(左から)BRHの恩地祥博代表、甲斐まりかさん、ノイハウス萌菜さん
Image by: FASHIONSNAP
SDGsが注目を集める今、ジュエリー業界でもサステナブルな商品開発が進められています。その一つとして「ラボグロウンダイヤモンド」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的にどういったダイヤモンドか知らない人も少なくないのでは?
そこで今回はラボグロウンダイヤモンドをホリデーコレクションで初めて取り入れたというD2Cアクセサリーブランド「グレイ(gray)」を展開するBRHの恩地祥博代表と、旧知の仲でサステナビリティへの関心が高いノイハウス萌菜さん、甲斐まりかさんを迎え、座談会を実施。ラボグロウンダイヤモンドについて考えます。
■恩地祥博
1994年⽣まれ。学生時代にTheRealReal JapanやFarfetch JapanにPRインターンとして参加。その後ニューヨークへ1年間留学し、ファッション⼯科⼤学(Fashion Institute of Technology)」でブランドマネジメントを学ぶ。同時期にニューヨークにベースを置くデジタルエージェンシー George Root Ltd.で稲⽊ジョージ⽒のアシスタントを担当し、ラグジュアリーブランドのPRコミュニケーションを経験。⼤学4年時にBRHの当時の代表からSkype1本で社⻑に任命され、代表取締役社⻑に就任した。
■ノイハウス萌菜
1992年生まれ。イギリス育ちのドイツ人と日本人のハーフ。 日本に引っ越してきてから周囲の「使い捨て」の多さに敏感になり、一人一人ができるところから変えていくべきだと感じ、プラスチックストローの代替品となるステンレスストローブランド「のーぷら No Plastic Japan」を設立。それ以来、環境保護を自分ごととしてとらえ、それぞれが無理なく日常に取り入れられる環境保護活動やそれに繋がる行動を提案し発信している。ラジオ局J-WAVE 81.3「STEP ONE」ナビゲーター。
■甲斐まりか
1995年生まれ。タイと日本のハーフ。 ドイツの中学・高校を卒業後、イギリス・エジンバラ大学へ進学。 2017年に大学を卒業後、日本でモデル活動をスタートする。 ビューティ・ファッション誌を中心にモデルとして活動し、近年では、女優やラジオのナビゲーターとしても活動の場を広げる。日本語、英語、ドイツ語のほか、フランス語やタイ語にも堪能なマルチリンガル。これまでに40ヶ国を訪れ、ファッションや旅の写真を載せた自身のインスタグラムも人気。 J-WAVE「BLUE IN GREEN」ナビゲーター。
―ラボグロウンダイヤモンドは「人工ダイヤモンド」や「合成ダイヤモンド」とも呼ばれていますが、天然ダイヤモンドとはどのような違いがあるのでしょうか?
恩地祥博(以下、恩地):天然ダイヤモンドは長い年月をかけて地中深くで生成されるのに対し、ラボグロウンダイヤモンドは名称に「ラボグロウン」とあるように、研究所などで同じ地質環境を再現させることによってダイヤモンドを人工的に作っています。
―甲斐さんとノイハウスさんはラボグロウンダイヤモンドをご存知でしたか?
甲斐まりか(以下、甲斐):最近ネットで記事になっているのを見たりする程度で、詳しくは正直知らなくて。でも母が宝石好きな人で、ラボグロウンダイヤモンドについて聞いたら、ラボグロウンダイヤモンドのジュエリーを持っていたんですよ。私は全部同じダイヤモンドだと思って見ていたから、今まで気付かなかったんですけど。
ノイハウス萌菜(以下、ノイハウス):私、実は婚約指輪がラボグロウンダイヤモンドなんですよ。
―そうだったんですね! ノイハウスさんが希望されたんですか?
ノイハウス:そうですね。彼には自分からは直接言わずに、妹に伝えてもらいましたけど(笑)。天然ダイヤモンド自体が種類によっては作られる過程で環境や人権的に問題があるというのをぼんやり知っていたので、いろいろ調べていく中でラボグロウンダイヤモンドの方が環境と人に負荷が少ないということで選択しました。
―「ラボグロウンダイヤモンドはサステナブルだ」と最近よく聞きますね。具体的にどのようにサステナブルなのでしょうか?
恩地:天然ダイヤモンドはラボグロウンダイヤモンドに比べて形成される過程で大量の土壌や水が必要であったり、炭素排出量も大きく異なると言われています。あとは天然のダイヤモンドは時に「ブラッドダイヤモンド」と言われるように採掘が原因で紛争が起きたり内戦が悪化したりしています。ダイヤモンドを人間の趣味嗜好品として使うために、僕らの知らないところでそういった問題が現実として起こっているんですよね。
ノイハウス:ダイヤモンドって生産地や生産過程が不透明なものが多いよね。
恩地:ラボグロウンダイヤモンドはトレーサビリティを担保できるのもメリットの一つだね。
―問題を大きくしないためにも、ラボグロウンダイヤモンドは必要な選択肢の一つと言えそうですね。研究所で作られるとのことですが、品質に関してはどうなのでしょうか?
恩地:そもそもダイヤモンド形成の環境が異なるだけなので構造は全く一緒で、ジュエリーの鑑定士でも見分けがつかないくらいだと言われています。ダイヤモンドのサイズ等によっても大きく異なるので一概に言えないのですが、需要も増えていて、取引価格が天然ダイヤモンドと変わらないくらいになっていると聞きます。
―ラボで作られているから、大量生産も簡単なイメージがありますが。
恩地:たしかに量産できそうなイメージを持たれがちですが、ジュエリーとして使える品質のダイヤモンドは、実は全体の中の35%程度しかないんですよ。それだけ生み出すのが難しく、何個も作れるというわけではないということを、今回ホリデーコレクションで使用したことで僕も初めて知りました。
MEMO:天然ダイヤモンドもジュエリーに使えるものは全体の20%程度で、同じく限りがあります。
―ラボグロウンダイヤモンドも貴重なんですね。今回ホリデーコレクションではどちらの商品に使っているんですか?
恩地:ネックレス1型です。インド・グジャラート州スーラト市にあるSUPERHARD RESEARCH CENTERで、育成から最終研磨まで一貫して同じ工場で製造されたダイヤモンドを使い、チェーン左側とチャームに1粒ずつダイヤモンドをあしらいました。チャームのダイヤモンドは取り外しができるようになっているので、気分によって使い分けられるのが特徴です。今回のコレクションでは「BETTER TOGETHER(一緒だともっと良い)」をテーマに掲げていて、支え合ったり、助け合ったりというイメージをダイヤモンドを2粒使用することで表現しました。
HOLIDAY NECKLACE(税込1万5000円/シルバー、ゴールドの2色展開) ※ホリデーコレクション限定パッケージで提供 Image by: FASHIONSNAP
―ダイヤモンドが主張しすぎていないシンプルなデザインですね。
恩地:僕たちのお客様は華奢なデザインだったり、肌馴染みが良くてどんなシーンでも使えるものを好まれるので、カラット数にこだわって高価格帯で打ち出すよりは、従来のコレクションと同様に「この金額なら試してみようかな」と思えるような手の届きやすい商品にしました。
ノイハウス:着け心地が軽くていいね。
甲斐:キラキラしすぎていないから日常使いしやすそう。
―なぜ今回のホリデーコレクションでラボグロウンダイヤモンドを使おうと思われたんですか?
恩地:ちょうどFASHIONSNAPに取材していただいた後に、会社のコミットメントとして社会課題や環境問題に対するアプローチの強化に重点的に取り組み始めて、その流れで決定しました。定番コレクションの中で天然ダイヤモンドを使っているものはありますが、業界としての大きな商戦にもなるホリデーコレクションに取り入れることで、ダイヤモンドの選択肢としてラボグロウンという種類もあるんだということを多くのお客様に知ってもらうきっかけになればいいなと思います。 世間が最も注目するホリデーシーズンのタイミングと時こそ、会社のヴィジョンや方向性を世の中に発信していくことが重要だと僕は考えました。
ノイハウス:こういうことって誰かが先にやらないといけないよね。他社の動きを見てから取り組むというのもアリだけど、グレイにはどんどん先を行くブランドであって欲しいなと思う。
―ブランドの顧客層は若い方が多いので、ラボグロウンダイヤモンドにどれくらい興味を持ってくれるのか気になりますね。
ノイハウス:これからダイヤモンドや宝石を買うかもしれない人たちをターゲットしていくのはすごく良いと思います。
甲斐:選択肢があるのとないのとでは全然違いますしね。
―甲斐さんとノイハウスさんはどんな時にこのジュエリーを身に着けたいですか?
甲斐:やっぱり普段遣いかな。どんなファッションにも合うと思う。
ノイハウス:長いネックレスと重ねて使うのも良さそう。
甲斐:私はシンプルなジュエリーは“見せる”というよりは自分と常に一緒にあるものとして身につけるから、タートルネックとかで隠れてもいいって思うタイプで。お風呂とかでも外さないんです。
ノイハウス:私も。ほとんど外さないかな。
―ジュエリーの楽しみ方が、ホリデーコレクションのテーマに込められた「一緒だともっと良い」と重なりますね。
恩地:僕らの商品も是非とも肩肘張らずに日常使いを楽しんでいただきたいですね。
―甲斐さんとノイハウスさんはラボグロウンダイヤモンドを贈られたら、どういった印象を受けますか?
ノイハウス:数ある商品の中からラボグロウンダイヤモンドをわざわざ選んでくれていることを考えたら、「お、この人は先を行ってるな」って感心しちゃうと思う(笑)。ラボグロウンダイヤモンドのメリットってすごく大きいし、贈る相手にそういった説明もできるとより価値のあるプレゼントになりそうですよね。
甲斐:私もプレゼントに込められたメッセージ性を大事にしているので、ラボグロウンダイヤモンドを選んだということも含めて嬉しく思いますね。
恩地:プレゼントした相手と2人でラボグロウンダイヤモンドについて語り合える時間もすごく大事だなと思って、今回の商品にはラボグロウンダイヤモンドに関する説明書をつけました。QRコードを読み込むと、ラボグロウンダイヤモンドについて解説している特設ページに飛べるようになっているんですよ。
ノイハウス:説明書が引き出しに入っているのが特別感があっていいね。
甲斐:ギフトボックスが2段のデザインで可愛い。自分の手持ちのアクセサリーを収納するボックスとしても活躍しそう。
恩地:まさにそういう狙いもあって。捨てずに是非家でも使ってほしいですね。
―今回はプロモーションでもメッセージを強く打ち出していくんですよね。
恩地:そうなんです。今回のためにフランス・パリでキャンペーンを撮影しました。コレクションテーマを表現した5つのエピソードをムービーで用意していて、12月1日から25日までアドベントカレンダー形式で毎日インスタグラムで公開しています。また、今回は駅広告にも挑戦して、恵比寿駅や渋谷駅、梅田駅などに大きくヴィジュアルを掲出していきます。
12月1日に公開されたムービー
―駅広告はブランドとして初めての試みですよね。大きく展開する狙いは?
恩地:「人工ダイヤモンド」「合成ダイヤモンド」は市場で広まりつつある一方で、天然ダイヤモンドと比較するとまだ価値の低いイメージが出ていると思っていて。ラボグロウンダイヤモンドを選択することが、ダイヤモンドの生産に関わる誰かや地球にとって優しかったり。そんなちょっと心が温かくなるループを僕らが生みたいと思い、ラボグロウンダイヤモンドの展開にあたり「誰かにも、やさしいダイヤモンド」というオリジナルのコピーを作りました。多くの人の目に留まる駅広告でこのコピーを発信することが、事業を展開する意義や目的にもつながると考えています。
ノイハウス:たしかに合成ダイヤモンドに対してはそういうイメージもあるかもしれないね。皆知らないだけで、天然ダイヤモンドと同じ品質とわかってもらうことで、ラボグロウンダイヤモンドを選択する人が増えると思う。
恩地:そうそう。今までラボグロウンダイヤモンドを知らなかった人が今回のコレクションをチョイスすることは、仮にそれが小規模だったとしてもすごく意味のあることだし、購入してくださったお客様が友達に話したりして広がっていくことで世界は大きく変わっていくと思う。選ばれなかったとしても、まずは選択肢として知ってもらうことが大事。だからこそブランドとして天然ダイヤもラボグロウンダイヤも用意して選択肢をきちんと持つようにしているんです。今後またダイヤモンドを選ぶタイミングが出てきた時にふと選択肢があることを思い出してくれたらいいなと。
ノイハウス:今いわゆるサステナビリティに関心がない層が変わっていったら社会的にも大きなインパクトにつながると思う。
甲斐:ジュエリーやアクセサリーってファッションの一部ではあるけど、自分の気持ちだったり、プレゼントとして贈ってくれた人の気持ちだったりを身に付けることでもあると考えていて。そこに今回のラボグロウンダイヤモンドのような新しい価値観が組み合わさっていくと素敵だよね。
―ラボグロウンダイヤモンドは今後も使う予定ですか?
恩地:もちろんです。定番の商品を含め、徐々にシフトしていきたいと思っていますし、それ以外でもサステナビリティについて様々な取り組みについて構想しています。例えばリユースやリサイクルなど、いわゆる循環させる取り組みは今後マストでやらなければならないですし、工場に再生エネルギーを導入することも進めていかないと、企業として環境に配慮しているとは言えないので、サプライチェーンの仕組みを変えていくことも必要になる。素材の調達から責任を持って透明性を担保しながら、商品を世の中に出せるように変えていくことは、これから重要なんだと思います。
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