Image by: FASHIONSNAP
今冬、立て続けに主演作品が続いている俳優、東出昌大。そんな彼が、今の集大成として主演を務めたのが映画「Winny」(3月10日公開)だ。東出は本作に向け、1ヶ月間で18キロ増量。ファイル共有ソフト「Winny」の開発により、著作権法違反幇助の罪を着せられたエンジニアの金子勇氏を熱演した。金子氏を演じるにあたり、遺族や当時の弁護団に独自取材を行い、実際に遺品を借用し、撮影に臨んだという。俳優として、ひたむきに歩みを進めている東出だが「俳優という肩書きは気恥ずかしい、役者の方がしっくりくる」と話す。理由を問うと「役者は『役者馬鹿』とか言えるけど、俳優は『優れる』という字が入っているし、ジェントルな感じがする。僕はもうちょっと雑草魂系だから」と笑った。俳優として、モデルとして、そして1人の人間として、現在の彼に話を聞いた。
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アウター:CINOHダブルフェイスライダースジャケット、シャツ:IRENISAミドルレングスシャツ、パンツ:INSCRIREチノワイドパンツ
ー東出さんが自身のマネジメント業を担うようになってから約一年ほど経ちました。「天上の花」「とべない風船」そして「Winny」と、近年東出さん主演の映画作品が立て続けに公開されているように感じます。
たしかに昨年末からは、出演作品の公開が続いていますね。この3作品については「すべて全力でやり切った」と自信を持って言えます。もしかしたら160%くらい目指せたかな?とは思うんですけど、少なくとも100%の力を出すことはできたと思っています。だから今後は安定的に100%のパフォーマンスが出せるようになるのかな、と。
ー今までは、どこか「やりきれなかったな」と思うことがあったんですか?
常に全力ではやっています。でも、僕は頭でっかちなところがあり「もっと良いお芝居ができるはずなのになんでできないんだろう」とやりながら悩んじゃうようなところがあって。今思えば当たり前なんです、全然準備が足りていなかったと思います。でも、そんな20代を経て、お芝居の“お”の字がわかってきたのかな。そこから、できることも、準備できる幅も深さも増えていった実感があるんです。だから、「全力でやり切った」と言えるんです。
ー(手元に置かれた携帯を見て)ガラケーを使っているんですね。
8年くらい前からガラケーとiPadの二刀流です。お仕事の依頼もメールか電話かラインでいただいています。でも本当は、iPadも手放したいくらいなんですよ。でも、仕事しないといけないから(笑)。
マフラー:Montmartre New York ダンシングスカーフ(マルチ)
ー東出さんといえば、ファッションモデルとしての側面もあります。
モデルデビュー1発目が「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」のパリコレでしたね。
ーデザイナーの山本耀司さんとはお話するんですか?
もちろん。「東出くん、着心地どう?」と聞かれたりします。袖を通してみないとわからないことがあるから、と。最後の最後まで1センチ単位の調整をおこなっているんですよね。「ヨウジヤマモト オム(Yohji Yamamoto HOMME)」の2021年春夏コレクションにも久々に出させていただいて。「いやー、いいなお前。良い顔になってきているよ」と声をかけていただいたのもよく覚えていますね。
ー本作「Winny」でも吉岡秀隆さんや、吹越満さんなど、錚々たる先輩たちの中でお芝居をされていましたが、何か撮影中のでの思い出話はありますか?
撮影中みんなでビジネスホテルに泊まることがあって。そこの屋上の露天風呂で吹越さんと2人っきりになったんです。昔から大好きで尊敬している俳優さんなんですけど、吹越さんが人生の話をぽつり、ぽつりとしてくださったんです。いやぁ、最高の思い出でした。芝居の話もたくさんして。「吹越さんの演技の引き出しはどうなっているんですか?」「どうやって、演技中に発想をするんですか?」「吹越さんの好きな俳優さんってどなたなんですか?」とかたくさん聞いちゃいましたね。
ー役を演じる時は、演じる役と自分の似ている部分を探して演じるタイプですか?
結果、自分の中から似ている要素みたいなのは出てくるとは思うんですけど、あまり能動的に探すことはしないです。ただ、東出昌大という人間の中に少しずつ存在する部分を膨らましたりはします。例えば、今回の「Winny」で言うと、金子さんのように人が大事な話をしているのに、目の前にクリームソーダを置かれたら、僕も話をそっちのけでずびずびと飲んでしまうかもしれない(笑)。
ー本作では、何を悪とし、正義とするのかというテーマも重要のように感じました。
今回の作品に出演するにあたり、金子さんのご遺族の方や弁護団の方達にもお話を聞いたんですが「勝訴はしたけど、この裁判に携わった全員が敗者だ」とおっしゃられていて。結局、一度でも逮捕され、有罪判決が出た報道がされることの印象がとても大きかった、と。金子さんは、最終的に逆転無罪になりましたが、残念ながらその報道はそれほど人の印象に残りませんでした。でも、映画でも描かれていますが、金子さんの本質と事件に関するネガティブな印象は全く異なります。この作品では、善悪二元論では語れないものを描写できていると思います。
photographer:HIROYUKI OZAWA(FASHIONSNAP)
text & edit:ASUKA FURUKATA (FASHIONSNAP)
■Winny
公開日:2023年3月10日
監督・脚本:松本優作
キャスト:東出昌大、三浦貴大、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満、吉岡秀隆
上映時間:127分
公式サイト
あらすじ
2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張する。なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか。本作は、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語である。
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