
「マリーン セル(MARINE SERRE)」が、2027年春夏コレクション「THE DEEP SHINE」をパリで発表した。白いコットンやブラウンのモアレから始まり、ブラックやスパンコール、鮮やかなブルー、ピンク、イエローへと移り変わるコレクションには、海や魚、水中の世界から着想した色彩や質感も取り入れた。
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近年、クチュールの技術と向き合ってきたデザイナーのマリーン・セル(Marine Serre)。ブランドが10周年を迎えようとする今、改めて「見せ方」ではなく「服そのもの」に立ち返ろうとしている。コレクションに込めた思いから女性像、若手デザイナーを取り巻く環境、ブランドの未来まで話を聞いた。
テーマは「THE DEEP SHINE」
⎯⎯ 2027年春夏「THE DEEP SHINE」について教えてください。
「Deep」は深さ、「Shine」は輝き。この2つの言葉だけで、今回のコレクションを表せていると思います。コレクションは、夏の日に藁の上を転がるような、とても明るいイメージから始まります。白いコットンやブラウンのモアレから、徐々に色が深くなり、ブラックやスパンコールへ。そして最後にはブルー、ピンク、イエローといった強い色が現れます。海や魚、水の中を漂うものからもインスピレーションを受けました。
今回は、とにかく楽しく、明るく輝くものを作りたかった。最近のファッションでは、そういうものをあまり見なくなったように感じています。今は少し「everything is dark(すべてが暗い)」という空気があります。でも、私はそれをあまり刺激的だとは感じません。だから、本当に楽しくて、明るいものを作りたかったんです。



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション
⎯⎯ シルエットにも強さと官能性があります。
私のデザインの中心にあるのは、精神的にも身体的にも、自分自身に心地よさを感じている、とても官能的な女性です。今シーズンは特に肩の構築に力を入れました。1980年代的な、とても強いショルダーです。一方で、身体が自由に動ける余白もしっかり残しています。
クチュール的なディテールもあります。たとえば、お尻の下を通るベルトによってドレープを引き寄せる構造を、トレンチコートやスカートに取り入れました。建築的でありながら、実際にはとても着やすい。それが私にとって重要です。複雑で着るのが大変なクチュールピースにはしたくありません。



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション
新しい「Baby Moon」もその一つです。小さな月のモチーフを細かなドットのように散りばめ、二重のレイヤーにすることで透け感を出しています。遠くから見るとMoon柄だとは分からず、何かが揺らいでいるように見える。魚の第二の皮膚のような、とても官能的な表現になりました。



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション
あくまでも「服が主役」
⎯⎯ 前シーズンに続き、今回もランウェイとは異なる形式を選びました。コレクションの見せ方について、考え方に変化はありますか?
何より、服そのものをきちんと見てもらいたかったんです。今のファッション業界はクリエイティブディレクターのアーティスティックなディレクションに多くの注目が集まります。でも結局のところ、ファッションとは服です。そして服とは、私たちが実際に身につけるものです。
今回の形式なら、服そのものも、その服を着た女性の身体も、何を体現しているのかがよく見えます。今の時代にクリエイティブディレクターであるとはどういうことなのか、その原点に戻りたかった。私にとって、それは服を作ることです。もちろん、映画も作れるし、演劇もショーもできます。でも今は、こういう形に戻るのにちょうどいいタイミングだと思っています。

Image by: Koji Hirano(FASHIONSNAP)
クチュールの技術を日常に着られる服へ
⎯⎯ ブランドを始めた頃と比べて、マリーン セルが描く女性像は変わりましたか?
私は常に変化しています。でも、自分のアイデンティティそのものは変わっていません。この10年間ずっとやってきたのは「女性の身体を美しく見せる」ことです。変化があるとすれば、経験を重ねて成熟したことで、初期よりも着やすい服を作るようになったことかもしれません。
今は女性という存在を、以前よりクチュール的に解釈していると思います。ここ数年で培ってきた服の構築に関する知識や経験を、ストリートに持っていきたい。つまり、実際に着られる服へと落とし込むということです。



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション
⎯⎯ より日常着に近づいたということでしょうか?
「より着やすくなった」と言った方がいいですね。必ずしも日常着という意味ではありません。でも、毎日の生活の中に存在できる服です。それと同時に、アップサイクルTシャツやシルクスカーフといった、メゾンを象徴する要素も引き続き大切にしています。今シーズンもそうしたアイテムを取り入れながら、新しい形で見せています。



MARINE SERRE 2027年春夏コレクション
若いデザイナーへ「希望を失わないで」
⎯⎯ 今のファッション業界で課題を感じていることはありますか? 若いデザイナーが独立したブランドを始めることは、以前より難しくなっていると思いますか?
まず、すべての若いデザイナーに、希望を失わないでほしいと思います。本当に簡単なことではありません。大きなブランドが非常に大きな場所を占めていますし、今の世界は、お金を追い求めることに支配されているとも言えるかもしれません。私たちは「売らなければならない」世界にいます。
それが良いとか悪いという話ではありません。でも今は、二つの頭脳を持つ必要があります。クリエイターであると同時に経営者でもなければならない。あるいは少なくとも、経営の部分を担ってくれる人を見つける必要があります。
もちろん、とても競争の激しい業界です。それでも、若いクリエイターたちが粘り強く続けて、恐れずに自分の直感を信じること。それが唯一の道だと思います。そして、諦めないこと。勇気を持ち続けてください。

Image by: Koji Hirano(FASHIONSNAP)
事業再建について「メゾンの価値に不安はない」
⎯⎯ 現在進められている法的再建手続きについて、今の状況を教えていただけますか?
今はコレクションに集中したいですし、私が何を伝えようとしているのか、そして現在のメゾンがどのようなヴィジョンを持っているのか、そこにフォーカスしたいと思っています。ただ、一つ言えるのは、私はこのメゾンの価値について何の不安も抱いていないということです。




Koji Hirano(FASHIONSNAP)
⎯⎯ ブランドは間もなく10周年を迎えます。5年後のマリーン セルをどのように思い描いていますか?
これからも女性を軸に仕事を続けていくことです。そこは変わりません。優れたクリエイターというのは、毎日のように考えを変える人ではないと思っています。だから、今すでに進んでいるこの方向をそのまま続けていきたい。そして、女性たちが「着たい」と思う服を作ること。何よりも、それが一番大切です。
マリーン・セル(Marine Serre)
フランス出身。2016年にベルギー・ブリュッセルの美術学校「ラ・カンブル」を卒業し、卒業コレクション「Radical Call for Love」で注目を集める。メゾン マルタン マルジェラやディオールで経験を積み、2017年に自身のブランド「マリーン セル(MARINE SERRE)」を設立。同年、LVMHプライズのグランプリを受賞した。
廃棄予定の素材や既製服、デッドストックなどを再構築する「Regenerated」の手法を軸に、クチュールとスポーツウェアを融合したスタイルを展開。三日月の「Moon」モチーフでも知られる。2025年にはソウル・漢南洞にパリ以外では初となる独立型店舗を、東京の渋谷PARCOに日本初となるショップをオープン。2026年にはルーヴル美術館やアンダーアーマーとのコラボレーションを発表するなど、活動の幅を広げている。
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