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無印良品のリユース・リサイクル事業がビジネスとして成功したワケ

良品計画ESG説明会

Image by: FASHIONSNAP

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無印良品のリユース・リサイクル事業がビジネスとして成功したワケ

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 近年、SDGs(持続可能な開発目標)と共に企業経営を語る上で欠かせないキーワードとなった、ESG。ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の3つの要素を考慮した、企業活動や投資活動を指す。ESG経営は環境問題や社会問題への取り組みを積極的に行うことで、企業の長期的な成長を促進するが、その目標が事業戦略と分離したり、数値目標が財務指標と連動せず社内での優先順位が不明瞭になりがちなことなどから、これまでの成功例は多くない。そんななか、「無印良品」を運営する良品計画は、全社をあげてESG経営を行い、リユース・リサイクルの取り組みでビジネス的に成功を収めているという。メディア向けに開催された同社のESG説明会を通して、成功の秘訣を探った。

日本古来のカルチャーから生まれたリサイクル事業

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 無印良品は、2010年に衣服の回収を開始した。日本環境計画が行っていた、綿製品をバイオエタノールに再生する「FUKU-FUKUプロジェクト」に参加。同プロジェクトでは2015年10月までに全国約350店舗で回収を行い、約60トンの繊維製品をエネルギーとして再生した。

 その後、2015年に衣料品リサイクルの新たな取り組みとして始めたのが、「ReMUJI」(開始当初の表記は「re-muji」)。FUKU-FUKUプロジェクトを行うなかで、回収した衣料品の中に着用可能な状態の衣料が多くあったことが、実現のきっかけとなった。着古して色褪せた服を染め直したり、破れた部分に刺し子で補強を施して長く着用し続ける日本古来のカルチャーを着想源に、回収した衣料を染め直すプロジェクトが始まった。

 開始当初のReMUJIは、回収した衣料品を藍色で染め直して全国で1店舗のみで販売する限定的な取り組みだったが、2021年に都市型旗艦店としてオープンした「MUJI 新宿」では、当時同社で最大のReMUJIの売り場を展開し、染色のカラーバリエーションを拡大。そのほか、染色ができない衣料を洗い直して古着として販売したり、ほつれや破れがあることでそれまで商品化の対象から外されていたアイテムにパッチワークなどの加工を施して再商品化するなど、取り組みを発展させてきた。

「妥協は長続きしない」リサイクル事業成功の鍵は?

 今回の説明会で特に強調されたのが、近年のReMUJIの成果である。清水智 良品計画代表取締役社長は「一般的なリサイクルでは、コストの上昇や品質の劣化など、企業もお客様も何かしらの妥協を求められることが多い。だが、これでは長続きしない」と、従来の循環型の取り組みが抱える課題を指摘する。ReMUJIは、この「我慢」の構造からの脱却を目指した。

 ReMUJIは、顧客から回収した衣料品を元の商品とは異なる新しい価値を持った製品へと生まれ変わらせている。藍染めで新たな表情を与えたり、異なる商品を組み合わせてパッチワークのようなデザインに再加工したりすることが、一般的なリユース古着とは一線を画した新たな魅力を備えた衣服として、ユーザーにポジティブに受け入れられているようだ。

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 「新しい価値を付加することで、お客様が『ReMUJIの商品を買いたい』という気持ちを持ってくださっている」と清水社長。ReMUJIの成功は、まさにこの「新しい価値の創出」が鍵になっていると言えるだろう。3月に世界最大店舗としてオープンした「無印良品 イオンモール橿原」ではReMUJIが非常に好調で、「メインの商材になっている」(清水社長)という。

ReMUJIが提示した、今後の新しいアパレルビジネスのあり方

 今回の説明会で紹介された「素材に還るフリース」は、リサイクルを前提に製品設計を行うプロジェクト。日本では、年間約51万トンもの衣料品が廃棄され、そのリサイクル率が1%にも満たない。その原因となっているのが、衣料品の構造の複雑さだ。リサイクルするためにはファスナーやボタンなどの付属品を取り除く必要があるほか、2種類以上の素材を複合した繊維を再び原料や繊維としてリサイクルすることは現代の技術では困難だという。「素材に還るフリース」は、付属品を含めた全てのパーツを1種類の素材で構成することにより、再資源化を容易にした。

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 ReMUJIを始めとした無印良品のESGの取り組みは、資源を無駄なく活用するというブランド哲学を、現代の課題意識と結びつけ、さらに魅力的な商品へと昇華させたと言える。それは、環境負荷の低減と経済的な持続可能性、そして顧客満足を同時に追求する、新しいアパレルビジネスのあり方を示唆している。

FASHIONSNAP 記者

山田耕史

Koji Yamada

1980年神戸市生まれ。関西学院大学社会学部在学中にファッションデザイナーを志し、卒業後にエスモード大阪校、エスモードインターナショナルパリ校でデザインとパターンを学ぶ。ファッション企画会社、ファッション系ITベンチャーを経て、フリーランスとして活動した後、FASHIONSNAPに参加。ファッションを歴史、文化、政治、経済などの視点から分析し、知的好奇心を刺激する記事を執筆することが目標。3人の子どもと過ごす時間が何よりの楽しみ。

最終更新日:

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