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自分自身の明確なイメージを持つこと 80歳のポール・スミスが次世代へ贈る言葉

聞き手&文・河合華子

聞き手&文・河合華子

 英国のデザインブランド「ポール・スミス(Paul Smith)」が、米国のギターメーカー「フェンダー(Fender)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを発表した。半世紀以上にわたりファッションビジネスの第一線を走り続けてきた、デザイナーのポール・スミス氏が80歳という人生の大きな節目を迎え、同じくフェンダーも今年で創業80周年を迎える。同コラボは、そんな双方の「80」というアニバーサリーイヤーを記念するコレクションとなっている。ファッションビジネスの変遷を見つめてきたポール氏に、これまでを振り返って今思うこと、そしてクリエイションへの情熱について率直に聞いた。

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Fender Flagship Tokyo

Image by: FASHIONSNAP

 同コラボは、両者に共通する独創性・自己表現・クラフトマンシップと、ポール氏の音楽への造詣の深さから実現。コレクションは、ロンドンのウォーダー・ストリートのレコード店文化や、音楽フェスの色・柄から着想した。コラボコレクションは、ポール・スミス銀座店、丸の内店、大阪店、渋谷店、ポール・スミス公式オンラインショップ、Fender Flagship Tokyo、フェンダー日本公式オンラインショップで取り扱っている。

 アイテムは、レディ・トゥ・ウェア、テーラリング、アクセサリーなどのアパレルコレクション全16型をラインナップ。音楽フェスティバルから着想を得たタイダイTシャツ(1万9800円)や、ひまわりモチーフのグラフィックをあしらったバーシティブルゾン(17万6000円)やパーカ(3万8500円)などが販売されている。コレクションの軸となる日本製の特別モデルのギター「Made in Japan Paul Smith Telecaster®」(44万円)には、ポール・スミスのシグネチャーストライプを大胆に取り入れたほか、ギターピックセット(5500円)などギターアクセサリーを用意。全体を通して、ポール・スミスならではの遊び心と音楽カルチャーを反映し、両社のブランドのアイデンティティを随所に表現している。 

Paul Smith + Fender タイダイTシャツ(1万9800円)

Image by: Paul Smith

◆コラボコレクションの発表で来日 80歳を迎えたポール氏に聞く

⎯⎯今回のコラボが実現したきっかけは? また、両ブランドが共鳴した共通点について教えてください。

 私にとっては残念なことですが……私が80歳になったからです(笑)。そしてフェンダーも80周年を迎えます。そういった背景から、彼らの有名なプロダクトに対して、異なるクリエイティブな視点を持ち込むことは、非常にエキサイティングな機会だと感じました。共通点について、第一に挙げられるのは、もちろん長く続いていることです。第二に、高いクオリティの基準を持っていること。これこそが私たちが長く続けてこられた理由でしょうし、常に品質を落とさないための基準を設定しています。そして最後に、面白い色の使い方をしている点ですね。

⎯⎯カルチャーや音楽に精通していらっしゃいますが、ご自身にとって「音楽」はどのような存在ですか?

 音楽と一口で言っても本当にさまざまですが、総じて言えるのは、感情を呼び起こし、喜びを生み出し、物語を語るものであるということです。そして、音楽の最も興味深い点は、やっぱり「記憶」との結びつきだと思います。特定の音楽を聴くことで、当時の状況や記憶を思い出す。例えば、初めて恋に落ちた時、初めて外国に行った時、初めてのロックのコンサートに行ったときなど。そういった思い出が常に音楽の中にはあるように思います。

⎯⎯そのような音楽への思いが今回のコラボアイテムにも反映されているのでしょうか?

 特別仕様のギターは、ピックアップやネックなどに当時のディテールを採用し、フェンダーの歴史的な文脈に忠実に沿っています。一方で洋服は、私がロックミュージックに初めて触れた1970〜1980年代のカルチャーからインスパイアされています。手にとっていただくと、今回デザインしたプリントテキスタイルの多くが、アメリカの西海岸のポスターなど昔の音楽ポスターに着想を得ているのがわかると思います。

Image by: FASHIONSNAP

⎯⎯半世紀以上ファッションビジネスに携わってきて、今思うことはなんでしょうか?

 このインタビューの読者の方々が関心を持ちそうなことでいえば、ファッションビジネスの概念自体が今と昔で全く違う、ということです。私たちがビジネスを始めた頃は、当然インターネットもオンラインショッピングもソーシャルメディアも、ファストファッションもありませんでした。ただ、頭の中にアイデアがあり、それを人々が気に入ってくれることを願う、というものでした。しかし今は、ソーシャルメディア、プロモーション、インフルエンサーが中心にあり、その先に服がある点で大きく異なっています。ですから、世の中にたくさんの美しい服が存在する中で、独自の世界観を持つことが不可欠です。最も重要なのはもちろん美しい服ですが、明確なイメージを持って、慎重に流通させなければならないのです。

⎯⎯逆に変わらないと思うものはありますか?

 正直に言うと、変わっていないものはあまりないと思います。残念なことに、今は服が流通しすぎています。昔は、ある都市や町に行けば、ユニークな小さなお店を見つけることができましたが、今は世界の主要都市はどこも同じブランドばかりです。個性のあるものを探すことが、非常に難しくなっていると感じます。

Image by: FASHIONSNAP

⎯⎯これからキャリアを形成していく10代、20代の若い人たちに、今アドバイスを送るとすれば?

 今は世界中にあまりにも多くのデザイン学校があり、学生の数に対して全員に行き渡るだけの仕事がありません。ファッション教育を受けてる人たちはたくさんいるのに、業界の仕事は限られている。つまり、デザインの観点において、しっかりとした自分自身の視点を持たなければならないということです。自分が働く会社に対して何を提供できるのかを知ることが、仕事を得るのに役立つはずです。これは、あなたの仕事(メディア)でも同じことが言えますよね。残念ながら、AIというものもすぐ近くまで来ていますし……。いずれにしても困難なことに挑戦することが大切です。少し怖いと感じることもありますが、私はそれがとてもエキサイティングだと感じるんです。

Image by: FASHIONSNAP

⎯⎯業界に長く携わっていらっしゃいますが、今もなお好奇心や情熱を大切にされている。

 そうですね。その情熱や好奇心というのは、決して無理に心がけているわけではなく、あくまで自然に湧き上がってくるものです。私は元々、人生そのものや、目にするあらゆるものに対して強い興味があるんですよ。モノの質感、差し込む光、人との何気ない会話──そういった、日々の些細なことすべてにね。

Image by: FASHIONSNAP

最終更新日:

■Paul Smith + Fender
取り扱い店舗:ポール・スミス銀座店、丸の内店、大阪店、渋谷店、ポール・スミス公式オンラインショップ、Fender Flagship Tokyo、フェンダー日本公式オンラインショップ

ポール・スミス公式オンラインショップ

聞き手&文・河合華子

Hanako Kawai

FASHIONSNAP 編集記者

大阪府出身。同志社大学卒業後、メーカーの商品企画&PR、編集プロダクションを経てレコオーランドに入社。学生時代、交換留学で滞在したパリでファッションウィークに出会い、ファッションエディターの仕事に関心を持つ。フランスのエスプリが息づくライフスタイルが理想。

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