流動的な「ファッション」に、固定的な「プロダクト」をどのようにして融合させるか。そんなファッション業界における矛盾に挑戦し、模索した「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」2021年秋冬コレクションが、3月15日の今日ショー形式で発表された。
同ブランドは2021年2月から、既存のファッションシステムからの脱却を図るため年2回のコレクション発表を見直したばかり。「lone」と銘打ったコレクションを隔月ごとに発表しており、今回「Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 A/W」で発表されたのは「lone vol3」に該当する。
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床やスタンドライトなどが銀色の幕で覆われた会場は、無機質で非現実的な世界観が作り込まれている一方、蹴込みや銀マットなどが使用されており、誰もが手に入れることのできる素材で作り出されている。「特殊なモノを実用的な材料で作り込むことによって生まれる『歪み』を表現したかった」と話す坂部三樹郎が手掛けた2021秋冬コレクションアイテムもまた、「実用性(プロダクト)」と「装飾性(ファッション)」を併せ持ったモノと言えるだろう。
ミキオサカベ久々のジャケットが登場
ファーストルックには、2019年春夏コレクション以来久々にジャケットアイテムが登場した。「元々学生時代にジャケット製作を学んでいた。今回、久々にジャケットアイテムを製作した理由は『もう1度リセット』という意味を込め、純粋さを表現したかったため」(坂部三樹郎)。
また、坂部三樹郎が監修するフットウェアブランド「グラウンズ(grounds)」との新作コラボレーションアイテムも複数公開された。アッパーにクラッシックレザーをあしらい、ボールのような丸みを帯びたソール「ジュエリー(JEWELRY)」が採用されたショートブーツは、昨年発売された「ティーエイチプロダクツ(th products)」とのコラボレーションアイテムを彷彿とさせる。
続くルックでもホワイトのスペンサージャケットや、チェック柄のテーラードジャケットが登場するなど、ショー前半にはジャケットアイテムが目立った。
可視と不可視を顕在化させる「目出し帽」と「ビニール スカート」
近年国内では、ビジネスとの親和性が高い「プロダクト寄り」のファッションブランドが増加の傾向にある。プロダクトアイテムが、変化を好まない静的特徴があるとすれば、ファッションアイテムとはトレンドに左右される極めて動的と言えるが、この点において、ミキオ サカベは動的な「ファッション」を追求しているブランドの一つである。しかし、今回発表された「lone vol3」においては、プロダクト的なアイテムが目立った。坂部は「意識的にプロダクトを入れて、プロダクトとファッションをどの様に融合させるかを模索した」とし、プロダクトにおけるファッション性を追求した。
ショー終盤に登場したモデルの顔をすっぽりと覆った帽子は、「不透明」や「内面」と言った固定的なニュアンスを彷彿とさせる。一方で、ナイロン素材を用いた透明なスカートやワンピースは、花柄のテキスタイルやキラキラと光るビジュー、偏光プリントなどが取り入れられ、カラフルで晴れやかな印象を与える。ナイロン素材は元来、プロダクトアイテムに多く用いられるが、坂部は固定的で静的な意味を孕むナイロン素材を、素材として活かしたままいかにして動的な「ファッション」に取り込むかをlone vol3 コレクションで模索した。
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