホールは現代的なシルエットに合わせながら、肘から袖口にかけてのパターンはあえてクラシックに設計することで、そのコントラストが、A2ジャケットの独特な雰囲気を作り出しています。リブは締め付けが強い小丸リブを使用し、袖口側を大きくすることで、袖を細くせずともヴィンテージらしいたまりとボリュームを生み出しているのも特徴の一つです。

別注カラーに変更された、ブランドオリジナルのテキスタイル

リラクスのジャケット

 生地には、インラインでも使っているライトメルトンを採用しています。ライトメルトンとは、メルトンとフランネルの間を狙ったブランドオリジナルのテキスタイルです。一般的なメルトンは重厚すぎて日常使いには向いておらず、一方フランネルは軽やかですが、アウターとしての仕立てには耐えられない。メルトンは約700g前後、フランネルは厚くても500g程度ですが、このライトメルトンはその中間である約600gをピンポイントで狙い、製作しています。

 この生地の原型は、某メゾンブランドが開発したメルトン地にあります。カシミアに近い繊維長を持つスーパー140'sのウールを使用し、しっかりとした厚みがありながらも柔らかくしなやかな質感を実現したその生地は、ブランドを象徴するテキスタイルとして高い人気を集めていました。高級感がありエレガントな反面、ケアが難しく、日常的に着用するには少し気が引けてしまう。そこで私たちはこの点に着目し、質の高い原料はそのままに、毛玉が起きにくいよう糸の設計や縮絨工程を独自に進化させました。通常の倍近い工程をかけることで、高級感のある光沢と綺麗なハリを残しながら優れた耐久性も実現し、デイリーに気兼ねなく着用できるようにアプローチをしています。軽やかでありながらアウターとしての重厚感もしっかりと漂う、まさにA2ジャケットに理想的な生地です。

リラクスのジャケット

 「ザ・リラクス」と「1LDK」、「F/STORE」が手がけるトリプルコラボシリーズから登場したA2ジャケット。フラップポケットや袖先のリブ、大きめの襟元など、モチーフに則った象徴的なディテールを引用しながら、ミニマルなデザインで構成することで「ザ・リラクス」らしいモダンな印象に。ブランドオリジナルのライトメルトンで仕立てられ、軽やかでありながら上質なムードを漂わせる。

 ウィメンズサイズは、A2ジャケットをモチーフにした無骨なディテールはそのままに、襟元にボアをあしらうことでエレガントな佇まいへと昇華。艶のあるライトメルトンとふんわりとしたボアの素材感のコントラストを楽しめ、さらにボアは取り外し可能なので合わせるアイテムやシーンを選ばず、幅広いスタイリングで重宝する。

最終更新日:

宮﨑涼司

Ryoji Miyazaki

FASHIONSNAP 編集記者

神奈川県出身。立教大学経済学部卒業後、アパレルメーカーに入社し、国内のファクトリーブランドのバイイングやEC運営を経験したのち、2023年にレコオーランドに入社。現在はF/STOREの販促コンテンツをメインに担当している。

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