「パリコレ学」を手掛けた放送作家の堀江利幸さん
「パリコレ学」を手掛けた放送作家の堀江利幸さん
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Fashionフォーカス

人気企画「パリコレ学」はどう生まれた?キーマンたちに聞く裏話<1. 放送作家:堀江利幸>

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成功の要因は「正しく叱れる人」と「追い込む」構図

—企画は約1年にわたり、2シーズン放送されました。これは反響があってのことだったのでしょうか?

 放送後の反響は大きかったです。個人的に一番うれしかったのは、他局のドラマ部門のトップの方が面白いと褒めてくれたことですね。あとはアパレルの仕事をしている友人が「周りで話題になってるよ」と言ってくれ、手応えを感じることができました。ファッション業界の方が喜んでくれたら良いなという思いが少なからずあったので、嬉しかったです。番組的には第1シーズンのコシノジュンコさんのSPで番組最高視聴率という結果を残すことができました。2シーズン続けられたのは、1期生の小野寺さんが実際にパリで良い結果を残してくれたというところも大きいと思います。

—パリ編では視聴者みんなが小野寺さんを応援していたと思います。作り手の立場で客観的に考えて、なぜそこまで視聴者に刺さったと思いますか?

 「正しく叱れる人」が世の中に少ないから見ていてカタルシスがあり痛快なのではないのでしょうか。今テレビの業界でそれをしている人だとマツコ・デラックスさんとか、「プレバト!!」の夏井いつき先生だったりで。不条理に怒りをぶつけるのではなく、愛を持って道筋を立てて叱るということ。アンミカさんがすごいなと思うのは、ファッションのこともそうですが、大事な局面の感情を言語化する時にとても秀逸な言葉選びをするんです。誰が聞いてもわかりやすくはっきりとした言葉で相手に伝えるということに長けているんだと思います。それが学院生、そして視聴者にダイレクトに響いているんだと思います。

—番組を作る上で気をつけた点はありますか?  

 出演している学院生はタレントではないので、テレビに出ることでその人の人生を狂わせることがあってはいけないと。酷評されたり、厳しい場面をもちろんオンエアで使いますが、学院生たちには未来があるので、マイナスな印象で終わらないようどこか前向きに感じられる作りにしたいということは心がけました。

—今回はパリコレを題材にした企画ですが、普段他にはどういった番組を作られているんでしょうか?

 個人的には人を追い込んで、リアルに表情が変わっていくような構図が好きで。今までに手掛けた企画は「マネーの虎」(英国BBC、米国ABCなど世界30ヶ国でフォーマット販売)や、現在も放送中の「ぐるナイ」の「ゴチになります!」、「炎の体育会TV」のマスクシリーズなどです。ちなみに裏番組の「おしゃれイズム」も古舘伊知郎さんの「おしゃれカンケイ」の頃から携わっていました。それと以前「ガチンコ!」という番組も担当してましたが、パリコレ学の放送が始まった当初、ネットで「ガチンコファイトクラブっぽい」という声があり、すごく気にしましたね。なのでパリコレ学では少しでもファッションやパリコレに関する学びを入れるように心がけたんです。山口小夜子さんの情報だったり、ケイト・モスのエピソードだったり。大枠の番組が学びの番組なので、そこは外れないようにと。

—今放送業界での「コンプライアンス」という言葉をよく耳にします。ヤラセと演出の境界線が一層難しくなる一方で、パリコレ学で仕掛けた演出はどんなことですか?

 「追い込んでリアルな表情を撮りたい」の一点で、何をしたら学院生が用意されたものでないリアクションをするかということを常に考えてました。あ、決してドSではありませんよ(笑)。例えば、最後の卒業式でアンミカ先生が合格者以外の学院生に花束を渡すんですが、普通はおめでとうという意味で花を渡すところを、落選者に花束を渡して、労いの言葉をかけたり、謝ったりするんです。学院生もそのシチュエーションに複雑な感情だったと思いますが、彼女たちのリアクションを引き出す一つの効果的な方法だったと思います。

—ドキュメンタリーの要素を含んだバラエティを手掛けてこられたとのことですが、これまでファッションとの接点は?

 まだ駆け出しの頃に唯一ファッションに関係する番組をやったことがあって。「浅草橋ヤング洋品店」というタイトルで、「モーニング娘。」を輩出した「アサヤン」の前身となる番組です。これは、僕の師匠であるテリー伊藤さんが手掛けた番組だったんですけど、ファッション番組のようなそうでないような内容でした。

 デザイナーの中野裕通さんを海パン一丁にして全身に金粉を塗ってマラソンをさせたり、上野公園のヒッピーを綺麗に散髪してビジネススーツを着させてヤッピー(※エリートサラリーマンを指す略語)に変身させる企画「ヒッピーはヤッピーになれるのか?」とか...ファッション番組とは名ばかりの破茶滅茶な内容で(笑)。テリーさんはとにかくおしゃれでファッション好きで「あえて一番ダサいファッション番組のタイトルつけよう」と言い出し、「浅草橋」と「ヤング」と「洋品店」をくっ付けてタイトルにしたという記憶があります。誰にも言ってない話ですが、当時僕もファッションに興味を持ち始めて、そんなにテレビの仕事がなくて暇だったので、原宿にあった「エスモードジャポン」という服飾の専門学校に通ったんですよ。デザインを勉強したんですが、すぐに才能がないと気づいて2ヶ月ぐらいで辞めましたけど。

—それは驚きですね。今まで携わってきたバラエティー番組と今回の「パリコレ学」ですが、制作面において違ったことなどはありましたか?

 基本的には一緒です。僕は人の表情がリアルに変化していくような番組が好きで、今回もその一点を意識して作りました。ただ、パリコレのランウェイを歩けるかどうかという結果はこちらでコントロールできませんから、結果を残せなかった時に企画として成立するのかという不安は制作陣の中でもあったと思います。

—最終回が迫っていますが、見どころを一言。

 今回選ばれた学院生は、誰よりもストイックで意識が高く、ロケでカメラが回っていない時でも一心不乱に黙々とウォーキングの練習をしている印象の子でした。半年間かけてアンミカ先生が選び抜いて、ようやくパリのオーディションまでたどり着きましたが、まだまだパリコレのランウェイは遠いです。どんな結末になるか、また学院生の顔つきが最初の頃と比べてどう変化したかにも注目して見てもらえたら嬉しいです。

(聞き手:今井 祐衣)

■ 第1シーズン「パリコレ学」小野寺南友モデルデビューへの挑戦に密着
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Part 1:キャスティング編
Part 2:ランウェイ編
Part 3:インタビュー編  【小野寺南友アンミカ

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