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工業の合理性と工芸の執念の間で紡ぐニット、「ウメダニット」が手掛ける2つのブランド

 国内有数の産地として知られる新潟県五泉市に拠点を置くニットファクトリー、ウメダニット。1961年の会社設立以来、高級婦人服を中心に、パターン、縫製、ニッティング、テキスタイル開発までを手がけ、その高い技術力と優れた品質で国内外で評価を獲得。2012年には、当時はまだ数少なかったファクトリーブランドの先駆けとして「WRAPINKNOT(ラッピンノット)」を始動。現在はそのDNAを進化させた「UMEDA(ウメダ)」と「PURLAM(プラム)」の2ブランドを展開し、ファクトリーブランドらしからぬ洗練されたブランディングで、都内を中心としたセレクトショップにて取り扱いが広がるなど、年代や性別問わず人気を集めている。今回はF/STOREでのポップアップの開催に伴い、代表の梅田大樹氏に、会社の歴史や産地が抱えている課題、2つのブランドの展望を聞いた。

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代表取締役兼ディレクター 梅田大樹

1980年生まれ新潟県五泉市出身。青山学院大学を卒業後、大手アパレルに入社。商社での勤務を経験し、2007年にウメダニットに入社。2012年には自社ブランドである「ラッピンノット(WRAPINKNOT)」を始動し、のち「ウメダ(UMEDA)」と「プラム(PURLAM)」を立ち上げる。

祖母の風呂敷から始まった歩みと、国内回帰

── まずは、ウメダニットの歴史について教えてください。

 起源は戦後、僕の曾祖母が始めた商売です。布や編み地を鍋で煮出して色をつけ、風呂敷に包んで新潟から会津若松へ向かう路線沿いを行商していました。毎朝たくさんの商品とともに出て夕方には空にして帰ってくる姿を見て、祖父がビジネスとして立ち上げたと聞いています。設立当初は肌着に近いジャージなどを生産していましたが、1970年代から大手アパレルとの取引が始まったことをきっかけに、ニットを使った洋服の仕立てを学んだことをきっかけにメーカーへと変化していきました。

梅田大樹

── 一般的なニット工場とは異なり、早くから縫製ラインまで内製化していたそうですね。

 通常のニット工場は編み機、洗い、リンキングが中心で、裁断や縫製は専門の縫製工場が担います。しかし、ウメダニットでは社内で洋服として完結できるよう、早い段階からパターン設計、裁断、縫製のラインを確保していました。1970年代後半から1980年代にかけては、布帛とのドッキングや複雑な仕立てにも対応できる「オールマイティな縫製工場」として拡大していきました。

── 一時期は海外生産も行っていたそうですが、なぜ国内生産に絞ったのでしょうか?

 バブル後の1990年代後半から縫製の仕事がアジアへ流れ、ウメダニットでも中国に直接管理する工場を構えました。自分たちで現地に赴き指示や検品を行っていましたが、工賃が上がる一方で品質は思うように上がらず、結局日本で手直しすることが増えてしまったんです。それなら社内と国内の協力工場だけで本当にいいものを作ろうと、2010年に海外生産をやめ、国内一貫体制へと舵を切りました。

梅田大樹

ものづくりの理念と4つの柱

── 全社の理念として掲げる「工業の合理と工芸の執念」には、どのような想いが込められていますか?

 工場の現場は日々の生産ノルマと戦っています。そこにミリ単位の細部を求めるのは、本来なら相反する要求です。ですが自社ブランドを手がける中で、そうした細かなこだわりがお客様に届き、喜ばれる場面を職人たち自身が目の当たりにしました。ニットは毎回コンディションが違い、色が変わるだけでも扱い方が変わるため、決まりきった正解はありません。だからこそ「できない」ではなく「こうしたらできる」と工夫する。ウメダニット全社として、その姿勢を大切にしていきたいという想いが込められています。

ニット

──ものづくりの指針として、パターン・縫製・ニッティング・テキスタイルの4つの柱を掲げています。

 「オールマイティな縫製工場」と認知されていた時期もありますが、「なんでもできる」ということは、平均点が落ちることに近いと思っていました。「ウメダニットの特徴は?」と聞かれて曖昧になっていた部分を突き詰めた結果、この4つに集約しています。

──ニットにおけるパターンの必要性について、意外と考えたことなかったです。

 自社内にパタンナーがいるというのは、かなりユニークなスタイルだと思います。ニットは平面的になりがちで、前身頃と後ろ身頃、左右の袖がほぼ同じというのが業界のスタンダードですが、本当にそれでいいのかと考えました。加えて、僕自身体が大きいということに対してコンプレックスがあり、すっきり見せたいという思いが常にあったのも、パターンに注目するようになったきっかけです。

梅田大樹

──続いて、縫製はニットにおいてどう関わってくるのでしょうか。

 美しい縫製は、パターンがあってこそ成り立つものです。緻密に設計されたパターンを基にしているからこそ、リンキングに近い、細い縫い代でいかに美しく縫い上げるかを追求することができており、その点で高い評価いただいています。時間がかかっても美しい始末を追求できる技術があることは、オールマイティな縫製工場としての歴史があるからこその完成度であり、大きな武器です。

──ニッティングでは、どんな点が特徴でしょうか。

 ウメダニットでは、ハイゲージで目が詰まった重厚なニットを強みにしています。目が詰まっている方が毛玉になりにくく、型崩れもしにくい。近年は軽さやコストを重視して甘く編み、ワンシーズンで終わってしまう服も増えましたが、ハイゲージに誇りを持って生産しています。

梅田大樹

梅田さんが着ているのは「ウメダ」の16Gカーディガン

──ローゲージが主流とされている近年の潮流とは真逆ですね。

 ハイゲージのニットは、ある程度洋服に対する知識がある人にしか響かない商材だと言われてきましたが、一方でイタリアをはじめとした海外ブランドのニットを買ってきた目の肥えた方は触っただけで良さを理解してくれますし、そうしたものに憧れる若者も増えてきている。ハイゲージのニットは目の詰め方、素材の番手、適度な肉感の「三位一体」が何より大事です。薄すぎて体に張り付くニットは体型を選びますが、ウメダニットが製造しているものは適度な弾力と厚みを持たせているので、体のラインを拾いにくい。自分自身が気持ちよく着られるものを作れたことも、大きな手応えになっています。

五泉の強みと、産地が直面するリアルな課題

── ニット産地として、五泉ならではの強みはどこにありますか?

 カットソーなどに使われることが多い丸編みが中心の和歌山や、ローゲージが得意な山形に対し、五泉は「ハイゲージの緻密さ」と「高度な縫製力」が武器です。自然環境にも恵まれていて、阿賀野川と早出川の軟水を使うことで、仕上げの洗いの際に繊維がふっくらと仕上がります。雪国特有の湿度が静電気を抑え、繊細な糸を傷めずに編み立てられる点も地域ならではの特徴です。

梅田大樹とニット

── 一方で、産地が抱えている課題は何でしょうか。

 何よりも現場を動かし続ける「継続的な仕事」の不足です。世間では「国内生産比率は1%台だから希少価値がある」と言われますが、実際に現場を潤すほどの仕事量は入ってきていません。価格勝負では海外に敵いませんし、国産で作っても売れなければ仕事が途切れてしまうのが現実です。

 加えて、作り手と発注側の両方で人材の課題があります。地方の工場では若い担い手が不足していますし、アパレル側も少人数化が進み、服の構造を理解したデザイナーが減っています。写真だけ送られてきて「仕様書もそちらで作ってください」という丸投げの案件も増えました。服に本気で向き合う人間が業界全体で減っていることには、強い危機感を抱いています。

梅田大樹の手元

「ラッピンノット」から、「ウメダ」と「プラム」へ

──産地が抱えている課題に反して、ウメダニットには服が好きな若い人材が集まっている印象です。

 僕が入社した当時は、取引先も聞いたこともないようなブランドばかりで、この先何十年もこれが続くのは厳しいと感じていました。「自分たちが作った」と胸を張れるブランドがなければ、志のある若い人が入ってきても辞めてしまう。名前の通るセレクトショップと直で取引できるブランドを立ち上げれば、服が好きな人が集まるのではないかと考え、「ラッピンノット(WRAPINKNOT)」をスタートしました。

ラッピンノットのルック

「ラッピンノット」ファーストシーズンである2012年秋冬のルック

ラッピンノットのルック

「ラッピンノット」ファーストシーズンである2012年秋冬のルック

──2012年というと、ファクトリーブランドという存在自体が世の中に浸透していなかったのでは?

 そうですね。僕らがブランドを始めたときも、当時はまだ前例が少なかったこともあり、会長である父からは「他社や取引先から文句を言われないか」と心配されました。実際に風当たりを感じる場面もありましたが、自分たちの技術を世の中に直接届けるためには必要な一歩だったと今では思っています。その結果として、この10年で新潟出身の意欲的な作り手がうちを選んでくれるようになり、明確な手応えを感じています。

──そこから2022年には「ウメダ(UMEDA)」、2025年には「プラム(PURLAM)」を立ち上げています。

 「ラッピンノット」は「なんでもできるウメダニット」を武器にスタートしましたが、時代が進むにつれてシャツやパンツの専業ブランドが台頭し、器用さだけでは埋もれてしまう危機感がありました。そこで根本的な見直しを行い、ウールの吸放湿性や消臭性に再び着目し、上品なジャージ素材を使用する「ラッピンノットウールウェア(Wrapinknot wool wear)」へとリブランディングを行いました。そして2022年には定番を追求する「ウメダ」を立ち上げ、パターンとデザイン性を極限まで研ぎ澄ませた新たなブランドとして2025年に始動させたのが「プラム」になります。

──まずは「ウメダ」のコンセプトを教えてください。

 「ウメダ」は「10年着られるニット」をコンセプトに掲げています。10年は必ず着られるクオリティで作るので、愛着を持って着て続けてもらいたい。それはすなわちユーザーと作り手が共存していくブランドを目指しています。ターゲットは、20代から60代までの幅広い男女を想定しています。品と知性を兼ね備えた大人の方はもちろん、そうしたカルチャーに憧れる感度の高い若い層にも届けていきたいと考えています。

「「ウメダ」2026年秋冬のルック
「「ウメダ」2026年秋冬のルック
「「ウメダ」2026年秋冬のルック

「ウメダ」2026年秋冬のルック

──10年にした理由はありますか?

 トレンチコートのような布帛と違い、ニットとしてのリアルな耐久年数を見据えているからです。ちょうど自分が40代になり、会社が60周年を迎えたタイミングで、まず地に足のついた10年を提示しようと決めました。

──シグネチャーアイテムについて教えてください。

 「10年着られる」というコンセプトを掲げているからこそ、ベーシックなアイテムを追求しています。ブランド立ち上げ当初はクルーネックとカーディガンの2型を展開し、のちハイネックも加わり、今では「ウメダ」の定番として定着しました。それぞれアイテムのデザイン自体は変えず、7、12、16というゲージ違いを揃えているのが特徴です。

ウメダのニット
ウメダのニット
ウメダのニット
ウメダのニット
ウメダのニット
ウメダのニット

──ゲージで選ぶという感覚は新鮮ですね。素材はウールのみ?

 そうですね。定番ラインは山形の佐藤繊維さんと作ったウール糸を使用しています。カラーはグレー、ネイビー、ブラック、モカの4色を展開。特にグレーは、誰もが持っているデニムやチノ、白シャツに馴染むよう、わずかに黄みがかったトップグレーに仕上げたこだわりの色です。

──さりげないディテールが目を惹きます。

 袖の線の本数はサイズ表記で、0本がXS、1本がS、2本がM、3本がL、4本がXLです。ニットでは珍しく右袖と左袖があるので、作る人も間違えず、店員さんもサイズがすぐ分かる。作る人と着る人の両方に向けた、ちょっとした遊び心です。ちなみにタグもニットで作っています。織りタグは角が肌に刺さることがあるので、同じ糸で本体を編み、そこに刺繍するのを思いつきました。

梅田大樹の手元
ニット

── パッケージにもこだわっているのだとか。

 “オールメイドイン新潟”にこだわり、着物のたとう紙のようなパッケージを県内の老舗製造元で作っていただきました。中にはブランドの歩みやケア方法、ゲージごとの編み地グラフィックを刷り込んだストーリーカードを同梱しています。単に服を売るだけでなく、手仕事の品格と工場の想いを届けるための仕掛けです。

パッケージ
パッケージ

──続けて「プラム」はいかがでしょうか?

 「ラッピンノット」を見直す中で、自分たちの最大の強みは「ニットなのにテーラードのようにパターンまでこだわること」だと再認識しました。ニットブランドが増えている今、パターンメイキングに特化して差別化を図ろうと、名前も新たにゼロからスタートしました。

「プラム」2026年秋冬のルック
「プラム」2026年秋冬のルック
「プラム」2026年秋冬のルック

「プラム」2026年秋冬のルック

──「ウメダ」と比較するとファッション性を感じさせます。

 「ウメダ」が普遍的なプロダクトだとすれば、「プラム」はよりモードでデザインコンシャスです。トゥーマッチな要素を削ぎ落としながら、着用者を美しく見せるシルエットを追求。品のよさや、やりすぎないエレガンスを軸に、大人の色気が漂うようなアイテムを打ち出しています。

──テーラリングに精通したパタンナーが関わっているそうですね。

 社内のメンズパタンナーを中心に、テーラードジャケットやドレスシャツの構造をニットに落とし込んでいます。外部のPRにも入ってもらい、共に作っているということも完成度を高めていくための重要な要素。社内だけだと「このくらいでいいか」と甘えが出がちですが、外部の厳しい視点が入ることで良い緊張感が生まれ、ブランド全体として統一された世界観を打ち出せていると思っています。

──鮮やかなカラーリングも特徴です。

 品のよさ、やりすぎないエレガントさがコンセプトにあります。若い人は何を着ても様になりますが、僕らより上の世代の大人でも素敵に見えるものを意識しているので、華やかに見えるようなカラーリングも採用しています。

「プラム」2025年秋冬のルック

「プラム」2025年秋冬のルック

「プラム」2025年秋冬のルック

「プラム」2025年秋冬のルック

──「プラム」が掲げているシグネチャーは?

 ウールとポリエステルを高密度に撚り合わせたオリジナル糸を使い、編み立てが非常に難しい両畦編みで仕立てた「FCRシリーズ」です。毛玉になりにくいので気負わずデイリーに着用でき、パターンを活かす立体的なボリューム感が特徴です。

──同シリーズの中でも人気なアイテムを教えてください。

 ボリュームのあるモードな佇まいのハイネックと、ニットなのにスラックスのようにきれいなシルエットを描くボトムスが人気です。ニットパンツは脇に縫い目がなく、履くと筒のようにストンと落ち、どこから見ても美しいシルエットで、特に男性から根強い支持を獲得しています。

プラムのニットアイテム
プラムのニットアイテム
プラムのニットアイテム
プラムのニットアイテム
プラムのニットアイテム
プラムのニットアイテム

──自社でのリペア対応も行っているそうですね。

 ニットのリペアは手間がかかるため、一般のお直し店では断られることも多いと聞きます。それなら作った自分たちが直そうとリペア対応をスタートしました。自社工場だからこそ、同じ糸や近い組織で直すことができる。窓口を明確にしてからご相談が非常に増えており、長く大切に着たいというお客様の想いを実感しています。

──最後に、2つのブランド、そしてウメダニット全体の展望をお聞かせください。

 「ウメダ」は、道具としての完成度をどこまで高められるか。飽きられない定番として磨き続け、パッケージを含めたこの世界観で海外にも挑戦したいです。一方「プラム」は、ニットとジャージの枠を超えた素材開発とパターンワークをさらに先鋭化させ、モードの領域で存在感を高めていきます。そして会社全体としては、OEMとブランドの売上の比率を半分まで持っていくことが目標です。自社ブランドでしっかり利益を生み出し、現場の職人たちの待遇向上や設備に還元する。そうして産地に誇りと好循環が生まれれば、次の世代を担う若い作り手が入ってきてくれます。五泉の技術を未来へ繋ぐため、これからも合理と執念を両立させたものづくりを続けていきたいです。

最終更新日:

宮﨑涼司

Ryoji Miyazaki

FASHIONSNAP 編集記者

神奈川県出身。立教大学経済学部卒業後、アパレルメーカーに入社し、国内のファクトリーブランドのバイイングやEC運営を経験したのち、2023年にレコオーランドに入社。現在はF/STOREの販促コンテンツをメインに担当している。

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