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1日1組限定、西陣織の老舗「細尾」のレジデンスで体感できる工芸建築の極み

 1688年に創業した西陣織の老舗、細尾。現在はハイブランドから支持を得ているテキスタイルブランド「HOSOO」の展開をはじめ、織物業の枠を越えた革新的な活動が目立っている。今年7月にはHOSOOの世界観に包まれる宿泊施設「ホソオ レジデンス(HOSOO RESIDENCE)」を開業した。1軒の伝統的な町家をフルリノベーションし、日本に芽吹く伝統技術を体感できる「工芸建築」を体現。そこには、京都で歴史を紡いできた細尾の「過去と未来を繋ぐ」という思いが表れていた。

 

 ホソオ レジデンスは京都の旧市街である閑静な御所南エリアに立地。建物は戦前から佇む築100年超の京町家で、現在も住宅として使われている家屋の並びにある。物件情報は地元のネットワークから得て、構想から2年がかりで開業した。建物の外観は街の景観を尊重するため従来の意匠を保持し、内観はフルリノベーション。設計はHOSOOのディレクター細尾真孝の実弟で、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などの店舗を手掛ける建築家デイヴィッド・チッパーフィールドのミラノ事務所を経てHOSOO architectureを立ち上げた細尾直久が担当した。宿泊は1日1組限定の完全予約制で、1軒貸切のスタイル。

 玄関を上がったスペースにはライブラリーを配置。華やかなソファには、銀が織り込まれたHOSOOのテキスタイルが使用されている。

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 土壁には、古くから受け継がれてきた「版築(はんちく)」という左官技術を採用。自然の土を3層に重ねる技は、熟練の職人でも成し得るのが難しいという。土は京都を中心にそれぞれ異なる土地で何百年もかけて育まれたもので、自然の美しい色合いが重なる。長い時を経て生まれた色合いがこの場所で更にエイジングしていく様子は、情緒を感じさせることだろう。

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 そこに飾られるアートピースも時の流れを表現したもの。和紙に貼った金と銀を細かく裁断し織り込んでいく「引き箔」という西陣織技術で制作され、その独特な自然の輝きは50年ほど寝かせて生まれたという。この空間には「過去から受け継いだものを感じ、またそれを未来に繋いでいく通過点にいる感覚を楽しんでいただきたい」という思いを込めているそうだ。

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 吹き抜けになっている薄明かりの通路では自然光が奥のスペースへと導いてくれる。

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 ダイニングとして利用できるサロンスペースは中庭に面し、外光の移ろいを感じられるように極限まで無駄を省いたシンプルな設計。フィンランドが誇る世界的建築家 アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)がデザインしたテーブルとスツールが空間に馴染み、リラックス感を与えている。

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 くつろぎの時間のお供になるコーヒーのセットやスピーカーも用意。

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 ステレオは、日本を代表する高級オーディオメーカー「テクニクス(Technics)」のもの。スピーカーにHOSOOの西陣織をあしらった世界で一台のデザインだ。独自の技術で透けるように織られたテキスタイルが品格ある音を届ける。

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 京都の手作り茶筒の老舗「開化堂」の缶に収められたコーヒー、ほうじ茶、紅茶、また、ワイン(有料)もすべて細尾の感性とこだわりでセレクトされたもの。

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 バスルームはブラックで統一されたシックな空間。黒一色の壁は炭を入れた「黒漆喰」が使われている。大徳寺などかつての建造物には度々使われていたが、現代では職人自体が少ないという。

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 パーツの一部はイタリアから直接取り寄せており、日本の伝統と西洋のモダニズムが融合した空間になっている。

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 浴室では、月明かりに照らされた中庭を眺めながら寛ぐ風情のある時間が楽しめる。バスタブは、石を削って作る「研ぎ出し」という現代では限られた職人のみが持つ左官の技術が用いられた。

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 寝室は2階。階段の手すりも鉄の職人の手によって作られた。

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 ベッドは京都で200年近い歴史を持つ老舗寝具メーカー イワタの製品。キングサイズベッドでゆったりとした睡眠を提供する。

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 壁面にあるアートピースでは、改装前の土壁を記録撮影し、それを西陣織で再現。昔の記憶を残すことで「過去と未来を繋ぐ」イメージを込めたのだという。

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 昼間は自然光に照らされて輝き、夜はシックな雰囲気を演出するアートピースは、静寂の空間の中で「ゆっくりと流れる時を楽しむ」ことを細尾の視点で提案している。

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 革小物は全て特注。いずれも日本の職人が手掛けている。細部にわたるこだわりは、細尾ならでは。

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 2階にはもう1室、使用用途を特に設けていない「メディテーションルーム」を配置。元来から京都には家の中に"何もしないスペース"をひとつ作ることで、その家の品格を保つという風習があるという。ここに1人分の布団を敷くこともできる。

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 障子の窓は引き違い戸ではなく取り外して使うようにデザイン。自然光を大切にする京都の土地柄を考慮しながら、海外の感性が反映された。

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 黒川雅之がデザインした椅子は、脚の部分が象の足に似ていることで知られる名作。漆の糸が織り込まれたテキスタイルがあしらわれている。

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 細尾が宿泊施設を手掛けるのは初めて。ショールームは別に構えているが、ブランドの世界観をより現代のライフスタイルに即した形で表現する手段として「泊まれるショールーム」という考えで生まれたという。スタッフは常在しないため、観光を楽しんだ後に"帰宅"するという京都に住んでいるような体験をすることができる。

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 着工から開業までの期間は約1年。歴史がある京町家を残し、また失われつつある伝統技術を残すため、丸ごと建て替えずに長い月日を費やすことを選んだという。念頭にあるのは、職人の仕事を守り伝統技術を未来に繋ぐ使命だ。街や人と共存し紡いできた京都の歴史にも通じるものがある。日々時間に追われている現代人にとって、その歴史と美の世界に浸り、ゆっくりと時の流れを感じる体験は、何よりも変えがたいものになるのではないだろうか。

■HOSOO RESIDENCE
住所:京都市中京区両替町通二条上ル北小路町98-8
面積:75.5平方メートル
定員数:大人2名
宿泊料:一泊7万円(サービス料込み/税別)
※完全予約制

公式サイト

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