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連載ふくびと「カワイイを世界へ」6%DOKIDOKI代表 増田セバスチャン

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 僕は、そんな子達や現象を、とにかく見て会って生の声を聞いてみたいと思いました。今も続く「ワールドツアー」では、必ず現地でモデルを募集して、ワークショップをしながら1つのファッションショーを作り上げます。そして、文化を言葉で伝えるトークショーをセットにして開催。ビジュアルだけではなく、言葉できちんと説明して伝える事も大切で、海外では言葉の壁があっても、先入観がないぶん、より意見を伝えることができます。原宿が持っていた先進性や日本のカルチャーを、世界へきちんと伝え、広めることで、巡り巡って日本人が誇りを取り戻して欲しい。「日本人の感覚のまま世界で通用するということを知ってほしい」という意味も込めて、各国を巡っています。

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4万人の観衆が押し寄せたサンフランシスコ公演のステージ

 海外でフランス人だったら「ミニョン」、英語話す人だったら「cute」と言えばいいものを、彼らはなぜ「kawaii」という言葉を使いたがるのか。それについて僕は、大人が使わない子供だけの持つ感覚から表現された言葉として、いわゆる若者言葉の暗号として広がっていったということもあるのではないかと思っています。 僕が考える「カワイイ(kawaii)」の定義は、自分だけの宇宙を創って、その中に自分の世界観を閉じ込めて愛でること。これは日本人が古来から持つ繊細な感覚で、「侘び寂び」にも近い。いわゆる日本人が元々持っている感覚に基づく感嘆符なんです。極論で言えば、その感覚の大元は「母性」だと思っています。


「カワイイ」が救う原宿と世界の未来

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、原宿の人並みも途絶えさせた。増田は、原宿にいる自分たちが出来ることとして震災3日後、原宿を元気にすることで日本の復興支援に繋げるプロジェクト「MIGHTY HARAJUKU PROJECT(マイティハラジュク プロジェクト)」を発足。現在その活動は世界中に派生し、原宿の地域プロジェクトの1つとしても動き出そうとしている。4月には、プロジェクトと共に「ワールドツアー」の続きとしてロサンゼルス、シアトル、そしてカナダ・バンクーバーへ。原宿のリアリティから平和を導くべく、日本独自のカルチャーとしての「原宿」「kawaii」を世界に広げる活動を続けている。

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 島国に住む日本人は、外国に対する憧れやコンプレックスが強いですよね。しかし僕が世界の各都市を廻った時に感じたのは、日本独特の繊細な感覚が必要とされているということでした。 日本人はもっと誇りを持った方がいい。この国ならではの感覚がもっと世界に広がれば、もっと豊かに平和になるはずです。

 誤解して欲しくないのですが、僕は「6%DOKIDOKI」のファッションを世界に広めたいと思っているわけではありません。世界に伝えたいのは、「原宿」の自由なスピリッツや「kawaii」という日本独自の繊細な感覚。つまり、日本のポップカルチャーなんです。これは、原宿の若者やストリートに溢れていたエネルギーを元に生まれた小さな現象が、やがて世界に波及し、日本を代表するカルチャーとなって発展を遂げていったという、世界にもあまり例のない素晴らしい文化だと思っています。

 3月11日に発生した大地震は、一気にたくさんのものを奪いました。でも若い世代が持つエネルギーは、いつの時代もどの国でも不変で、必ず大きな力を持っています。その矛先が、争いではなく文化的拡張に向かって、新しいものを生み出すクリエイティビティになって欲しい。そうすればきっと文化や感覚が豊かに育ち、平和な世の中に近づくのだと、僕は信じています。


■増田セバスチャン■
6%DOKIDOKI代表 / 作家、アートディレクター

hukubito-masuda_06_02.jpg1970年生まれ。
1994年まで演劇、現代美術の世界でパフォーマー、スタッフとして活動し、1995年に表現の一環としてショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。
 原宿、Kawaiiカルチャーの第一人者として執筆、講演、雑誌・TVでのコメントも多数。
2005年よりジャンルを超えた自由な発想の舞台表現「ヴィジュアルショー」シリーズを開催。
2009年よりファッションショーとトークショーイベントのワールドツアー「Harajuku Kawaii Experience」を開催。2010年は原宿、パリ、ロンドン、LA、サンフランシスコを周り、サンフランシスコではステージに4万人が集まった。
2011年、自らの幼少期からショップオープン当時の様子、ワールドツアーなど行う理由などを独自の世界観で描いた初の著作「家系図カッター」を角川グループパブリッシングから発売。

■増田セバスチャン:公式サイトブログ


〜インタビュアー・インプレッション〜
 増田氏の著書「家系図カッター」がノンフィクションだと知った時には、まず驚かずにはいられなかった。これを読むと、増田氏のショッキングな生い立ちからカリスマショップの裏側、そしてリアルな原宿の変節を知る事が出来る。「6%DOKIDOKI」のカラフルな雑貨や服にはどこか毒々しさが漂っているが、それはファッションの歴史的な文脈とは異なる日本独特の「カワイイ」感覚から発祥したもので、アキバから生まれた「オタク」やアニメから生まれた「コスプレ」とも似て非なるものだ。「原宿」らしい感覚とも言える。震災後は、そんな原宿や日本を愛する各国の女の子達から増田氏の元に応援メッセージが寄せられているというが、日本のポップカルチャーの代表選手「カワイイ」カルチャーが、暗い世の中をカラフルに色付けする日は遠くないのかもしれない。

連載「ふくびと」一覧
設楽洋(ビームス代表取締役社長)
本間正章(マスターマインド・ジャパン デザイナー)
吉井雄一(ザ・コンテンポラリー・フィックス オーナー/ゴヤール ジャパンブランディングディレクター)
【前編】山室一幸(WWD JAPAN編集長)
【後編】山室一幸(WWD JAPAN編集長)
勝井北斗・八木奈央(ミントデザインズ デザイナー)
【前編】伊藤美恵(ワグ代表取締役兼エファップ・ジャポン学長)
【後編】伊藤美恵(ワグ代表取締役兼エファップ・ジャポン学長)
重松理(ユナイテッドアローズ代表取締役社長)
阿部千登勢(サカイ デザイナー)
ドン小西(コメンテーター)
増田セバスチャン(ロクパーセントドキドキ代表兼ディレクター)
藤巻幸夫(バイヤー)

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