1999年2月に誕生し、今年25周年を迎えたトータルメイクアップブランド「ルナソル(LUNASOL)」。ブランド名は、ラテン語で「月と太陽」を意味し、女性の中に存在する多面美を引き出すブランドとしてスタートした。ベージュアイシャドウを軸に多くの女性に支持されてきた。さらに、2005年の「浄化メイク」、2018年の「水ツヤ肌」などキャッチーな言葉はメイクやスキンケア、ベースメイクに対する新しい意識づけとなり、話題となった。20周年を迎えた2019年には、「エゴイスティック シック(EGOISTIC-CHIC)」をコンセプトに掲げリブランティング。個性豊かな色や質感を自由に選べる4色セットのアイシャドウ「アイカラーレーション」を皮切りに、新たなブランド像を訴求した。
25周年を迎えた今年。1月には、周年を記念した完全予約制のイベントを実施し、2月にはベージュを多面的に表現した8色入りの限定アイシャドウパレットを発売。常に話題を生み出してきたルナソルのこれまでの歩みと今後の展望を、中野一世ブランドマネジャーとPRを担当する澁谷梨里氏に聞いた。そこで見えてきたのはブランドの資産を守りながらファンと向き合い、進化する姿だった。
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「ベージュアイシャドウ=ルナソル」は仕掛けではなくお客さまの支持
ー「ルナソル」と言えば、多くの方がベージュのアイシャドウをイメージされるかと思います。これはデビュー時から意識されたことなのでしょうか?
中野一世ブランドマネジャー(以下、中野):実は、ブランドとしてベージュのアイシャドウにこだわっていたわけではないんです。その人自身の骨格がキレイに見えたり肌なじみが良かったり、肌に溶け込んでいるようなメイクなどのブランドの理念を突き詰めた結果、多くのお客さまが肌の色に近いベージュと紐づけて支持してくださったことで「ベージュと言ったらルナソルだよね」と認識して頂けるように。今はそれが大きなブランドの資産となっています。
澁谷梨里PR担当(以下、澁谷):ブランドデビュー時からスキンケア、ベースメイク、ポイントメイクを展開していて、当時から人工的なツヤ感ではなく、その人自身の美しさを引き立たせるツヤ感を目指し、ブランド名にも通じる美しい陰影をイメージしていました。このコンセプトは、現在ベースメイクやスキンケアで提案している水ツヤ肌にも、脈々と受け継がれています。特にアイシャドウに注目いただくようになったのは、2005年に新たなコンセプトとして「浄化メイク」を掲げた頃からでしょうか。
中野:2007年に誕生した「スキンモデリングアイズ」が「ベージュアイシャドウ」のイメージに一役買ったアイテムの筆頭だと思います。ただ、私たちとしては「アイシャドウもあくまでトータルメイクブランドとしての展開アイテムのひとつ」という考えで提案しているんです。
澁谷:アイシャドウで注目いただくようになる前から、人それぞれの骨格の美しさを引き出すカラーパレットを追求してきたアイテムを揃えていたことで、お客さまから自然と「ベージュアイシャドウと言えはルナソル」と言われるようになってきたのだと思います。
「浄化メイク」の誕生はスタッフの声がきっかけ
ーその「浄化メイク」が2005年に誕生した経緯を教えてください。
澁谷:1999年のブランドデビューから数年が経ち、自分達が持つブランド像とお客さまにどういうメッセージを伝えていきたいかを社内で擦り合わせたところ、噛み合わない部分があることがわかりました。例えば当時、「上質の女」というコンセプトがありましたが「上質の女ってどんな女性?」と提案したいイメージに対して社内の認識がズレていたんです。
ブランドとしてメイクステップを大切にしていたことから、まずはお客さまに提供しているメイクを改めて自分たちが体験しようとなったんです。その時、ていねいに施されるメイクの過程を体験し、「心まで洗われるみたい」との声がスタッフから上がりました。それをきっかけに、現在のルナソルの根幹でもある「仕上がったとき、こころまで洗われているような、浄化メイク」が誕生したと。そこには、見た目の美しさだけではない、その人自身が持っている多面美を引き出していきたい、という思いがあります。今振り返ると、この「浄化メイク」の誕生がブランドとして大きな山だったと思います。
ーその後、時代としてもアイメイクが注目されたこともあり、アイシャドウが人気となったのですね。
澁谷:キラキラとラメ感が目立つメイクが流行った時、試したいけど若い人がつけるものというイメージがあり、中々挑戦できないという大人の方々がいらっしゃいました。そうした時代背景の中で発売したアイシャドウパレット「ジェミネイトアイズ」は、繊細な質感で、大人がまとえる煌めきが美しいとして注目していただきました。ただ、それも「その人自身の美しさを引き立たせる」という理念に根付いていることに変わりはありません。
中野:それまでベージュは落ち着いた印象がありましたが、ルナソルはその上品な雰囲気にさまざまな色や質感、ラメの輝きが持つ華やかさを掛け合わせることで、その考え方を変えることができたと思います。ある美容のプロの方には、ルナソルはベージュのアイシャドウでありながらトレンドメイクになることを「ルナってる」と言っていただき、その時は思わずガッツポーズが出ましたね(笑)
ールナソルのアイシャドウは口コミで“ユーザー独自のネーミング”で広がることも多いですよね。
中野:ありがたいことに、そうですね。アイシャドウパレット「アイカラーレーション」の「15 Flawless Clarity」は、“ダイヤモンドパレット”、同じく「07 Darjeeling Camel」は“紅茶パレット”と呼んで頂いているのですが、いずれもお客さま発信で広がったネーミングなんです。
ー1999年のデビュー以来、ターニングポイントとなった商品を教えてください。
澁谷:アイシャドウでは、2007年の「スキンモデリングアイズ」と「ジェミネイトアイズ」(2019年に「ジェミネイトアイズN」にリニューアル)、2011年の「スリーディメンショナルアイズ」、2015年の「セレクション・ドゥ・ショコラアイズ」でしょうか。
ー「セレクション・ドゥ・ショコラアイズ」は発売当時話題だったのを覚えています。遊び心を取り入れた新しい表現でした。
澁谷:名前にもある通りショコラの世界観を落とし込んだアイテムで、限定品も合わせて多くの方に愛していただき、多くのベストコスメを受賞することができました。甘い香り付きで、見ても使っても楽しめるという、アイシャドウで叶えられる表現の幅が広がったのではないかと思っています。現在こちらから特にプロモーションをかけてるわけではないのですが、ずっとご愛用をしてくださっている方が多く、お客さまの愛に支えられているアイテムのひとつです。
20周年で発売した全てベージュの10色入アイシャドウ「ザ ベージュアイズ」
スキンケア・ベースメイク認知を広めた水ツヤ肌の提案
ースキンケアアイテムでもファンがついている印象ですが、きっかけはあったのでしょうか。
中野:2018年に水ツヤ肌を打ち出し、うるおいで満たされたようなツヤ肌を演出するベースメイクとスキンケアへとリニューアルしたのがターニングポイントです。中でも2019年に発売したジェルタイプの洗顔料「スムージングジェルウォッシュ」は、ルナソルが目指す肌作りを“スキンケアの前の洗顔から”整えるアイテムとしてバズを生み、人気を支えてくれています。
澁谷:水ツヤ肌についても、その人自身になじみ、溶け込むというルナソルらしい考え方がベースにあります。スキンケアはベースメイクがいらないかのような美しい肌、ベースメイクはまるでファンデーションを塗っていないかのような肌を目指し、双方の気配を感じさせないというのが水ツヤ肌の考え方です。例えば、化粧液の「オイルインソリューション」は厳選したオイルと保湿剤を絶妙なバランスで配合し、リキッドファンデーションの「グロウイングウュータリーオイルクイド」は色付きのオイルを使用するなど、オイルの配合にこだわりながら水ツヤを表現しています。
中野:メイクするには土台となる肌をしっかり整える、というブランドの基本を大切に設計されています。「魅せる肌(スキンケア)と秘める肌(ベースメイク)」と考えています。
リブランディングに賛否あるも、商品を使ってファンも納得
ー20周年を迎えた2019年にリブランティングし、ブランドコンセプトを「エゴイスティック シック」と刷新しています。その意図を教えてください。
中野:「自由奔放と洗練。対極にあるふたつの価値から、新たな表情をつくっていくブランドへ」をコンセプトとし、4色セットのアイシャドウパレット「アイカラーレーション」を発売しました。洗練感は保ちながらも、時代に合わせてより色遊びなどのチャレンジを楽しめるラインナップへと進化させ、表現の幅を広げました。
ーヴィジュアルが大きく変わったことが印象に残っていますが、当時の反響はいかがでしたか?
中野:正直なところ、発表当初は賛否はあったかと思います。それは元々のブランドイメージを愛してくださった方が多いからこそだと思いますが、リブランディングによって全てが変わったのではなく、“変えてないところ”もたくさんあります。一見華やかな色合いのパレットやカラーラインナップも、根底には「その人自身の美しさを引き立たせる」という考えが変わらずにあったんです。発売後は、実際に使った方々から「私たちが好きなルナソルの核は変わっていないんだ」と、新たなコレクションを楽しんでくださるお声をいただくことができました。
ー「変えるものと変えないもの」の取捨選択は難しいですね。
中野:チーム内では常にそこを突き詰めています。時代の変化とともに変えていかなければならないものと、変えないもの、その見極めが大事だと思っています。お客さまはルナソルに何を求めているか、何を愛してくださっているのかを突き詰め、答えに近づいていく感じです。私たちの根底には、肌なじみの良さや使いやすさという考えがあるので、例えばカラー数が増え、鮮やかなラインナップでもルナソルらしさを忘れずに展開できる。本質は変えず、時代に合わせてチューニングしていくイメージですね。
ー顧客層に変化はなかったのでしょうか?
中野:ブランドデビュー時から、顧客層はほぼ変わらずボリュームゾーンは30代前半です。とはいえ、20代や40代など幅広い年齢層のお客さまがいらっしゃいますね。ベーシックなベージュ系のカラーは年齢を問わず人気なので定番のラインナップとして継続し、加えてトレンドを発信する新しい色もブランドの理念を軸にしながら展開しています。
ー継続して売っていくものと新しい提案のバランスが絶妙だから、常に新しい客層の取り込みに成功されているのですね。
中野:アイカラーレーションが発売されるまでは、2007年に発売した「スキンモデリングアイズ」の「01 Beige Beige」が一番人気だったんです。
澁谷:皆さまに「スキモデ」と昔から可愛がっていただき、一番親孝行な子ですね(笑)。今でも「社会人になったお祝いにプレゼントされるコスメ」として注目いただいたり、売り上げランキングでも常に10位以内に入ったりと不動の人気アイテムです。
ー最近の人気アイテムは?
中野:2020年秋コレクションで登場したアイカラーレーションの「07 Darjeeling Camel」が人気ですね。それから、2021年秋コレクションの限定色「EX12 Flawless Clarity」は、あまりの人気に再販の声が多く集まり、2022年に定番アイテム「15 Flawless Clarity」として復刻発売したんです。
ー2023年の業績はいかがでしょうか。
中野:2023年は好調に推移しています。その売り上げに貢献したのは、先ほどお話ししたアイカラーレーションの「15 Flawless Clarity」のほか、「18 Sepia Amber」、「19 Mahogany」(いずれも2023年春コレクションで登場)です。
ーアイシャドウ以外にトピックとなった商品はありますか?
中野:口紅の色持ちをアップするリップバーム「メロウフィットバーム」や、毛穴をカバーして肌をトーンアップするルースパウダー「スムースクリアパウダー」が好評でした。
澁谷:日やけ止め「グロウイングデイクリームUV」もヒット商品のひとつですね。独自開発のラメラ乳化技術を採用した、うるおいが持続するUVクリームで、みずみずしくストレスのない使い心地で支持されています。こういうテクノロジーはルナソルのイメージにはないかもしれませんが、他にも角栓に働きかける洗浄技術を採用した「スムージングジェルウォッシュ」や、、オイル美容液発想から生まれたクレンジング「テンダーハグ バームオイルクレンジング」、水を一切使わずに植物オイルをたっぷり使った美容液ファンデーション「カラーオイルセラム」など、技術的なチャレンジもしていて、近年人気のアイテムが増えています。
ブランドの資産を大切にしながら、お客さま第一でさらなる進化へ
ー最近では、ファッションショーのバックステージを担当されていて、新たなチャレンジですね。
澁谷:デイリーに活躍する色と同じパレットが、ファッションショーのステージでも使われ、これほど表現の幅があると知れたのは、私個人としても新しい発見でした。
中野:ファッションショーのバックステージは2022年に始めたのですが、そういうチャレンジのマインドはこれからも持ち続けていきたいと思っています。
ー2019年のリブランディング以降は年6回メイクルックを提案するサイクルを採用していましたが、今年から年4回に戻しています。その理由を教えてください。
中野:戻したというより、今年は25周年でルナソルの資産をより際立たせ、「ルナソルってこうだよね」と知って頂くために、1つのコレクションの規模感を大きくしたんです。私たちとしては、回数にこだわっているわけではないので、現段階では来年以降の年間コレクション数は未定です。大切なのは、皆さんに発信する内容とタイミング。トレンドをアジャイルに発信していくというところにフォーカスを当てていていきます。
ー2021年から先行発売で適正在庫を調整する動きがあり、サステナブルにもつながっていると聞いています。
中野:2021年以前も先行発売は実施していたのですが、定期的に行うようになったのが2021年からなんです。全国発売前の販売数予測と発売後の推移はある程度のギャップがあったので、市場の変化やSNSの温度感も含め、先行発売することで需給予測もしやすくなりました。それが廃棄数削減にもつながっているんです。メイクブランドとして、適したタイミングでトレンドを発信する一方、事業としては環境にも配慮し、少しでも廃棄をなくすよう需給予測の精度を上げていく、それをセットで考えることが必要だと思っています。
ー25周年として、今後予定していることを教えてください。
澁谷:おかげさまで、「ベージュメイクと言ったらルナソルだよね」と思って頂ける“ブランドの資産”が25年を経てできました。今後発売予定の新商品も、プロモーションでも、そのブランドの資産を顕在化し伝えていく年にしたいと思っています。25周年だけでなく、これからはその土台をより強くしていきたいという思いです。
ー2024年の売上目標と、これからのブランドの未来像は?
中野: 市場の成長率よりプラスアルファで伸ばしていきたいです。規模拡大を優先し過ぎると、必要以上に変えなければいけないことが出てきてしまいます。ルナソルが培ってきた今までの資産を大切にしながら、お客さまを第一に考え、ブランドとして今後も進化し続けていきます。
■ルナソル:公式サイト
ライター・エディター
文化服装学院卒業後、流通業界で販売促進、広報、店舗開発を約10年経験した後、フリーランスとして独立。下着通販カタログの商品企画などを経て、現在はランジェリーやビューティを中心に、雑誌、新聞、ファッションウェブサイトなどで執筆・編集を行う。
(聞き手:福崎明子、平原麻菜実/編集:平原麻菜実)
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