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【連載:私が黒髪をやめた話】5人目-Baby Blue βさん DJ/ビートメイカー・プロデューサー

私が黒髪をやめた話

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ある日、私は黒髪をやめ、金髪にした。
理由はたくさんあった。凡人だと思われることが嫌だった。気が弱い女のように見られることが嫌だった。少しでも若く見られたかった。
黒髪をやめたことで、自分を守る為の鎧を身につけたような気持ちになった。

高貴さの象徴ともされるブロンドヘアー。
不良・反抗などのイメージを持たれていたヘアブリーチ。
アニメキャラを彷彿ともさせるカラフルなヘアカラー。

さまざまな選択肢がある中で、私が出会ったあえて“黒髪をやめた人たち”の話。
5人目は、取材当時は会社員としても働いていた、DJ/ビートメイカー・プロデューサーのBaby Blue βさん。

Baby Blue βさん DJ/ビートメイカー・プロデューサー

彼女と知り合ったきっかけは、共通の友人の展示会場。
展示をみんなで一緒に見て談笑し、その場でSNSをフォローし合った。
それが恐らく5、6年前のことで、それ以来会う機会はなかった。

再会するきっかけはそのSNSだった。
私がInstagramのストーリー機能を使い“ブリーチ髪で写真を撮らせてくれる人”を募集したところ、興味を持った彼女がDMを送ってきてくれたのだった。
それまでSNS上で交流があった訳でもなかったのに、連絡をしてきてくれたことが嬉しかった。

実のところ彼女に取材をさせてもらったのは3年ほど前だったのだけれど、私が原稿を送るのが遅く、掲載を先延ばしにしてしまっていた。
今では彼女がハイトーンヘアーにしていることへの考え方や気持ちにも変化はあると思うけれど、彼女の好意で取材当時の文章と写真を掲載させてもらった。

3年前、この企画の取材をさせてもらう前に彼女がクラブでDJをするイベントがあった為、久しぶりの挨拶も兼ねてDJプレイの撮影をしに行くことにした。
彼女はそのイベントのトリでDJをしていて、とても輝いていた。

その1週間後、改めて彼女に会った。
多くの人が行き交う渋谷駅前で待ち合わせをしたけれど、彼女のハイトーンヘアーのおかげですぐに彼女を見つけることができた。
写真を撮るには駅前は人が多すぎる。せっかくなので、先日彼女がDJをしていたクラブの方まで歩いてみることにした。

これまで彼女に会った時はお互いの個人的な話をする時間がなかった為、こうしてゆっくりと話すのは初めてだった。
仕事や出身など、何も知らないまま。歩いて写真を撮りながら、少しずつ確認し合った。
昼間は会社員として働きながら、音楽制作をしたりDJをしていること。昔の活動や、共通の友人のこと。私たちが初めて出会った時のこと。

そして、どうして黒髪をやめたのか、理由を聞いた。
全頭ブリーチをしたのは今回で2度目。1度目は5年ぐらい前のことで、きっかけはノリと勢いだった。
オーストラリア人モデルのフェルナンダ・リーに憧れてピンク髪にもしたし、青や緑、デザインカラーもした。
ファッション系の大学に通っていた学生時代からインナーカラーをしていたこともあり、ブリーチへの抵抗はなかった。
その後、仕事の都合で黒髪へ戻してしまった。それでもこっそりとインナーカラーのエクステを忍ばせたり、密かにブリーチ髪を楽しんでいたという。

2度目はその2年後、転職したことをきっかけに、再びブリーチをした。
新しい職場は髪色などに対しても厳しい規則がなかった。
在宅での仕事や制作が多い上に、インドア気質な彼女は外へ出て誰かに髪を披露することは多くないそうだけれど、ハイトーンヘアーを楽しむことは自分のご機嫌を取るための大切な要素だという。
ハイトーンにしてから、「これが本当の自分だと思うし、自己満足だとしてもやっぱりアガる!」と、目をキラキラと輝かせながら話してくれた。

自分の内面の変化とは対照的に外からの変化を聞くと、ナンパやキャッチがすごく減った、と答えた。
また、空いている電車内にも関わらず不自然に隣へ座られることも減ったそうだ。
私自身、所謂ぶつかりおじさんと遭遇することが減った。黒髪だった時はすれ違いざまに胸を触られることもあった。
ハイトーンヘアーにすることで、黄金の鎧を身につけている。

たまにある会社の飲み会では、“ギャル”というあだ名をつけられ、話しかけてもらいやすくなったという。
話しかけられづらくなったり、話しかけられやすくなったり、髪色というのは不思議な力を持っている。
彼女と2人で歩いていると、近くを通りがかったご高齢の女性に「あそこに可愛い鳥がいるよ」と話しかけられ、鳥の種類を教えてもらった。
もしかしたら私たちが金髪だから話しかけられたのかもしれない。それが考えすぎだとしても、何かしらコミュニケーションのきっかけが増えることは楽しい。

黒髪をやめてから、周りの人たちの反応はどうだった?と質問した。
「まず、お母さんはブリーチすることにノリノリだった!」と答えてくれた。
彼女とお母さんはとても仲が良く、お母さんは60代を超えているけれどすごく柔軟な考えを持っているそうだ。社会問題など、いろいろな議題について意見を交わし合う。
先日も、コンビニの店員さんなどは身なりにそれほど厳しい規則を設けず海外のように楽しく働けるようになれば良いのにね、と一緒に話したらしい。
「派手髪が規則違反で悪いことのように言われるけれど、黒髪であればなんでも良くて、清潔感がなくてもいいのかな?と思う。髪色を変えているということは、それほど身なりに気をかけているということなのに」と彼女が話すのを聞いて、「黒髪=真面目」という日本人的な凝り固まった考えを抱いていた自分を恥じた。

彼女の周りには音楽関係の知人も多いため、黒髪ではないことに対して否定的な意見は一つもなかった。また、彼女は「周りにはどう思われても気にしない」と話していた。
ハイトーンにしたことで見た目で態度を変える人がわかり、そういった人たちを判断するためのフィルターになっているという。
ゆっくりと、時々言葉を選びながらもしっかり自分の言葉で意見を述べる彼女が素敵だと思った。

いつまでブリーチ髪にしているの?と聞くと、「飽きるまで。けど、飽きるときはあるのかな?」と笑った。
さっきまでの真面目な表情から、DJを楽しんでいる時と同じ、無邪気な彼女に戻った。

ハイトーンのロングヘアーにしたくて、頑張って髪を伸ばしている最中だと話していた。
次に彼女に会うときは、どのくらいまで髪が伸びているだろう?

髙木美佑
写真家。東京都在住。主にセルフポートレートと文章を用いて、日々の記録のように取り巻く生活と自己との関わりをテーマに制作しています。コーラで髪の毛が脱色できるという噂を信じていた世代。

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