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なぜあのトイレは居心地が良い? ホテルと商業施設が「香り」で仕掛けるおもてなし

 私たちがホテルや商業施設を訪れた際、ふと漂う心地よい香りに心がほどけたり、特別な高揚感を覚えたりした経験はないでしょうか。近年、洗練された空間づくりにおいて「香り」は、視覚や聴覚以上にゲストの記憶や印象に深くアプローチする重要な要素として位置づけられています。その中で、よりプライベートな空間、「お手洗い(レストルーム)」は、これまで清潔であることは重要視されながらも、香りについては消臭もしくは、芳香剤としての役割に留まっていたのではないでしょうか? レストルームを香りでこだわるホテルや商業施設をフォーカス。細部にまで行き届いた香りの演出でゲストを迎える「アンダーズ 東京」「東京エディション虎ノ門」、そしてレストルームの新しいあり方を提案する「渋谷ヒカリエ ShinQs」の3施設に、香りへのこだわりを聞きました。

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アンダーズ 東京

Q. 館内のレストルームの香りは?

 空間に香りを付加するディフューザーやルームフレグランスは使用していません。手元での体験を大切にするという観点から、ハンドウォッシュを中心とした香りの演出を行っています。具体的には、「イソップ(Aēsop)」の「アンドラム アロマティック ハンドウォッシュ」と「リンド ボディバーム」を使用しています。

イソップ「アンドラム アロマティック ハンドウォッシュ」

Image by: Aēsop

Q. レストルーム空間の香りについて、こだわりを教えてください。

 アンダーズ 東京では「必要以上に演出しすぎないこと」もまた、上質なおもてなしの一部であると考えています。レストルームというプライベートな空間において、香りを空間全体に漂わせるのではなく、ゲストご自身の動作の中でふと感じられる、控えめで洗練された香りを重視しています。イソップのハンドウォッシュが持つ、植物由来のナチュラルで落ち着きのある香りは、都会の中の静けさや余白を感じさせ、アンダーズ 東京が大切にする「肩の力が抜けたラグジュアリー」を象徴する存在となっています。

Q. 季節や時間帯によって、香りを変化させていますか?

 季節や時間帯によって、香りそのものを切り替えることはありません。どのタイミングでご利用いただいても、変わらない心地よさと清潔感を感じていただけることを優先し、香りの一貫性を大切にしています。

Q. 空間のデザインや素材、照明といった視覚的な要素と、香りの演出はどのように調和させていますか?

 館内のレストルームは、素材感のある石材や落ち着いた照明計画を取り入れ、静かで洗練された空間構成となっています。香りはその世界観を邪魔することなく、視覚的要素を引き立てる「見えないレイヤー」として機能するべきものだと考えています。強い香りで印象付けるのではなく、手を洗うという所作の中でほのかに立ち上がる香りが、清潔感と居心地の良さを自然に高める役割を果たしています。

Q. 香りがゲストにどのような心理的影響を与えると思いますか?

 レストルームは、ホテルでの滞在中に最もパーソナルな時間が流れる場所のひとつです。そのプライベートな体験の中で感じる香りは、ゲストの気持ちをリセットし、次のシーンへと心地よく切り替える役割を果たすと考えています。穏やかで過度に主張しない香りは、安心感やリラックス感をもたらし、無意識のうちにホテル全体への心地よい印象につながることを期待しています。

Q. ロビーなどの共有スペースと、プライベートな空間の香りのつながりにおいて意識していることはありますか?

 ロビーやラウンジなどのパブリックスペースでは、空間の広がりや賑わいに合わせた演出をしていますが、一方のレストルームでは、意識的に香りのボリュームを抑えています。このコントラストによって、ゲストが一度「静」に戻るための、余白を生み出しています。

◾️アンダーズ 東京

Image by: アンダーズ 東京

 ハイアットが手掛けるアンダーズ 東京は2014年6月、虎ノ門ヒルズの47〜52階に開業。アンダーズはヒンディ語で「パーソナルスタイル」を意味し、グローバルな視点でその国の都市や文化と個性を尊重した、徹底したおもてなしとパーソナルなサービス、新鮮なホテル体験を提供する。8室のスイートを含む164室を備え、デザインはトニー・チー(Tony Chi)と緒方慎一郎が担当した。

所在地:東京都港区虎ノ門1-23-4 虎ノ門ヒルズ森タワー
公式サイト

東京エディション虎ノ門

Q. 館内のレストルームの香りは?

 フレグランスメゾン「ル ラボ(Le Labo)」によるエディションオリジナルの香り「ブラックティー」を使用しています。レストルームだけでなく、ロビーや客室にも世界中のエディションで統一して、季節や時間帯を問わず使用しています。

ディフューザー

Image by: 東京エディション虎ノ門

Q. 館内すべての空間や、世界各国のエディションホテルで香りを統一することには、どのような意図がありますか?

 世界中の全てのエディションホテルで、館内すべての空間に、共通のシグネチャーセントが香ることで、ホテルでの体験を感覚的に記憶に残すことができます。この香りに触れた瞬間に、エディションホテルでの記憶が鮮明に蘇るような、感覚的な体験をゲストに持ち帰っていただきたいです。

Q. ブラックティーとは、どのような香りでしょうか

 紅茶の豊かで複雑な香りからインスパイアされ、シトラス、スモーク、フルーツ、フラワー、麦芽、チョコレート、 胡椒のノートをブレンドしています。エディションホテルが提案するモダンラグジュアリーな空間をより美しく引き立てています。

Q. 香りがゲストにどのような心理的影響を与えると思いますか?

 ウェルビーイング(幸福感)、コンフォート(心地良さ)、エキゾチシズム(異国情緒)といった人間の本質的な感情を想起させます。ゲストを誘い、魅了し、「ずっとこの場所にいたい」と感じていただけると考えています。

◾️東京エディション虎ノ門

 エディションホテルは、2013年にロンドンで誕生し、マイアミやニューヨーク、バルセロナ、上海などで展開。日本初上陸となる東京エディション虎ノ門は、2020年10月に開業。206の客室を備える。ニューヨークの伝説的なナイトクラブ「Studio 54」の創業者であるイアン・シュレーガー(Ian Schrager)のディレクションのもと、世界的建築家の隈研吾が内装をデザインした。

所在地:東京都港区虎ノ門4-1-1
公式サイト

渋谷ヒカリエ ShinQs

Q. 館内のレストルームの香りは?

 渋谷ヒカリエ ShinQsでは、レストルームを各階それぞれ異なるコンセプトで構成し、オン・オフや日常・非日常など、さまざまな気持ちのスイッチを切り替えて、来るたびに新しい気分になれる「スイッチルーム」を設置しています。そのため、スイッチルーム内のアロマをはじめ、環境デザインや照明、3Dサウンドなど、各階のコンセプトに合わせて異なります。

スイッチルーム 4階

Image by: 渋谷ヒカリエ ShinQs

5階:日常から切り替え、極上のリラックスを提供するスペシャルステージ
4階:「いつも」に大人の遊び心、驚き、刺激など、ちょっとしたアクセントをプラスしたステージ
3階:自己演出の向上をサポートし感性を刺激するような洗練されたアートステージ
地下1階:キレイに敏感な方へ、「美」をサポートし、Styleupを目指すステージ
地下2階:ママも親子も安心して買い物を楽しめるリフレッシュ&ママコミュニティーのステージ
地下3階:デザインと機能に気を配り、幅広い層へ優しさを意識したステージ

Q. スイッチルーム導入のきっかけは?

 以前の渋谷には、落ち着いて身づくろいができる化粧室が少なく、レストルームの数自体も限られていました。そこでShinQs開業にあたり、リアルターゲット世代である女性社員5人によるプロジェクトチームが発足しました。彼女たち自身の「あったらいいな」を詰め込み、「落ち着いて身づくろいができる」「通常のレストルームにはない付加価値」を追求しました。買い物の予定がない方でも足を運びたくなるような空間づくりを行いました。その「あったらいいな」のひとつとしてこだわったのが香りであり、癒やしを届ける空間設計を目指しました。

Q. 館内のレストルームで使用している香りは?

 100%天然アロマのエッセンシャルオイルを使用しています。5月、6月は、ベルガモットラベンダー(5階)、チアフルイエロー(4階)、スタディ&ワーク(3階)、フルーティアフタヌーン(地下1階)、フレッシュグリーン(地下2階)、ローズマリーシトラスラウンジ(地下3階)、リラックス&ビューティ(ラウンジ)を使用していました。

Q. 季節や時間帯によって香りを変えることはありますか? 

 ShinQsのコンセプトである「Make Serendip Store」にちなみ、セレンディップ(期待感を醸成する、偶発的な出会い)を体現することを目的に、今年5月から定期的に各階の香りを変更しています。

Q. 香りが来館者にどのような心理的影響を与えると思いますか? 

 香りという要素を通して、従来のレストルームを超えたこれまでにないくつろぎ空間・機能を提案したことで、トイレを目的にご来店される方も多くいらっしゃいます。今後もこの試みが来店のきっかけや滞在時間の延長につながることを期待しています。

◾️渋谷ヒカリエ ShinQs

 渋谷ヒカリエは「Life is Entertainment 生活すべてを、エンタテイメントに変えていく。」をコンセプトに、2012年4月に開業。オフィス、商業、劇場、ホールをはじめとする文化施設などを設置し、地上34階、地下4階の高層複合施設で渋谷駅東口に位置する。東急百貨店がプロデュースする商業施設 ShinQsは、地下3階から地上5階の8フロアに、ビューティ、ファッション・ライフスタイル雑貨、フードフロア「東横のれん街」など約230ショップが並ぶ。

所在地:東京都渋谷区渋谷2-21-1
公式サイト

最終更新日:

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