Fashion ファッションショーの作り方

【連載:ファッションショーの作り方 vol.10】ダブレットデザイナー井野がショー直前に思うこと

doublet 2017SS Collection
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 「『リアリティ』こそが作品に命を吹き込むエネルギーであり『リアリティ』こそがエンターテイメントなのさ」。荒木飛呂彦の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に登場するキャラクター岸辺露伴のこの言葉を座右の銘に掲げ、ユーモアやギミックを散りばめたコレクションを製作しているのが「ダブレット(doublet)」のデザイナー井野将之氏です。連載「ファッションショーショーの作り方」10回目は、同氏がファッションショーで表現したいこと。

【短期連載 vol.1】ファッションショーの基本
【短期連載 vol.2】"東コレ"デビューするダブレットとは?
【短期連載 vol.3】ショーイメージを固める
【短期連載 vol.4】スタイリストの仕事
【短期連載 vol.5】ショー音楽
【短期連載 vol.6】モデルに聞く10の質問
【短期連載 vol.7】ショー演出
【短期連載 vol.8】広報の仕事
【短期連載 vol.9】ヘアメイクの仕事
【短期連載 vol.10】ダブレットデザイナー井野がショー直前に思うこと
【短期連載 vol.11】ダブレット、ショー当日の舞台裏

■「本当に良い服だけを作る」2016年秋冬の転機

−ショー3日前、今の心境はどうですか?(※3月22日収録)

楽しみ半分、怖さ半分ですね。スタイリングなどは何回も練ってきたので自信はあるんですが、演出はぶっつけ本番になってしまうところがあるので。会場入りしてショーまでの3時間半の間でどれだけ集中してできるかが勝負だと思います。

−ショーでチームを組んだスタイリストのデミ・デム(DEMI DEMU)氏とヘアメイクのNORI氏は2016年秋冬からルック撮影に参加しています

カメラマンの松岡一哲さんとアートディレクターの樋口裕馬さんとずっとルックを撮ってきて、そこにデミさんのスタイリングとモデルの選定、NORIさんのヘアメイクが加わったんです。一哲さんが「これまでは良く撮らなきゃいけないという思いが先行していた。でもデミさんとノリさん入ったことでスイッチが入った」と言ってくれたことがあり、それは嬉しかったですね。

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−2016年秋冬からコレクション製作の体制も変更しました

服そのものの強さをもっと出そうと考えたんです。「こうしたほうが売れるんじゃないか」という考えを捨て、自分たちが本当に良いと思える服だけを作ることに専念しました。それまでは自分の考えで進めてきたところがあったんですが、関わってくれる人の意見にもしっかり耳を傾け、自分のことを想ってくれている人すら説得できないならお客さんに買って頂ける良い服は作れないなって。ショーのインビテーションをデザインしてくれたWab Design INC.の中村和貴さんにお願いして、ブランドロゴもこのシーズンに変えました。

−バイヤーの反応はどうでしたか?

とてもよかったです。実際売り上げも前シーズンから2倍くらい伸びました。国内に加え、海外のアカウントも増えましたね。

■"アイデア"と"リアリティ"の共存がダブレット

−インスピレーション源について

インスピレーションは色々なものから得ます。街を歩いている人や映画、漫画、音楽、あと本の言葉や文からも影響を受けますね。昔よくやったのがメディアに掲載されたメゾンブランドについてのショーレポートを読んで、書かれた文章から写真を見ないでどんなコレクションだったかというのを自分なりに想像してみるというもので。僕の受け取り方がひねくれてたんだと思うんですが、実際のコレクションとは全然違うものを想像していたんです。想像したイメージと写真で見たコレクションとのズレが、新しいアイデアに繋がることもありました。

−デザインする上で大切にしていることを教えてください

デザインは後から付いてくるものだと考えています。まず最初にアイデアがあって、発展させていく中で最終的に辿り着いたものがデザインという考え方です。その順番を大切にしています。

−なぜアイデアが先でないと駄目なんですか?

オリジナリティが出なくなってしまい、新しさを追求できないんです。アイデアは、1週間考えても出ないこともあれば、2秒くらいでパッと出てくることもありますね。

−ショーの準備でも突発的に出たアイデアを採用していました

その時感じたことをその場で決めて詰めていくと良いものが作れるという実感があるんです。「明日までに考えよう」となるとイメージがどんどん薄れて、納得のいくレベルまで達しない。ただデザインもそうなんですが、ショー準備も結局締め切りギリギリまで他に良いアイデアはないかと考えてしまって。だから周りの方には終始迷惑をかけてしまい申し訳なかったと思っています。

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−座右の銘は何ですか?

「『リアリティ』こそが作品に命を吹き込むエネルギーであり『リアリティ』こそがエンターテイメントなのさ」という「ジョジョの奇妙な冒険」の岸辺露伴の言葉です。言葉遊びなど、変わったアイデアをデザインに落とし込んだ服が多いので、リアリティにこだわらないとユーモアがぼやけてしまいチープに見えてしまうんです。

−リアリティというのは具体的に?

"本物"というか嘘っぽくないことがリアリティだと思っています。デニムで例えると色々な織の種類はありますが、僕はリーバイスでおなじみの3/1の綾織が100人中90人が本物だと答える素材だと考えていて、それを基本ベースにアイデアを加えていかないと、結果嘘っぽくなるような気がしていて。もともとのベースが本物だからこそ奇をてらったアイデアが生きてくると思っています。

■ファッションショーで表現したいこと

−初めてのショーの準備も佳境です

メッセージ性のようなものは無いですが、ショーの後にハッピーエンドの映画を見た帰り道みたいな感覚になってもらえると嬉しいですね。帰りにご飯を食べに行って映画の話で会話が弾んだりするように、ダブレットのショーでもそうなってくれると最高です。

−ショーをやる意義は何だと思いますか?

ランウェイを見せることだけがショーだと考えていなくて。最終的には一つのエンターテインメントだと思ってるので、ショーに向けた高揚感を出したくて今回はインビテーションなどもこだわりました。例えばクリスマスだったら街がクリスマスムードになって、プレゼントも貰えると思い当日まで楽しみだったりするじゃないですか。この"お祭り感"というのはとても楽しいことだと思っていて、それを自分なりに作ろうと思っています。当日会場で配布するプレスリリースやライブ映像なども楽しんでもらえるように色々と準備しています。

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インビテーションに来場者の似顔絵を描く井野氏

−今回のショーモデルは、プロに加え美術家やドラァグクイーンなど様々です

ショーの時だけ美男美女をそろえると作られた世界になると考えたためです。格好良いとか格好良くないというような視点ではなく、とにかくリアルさをキーワードに準備してきました。

−大勢の人と仕事をする難しさはありましたか?

難しさはなく、むしろ楽しかったです。どんどん仲間が増えていく過程が、それこそ漫画の「ワンピース」のような感覚でした(笑)。ショーが終わったらルフィのように泣くと思います。

−日本を代表するブランドを目指す?

なりたくないとは思っていないですよ(笑)。ただ大事なのは「一番楽しんでそう」と思われることだと考えていて。「好きなことやってるよね」と言われるブランドであり続けたいですね。

−次のシーズンもショーを行いますか?

今はまだ何も考えられないですね。とにかく「TOKYO FASHION AWARD」で頂いたこの機会を無駄にすることなく、全てを出し切るつもりです。

−今後の目標について教えてください

約2ヶ月後に控えるパリの展示会に向けて服作りを頑張らないとと思っています。

井野将之
1979年群馬県生まれ。東京モード学園卒業後 、企業デザイナーとして経験を積み、その後「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」で靴・アクセサリーの企画生産を務める。その後、パタンナー村上高士とともに、「doublet」を立ち上げ、2013 S/S展示会よりデビュー。2013年に「2013 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門最優秀賞を獲得し、ビジネス支援デザイナーに選出される。2017年には「TOKYO FASHION AWARD」を受賞。

doublet official website

連載最終回はいよいよショー当日。バックステージからライブレポートします

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