Fashion 次世代の担い手たち

【連載】次世代の担い手たち - vol.2 IHNN 印致聖 -

印致聖
印致聖
Image by: FASHIONSNAP

 日本の次世代を担う若手ファッションデザイナーたちの歩みを辿る新連載「次世代の担い手たち」。第2弾は韓国出身の印致聖(イン チソン)が2014年に立ち上げた「イン(IHNN)」。ラグジュアリーモードという王道を歩み、伊勢丹やリステア(RESTIR)、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)と有力店舗で取り扱われている期待のホープはなぜ日本を拠点に活動しているのか?

 

印致聖
文化ファッション大学院大学を卒業後、2014年にブランド「IHNN」設立。繊細さと大胆さを併せ持った新しい感性を創造し、感度の高い女性へ向けたスタイルを提案する。カラーと実験的でユニークな素材を組み合わせ、上質で現代的なコレクションを発表している。

IHNN 2016-17 AW collection

兵役をきっかけにファッションの道へ

―出身は韓国のソウルですね。

 韓国ではファッションの学校には通わず、普通の高校で大学も経営学部でした。もともとエディ・スリマン(Hedi Slimane)時代の「ディオール オム(DIOR HOMME)」などの影響からファッションが好きで、大学二年生になる前に休学して兵役制度で軍隊に入ったことでその思いはより強くなりましたね。普通に経営学部を卒業して会社員になるよりは、自分がやりたいことをやろうと思い、文化服装学院に入学しました。

―なぜ日本の学校に?

 韓国はトレンドに敏感すぎる国で、売れるものがすぐに変わるのでクリエイションを追求することが難しいのではと考えていました。個人的にドイツと日本はしっかりモノ作りをしているというイメージを持っていたので、日本で勉強したいなって。自分のブランドを立ち上げるなら日本でやりたいと思っていましたね。

―軍隊ではどんなことを?

 兵役の二年間ずっと運転係として、毎日トラックやバスを運転していました。緊張感がないと事故に繋がるという理由からだと思うのですが、突然殴られることもしばしばありましたね。大変でしたが、得ることも多かったです。

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―兵役経験で学んだことはありますか?

 自分で車のタイヤを変えられますね(笑)。あとは運転にも自信があります。スキル面はそういったところなのですが、やはりメンタル面での変化は大きかったですね。それまでのらりくらり生きてきましたが、軍隊を出て社会人に戻った瞬間「今なら何でもできそうな気がする」と思うようになりました。ここまで大変なことをしてやっと社会に戻ってきたんだから一生懸命生きてみようと。

―その後、文化服装学院服装科で服の基礎を学びました。

 服について何も知らなかったので、基礎から学びたいと思い文化服装学院の服装科に進学しました。ただパターンがどういう形だとこういうデザインに仕上げるということが理解できるようになったのは良かったですが、決まっているデザインや生地を使ってという授業だったのでデザインを勉強する上では弱い部分があると感じていましたね。それで卒業後、文化ファッション大学院大学(BFGU)に進学することにしました。

―具体的に文化服装学院とBFGUの違いは?

 BFGUは自由でなんでもできる大学でしたね。一年のときに10体、二年で15体コレクションを制作したのですが、自分のテーマでまとまった作品を作ることができたのでデザイン、世界観の表現の勉強になりました。卒業制作ショーのテーマは「hole」で、穴からでた新しい世界観をラグジュアリーな雰囲気で表現しました。変なヘルメットも作ってみたり、今思い返すと学生だからこそできる自由なコレクションでしたね。ありがたいことに評判も良くて、文化服装学院とBFGUから一人選ばれて、イギリスのファッション学校の卒業制作ショーに日本代表として参加しました。

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卒業制作作品

―そこで海外からも評価されるようになりました。

 レディー・ガガ(Lady Gaga)のスタイリストとして知られ、「第3回 LVMH Young Fashion Designers Prize(LVMHプライズ)」のファイナリストでもあるブランドン・マクスウェル(Brandon Maxwell)に気に入ってもらえ、作品をリースしました。VOGUE ITALIA、ELLE UKなどに良い評価で取り上げられて自信をつけ、大学を卒業してからの約一年を準備期間にあて、2014年からブランド「イン」をスタートさせました。

―卒業後すぐブランド立ち上げ、不安はなかったのですか?

 不安なことは多かったですが、とりあえずスタートしました。試行錯誤ありましたが、友達でもありライバルでもあるBFGUで同期だった「ヨウヘイオオノ(YOHEI OHNO)」のデザイナー大野陽平と"どうやってブランドを運営していくか"や"ファッションのクリエーティブ論"などについての話ができたのは良かったです。

―「IHNN」というブランド名について教えてください。

 印致聖は英語でChisung IHNと書くんですが、その「IHN」に「N」を重ねたのがブランド名になります。「N」はandの意味で、自分にandを加える事で色々なことが繋がるようなイメージを持たせたくて付けました。「読みにくい」とか「どうやって読むの?」とか結構言われますが(笑)。

―ブランドコンセプトは?

 文化服装学院、BFGUは設備が充実していて、レザーにプリントすることもできたんです。その時から素材をそのまま使うより、工夫したりミックスさせた素材に興味を持つようになりました。過去のコレクションではウールにプリントしたり、異素材を組み合わせてみせるオリジナリティを追求したいと考えています。

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―ウールにプリントって難しいですよね?

 そうなんです。色々工場さんと試行錯誤しながらやりましたが大変で。当面はやらないと決めました(笑)。

―素材選びだけでなく、パターンも自身で?

 パターンはパタンナーの方にお願いしています。文化服装学院を出たということもあってか、やはりパターンは重要だと考えていて、自分の納得のいくクオリティを追求するためには現時点では外注でお願いすることがベストだと思っています。

次のページ>>>印致聖が考える"良い"ブランドの定義とは?

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