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【インタビュー】パルコがコロナ禍で仕掛ける旗艦店リニューアルの裏側

これまでパルコの数々の施設を手掛けてきた執行役員の溝口岳氏 Image by FASHIONSNAP
これまでパルコの数々の施設を手掛けてきた執行役員の溝口岳氏
Image by: FASHIONSNAP

 コロナ禍で小売業界が苦戦を強いられる中、パルコが今秋に渋谷・浦和・池袋の旗艦店3店舗をリニューアル。渋谷パルコは約3年にわたるビルの建て替え工事を経て、2019年11月に再始動してからわずか2年での改装となった。最先端のファッションを発信してきたパルコは今回の旗艦店リニューアルで何を仕掛けるのか。これまで数多くの店舗開発に携わってきた溝口岳氏へのインタビューからコロナ禍のショッピングセンターのあり方を紐解く。

■溝口岳
1965年1月生まれ。1988年4月にパルコに入社。2008年3月に渋谷店店長に就任。以降、パルコやZERO GATEなど複数の開発案件に関わり、現在はマーケットクリエイション部、渋谷R&D推進室担当執行役員。2014年2月のNYコレクション参加を第1回としたアジアの若手デザイナーインキュベートプロジェクト「アジアファッションコレクション」の運営にも携わる。

「コロナは想定外」 渋谷・池袋・浦和の変化

―コロナ禍に旗艦店をリニューアルした狙いを教えてください。

 規模の大きい旗艦店をリニューアルすることで「パルコが元気に動いている」ことを示すという意味合いが強いです。コロナ禍が続きますが、前向きに楽しくできることがあれば積極的にリニューアルを仕掛けようと各店舗のスタッフも奮起しています。

取材時に着用したのは「ブラック コム デ ギャルソン(BLACK COMME des GARÇONS)」。渋谷パルコで店長を務めた際に出店を誘致するなど思い入れのあるブランドだという。マスクは「ダイアナ(DIANA)」からプレゼントされたもの。 Image by FASHIONSNAP
取材時に着用したのは「ブラック コム デ ギャルソン(BLACK COMME des GARÇONS)」。渋谷パルコで店長を務めた際に出店を誘致するなど思い入れのあるブランドだという。マスクは「ダイアナ(DIANA)」からプレゼントされたもの。 Image by FASHIONSNAP

―渋谷店は2019年11月に“新生渋谷パルコ”として生まれ変わったばかりです。

 大掛かりなリニューアルは5年に1回のサイクルなので、渋谷店は計画よりもだいぶ早いですね。リボーンしてから2年経つか経たないかというタイミングですが、コロナを経て価値観が大きく変わり次にやるべきことが見えてきた中で、旗艦店でもある渋谷店は積極的にリニューアルを仕掛けていくべきと判断しました。

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―現在の課題は?

 2019年のリニューアルオープン後はエッジの効いたデザインやカルチャーが好きという、特に20代後半から30代の若い男性が多く来店してくださり、メンズのファッションが元気だということを体感できました。海外の方もアジアに限定されず幅広く来てくれて、これからますます盛り上がっていくのではないかと期待していたところでコロナが広まってしまった。現在も若年層の男性を中心にご利用いただいていますが、コロナ以前よりも勢いは落ちてしまいました。これに加えて、30〜40代の女性客層も想定よりも足が遠のいている状況です。

―コロナの感染拡大はまさに想定外でしたよね。

 そうですね。渋谷パルコは計画と実態の乖離が生じており、従来のターゲット層を取り込むことができなかったというのが正直なところです。

―今回の改装では「ネクスト トーキョー」として展開していた5階フロアの半分を改装し、パルコとしても初となるアウトドアゾーン「パルコ アウトドア パーク」を開設しました。

 コロナの流行を機に、自分の生活を再設計した人が多かったと思います。パルコでも、ちょうど昨年の緊急事態宣言解除後の休業明けに楽器店の売り上げがいきなり大きく上がったんですね。一番売れたのはウクレレで、あとはギターとか。自転車も売れたと聞いています。いずれも、購入したその先に「自分の生活をちょっと素敵にしたい」「素敵な人と繋がってみたい」という想いがあると思うんです。そこで渋谷店ではコロナ禍の影響でより広まった「アウトドア」をテーマに取り上げ、近場で自然に触れる生活を提案することにしました。

5階アウトドアゾーンのイメージマップ Image by パルコ
5階アウトドアゾーンのイメージマップ Image by パルコ

■出店テナント
・NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA
・ogawa GRAND lodge
・ L.L.Bean POP UP STORE
・POLeR TOKYO
・RED WING SHOE STORE

アウトドアゾーンの開設により、オムニチャネル型売場「パルコ キューブ」とウィメンズの売場を縮小しています。コロナの影響が大きいですか?

 やっぱりそういうことになりますよね。これまでファッションが自己実現や自己表現の手段として大きな役割を果たしていましたが、ファッション以外にも選択肢があることがコロナ禍で明快になりました。どんなスタイルでもジャンルでも、ビギナーからヘビーユーザーまで繋がり、コミュニティを形成することができれば満足感が得られるようになった。これは我々のライフスタイルが成熟したとも言えると思います。アウトドアもこれまではヘビーユーザーでないと楽しめないと思われてきた部分がありましたが、敢えて都心の渋谷から「気軽に自然と触れるところから始めてみませんか」と提案する方向に舵を切りました。

―テナントにはノルディスクや小川テントを誘致しています。

 スタイルそのものがカッコ良くて本物感に溢れたブランドを揃えました。社内でグランピングやキャンプ好きのスタッフに聞いても反応は良かったですね。

ノルディスクはオフィシャルコンセプトストアとしては商業施設初出店となった。
ノルディスクはオフィシャルコンセプトストアとしては商業施設初出店となった。
小川テントも都内商業施設に初出店。
小川テントも都内商業施設に初出店。

―リニューアルオープン後の反響は?

 ノルディスクや小川テントのファンが集まって来てくれましたし、2階や3階で服を買っている方やポケモンセンターにいらっしゃるファミリー層の方々など他のフロアから来てくれたお客様からも良い反応をいただけていると感じています。共有通路の床の表情にも工夫を取り入れたり、「こういうスタイルに触れてみたい」と思ってもらえる空間をご出店いただいたテナントと我々が一緒に作ることで、もともと趣味でアウトドアに親しんでいる人と、これからアウトドアを始めたいという人が交流できるコミュニティが生まれたら素敵だなと思っています。

―次は池袋店の話を。渋谷店と同様に、今回のリニューアルはコロナの影響が大きいですか?

 そうですね。渋谷店と似たような状況で、都心かつターミナル駅直結の立地なのでコロナを機に存在価値が問われる環境に大きく変わりました。ただこの状況下だからこそメッセージを発信することに意味があると考え、渋谷店や浦和店と比べると規模は大きくありませんが今回のリニューアルを敢えて仕掛けました。

―池袋店のリニューアルでは「ユニセックスファッションのさらなる拡充」をテーマに掲げています。

 池袋パルコは駅利用者の利便性を打ち出すのではなく、「カップルで遊びに行く場」としての情報発信を強化していきます。カップルにも色々なかたちがあると思いますが、性別や国籍、年齢を問わず、ありのままのファッションを楽しんでいただける場にしたいと思い、ユニセックスフロアを作りました。

 リニューアルキャンペーンでも「WEAR IS FREEDOM」のメッセージを掲げ、リニューアルの規模以上に僕らの意図や意思、共有したい価値を打ち出しています。

Image by パルコ
Image by パルコ
Image by パルコ
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キャンペーンモデルにはよしあきとミチを起用

■2階の出店テナント(一部抜粋)
・PUBLIC TOKYO
・FREAK'S STORE(※本館5階から移転)
・CA4LA(※本館3階から移転)
・GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA

―池袋パルコでは段階的にリニューアルを進めていますが、現時点の手応えは?

 今回のリニューアルを機に、テナントが気合いを入れてイベントを実施してくれているのがとても印象に残っています。「フリークス ストア(FREAK'S STORE)」は4連発で企画を仕掛けてくれました。僕らもそういうことをやってくれる企業と組んで面積以上の楽しみを提供したいと考えていましたから、リニューアルをしないテナントも含めて試行しながらいろいろな楽しみを共に提供していくことで、キャンペーンも生きてくるんじゃないかと。来春以降はもっと規模の大きい企画を展開しようと計画しています。

―どういった企画を打ち出す予定ですか?

 池袋の街はここ数年で公園が整備されて、30代の子連れのお母さんがおしゃれなバギーを押して集まっていたりと、街が進化しています。豊島区としても「国際アート・カルチャー都市」を目指して劇場やシネマを作ったり、池袋の街の楽しみを広げています。池袋パルコとしては「自由な洋服を楽しむ」という提案に加えて、アートも絡めて街との連携を強化していく計画です。

池袋エリアでは池袋マルイや東急ハンズ池袋店、セガ池袋GiGOが相次いで閉店し、空洞化が懸念されています。パルコの見解は?

 冒頭でも挙げましたが、コロナ禍は自分たちの生活を楽しく豊かにすることだったり、価値を共有できることが求められています。池袋の街には素敵な公園ができて、アートに触れる機会も増え、そして広場には従来から池袋のカルチャーの一つでもあるコスプレした方々が集まったりと、自分達の好きなことを楽しもうというムードが高まっています。そこに対して、池袋パルコが単なる消費の場としてではなく、独自のスタイルの提案が具現化できれば、我々のビジネスが展開できる価値づくりができるのではないかと捉えています。

―最後に浦和店についてのお話を。オープンから15年が経ちますが、今回が開業以来最大級のリニューアルです。

 これまで浦和は「住む街」で、働く場所は都心という構図が主流でしたが、最近は30代を中心に若者の居住者が増えています。そしてコロナによって働く場所が選択できるようになってからは、浦和で「住む」と「働く」が完結するようになった。都心で消費されていた価値を浦和に持ってくることで、浦和に長くお住まいの方と、新しく生活を始めた方の両方をつなぐ役割を担えたらと思っています。

―浦和エリア初出店のテナントが充実しています。

 家の「外」と「中」という2つの軸から、都市部で展開されているブランドを誘致しました。「サボン(SABON)」は、実は10年前から浦和パルコへの出店を何度かお誘いしたことがあるんですが、浦和を素敵な街にしていきたいという思いに共感していただき、このタイミングで出店が実って嬉しかったですね。

■出店テナント(一部抜粋)
・BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS LIMITED STORE URAWA(※浦和エリア初)
・Jouete(※浦和エリア初)
・SABON(※浦和エリア初)
・Cosme Kitchen(※浦和エリア初)
・shop in(※浦和エリア初)
・212 KITCHEN STORE(※浦和エリア初)
・nana's green tea(※リニューアルオープン)

―浦和という街のマーケットに対する評価も変化しているんですね。

 立地的に「郊外」「準都心」のイメージが強かったですが、コロナを機に想像よりも浦和のマーケットが成熟していることを認識していただけたように思いますし、浦和パルコは旗艦店ですからビジネスチャンスの可能性も感じていただけたと考えています。フルオープンは11月下旬ですが、すでに初期段階から反響はいただいていて、新しい浦和の生活スタイルを望む声に応えられたという実感があります。11月にはベイクルーズの大型店のオープンも控えています。

いつの時代も“居場所”であり続けるショッピングセンターに

―リニューアル後の各館の売上目標は?

 2020年比ではもちろん上回る計画で、2023年までには2019年の実績を超えられるようにシナリオを描いています。今回のリニューアルは、そのシナリオを意識したものでもあります。全館リニューアルをしなくても新しいスタイルを提案することで客層が広がったり、既存のお客様にも支持し続けていただけるように進めていきたいと思います。インバウンド市場の回復にも期待したいですね。

―今冬は第6波到来を懸念する声もあり、厳しい状況が続く可能性もあります。

 過去の緊急事態宣言は、解除されなくても感染者数の減少に伴い人の動きが活発化する傾向がありましたが、9月末までの緊急事態宣言期間中は感染者数は減ってきても人の動きがなかなか活発化しなかった。解除された10月頭の週末にようやく動いてきたというのが見て取れたんですが、宣言期間中は人々がすごく用心深く行動してることを感じましたね。そういう意味では、第6波が来なかったとしても冬になったら人の動きに抑制がかかることはあり得ると思います。

―パルコとしての対策は?

 まずはこの秋のリニューアルで「パルコの楽しさ」を体感してもらうことですね。週1回は欲張りだとしても2、3週間に1回はチェックしないと我慢できない、と思ってもらえるようになれば、パルコオンラインストアへの送客にもつながりますし、パルコのアプリ「POCKET PARCO」やSNSをチェックするなど、なんらかの形でパルコとのつながりを持っていただけるのではないかと考えています。

―小売業界にとってしばらく厳しい状況が続きそうですが、消費者に求められる商業施設であるために必要なことは何だと考えますか?

 やはり生活を楽しく、豊かにするためのスタイルを提案することでしょうか。その先にコミュニティが作られる。それを繰り返して、我々はショッピングセンターとして存在し続けてきたのではないかなと。私はパルコに入社して30年が経ちますが、諸先輩の言っていたことを振り返って思いますね。時代とともに価値観や生活のあり方、コミュニケーションの手段が変化していますが、それに応えながらコミュニティを作っていくことを続けることができれば、僕らは必要な存在として残り続けていけると信じています。

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(聞き手:伊藤真帆)

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