Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】真珠を裁断して見えるものは?「M/G TASAKI」手掛けるデザイナーに聞く

メラニー・ジョージャコプロス
Image by: FASHIONSNAP

 2013年から「TASAKI」とのコラボレーションライン「M/G TASAKI」のデザインを手掛けるメラニー・ジョージャコプロス。1954年創業の老舗ジュエラーTASAKIが取り扱う資産価値の高い真珠を大胆に裁断したデザインを考案し、一躍注目を集めているデザイナーだ。「貝殻から取り出したありのままの状態でも既に美しい」と真珠の魅力を語る彼女が、あえて真珠をスライスしドリルを入れる狙いは?

— ADの後に記事が続きます —

【メラニー・ジョージャコプロス】
ギリシャ人とフランス人の両親を持ち、ロンドンを拠点に活躍するジュエリーデザイナー。エジンバラ・カレッジ・オブ・アートで彫刻を学び2004年に主席で卒業。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでジュエリーの修士号を取得。2010年に自身のブランド「メラニー・ジョージャコプロス(MELANIE GEORGACOPOULOS)」を立ち上げる。2012AW London Fashion Weekでは、英国におけるファインジュエラーの10人に選ばれる。2013年からTASAKIとのコラボレーションラインM/G TASAKIのヘッド・デザイナーに就任。

―彫刻を勉強していましたが、ジュエリーの道に入ったきっかけは?

メラニー・ジョージャコプロス(以下、メラニー):初めは空間の中でオブジェクトを制作するという自由な表現方法に惹かれて、彫刻家になりたいと思っていました。彫刻を学び始めて1年程が経った頃、もっと肌に近く、機能性を持ち合わせているものを作りたいなと考えるようになりました。ジュエリーは私が愛する彫刻の要素も持ち合わせつつ、実用的でウエアラブルなのでぴったりだと思い、この道に進みました。

―幼少期からギリシャで育ったんですね。

メラニー:ギリシャで生まれたことに加えて母がフランス人なので、小さい頃から2つの文化に触れてきました。ギリシャは5千年前に作られた金のジュエリーが博物館に展示されているなどジュエリーに関しても長い歴史を持つ国なんです。子供の頃から博物館に行った時は毎回、展示されたジュエリーを眺めていました。当時はまだ13、14歳くらいでしたが、いま思えば、あれがジュエリーへの愛情や関心を持ち始めた瞬間かもしれませんね。

新作「ピラミッドパール」

―真珠を使ったジュエリーを作り始めたのはいつから?

メラニー:2010年から真珠を使ったジュエリーをデザインしています。以前は、プラスチックや木、メタルなどあらゆるマテリアルを使っていました。私は、先にデザインをしてその後に適したマテリアルを探すというデザインプロセスを辿ります。真珠に出会った時は、私のデザインとの相性の良さに驚きました。真珠を使い初めて6年になりますが、いまだにデザインが尽きません。

―「真珠」の魅力は?

メラニー:海底で育ったオーガニックな宝石だということ。ダイヤモンドやエメラルド、ルビーなどの宝石は美を引き出すために加工しなければいけないですが、真珠は貝殻から取り出した状態で既に美しく、加工することなくそのまま使えるのが特徴です。ただ、その「ありのままの美しさ」に手を加える事によって表現できる内面の美しさや新しい発見などの付加価値を意識してデザインをしています。

真珠に穴があけられた「ドリルド」

―M/G TASAKIのコレクションでは、真珠に穴をあけたりスライスしたり、斬新なデザインが目立ちます。このアイデアはどこから?

メラニー:「真珠の中はどうなっているんだろう」という私の好奇心からはじまりました。また、真珠の「オーガニック」という特徴を表現するには、真珠ごとに異なる「断面」を見せるのが良いのではないかと。彫刻を学んだ経験も生かされているかもしれないですね。穴をあけることで、パッと見た時に何なのかはっきりとわからない「曖昧さ」も魅力。これまで見たことがない真珠の一面を引き出していきたいと同時に真珠に対してきちんと敬意を払うことは忘れずにデザインしています。

―自身のブランドMELANIE GEORGACOPOULOSとの棲み分けは?

メラニー:もともとはMELANIE GEORGACOPOULOSでスライスした真珠のジュエリーを展開していました。もちろん今、展開している「スライス」シリーズとデザインは異なりますが、M/G TASAKIで販売するジュエリーときちんと差別化を図りたいと思い、スライスやドリルの加工を加えた真珠のジュエリーはM/G TASAKIのみで展開するようになりました。自分のブランドではプライベートクライアントのみを対象にして、M/G TASAKIにより注力できるようにしました。TASAKIを通してより幅広いマーケットにジュエリーを提供できるのも嬉しいです。

―TASAKIではタクーンもクリエーティブ・ディレクターとしてデザインを手掛けています。

メラニー:タクーン(THAKOON)が手掛けるラインとは、価格帯や顧客層、デザインの点で異なるカテゴリーになると捉えています。タクーンは、より高価格帯の宝石を使ったアイテムも多いです。私はTASAKIの若い顧客層にも響くような、日常使いもしやすいジュエリーをデザインしていて、お互いとても居心地の良い環境でデザインができているかと思います。そういった意味では自然に棲み分けられているのではないでしょうか。

「スライスド」

―「真珠をスライスしたい」と伝えた時のTASAKIの反応は?

メラニー:「良いね」と気に入ってもらえました。大半の会社でしたら「ノー」と言われそうなところを、ここでは「イエス」と言ってもらえる。斬新なアイデアでも受け入れてくれるので自由にデザインすることができています。また、日本にはこういった斬新なジュエリーを期待してくれる方が多いなと感じます。

―真珠は資産性が高いですが、大胆な加工を加えることに懸念はありましたか?

メラニー:確かに真珠の価格は光沢や大きさ、表面によって変わってきます。ネックレスやブレスレットでは、全体としてのバランスも影響しますね。真珠の価格付けは、ダイヤモンドと同じくらい複雑なんです。古典的な真珠のジュエリーは既にたくさんあると思いますが、私ならではのモダンなデザインで付加価値をつけることができると考えています。今の時代を反映した新しいデザインのジュエリーを創ることが私のデザイナーとしての役割だと捉えています。今斬新だと言われている私のデザインも何十年後になったら長く愛用してもらえる普遍的なデザインになっているかもしれませんね。

「スライスド」

―真珠をスライスしてみたら、断面が思っていたものと違うことは?

メラニー:ないです。人によって美しいと思う断面は違うと思いますし。オーガニックなので、完璧ではないことも魅力のひとつではないでしょうか。

新作「フローラル スライスド」

―ビジネスも好調のようですね。

メラニー:真珠の古典的なイメージを覆す、斬新なデザインが多くの方に気に入ってもらえてとても嬉しいです。「スライスド」シリーズは特に人気で、スライスした真珠の断面をゴールドプレートで覆った新シリーズ「フローラル スライスド(FLORAL SLICED)」も発表しました。プレートを断面に合わせるのがとても難しいんですが、花びらのような見た目が気に入っています。今後も真珠の新しい顔を引き出せるようなジュエリーをデザインしていければと思います。

(聞き手:谷 桃子)

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング