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【トップに聞く 2022】コーセー 小林一俊社長 「KOSÉ Beauty Partnership」制定で、ビジネスもサステナビリティも拡大へ

 新しい生活様式はもはや日常へと移行し、それに伴い企業の舵取りも大きく変化している。ビジネスの拡大を見据えつつも、サステナブルな社会に向けた経営戦略も必須だ。FASHIONSNAPは経営展望を聞く「トップに聞く 2022」を今年も敢行。今年から加わるビューティは、若い世代が関心を寄せる「サステナビリティ」をテーマに、トップ及びキーマンにインタビュー。第16回は、創業から「美しい知恵 人へ、地球へ。」を企業メッセージに、ビジネスとサステナビリティを推進するコーセーの小林一俊社長。2022年を中長期ビジョン「VISION2026」の第2フェーズと捉え、その実現に向けた価値観として「KOSÉ Beauty Partnership」を策定した。小林社長にコーセーが目指す、パートナーシップの意味と想いを聞いた。

■小林一俊(コーセー代表取締役社長)慶應義塾大学卒業。1986年コーセー入社。1989年から企画本部長室でCIプロジェクトの推進を担当。広告宣伝の刷新を図るなどコーセーのイメージ向上に大きな力を発揮。創業45周年にあたる1991年にはCIを導入。同年3月に取締役マーケティング副本部長、12月取締役マーケティング本部長兼宣伝部長、1995年常務取締役、2004年代表取締役副社長、創業50周年にあたる2007年6月から現職。社長就任直後から攻めの改革と守りの改革を行い、V字回復を成し遂げた。

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ー新型コロナウィルスが蔓延して2年が経過しました。Withコロナの2021年を振り返っていかがでしょうか?

 コロナは想定以上に長引いています。化粧品業界は回復基調ではありますが、コロナの影響で消費が落ちた商品ランキングに、化粧品がたくさん入っていましたから…。みなさんマスクはされていますし、特にリップはなかなか大変でした。依然厳しさは続いていると思いますが、私は逆にコロナによって化粧品や化粧に対する消費者の価値観が変わったのではないかと思いますね。

ーどう変わったのでしょうか?

 2つあります。一つは、男性も含めてですが、これまで化粧をする目的は身だしなみを整えるため、もしくは誰かに見てほしいといった意識からだったと思いますが、コロナ禍を経て自分をもう一度、見直すというのでしょうか、外出機会の減少で人から見られる機会が減ったり、逆にリモート会議で自分の顔を見ることが増え、自分自身のため、または自己表現といった価値観が多く見られました。今までにない新しい需要も期待できるものと考えていますし、コロナにより改めて気付かされたことは良かったと思っています。

ー確かに、誰もが自分の顔を見る機会が増えたことで自分を見つめ直したと思います。では2つ目は?

 2020年末、コロナ禍の最前線で対応されている医療従事者の方々に、感謝と敬意を込めて日本財団さんを通じて、819施設、29万人分、トータル116万個の化粧品を寄贈させていただきました。1年前から提供を始め、今でもわれわれのところにお礼のお手紙や寄せ書きなどが全国から届きます。「前向きに仕事ができるようになりました」「今日もがんばろうって気持ちになりました」といったコメントをいただき、日本財団さんからもたくさんの医療従事者の方からすごく喜んでもらいました!とお聞きしました。

コーセー
コーセー
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医療従事者の方々から感謝の言葉が今でも届くという

 こういったお手紙から、化粧品の持つ力を改めて感じさせられましたね。われわれはこれまで化粧品という、モノを販売していましたが、化粧品を届けることで、こんなにも人の気持ちに寄り添えるのだと。これもコロナによって改めて気付かされたことの一つです。アフターコロナに必ず生かしていけることではないかと思います。

ーそんな中、御社の足元の状況はいかがでしょうか?好調ブランドは?

コーセー2021年12月期連結決算(2021年から決算期を3月末から12月末に変更により4〜12月決算)
・売上高 2249億8300万円(前年同期比4.8%増)
・営業利益 188億5200万円(同14.1%増)
・経常利益 223億7100万円(同17.4%増)
・親会社の所有者に帰属する当期純利益 133億4100万円(同4.4%減)

 ハイプレステージブランドの「コスメデコルテ(DECORTÉ)」が好調で、香水「キモノ」と化粧下地「ロージーグロウライザー」は売り切れている店舗もあります。香水は「キモノ ユイ オードトワレ」「キモノ ツヤ オードトワレ」が大人気です。先ほども言いましたが、みなさん自己表現のためにお化粧や、気分を変えるために香水を取り入れたいというニーズが大きくなっているのではないでしょうか。また、昨年9月に「コスメデコルテ」の代名詞である美容液「モイスチュア リポソーム」を、誕生以来初めて、29年ぶりに「リポソーム アドバンスト リペアセラム」としてリニューアルしました。リニューアル後は約3ヶ月で37万本を売り上げ、過去に例をみないほどの大ヒットとなりました。こういった付加価値の高い商品がしっかりと売上につながったことは、われわれにとって嬉しい動きだと思います。

 そのほか、ヘパリン類似物質配合製品で敏感肌ニーズにも応える「カルテHD」が絶好調でした。マルホとの合弁会社のコーセーマルホファーマは2019年に設立後、1年で黒字化、2年目も前年をクリアしています。昨年は、「モイスチュアハンドクリーム」が発売初月に35万個を出荷する大ヒットとなりました。また、「ジル スチュアート ビューティ(JILL STUART Beauty)」ならではのピンクのニュアンスを加えた、アイブロウやアイブロウマスカラはSNSで話題になり人気を集めたのも良かったですね。

ー一方で伸び悩んでいるブランドはありますか?

 「雪肌精」や「ワンバイコーセー(ONE BY KOSÉ)」など他の中価格帯ブランド含めて盛り返しを図っていく必要があると思います。中でも雪肌精は、雪肌精クリアウェルネス「フリータイプ」を、3月に“敏感肌用”に刷新し、クリーンビューティにも対応していきます。以前から男性の使用も多かったのですが、ブランド全体でジェンダーレスなマーケティングを展開します。

コロナ禍でも、お客さま起点の発想でヒット商品を生み出す

30年ではなく、29年ぶりの刷新。その思いは「良い製品をいち早くお客さまに」

ー「リポソーム アドバンスト リペアセラム」のヒット要因は?

 社内の企画や営業の思いとして、本来だったら30年ぶりの今年、世界同時発売したいということだったと思います。ただ、それは作り手の勝手な思いであり、お客さま目線ではありません。実は私自身がこの美容液を29年間、毎日使っているのですが、新製品はエイジングケア機能も加わり、ジェンダーレスな香りで、マーケットの広がりも期待できるような本当に良い製品に仕上がりました。すばらしい製品ができたのならば、いち早くお届けするべき。お客さまを第一に考え、29年という中途半端な数字だったとしても、また世界同時発売が叶わなくても、日本だけでも先行発売すべきだと判断しました。市場が冷え込み、閉塞感が続く中で、少しでもお客さまの肌と心が潤っていただければという思いがありました。その結果、美容三代誌をはじめ、多くのメディアのベストコスメを受賞することができました。

コーセー
コーセー

29年ぶりにリニューアルした「リポソーム アドバンスト リペアセラム」

Image by コーセー

ーではサステナビリティについてはいかがでしょうか?

 弊社は「美しい知恵 人へ、地球へ。」を企業メッセージと掲げ、長年「美の創造企業」として地球環境に配慮した取り組みを行なっておりますが、昨年は花王さんと化粧品事業のサステナビリティ領域においての包括的な協働を発表させていただきました。包装容器への環境配慮素材の導入などといったことだけでなく、例えば化粧の必要性や習慣の啓発活動など、幅広くSDGsの課題に取り組んでいきます。

ーモーンガータ社の、役目を終えた化粧品から絵の具を製造・販売する事業の支援も行なっています。

 この取り組みはとても良い試みだと思っています。Maison KOSÉ銀座で、「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART Beauty)」の販売が終了した製品テスターから作成した化粧品絵具で、無色の造花に色付けし、フレグランス造花を作成するイベントを開催しましたが、「化粧品が絵具として再活用できるのは魅力的」「自宅でも、眠っているアイカラーを使って実践したい」など多くの反響を頂きました。お客さまには新たな形での化粧品の活用方法を学びながら、楽しんでいただくことができ、大変すばらしい取り組みだと改めてと感じました。顧客の方を招いたイベントだけでなく、今後はプロの画家の方とのコラボレーションなんかもおもしろいですね。

ー今後、たとえば協働ではどんな可能性がありますか?

 メイク製品はファッション性やトレンドを意識すると、どうしても在庫が残ってしまったり、購入した製品でもお客さまが使い切らないまま廃棄することになってしまいがちです。メイク製品をいかにパーソナライズして的確に無駄なモノを作らないようにできるか。そのためには現状の、幅広い製品を一律で納品するといった流通の仕組みを変えていかなければいけないと思っています。都市や街によって顧客層も違えば売れ筋も違います。たとえばですが、全ての製品を納品するのではなく、テスターやサンプルのみ店頭に並べ、本品は駅での受け取りやご自宅へ配送するといったことなどが可能になれば無駄の軽減にもつながると思います。モノづくりにおいても、低コストで短時間に機械的に大量生産するのではなく、AIなどを駆使し無駄な製品を作らない仕組みも重要です。また容器においては、競合他社と共通にすることも考えられますよね。こういったことを花王・カネボウさん、さらには小売店さんとも協働できれば、環境負荷軽減に大きく前進するのではないでしょうか。

ーそれでも残ってしまう在庫に対してはどうでしょうか?

 「KOSÉ Green Bazaar(コーセーグリーンバザール)」を立ち上げています。シーズン中に売り切れなかった商品を割引きして販売するのですが、単純な売れ残りのセールではありません。地球環境保全や循環型社会の実現を目指すプロジェクトで、一昨年から実験的にスタートし昨年、本格化しました。店頭やオンラインサイトでエコにまつわる問題の出題や情報発信することで、単に安くなった製品を買うというのではなく、サステナビリティを楽しみながら学ぶといった体験をすることで、よりエコを身近に感じてほしいという思いがあります。実際、お客さまから「環境課題について考えながら、買い物も楽しめた」「(エコについて)何かできたらいいなと思った」といったお声を頂戴しました。

ーではジェンダー平等、多様性の考え方について教えてください。

 2014年に買収したアメリカの「タルト(tarte)」から、アメリカ発のデジタルを駆使した、一番新しい化粧品の売り方を学べたと同時に、タルト社のジェンダーレスな価値観にとても刺激を受けました。人種も性別も年齢も超えてさまざまな人々が化粧品づくりを楽しんでいます。当時、日本も時間は掛かるだろうが、いずれこうなるだろう、そう感じていました。この数年の間に社会全体でこの考えが急激に進みましたが、当社は2020年の時点で外国人比率が約15%ありましたし、社外からさまざまな意見を取り入れるオープンイノベーションも積極的に行っています。立命館アジア太平洋大学(APU)の卒業研究では、「コーセーが発信すべきJ-Beautyとは何か」といった課題に対し、多国籍の学生さんが当社の課題を分析し、ビジネスプランを提案してくれました。また、女性管理職比率においては海外拠点も入れると38%まで高まっており、2026年には50%を目指します。

そのほか、2021年に実施したSDGs活動
「コスメバンクプロジェクト」に賛同し、ひとり親世帯の女性に化粧品3万点寄贈
直営店で障がいのある作家による限定デザインギフトボックスを採用
芸術・文化の支援活動の一環でヴェルサイユ宮殿の庭園修復事業に寄付
神戸市の水平リサイクル実現に向けた使用済み詰め替えパックの回収に参加
顧客とともにSDGsに貢献する機会を創出する「サステナビリティ ビューティ デー」をスタート
イオンのコスメやヘアケア製品の使用済み容器回収に参加 etc.

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