Fashion インタビュー・対談

<ラウタシー 鈴木えみ×ジョン ローレンス サリバン 柳川荒士>仲良しデザイナー2人の居酒屋本音トーク

 モデルとして活躍しながら自身がデザイナーを務めるブランド「ラウタシー(Lautashi)」を立ち上げた鈴木えみと、「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」を手掛ける柳川荒士。家族ぐるみの付き合いで、普段から飲み仲間でもある2人。今回は、柳川行きつけの大衆割烹「藤八」を舞台に、デザイナーとしての苦楽から、プライベートで学んでいる英会話教室の話題まで、酒を片手に"本音トーク"を繰り広げる。

 

■ネットで「夫婦」と間違えられるほどの仲の良さ

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ー お2人の出会いは?

柳川:僕がもともとえみちゃんの旦那を知っていて。2人が付き合っていた頃、ライブ会場に彼がえみちゃんを連れて来て、そこで初めて会ったのを覚えてる。

鈴木:結婚する前だから、もう5年以上前かな。あの日の帰り道、私が下り坂で滑ってコケたんですよね。耳が一瞬聞こえなくなるくらい衝撃的な転倒で、荒士さんと出会った記憶が薄れてしまったくらい(笑)。

柳川:もちろん僕は会う前からえみちゃんのことは知ってたけど、あのスリップで距離感が縮まったと思う。普通にコケる人だ、そんなに構えなくて良いんだってね(笑)。共通の知り合いも多くて、それからみんなで頻繁に飲むようになったんだよね。

鈴木:それから「ジョン ローレンス サリバン」の展示会にも行くようになって。荒士さんが思い描く女性像に共感できる部分もあって、自分でもよく着ていますね。

柳川:えみちゃんは感度が高い。展示会でピックするのも、毎回結構強めなアイテムが多いし、それをすごくかっこよく着てくれる。えみちゃんのスタンダードはすごくエッジがきいてる。バランス感覚が良いんだよね。

鈴木:そういうアイテムを応援したい!っていう気持ちも込めてオーダーしてます。だってそういうアイテムの方が、絶対思い入れがあるじゃないですか。

柳川:お気遣いありがとう。2013-14AWコレクションはパリまで見にきてくれたよね。

鈴木:うん。ファッションショー自体、生で見るのが初めてで、偉大だなって思いました。パリまでコレクションを見に行った直後に旦那と入籍したので、荒士さんとの夫婦説が流れ始めたんですよ(笑)。

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ー ネットではお2人が夫婦だというトンデモ記事がたくさん出ていますよね。

柳川:僕が申し訳ない気持ちになる(笑)。

鈴木:未だに「この方が、鈴木えみの旦那の柳川荒士さんです!」って言い切ったまとめ記事が上がっていますね。面白くて、もう肯定していこうかなって(笑)。飲みにもよく行くし、英会話の先生も一緒ですね。

柳川:最初は僕がえみちゃんに別の先生を紹介したんだけど、ちょっと合わなくて(笑)。それでえみちゃんが見つけた人が逆にめちゃめちゃ良いから「試してみた方がいいよ」って言われて受けてみたら、本当にすごく教え方が上手で。僕も変えちゃったんです(笑)。

鈴木:そうそう。「ジョン ローレンス サリバン」チームは英会話グループレッスンとかもしていて。

柳川:自分がやってよかったから、スタッフのためにも英会話教室をね。

ー 英会話レッスンの目的は?

鈴木:周りに英語を話せる友達も多くて昔から英語をちゃんと勉強したいと思ってたんですが、何かきっかけがない限り大人になってから真剣に勉強を始めるのって難しいじゃないですか。自分に子どもが生まれて、娘の将来の選択肢、可能性を広げたくてインターナショナルスクールに通わせようと思っていて。インターに入れるなら親も喋れた方がいいんじゃない?と思って始めました。

柳川:僕は外国の人との仕事が多くて、必然的に英語でコミュニケーションをとる機会も増えたから。海外の人たちとの仕事が増えることで、英語面の成長も感じるからやりがいがある。

鈴木:英語ができて損することは絶対無いですからね。いま2冊目のテキストなんですけど分厚くてなかなか進まなくて...。たまに電車のなかで受験生みたいにテキスト開いたりしてます。

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■「ラウタシー」立ち上げでデザイナー仲間に

ー 鈴木さんがブランド「ラウタシー」を立ち上げて、共通の話題も増えましたか?

柳川:最近は、飲みながら服の話をすることも増えたよね。

鈴木:技術的なことを荒士さんに聞くこともありますね。「こういうアイテムを作りたいんだけど、テクニックとしてどういう方法があるのか」とか。あと業者さんを紹介していただくこともありましたね。友達とはいえ、荒士さんは長年この道で生きてきた大先輩。最初のコレクションも見に来てくださったんですけど、緊張しすぎて「見ないで!」っていう感じでした(笑)。

柳川:「ラウタシー」は、保守的じゃないし潔い。良い意味でビジネスライクじゃない部分もあって、チャレンジがしっかりと最終的な形まで落とし込めている。モデルの仕事で培った経験がベースになって、作るもののセンスも良いし成熟した感じがする。僕がブランドを始めた頃は勢いに任せた部分もあったから、今考えるともっと戦略的に考えることもできたのかなと思うこともあったりして。初期衝動的な良さというのも、もちろんあるけどね。

鈴木:そっちのほうが私は羨ましいですけどね、天才型というか。私は経験型だと自分で思うので。カルチャーに詳しいわけでもないし、ずっと同じスタイルの服を着てきたわけでもない。でも幅広く触れてきたことだったり、いろんなスタイルの服を着てきた経験からくる「ミックス感」が自分の強みだと思うので、それを意識して作るようにしてます。

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ー 「ラウタシー」立ち上げから1年。手応えは?

鈴木:デザインひとつにしても、自分の思い描いた形を作るのってすごく難しい。携わる人が多ければ多いほど、最初に思い描いていたものから少しずつ変化していって、出来上がるものが結果的に絶対、多少ずれてしまう。だけど、それが最終的に「ラウタシー」の服として世に出る。そこにもどかしさを感じる時もあります。もちろん良い方に転ぶこともあるんですけど、ものづくりの難しさを日々感じてます。

柳川:それはすごいわかる。自分が100%納得していなくても、期限のある仕事だからね。出すか出さないかが最終的に自分の判断になる。一度世に出せば、どんな言い訳もできないよね。妥協して世に出すのか、ストップをかけるのか。その判断は責任重大。若い頃は勢いや時代感もあって出す判断をしたことが多かったな。でも立ち上げて一年で、もうそういうことを考えてやっているっていうのがすごい。

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鈴木:ファーストサンプルがあがってきて「ウソ...私の絵と全然違う。なんで?」ってこともあります。荒士さんもいまだにそういうことあります?

柳川:あるよ。強めのデザインをしてサンプルが上がってきて「うわ!何このデザイン!恥っず!」みたいなこともある(笑)。でもセカンド、サードでやり直して、良い方向にしていく作業で近づいていくのも嬉しかったりね。

鈴木:荒士さんでもあると思うと励みになる(笑)。私はファーストサンプルも自分で着ることが多いから、思ったように仕上がらなかったとき、鏡の前に立った時の虚しさといったら...。

柳川:「もうこのアイテムスキップでよくない?」って諦めそうになることもある。もう辛くて辛くて。

鈴木:フィードバックも辛いですよね。評価されたくてやってるわけではないけど、評価は絶対についてくるし、それがあっての結果だからしょうがないんですけどね。やっぱり良い意見もあれば悪い意見もあるので、それを受け止めなくちゃいけないんですけど、まあ傷つくこともありますよね。荒士さんも傷つくことあります?

柳川:傷ついたり、嫌だなって悩むこともあるけど、なんだかんだ言いながらもシーズンになったらまたやらなくちゃいけない。そうなると、どこかで折り合いをつけないとね。やっぱり自分を信じてまた新しいシーズンを始めて、これは新しいしかっこいいとか、これはすごくフレッシュに見えると思ってモノ作りをする。でもまた様々なフィードバックが来るから。それによって右往左往していちゃダメなんだろうけどね。

鈴木:それってファッションに限らず、何に関してもそうかもしれませんね。

■15年目を迎えた「ジョン ローレンス サリバン」

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ー デザイナー業、楽しい点は?

鈴木:私は日々のメモをとるのにワクワクしています。

柳川:何?メモって。

鈴木:日常的に「こういう服が作りたい」っていう発見とか考えをメモしていって、それを詳細にしていく作業でコレクションを作っているんです。そのアイデアをメモに書き留めるのがすごく楽しい。あとデザイン画を描くのも好きです。私は欲張りなので、技術的な面も全部自分でわかるようになりたい。新しいことを知ったりわかるようになるのって、何でも楽しいじゃないですか。モデルの仕事も20年くらいやってますが、仕事相手によって毎回新しい気づきがある。服作りも多分同じで、その新しい学びがずっと続いていくんだろうなって思っています。

柳川:僕もまさか15年も「ジョン ローレンス サリバン」を続けるとは思ってなかった。ファッションって満足しないからね。春夏を作っていても、「秋冬でこんなことやりたい」っていうアイデアが脳内で平行して浮かんできたり。次これにチャレンジしてみたいなということが常にあって、やりたいことがあるからモチベーションは下がらないじゃない。それに、ファッションって、一回「何か」でドーンと行くかどうか。それを追い求めてるところがある。

鈴木:「何か」ってどういうのですか?

柳川:「サンローラン」がスモーキングジャケットで人気になったみたいに。「ジョン ローレンス サリバン」でも何か残せるようなモノを作れたら良いなと思いながらやってるし、その「何か」が自分のブランドにも起きて、ファッションの歴史に残るようなブランドになれるかもしれないっていう可能性を、生涯かけて求めているのかも。

鈴木:それって素敵ですね。夢があります。

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ー ジョン ローレンス サリバンは現在、発表拠点はロンドンですね。15年間でハードルを感じた時期もあったのでしょうか?

柳川:アイビールックが流行ってメンズファッションがコンサバになった時期は、僕のブランドにとってはなかなか厳しかったね。もともと若い子たちから人気がでたけど、自分が大人になって30〜40代に向けた服を作らなきゃならないのかなという迷いが生まれて。その世代を意識したモノ作りへとベクトルを変えて2年間くらいチャレンジしてみたけど、自分がすごい息苦しくなっちゃったんだよね。ちょうどパリに挑戦して少し経った時期だったかな。でも、徐々に海外の友人やチームと接していくうちに、「何でこんな息苦しいことをやらなきゃいけないんだ?自分が好きでサリバンをやってるんだ。やりたいようにやればいい」って思えるようになって肩の荷が下りたというか。やっぱり感度の鋭い若者に自分の服を伝えていきたいって再確認して、前のクリエーションに戻していった。後から知ったんだけど、ラフ・シモンズも常にティーンエイジャーに響くモノ作りを意識しているって過去にインタビューで言っていたと聞いて、自分が悩みながら経験して出した答えを、ラフのような優秀なデザイナーも考えているんだなって思った時に自信につながったよね。

鈴木:何か焦りみたいなものがあったんですかね。

柳川:若い頃は一緒にやってた奴らがどんどん活躍していったり、自分がなかなかパリで活躍できなかった悔しさとかもあったんだと思うな。ずっとファッションのことばっかり考えてて辛い時もあったけど。自分も諦めないでやっていこうかなって思えるようになった。

鈴木:「ノームコア」が数年前に流行ったりしましたしね。

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柳川:スティーブ・ジョブズがなぜかファッションアイコンになったりしてね。「イッセイミヤケ」のタートルネックを大量買いとかする人でしょ?あれが一番かっこいいみたいになっちゃって。いや待てよ、と。「僕どうすりゃいいの?」って(笑)。

鈴木:ノームコアって言ってる時点でノームコアじゃないですね。でも、海外のファッションウィークとか見ていてもまたエッジの効いたトレンドが戻ってるように思うな。

柳川:若者たちが個性的なブランドをピックアップするようになってきて、デザイナーにとってはいい流れだよね。ブランドが苦しかった時期は、「より普通」じゃないと売れないみたいになってたけど、いまは様々なブランドが存在できるというか。個性をちゃんと選んで買ってくれるようになった。うちのブランドにとっても、それはすごく良いムード。

ー 最近では海外に早い段階で進出する若手ブランドも、日本には多い印象です。

柳川:良いことだと思う。日本でも海外でもやることは変わらないし。パリだからロンドンだからって気負うことなく、海外に出せば早く注目を浴びる可能性も広がる。早い段階で海外のセールスとかを経験して、自分のブランドが何をすべきなのかがわかるのも良いことなんじゃないかな。海外で売ることがすごくレベルの高いことだと思わなくなるだろうし。日本で売っていかなきゃって考えすぎると、無意識だとしてもそっちに寄ってっちゃう部分ってあると思う。

鈴木:私は東京に一番長く住んでいることもあって、モデルとしても「ラウタシー」でも日本で頑張りたい、勝負したいっていう気持ちがどこかにありますね。

柳川:でも最近出していたニットとか、海外の方が反応いいだろうなっていうアイテムを作り始めている感覚があるけどね。プライスが高いんだったらデザインはシンプルで長く着られる物の方が良い、っていう合理的な考えが日本には浸透しているけど、海外の人はファッションをもっと感覚的に楽しんでいる印象。ワンシーズン思いっきり着て楽しんで、来シーズンはまた新しいものを着ようっていう感覚というか。だからちゃんとファッション産業が循環してる。

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ー改めて、お2人はお互いにとってどんな存在ですか?

柳川:良い友達であり、ホッとする仲間でもあり。ブランドを始めたことで共通の話も増えてありがたいなって思う。苦しみを分かち合うとかではないけど、たまに「大変だよね」とか「忙しいね」とか言い合えるのは嬉しい。

鈴木:私も「わかるわかる!」ってもっと言えるように頑張らないといけないな。どんなブランドも山あり谷ありじゃないですか。長く続けている荒士さんみたいな存在が身近にいるから、落ち込むことがあっても「みんなこの道を通ってきているんだ」って思ったりして、それはすごい励みになります。デザイナーっていうとかっこいいかもしれないけど、本当に孤独ですもん。

柳川:うん、最終的な決定は自分だからね。もちろん周りに意見は聞くんだけど、結局は孤独な仕事だよね。でもそうやって作った服を展示会とかでえみちゃんはじめ友達がきてくれて、「良いですね」とか「可愛いね」なんて言ってくれると報われた気がするし、もっといいもの作りたいって前向きになったりモチベーションにもなる。そういう関係は励みになるね。

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藤八のオーナー(中央)を迎えてのスリーショット

■ 大衆割烹 藤八
住所:東京都目黒区上目黒3-1-4 グリーンプラザ 2F(※改装のため現住所に移転)
営業時間:17:00~23:30
定休日:日曜・祝日
電話番号:03-3710-8729
柳川荒士のおすすめ:腸詰め、コロッケ、マカロニサラダ
鈴木えみのおすすめ:ハツ(串焼き)

■ジョン ローレンス サリバン:公式サイト
■ラウタシー:公式サイト



Photo:Wataru Fukaya
聞き手:高村美緒・谷桃子

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