関隼平
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Fashion インタビュー・対談

【連載: パリを選んだ日本人クリエイターたち VOL.3】ファッションインプルーバー 関隼平

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 さまざまなジャンルで日本人クリエイターが活躍しているパリ。今回は、ファッションインプルーバーという肩書きで、ファッションシーンをより良く、進歩させるために幅広く活動する関隼平さんをクローズアップ。東京とパリで合同展示会「PARKS」を主宰する傍ら、昨年10月には自身のショップをオープン。そのモチベーションの源や日本とパリのファッションについて、話を聞いた。

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Profile
関隼平 Jumpei Seki
1979年、東京都生まれ。2015年、当時勤務していたセレクトショップ「ワンエルディーケー(1LDK)」のパリ出店のために渡仏。2016年よりフリーランスになり、日本とフランスのファッションをつなぐ架け橋としてメンズファッションを軸に幅広く活動中。 インスタグラム:@sekijumpei

― パリに住むようになったきっかけを教えてください。

 2015年6月、当時勤務していたセレクトショップ「ワンエルディーケー(1LDK)」がパリにショップをオープンすることになり、そこで働くためにパリへ移住しました。東京でもパリでも、バイイングやショッププロデュース、マネージメントなどを担当していて、現在もそのときのキャリアを活かして活動しています。

― フリーランスになったきっかけは?

 当時勤務していたショップに、ロンドンでセレクトショップ「Open As Usual」を経営しているオーナーがお客さんとして来店したんです。いろいろ話しているなかで「日本ブランドの商品をバイイングしたいのだけど、なかなか(英語が通じないなど)難しく、手伝ってもらえないか」と言われたことが大きな転機になりました。さらに、ほぼ同時期に、東京・五本木のセレクトショップ「トフ(toff)」からもディレクターになってほしいとの打診があったんです。フランスに住む日本人の視点で「東京とパリをファッションでつなぐ」というのは今の自分にしかできないことだし、ぜひやってみたいと思い、フリーランスになりました。肩書きのファッションインプルーバーは、シトウレイちゃんがつけてくれました。ファッションをよりよくする存在、という意味です。

定期的に東京で開催しているポップアップショップ「PARKS」の様子

渋谷・並木橋にある築80年以上の古民家で開催された合同展示会の様子 

― 現在のお仕事について聞かせてください。

 今の仕事のスタイルは、大きく分けて2パターンあります。ひとつめは、国内外のクライアントから依頼を受け、ブランドやショップのディレクション、コンサルティングやセールスを担当すること。もうひとつは、ショールームやイベントなどを自分で企画してアクションを起こすこと。この2つがメインになっています。

 自分企画の原点は、フリーになって間もない頃に始めた「PARKS」というポップアップショップ。自分視点でセレクトしたフランスのものと、東京のものをミックスした期間限定ショップを東京でオープンしました。2016年の秋には、同じく「PARKS」という名前で東京で合同展示会を主宰しました。それに手応えを感じて、少しずつ自分らしいと思えることを何でもやってみようと思うようになったんです。パリでも、2018年6月に「PARKS」の活動をショールーム形式でスタートして、2020年秋冬で4シーズン目です。ホールセールの分野は未経験だったのですが、2~3年かけてじっくり形にしていっています。東京に住んでいたら、こんな挑戦はできなかったと思います。

― 2018年には、「エスエイチ(S H)」というシャツブランドも立ち上げていますね。

 ここまできたら、とことんやったことのないことにチャレンジしてみようと、ブランドまで立ち上げてしまいました(笑)。こっちに来てから、やってみたいと思ったらとりあえず行動すること、思いつきを形にすることをモットーに仕事をしています。

 シャツは一番好きなアイテムで、自分がいつも着ているものなのでこだわりがあります。自分はデザイナーではないのですが、シャツなら自分らしさを表現できるかなと思って。定番シャツからワークジャケットまで、いわゆるアメカジの定番アイテムをすべてシャツ素材で仕立て、フランスらしいエレンガンスをプラスしています。テーマは「フランスから見たアメリカ」で、現在、パリと東京でコレクションを発表しています。

シャツ好きの関さんのこだわりが詰まったシャツブランド「エスエイチ」 

― 昨年10月には、ご自身のショップ「PARKS」をパリ16区にオープンされました。

 ショップに関しては、本当にたまたま縁があったんです。16区のフラワーショップ「jardin du I'llony」のオーナー、谷口敦史さんが「うちの店の隣の物件がずっと空いているんだけど、関くんなにかやってみたら?」と声をかけてくれて、その日のうちに「見るだけ」のつもりで物件を内見して。でも、その物件を見ていたらお店をやりたくなっちゃったんですよ。ショップ経営、特に海外での経営は大変なので、やるつもりはなかったのですが、条件の良い物件が「そこにあった」ので「やってみよう」と。物件を契約してから、ほぼすべてDIYでショップを整えて、準備期間二週間でオープンしたんですよ。とりあえずオープンさせて、オープンしながら、ちょっとずつお店らしくしていけばいいかなぁなんて、すごくゆるい感じで始めました。まだオープンしたばかりですが、フランスと日本のメンズファッションをクロスオーバーさせ、両国の交流の場にしていけたらいいなと思っています。

凱旋門近くの古き良き住宅街にあるショップ。場所柄、近所のマダムも気軽に訪れるのだとか。

― 新しいことに挑戦し続けるバイタリティの源はなんですか?

 今パリに住んでいる日本人である自分だからこそできる、日本にいてはできないことをやっているからだと思います。僕は、フランス語はほとんど話せないし、英語も堪能というほどでもありません。だけど、ビジョンやセンスを共有できれば、言葉の壁は越えられると思っています。好きなものが近い人であれば、たくさんの言葉がなくても成立するし、伝わるものだと思いますね。自分のやっていることが、単に幅広く最新のファッションを発信するという内容だったら難しいと思うんですが、自分が好きなローカルなメンズカジュアルに特化して仕事をしているからこそ、アイデアも出てくるし、仕事がつながっていくのだと思います。

 パリのメンズカジュアルシーンには日本のファッションカルチャーに興味がある人が多く、特につながりやすいです。例えば、16区にあるショップ「HOLIDAY」チームや、そのリーダー格であるゴーチエ(・ボルサレロ=HOLIDAYのディレクター)なんかはその筆頭ですね。

ショップの床もサインもDIYで。サインは手書きにすることにこだわったそう。 

― 年に5~6回、日本とフランスを行き来しているそうですが、フランスと日本では仕事の仕方は違いますか。

 両国の違いはあげるとキリがありませんが、日本にいるときとパリにいるときでは、自分自身のあり方が少し違いますね。フランスは日本に比べて休みも多いし、人々もゆったり仕事をしているので、自分も日本に暮らしていたときに比べるとのんびりしたペースで仕事をしています。ただ、日本にいるときはどうしても日本のペースでせかせかしてしまいますね。だけど、その差を楽しめている自分がいるので、そこはとても良いことだと思っています。日本の感覚でいうとストレスに感じるような出来事もたくさんありますが、それを「ここはフランスだから」と受け入れています。諦めがよくなったとも言えますね(笑)。二ヶ国で仕事をしていると、それぞれの国のいいところも悪いところも、常に発見があります。どちらの魅力も感じつつ、仕事できているのが良いです。

バカンスはしっかりとるのがフランス流。家族と海やキャンプへよく行くのだとか。

― 海外で仕事をしたいと思っている人になにかアドバイスはありますか。

 思いついたら行動すること、あとは、周りにどんどん「海外で仕事がしたい」と言うとチャンスが巡ってきやすいかもしれません。また、武器になるような仕事のスキルや得意分野があれば、留学からスタートしても、その後仕事が見つかりやすいと思います。僕は30代半ばで初めて海外生活を経験しました。仕事の都合で来たので、特にパリに憧れがあったわけではないし、最初からあんまり期待していないというか「ダメだったら帰国すればいいや」と思っているのが、海外生活を楽しく長続きさせる秘訣なのかもしれませんね。

1月、メンズファッションウィーク中に開催したWEEKENDとSuper Stitch Parisによるイベントの様子。

― 今後の活動予定を教えてください。

 引き続き、16区のショップを起点に、日本とフランス両国のブランドやクリエイターを繋ぐことと、また、パリと東京でのショールームは続けていく予定です。ショップでは、日本のブランドを紹介するイベントやポップアップをどんどんやっていきたいですね。それから、来年あたりに両国のファッションライフスタイルを紹介する雑誌を立ち上げたいなと考えています。ポップアップやイベントを通して、自分の身近にある、ローカルな良いものを発信しつつ、メンズファッションをより面白くしていきたいと思います。

(文・岡本真実)

【連載:パリを選んだ日本人クリエイターたち】
VOL.1 ファッションコーディネーター大塚博美
VOL.2 ルイ・ヴィトン ウィメンズ デザイナー中尾隆志
VOL.3 ファッションインプルーバー 関隼平

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