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【オーガニック・ナチュラルコスメ特集】イセタン ビューティー アポセカリーの四半世紀

 伊勢丹新宿店の本館地下2階に構える「イセタン ビューティー アポセカリー」は、2000年に前身となるセレクトショップ「BPQC」がオープンして以来、四半世紀にわたってオーガニック・ナチュラルコスメを取り扱う売り場として歩んできたパイオニア的存在だ。

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 今年3月のリフレッシュオープンから約3ヶ月が経過したタイミングで、バイヤーの鳥谷悠見氏に話を聞いた。新客の獲得、インナーケアの台頭、そしてオーガニック・ナチュラルという枠組みそのものの変容まで、売り場の最前線で感じていることとは⎯⎯

2000年から現在へ──売り場が歩んだ四半世紀

⎯⎯前身のBPQCがオープンした2000年当時と比べて、売り場や取り扱いブランドの選定基準はどのように変化してきたのでしょうか。

 BPQCオープン当初は、ナチュラル志向の方に向けたショップという形で、主にナチュラル系のスキンケア・ボディケアと精油などを揃えていました。日本国内でそのニーズ自体がまだ顕在化していなかった時期で、そういう志向性の方はいるのか、という検証も兼ねたようなスタートでした。

 2008年に現在のイセタン ビューティアポセカリーという名称で本館2階にオープンし、ヘアケア、パーツケア、フェムケア、インナーケアとカテゴリーを広げてきました。特に2014〜2015年のローフード・スーパーフードブームを機に、デイリーフードの観点からインナーケアを整えるという提案を本格化しています。2018年頃からは、女性に関する啓発活動やウェルビーイングの視点での取り組み、ヘアケアツール、ママベビーカテゴリー、CBDなども品揃えに加わりました。時代の変遷とともに、ニーズがあるものを取り入れたり、既存カテゴリーの中から新たなカテゴリーを切り出したりを繰り返してきた形です。

⎯⎯売り場の変化とともに、客層にも変化はありましたか。

 2000年当初はほぼ女性のお客さまのみ、2008年のオープン後も女性が中心でした。ナチュラル・オーガニックへの意識が芽生えるのは、トレンドを一通り経験し、40〜50代になって「今までの生活を見直したい」と感じてからが多い、という話を聞いたことがあったのですが、現に40代半ばから50代半ばが中心層でした。

 その後、フェムケアの重要性に着目し始めた2010年代以降は、不調になる前に体を整える予防の視点を高めていく必要性を売り場として感じました。中心客層は40〜50代ですが、より若い層や親子での利用を意識した品揃えを意図的に増やしたんです。今では20代から男性客まで、幅広い層にご来店いただけています。

イセタン ビューティー アポセカリーのあゆみ(2000年〜2026年)

リフレッシュオープンから3か月、売上15%増の好スタート

⎯⎯3月のリフレッシュオープンから約3ヶ月が経過した現在の状況について、お客さまや商品の動きはいかがでしょうか。

 大きな数字でお伝えすると、売上高は前年比15%増ほどで推移しています。おかげさまで、大変ご評価いただけている実感があります。新規のお客さま(ハウスカード以外の決済方法を使用した人)は、同約28%増と伸長しています。

 元々このフロアはエンゲージメントの高い既存のお客さまが多く、決済方法ではハウスカードの比率が全館の中でも特に高いんです。それに加えて新しいお客さまも増えていることは、リフレッシュオープンで目指していたことが着実に形になっていると感じています。

⎯⎯新客が増えた要因について、もう少し詳しくお伺いできますか。

 大きく2つあると思っています。1つは、今回のリフレッシュオープンで新規出店の4ブランドが、これまで百貨店をご利用でなかった層も取り込んでいることです。もう1つは、オープン前からメディアやインフルエンサーの方々が積極的に情報を発信してくださったこと。「伊勢丹に地下2階なんてあったの?」という方が新たに来てくださるケースが、本当に多いと感じています。

リフレッシュオープンで新規出店した4ブランド

ロクシタン(L’OCCITANE)

"丁寧な暮らし"への意識がオーガニックの入口

⎯⎯最近では、自分自身と向き合い、心身ともに健康な状態を目指すウェルビーイングやマインドフルネスといった言葉も聞かれますが、オーガニック・ナチュラルコスメ売り場への影響は?

 価値観としてより良く過ごしたいというニーズが高まっていることは感じます。それは外見的な美しさだけではなく、精神性や健康という側面も含んでいます。コロナ禍を経て、2022〜2023年頃は解放感から華やかさを求められるお客さまが増えていました。ただ最近は、経済状況や世界情勢が不安定になる中で、自分の生活を見直し、日々をより丁寧に過ごしたいというニーズが、お客さまとの会話の中でとても強く感じられます。

⎯⎯そうした傾向は、商品の選択にも表れているのでしょうか。

 そうですね。よく聞かれるのが「シンプルなケアにしたい」「余分なものを肌に取り入れたくない」という声です。美容に対して引き算の価値観で商品を探す方が多いという印象があります。

⎯⎯コロナ後、そういった傾向は売上にも現れているのでしょうか?

 カテゴリー別で見て一番伸長率が高いのは、サプリメントや食品類などのインナーサポートアイテムです。自家需要もギフト需要も合わせて非常に高まっています。内面からの美しさを意識したインナーケアへの関心がこの5年でぐっと高まった結果が、そのまま数字に表れていると思います。

イセタン ビューティー アポセカリー ブランド別売上ランキング(2025年度4月〜2026年3月)
順位ブランドジャンル
1AFCサプリ・健康食品
2アヴェダ(AVEDA)ヘアケア
3イソップ(Aēsop)スキンケア・フレグランス
4ヘルシーワン(HEALTHY-One)サプリ・健康食品
5イイスタンダード(E STANDARD)ヘアケア

⎯⎯サステナビリティの観点ではいかがでしょう。環境負荷やアニマルウェルフェアへの配慮といった付加価値は、お客さまにどの程度響いていると感じますか。

 「(環境や動物への負荷が)ないに越したことはない」という感覚の方と、「それは絶対条件」という基準をきっちりお持ちの方と、両方いらっしゃいます。特に感じるのは、環境配慮の容器を使っているブランドやチャリティーキャンペーンの視認性が高まると、購買量が増えるということです。我々のフロアには、なるべくギルトフリーなものを選びたいというニーズをお持ちの方が多い印象です。

⎯⎯考えを持って商品を選ぶという意味では、ギフト需要も高いように感じます。

 贈る相手のことを考えたとき、その方にとって負荷が少なく、健やかな生活に寄り添えるアイテムを、というニーズで選ばれる傾向が高いですね。パッケージがかわいいものも多いですし、「いつもと違う、気の利いたものを贈りたい」という方にも支持いただいています。アポセカリーは、いわゆるビューティアイテムとは少し異なる品揃えが中心になりますので、そこが響いているのだと思います。

オーガニック・ナチュラルという枠組みの変容

⎯⎯オーガニック・ナチュラルコスメというカテゴリーは、これからどう発展すると思いますか?

 オーガニック・ナチュラルコスメ市場は、グローバルマーケットで見ても、スキンケアとインナーケアに限れば前年比5%増ほどの成長で、化粧品全体やロンジェビティ(健康寿命)領域と比べると微増に留まっています。日本市場に限定すれば、さらに緩やかな伸びと感じています…。これはまさに業界特性・商品特性によるところが大きいと思います。

 一方で感じているのは、オーガニック・ナチュラルとそれ以外のボーダーが年々曖昧になってきているということです。サイエンスコスメのブランドでもオーガニック成分を原材料に使うケースは珍しくなく、ハイブリッドなコスメが増えています。植物由来の有効成分の使用や生産・加工工程へのこだわりが、さまざまなコスメのベースになりつつある。そうなると、オーガニック・ナチュラル市場がその括りだけでは測りきれない時代が来ているのではないかというのが、正直な感覚です。

⎯⎯かつては認証マークが付いているものだけがオーガニック商品という見方もありました。アポセカリーの基準はいかがでしょうか?

 ビューティー アポセカリーのオープン時から2010年代半ばにかけては、厳格なオーガニックアイテムをお探しのお客さまが多く、エコサート(ECOCERT)やデメター(Demeter)などの海外認証を取得しているブランドを中心にセレクトしていた時期がありました。

 昨今では、ナチュラルオーガニックとサイエンスが融合したハイブリッドな価値観をもつブランドも増え、お客さまの関心度も、自分の状態や肌に合う商品や実感を伴いやすい商品へとシフトしていると感じます。このため現在は、認証のみを重視するのではなく、原材料の生育環境や特徴、自然環境や関わる人への配慮、製造環境など、商品背景をより深く理解した上で、お客さまに対して自信をもってご紹介できるブランドを選定させていただくようになりました。

⎯⎯今はお客さまの認証マークに対する価値観に変化はありますか。

 価値観として本当にさまざまです。例えば「ビオールオーガニクス(bior organics)」は、"オーガニックで美白*する"というコンセプトで、エコサートコスモスと医薬部外品認証を共に取得し、認証マークを前面に打ち出して展開しています。一方で、認証を取得しようと思えばできるレベルの商品であっても、人的コストや経費面からあえて取得しないポリシーを持つブランドもあります。認証の有無よりも、そのブランド独自の訴求点をどう伝えるかという方向に、各社の関心が移ってきているようですね。

*エコサートコスモスオーガニック認証取得の医薬部外品化粧水でメラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ

「かかりつけショップ」として、人を介した価値提供へ

⎯⎯デジタル化が進み、オンラインでの選択肢も増え続ける中で、リアルな売り場ならではの強みをどこに見出していますか。

 人を介して直接商品を紹介し、ご購入いただけるということが、私たちの最大の強みだと感じています。最近、BtoCのブランドの方々とお話していると、「リアルな接点の場を探している」という声を多くいただきます。それも複数拠点ではなく、シグネチャー的なアイコンとして1ヶ所あれば十分で、そこで仮説検証や課題抽出をしたいというお声です。市場がシビアになるにつれて出店場所を慎重に選ばれる時代になったからこそ、他にはない提供価値としての差別化ができる時代になってきたのではないでしょうか。

 それに、このフロアのユニークなところとして、ブランドの販売員さん同士が互いの商品を紹介し合う文化があるんです。ヘアケアを探しているお客さまがいらっしゃると、他のブランドの方が「あそこのコレ、最近すごく良かったですよ」と声をかけてくださる。それぞれのブランドを超えて、イセタン ビューティー アポセカリー全体として1つのチームになっているんです。働いている方々が皆さん知識も豊富で、商品が本当に好きなんだろうなと感じるところも、この売り場ならではだと思っています。

⎯⎯最後に、これからのイセタン ビューティー アポセカリーが担っていく役割についてお聞かせください。

 私たちの根底にあるのは、美と健康に対するかかりつけショップであるということです。オーガニック・ナチュラルはその大切な屋台骨の一つですが、それだけにとどまらず、お客さま一人ひとりの美と健康に寄与するものを揃えて提供していきたいです。具体的には、サイエンスコスメのような新しい品揃えの拡充に加えて、トリートメントやリトリートツアーのご案内といったサービスコンテンツも含めて、お客さまに寄り添う発信をしていきたいと考えています。

鳥谷悠見
三越伊勢丹 イセタン ビューティー アポセカリー バイヤー。2011年入社。ビューティーアポセカリーアシスタントバイヤー着任を経てベンチャー企業へ出向。2022年に帰任後、コーポレートブランディング部門に配属。2023年ECサイトシステム開発担当マネージャーを経て2024年より現職。

photography: Hikaru Nagumo(FASHIONSNAP)

木村耀

Hikaru Kimura

FASHIONSNAP 編集記者

学生時代に外資系ファッションメディアでアシスタントを務めたのち、大学卒業後、ファッション誌で編集として従事。2025年12月からレコオーランド「FASHIONSNAP」でビューティエディターとして幅広い分野を取材・執筆。プライベートでは坂本裕二や今泉力哉などの脚本家が描く日本語表現が好きで、彼らの作品を何度も見返すオタク気質。趣味は作詞作曲。公私問わず言葉を綴っている。

最終更新日:

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