ナイキの渋谷路面店(2024年撮影)
Image by: FASHIONSNAP

ナイキの渋谷路面店(2024年撮影)
Image by: FASHIONSNAP
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、米国を代表する大型優良企業約100社で構成する株価指数「S&P100」から、ナイキ(NIKE)を除外すると発表した。変更は現地時間で9月21日の取引開始前に実施する。ナイキは2008年以来、18年にわたってS&P100の構成銘柄だった。
ADVERTISING
2024年春から失速の色が鮮明に
ナイキに対する株式市場の評価は、この数年で大きく低下している。同社の時価総額は2021年の年末時点で約2640億ドル(約40兆9200億円)に達していたが、2026年9月4日時点では約570億ドル(約8兆8350億円)と、約5年で8割近く縮小した。株価も2021年11月に175ドル(2万7125円)を超える最高値を記録したが、現在は38ドル(5890円)前後。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは今回の個別銘柄の除外理由を明らかにしていないが、構成銘柄の変更について「各指数がそれぞれの時価総額レンジをより適切に反映するため」と説明している。
背景には、ナイキの長引く業績不振がある。ナイキの業績は2024年春ごろから失速が鮮明になり、2024年3〜5月期に四半期売上高が前年同期比約2%減とマイナスに転じた。その後、2025年3〜5月期まで5四半期連続で前年同期を下回った。2025年5月期の通期売上高は前期比約10%減の463億900万ドル(約7兆1778億円)と大きく落ち込み、2026年5月期は463億9800万ドル(約7兆1916億円)と前期比横ばいまで持ち直したものの、為替変動の影響を除くと約2%減。完全な回復には至っていない。
苦戦要因はDTC戦略、製品イノベーション、中国事業
不調の要因として指摘されているのは、大きく3つある。1つ目は、イーベイ出身で2020年にナイキCEOに就任したジョン・ドナホー氏のもとで進めた、直販(DTC)戦略だ。ナイキは自社ECや直営店での販売を重視し、フットロッカーなど大手スニーカー専門店への卸販売を縮小。コロナ禍中はEC需要が高まり、この戦略がうまくいっているように見えたが、コロナ収束後に消費者が実店舗に回帰すると、専門店への卸を絞ったことが裏目に出た。その間に、オン(On)やホカ(HOKA)といった新興メーカーが専門店で存在感を強めることになった。

2026年4月にオープンしたナイキの新宿路面店のランニングコーナー
Image by: FASHIONSNAP
2つ目は、製品イノベーションの停滞だ。新興勢力を含む競合メーカーがアスリートと組んで、ランニング領域を中心に高機能シューズを矢継ぎ早に投入する一方、ナイキは「エア ジョーダン(Air Jordan)」など往年の銘品の復刻モデルや外部コラボに大きく依存。コロナ禍以降はファッション市場全体として機能性を追求する潮流が強まり、トップアスリートに向けたパフォーマンス開発が、一般消費者の購買動向にも大きく影響するようになっている。そうした市場変化の中で、ナイキが新たなイノベーションを十分に打ち出せていなかったという指摘は多い。
3つ目は中国市場の不振。アンタ(ANTA)、リーニン(LI-NING)、Xtepなど中国発のスポーツメーカーが年々存在感を強めているほか、アンタスポーツが大株主となっているアメアスポーツ傘下の「サロモン(SALOMON)」などのブランドも中国で急成長。競争は激化している。ナイキの2026年5月期のグレーターチャイナ売上高は前期比約11%減の58億4700万ドル(約9062億円)で、為替変動の影響を除くと約13%減。2025年5月期の約13%減に続き、2年連続の大幅減収となった。
「アスリート中心」に原点回帰
こうした状況を立て直すため、ナイキは2024年10月に、ドナホー氏からエリオット・ヒル氏にCEOを交代。ヒル氏はナイキに30年以上勤務して要職を務めた人物で、一度は同社を離れていたが、再建を託される形で復帰した。新体制では、縮小していた卸売りの立て直しを進め、2025年には約6年ぶりにアマゾンでの販売を再開。2026年5月期の卸売上高は前期比約6%増に転じた。
製品面でも、アスリートを中心に据えた開発体制を強化。「すべてはアスリートの声から始まり、アスリートの声で終わる」と改めて原点回帰を打ち出している。ランニングなど一部カテゴリーでは成果も表れ始めているものの、再建は道半ば。ヒルCEOも、「立て直しには想定よりも時間がかかっている」といったコメントを出している。2026年3〜5月期も全社売上高は前年同期比約1%減。特にグレーターチャイナは約12%減(為替中立ベースでは約17%減)と落ち込みが続いており、中国事業の立て直しが大きな課題として残っている。

ヒルCEOのもとで進める、アスリート中心の製品開発の中で生まれたトレイルランニング用アパレル「ラディカル エア フロー」
Image by: FASHIONSNAP
振り返ればナイキは2017年、今では当たり前となったカーボンプレート搭載の厚底ランニングシューズを初めて世に送り出し、走ることそのものにイノベーションを起こした。それから10年弱、アジアをはじめとする新興国での中間層の拡大や健康志向の高まりを追い風に、世界のスポーツ市場は高成長を続けている。ナイキが今なお世界最大のスポーツメーカーであることには変わりないが、市場成長を十分に取り込めておらず、かつての圧倒的な競争力には陰りも見える。一方で、直近では「ラディカル エア フロー」など、ナイキらしい技術革新を前面に出した製品も戻り始めている。中国事業の立て直しと共に、再びイノベーションを成長につなげられるかが、復活を占う鍵になりそうだ。
なお、今回S&P100から除外された企業はナイキを含む4社。ファッションや小売りに関連する企業ではほかに、ショッピングモールやアウトレットを運営する不動産大手のサイモン・プロパティ・グループも対象となった。
最終更新日:
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング

auのGoogle Pixel 11と生きる、“好きが仕事になる”毎日


















