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【バックステージ】「KIDILL」26AWコレクションのヘアメイクをレポート

Image by: FASHIONSNAP

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 ファッションとメイクの切っても切れない密接な関係。そんな結びつきの強さがわかるファッションショーのバックステージをレポート。今回は、「キディル(KIDILL)」が、「アルファ インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」と「ヒヅメ(HIZUME)」とのコラボレーションを記念して開催したインスタレーションを取材。会場では、今年1月にパリで発表した2026年秋冬コレクションのルックを披露した。同コレクションのショーに続き、ヘアメイクはKanako YoshidaとKUNIO KOHZAKIが担当。2人に、今回のヘアメイクの特徴や制作の裏側、表現に込めた思いを聞いた。

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Image by: KIDILL

キディル 2026秋冬コレクション

 2026年秋冬コレクションのテーマは「HEAVEN」。ブランドの核であるパンク精神に基づき、相反する要素の対立と融合を軸に構成し、混沌と静寂、カワイイとハードコアといった対極的な要素を取り入れた。スモーキーな淡い色調に、汚し加工を施したブラックシリコンラバーの質感を組み合わせるなど、異素材や対照的なテクスチャーを用いた。グラフィックは、東京のアンダーグラウンドシーンで活動するトレヴァー・ブラウン(Trevor Brown)のアートワークを採用。天使と悪魔の羽根や少女のモチーフ、鋭いカーブを描くモッズコートなどが特徴だ。アルファ インダストリーズとの協業では、MA-1をベースに黒のチュール素材を使用。さらに、ヒヅメを加えたトリプルコラボレーションとして、MA-1を再構築したヘッドピースも制作した。

KIDILL 2026年秋冬

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メイク:Kanako Yoshida

◾️Kanako Yoshida
専門学校を卒業後、メイクアップアーティストとして2008年からロンドンとパリで活動し、2012年に帰国。2017年に再びロンドンに渡り、シャネルを手がけたルチア・ピカのファーストアシスタントとして3年間活動する。2020年独立し、2023年に代官山にヘアサロン「undercurrent」をオープン。現在はパリを拠点に、東京と行き来しながら活躍している。

グレーの肌でつくる、絵画風メイク

⎯⎯ 今回のメイクアップのテーマを教えてください。

 今年1月にパリで発表した2026年秋冬コレクションのメイクと、基本的には同じテーマです。コラボレーションアイテムのアートを手掛けたトレヴァー・ブラウンの絵画をモチーフに、その世界観をメイクで表現しています。絵をそのままメイクに落とし込んだような感覚です。

⎯⎯ パリのショーと今回のメイクで、変えた部分はありますか?

 パリのショーでは、絵のどこか浮いているような印象をメイクでも表現したく、ベースメイクをグレーに振っていました。ただ、今回はランウェイではないので、モデルと見る人の物理的距離が近い。そのため、グレーの割合はそのままに、ファンデーションの質感や肌のトーンをもう少し引き出して、よりリアルになじむように調整しています。

⎯⎯ 「グレーの肌」はどのように作ったのでしょうか?

 ファンデーションに、オイルベースのクリームを混ぜて、自分で作ったグレーの顔料を加えながら調整していきます。今日もグレーを混ぜてはいますが、パリのときよりファンデーションの比率を高めています。

⎯⎯ アイメイクも印象的でした。

 今日は8人のモデルがいて、それぞれの肌の色味や雰囲気に合わせてポイントメイクも調整しました。男の子にはカラーでニュアンスをつける程度にとどめて、女の子にはアイライナーをしっかり入れています。パリの時は外国人モデルでしたが、今回のように日本人モデルの方が、トレバーさんの絵のモチーフをトレースしやすいと感じたので、今日は少し濃いめに仕上げました。

⎯⎯ ピンクやブルー、パープルといった色のバリエーションはどのように決めましたか?

 服の色に合わせています。ピンクの服にピンクのメイクを合わせることもあれば、あえてブルーで外すこともあります。コレクション全体の色味と呼応するように選びました。目元にチークを入れたり、チークのようにアイシャドウを頬に入れたりと、かなり自由に使っています。

⎯⎯ リップはいかがでしょうか?

 女の子にはリップをつけました。口元がぼけているようなツヤ感のあるものや、紫がにじんだようなイメージです。絵の中の唇がどこか病的な描写でもありますが、そのままではなく、「これくらいならリアルに落とし込める」という塩梅を探りながら仕上げました。

⎯⎯ 普段のバックステージで欠かせないアイテムはありますか?

 その時の内容次第ですが、メンズのコレクションが多いこともあり、自分で顔料やオイルを混ぜて作ったグレーや黒が入ったパレットは手放せません。コンシーラーやコントゥアができるプロダクトを集めたもので、唇の血色を自然に抑えるときにも重宝します。ファンデーションだけでカバーすると、不自然かつ古く見えることがあります。でも、唇の輪郭はちゃんとある方がナチュラルに見えるので、そういう細かな調整に、このオイルベースのパレットをよく使います。海外ではグレーや黒のコンシーラーもたくさんあるので、特殊メイクや自然なカバーに使えるものを少しずつ集めています。

キディルと歩んできた約10年

⎯⎯ キディルのメイクは2017年から担当されています。当時と今とで、変化はありますか?

 最初のころは架空のキャラクターを構築するようなアプローチで、70年代や80年代など具体的な時代を感じさせないように、かといって若すぎてもいけない、パンクすぎてはいけない、などハードルが高かったように感じます。

 その後、ショーの規模が大きくなるにつれて、より統一感のあるメイクでモード感を持たせようという方向に変わっていきました。東京のストリートとヨーロッパのエレガンスをミックスして考えるのが私は好きなので、今は自分のアイデアも自然と紐づけられるようになってきたと思います。

⎯⎯ ヘア担当のKOHZAKIさんとの連携は、どのように進めていますか?

 ロンドンに住んでいた2010年ごろに出会って、もうかなり長い付き合いです。デザインについての細かい相談はしていなくて、打ち合わせで方向性を共有するのはショーの1ヶ月前くらい。それ以降、お互いどう作り込んでいるかは分からないまま、ショー2日前のメイクテストを迎えます。お互いにできあがったものを見てから考えるというよりは、その場でベストな形に落とし込んでいく感じです。

⎯⎯ 今回のメイクで、日常のメイクに取り入れられる部分はありますか?

 意外とグレーの肌は、普段のメイクでも取り入れられると思います。ブルーのトーンアップに近い感覚で、血色は少し抑えられて、アンドロジナス(中性的な)な仕上がりになる。「人形っぽく仕上げたい」「ニュートラルな雰囲気にしたい」というときに、ファンデーションにほんの少しグレーを混ぜてみるのも、一つの選択肢として試してみてほしいです。

⎯⎯ 今、注目しているメイクのトレンドはありますか?

 ツヤとマットを組み合わせるのが今っぽいかなと思います。肌はツヤで仕上げて、リップはマットなブラーリーな質感にする。ちゅるちゅるのリップも好きですが、マットのほうがクールな印象を出しやすいので、秋に向けてぴったりだと思います。

ヘッドピース&ヘア:KUNIO KOHZAKI

■KUNIO KOHZAKI
ヘアスタイリストとして、2006年から2010年までロンドン、2012年から2015年までニューヨークのSee managementに所属。2016年に帰国後は東京をベースに、ファッション誌や広告、またショーのヘアスタイリングからミュージシャンなどのアーティストへ提供するウィッグやヘッドピースまで手掛ける。

ぬいぐるみのヘッドピースが生まれた理由

⎯⎯ ヘッドピースが目を惹きました。どこからアイデアが生まれましたか?

 ヒロさん(キディル デザイナー 末安弘明)から、トレバー・ブラウンさんの絵を見せてもらったことが起点になっています。いつもショーの2ヶ月前くらいにヒロさんに一度会って、ふわっとした方向性を聞いてから、アイデアを膨らませていきますが、トレバーさんの絵のタッチがぬいぐるみに見えた、というのがきっかけでした。

 それと、ちょうど別の仕事で、ある店舗に巨大なぬいぐるみを作っていたこともあって。「ぬいぐるみのヘアスタイルって見たことない」と頭に浮かんだとき、イメージが想像つかなかったから、絶対おもしろいと思ったんですよね。

⎯⎯ そこからどのようにして、今の形になったのでしょうか?

 最初はタオル生地のふわふわした素材で、ペールトーンカラーで作ろうと思っていたんです。だからもっと可愛らしいイメージを想定していたんですけど、作り始めたら少し違和感を感じ始めて。

 スタイリストの辰哉くん(島田辰哉、同コレクションのスタイリングを担当)に相談したとき、「人の印象に残らない色味で使ったら面白いんじゃない?」と言われて、そこからガラっと方向が変わりました。コンセプトの主張もあって、色の主張もあって、スタイルの主張もあったら、かっこよさからちょっと離れると気づいたんです。

 だから80年代のスケーターが着ていたネルシャツのイメージで生地を探しました。パターンはタータンチェック、ストライプ、ボーダー、水玉といろんな柄を組み合わせました。柄物だけど、色が地味だから全体が落ち着いて見えるというバランスにしっくりきました。

⎯⎯ ヘッドピースの制作は手作業ですか?

 全て手作業です。1ヶ月くらい前からアシスタント8〜9人と作っていきました。まず生地を切って、綿を入れて縫っていく。最初のラフ絵の段階では、1つの頭に20本くらいかなと思っていたんですけど、実際につけてみると3、4倍必要で。ショーの時はパリに着いてからも、直前までひたすらみんなで縫っていました。キディルのコレクションは7〜8回担当していますが、過去一大変でしたね(笑)。

違和感を活かしたスタイリング

⎯⎯ モデルの服に合わせて、つけるピースの色を選んでいますか?

 あまり意識せず、むしろちょっと違和感があるように合わせています。服を実際に見るのは、ショー2日前のヘアメイクテストのときが初めてなんです。そこから作り始めると間に合わないので、服が分からないまま想像で作っています。「前シーズンこうだったから、今シーズンはこっちに振るだろう」とか、なんとなく自分の想像を頼りにしています。

 ヘアメイクテストは、いつも本番より緊張します。合わなかったらどうしようって。これだけ一緒にやってきているKanakoちゃんとも、テストの日はぎこちないんです(笑)。でも今回は予想を超えてすごく良かったと思います。完成形をあまり想像しないまま作っていましたが、合わせたときにしっくりきて安心しました。

⎯⎯ ヘッドピースをつけず、三つ編みをしているモデルもいました。

 最初はヘッドピースをつける予定でしたが、帽子を被らせようとすると入らなくて。ヘッドピースをつけていないモデルだけが、日常的な雰囲気になってしまうと、やっぱり違和感があるし。ぬいぐるみの、ダークなんだけどかわいい、少し毒っ気があるようなテイストを、何かを足したほうがいいと思ったときに、複数の三つ編みが思いついたという感じです。

⎯⎯ 毛先をくるんと丸めているのも新鮮でした。

 あれは偶然です。 最初は普通に編んでいて、1回ゴムがプチっとなった時にくるってなってたから、こっちのほうがちょっと違和感が生まれると思って、全部それに揃えました。

ロンドンから始まった、ヘッドピースの仕事

⎯⎯ ヘアスタイリストとしてのキャリアと、ヘッドピースはどちらが先だったんですか?

 元々はヘアスタイリストを目指していて、今もヘアが仕事の8割くらいを占めています。インスタにあまり載せていないので、ヘッドピースしかやっていないと思っている方も多いんですけど、ドライヤーの広告やファッションの撮影を担当しています。

⎯⎯ ヘッドピースを始めたきっかけは?

 ヘッドピースというジャンルの原点は、日本でアシスタントを数年やったあとにロンドンへ移ったことです。ロンドンで雑誌の撮影をするようになったある日、朝現場に行ったら机の上にゴミがずらっと並んでいて。ベルリン出身の若いスタイリストが「ルックごとに、この中から頭に何か付けて」といきなり言うんです。

 困惑しつつも、卵の入れ物やポテトチップスの袋を使って、その場でどんどん仕上げていったら、みんなが盛り上がってくれて。今までにない楽しさを自分でも感じました。それが話題になったことで、フォークだけ渡されて「何かやって」とか、鳩よけのスパイクを使って「パンクなヘアにして」とか、そういう撮影がどんどん増えていきました。そこから、そういったヘアのイメージを持たれるようになり、ヘッドピースづくりが始まっていきましたね。

 その後、ニューヨークで入ったエージェンシーでは、広告の撮影が多く、ヘアスタイリングの経験を積んでいきました。今は、ヘアのお仕事もしながら、マネキン用のヘッドピースを作ったり、ファッションブランドとコラボしてモヒカン付きのパーカーを作ったり、挑戦するようにしています。

⎯⎯ ヘアスタイリングのとき、何を一番意識していますか?

 その人、その人の顔を見て考えることです。「一番似合うのはこれだろうな」を出発点に、そこをどう崩せるかを考える。鏡を見ながら指で触って動かしていき、一瞬いいなと思うバランスが見つかったらそこで止めて、「これだ」と思ったら、それをどうやって形にしていくかを逆算していく感じです。

 特に意識するのは顔周りの毛先と、外から見たアウトライン。前髪がストレートに落ちるのか、少し内側に入れるのかというバランスを、わざとちょっと崩す。一瞬「うん?」となる違和感があるんだけど、実はめちゃくちゃいいじゃん、という要素を探し続けています。

⎯⎯ 今後、挑戦したいことは?

 ファッションブランドとのコラボレーションや、コレクションのヘッドピース制作など、1人では作れないものを誰かと一緒に作るということは、これからも積極的にやっていきたいです。今日みたいに、Kanakoちゃんをはじめ、いろんなクリエイターが集まって、ぎこちない緊張の中から想像を超えるものが生まれる瞬間が、この仕事の一番の醍醐味だと思っているので。そこはずっと大切にしていきたいですね。

photography: monami

最終更新日:

上玉利茉佑

Mayu Kamitamari

FASHIONSNAP 編集記者

鹿児島県生まれ。東京外国語大学言語文化学部スペイン語専攻卒業。同大学院でラテンアメリカ文学について学び、修士課程修了後、2024年にレコオーランドに入社。国産から外資、韓国コスメまで幅広くビューティ分野を担当する。学生時代はスペイン舞踊部でフラメンコを踊る傍ら、アメリカ・ヴァージニア州とスペイン・バルセロナへの留学経験を通して、極度の甘いもの好きになる。趣味は海外ドラマとアイドル鑑賞で、「ギルモア・ガールズ」と「フレンズ」は50回以上視聴。

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