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歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第48回はプリントネルシャツ編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
「プリネル」人気急上昇中のワケ
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ネルシャツの「ネル」はフランネルの略で、起毛加工で表面をうっすらと毛羽立たせた布地のこと。シャツには主に綿素材のフランネル生地が用いられます。肌触りが良くて、軽く、しかも保温性が高いので、季節を問わず重宝するアメカジの定番アイテムとして知られていますが、最近ネルシャツの人気が上昇していることをご存知でしょうか?そのひとつが、今回紹介するプリントネルシャツ、通称「プリネル」です。

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ネルシャツと言えば、チェック柄。一般的なチェック柄は「織り」で表現されるのですが、プリントネルシャツは織りではなく、無地の生地にプリントを施すことでチェック柄を表現しています。プリントネルシャツの柄の多くは、18〜19世紀の産業革命期のイギリスで発明されたローラー捺染機でプリントされています。安価で効率的に生産ができるプリントネル生地は、アメリカでは1920年頃からファッション向けの衣料やパジャマ、子ども服に多く使われるようになりました。たいていの場合、プリントネルは織りのネルよりもコストがかからないので、ヴィンテージ市場では今ほど評価されていませんでしたが、最近はそんなプリントネルシャツの人気が急上昇しているのです。

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プリントネルシャツが多く作られたのは、1950〜60年頃。近年のヴィンテージ人気の高まりにより、以前当連載でもピックアップしたオンブレチェックシャツを筆頭に、この時代のシャツの相場はかなり高くなっています。しかし、今ほど注目されていなかったため比較的手頃な価格で手に入れられることが、プリントネルシャツ人気上昇の理由のひとつと考えられます。また、近年の「アメカジ再評価」の影響もあるでしょう。ネルシャツと言えば1990年代の日本でのヴィンテージ古着ブームを象徴する存在ですが、最近はネルシャツをおしゃれに着こなす若者が増えているように感じます。











こちらは1950年代のアイテム。
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プリントだからこそ生まれる独特の表情が魅力
プリントネルシャツは単なる織りのネルシャツの廉価版、と断じるのは早計です。こちらの個体のぼやけたような柄や、はっきりとしたブルーとのコントラストは、プリントネルだからこそ実現が可能です。











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プリントネルシャツは比較的安価なうえに色や柄の自由度が高いので、1950年代以降のアメリカで若者たちの人気を集め、ロカビリーやサーフ、バイカーなど、様々なカルチャーシーンで着用されるようになります。そのなかでもネルシャツのイメージを変えた第一人者として特筆すべきなのは、カリスマロックスターであり、永遠のファッションアイコンでもあるカート・コバーン(Kurt Cobain)でしょう。彼は当時の若者の普段着でステージに上がりましたが、音楽とともにそのクールなスタイルが世界中で支持されるようになり、グランジというファッションスタイルの震源地となりました。グランジは薄汚れた、不潔な、という意味がありますが、薄い生地が独特の“ヤレ感”を生み出すプリントネルシャツは、そんなグランジスタイルにぴったりのアイテム。1970年代以降の時代が浅めのアイテムなら、1万円台からでも手に入るので、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭

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最終更新日:
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