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「プランシー」は新たなステージへ⎯⎯カロリーナ・カスティリオーニが描く“ライフスタイルブランド”の未来像

「プランシー」デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ

Image by: FASHIONSNAP

「プランシー」デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ

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「プランシー」は新たなステージへ⎯⎯カロリーナ・カスティリオーニが描く“ライフスタイルブランド”の未来像

「プランシー」デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ

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 ミラノ発のファッションブランド「プランシー(Plan C)」は、立ち上げから7年を迎え、2025年春夏には初のメンズコレクションを発表するなど、新たなステージに進んでいる。イタリアの著名なファッション一族で、「マルニ(MARNI)」創業者を両親に持つデザイナー、カロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)は、その美意識を受け継ぎながらも、鮮やかな色彩と遊び心のあるデザイン、妥協のないクオリティで支持を集めている。

 今後、ライフスタイルブランドとしてホームウェアカテゴリーもスタートさせるというプランシー。来日したカロリーナに、デザイン哲学やブランドの展望について話を聞いた。

変化を乗り越え、着実に成長した7年間

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⎯⎯ プランシーを立ち上げて7年が経ちましたね。これまでの歩みをどのように振り返りますか?

 2018年のデビューから好調なスタートを切ることができました。勢いがあって、ある種のブームを作っているような感覚もありましたが、その後、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響を受けました。それでも私たちは歩みを止めることなく、少しずつ成長を続けてきたと思います。最初はレディ・トゥ・ウェアだけだったラインナップも、今ではバッグやシューズ、そしてメンズコレクションへと広がっています。ゆっくりではありますが、これからはライフスタイルブランドとしての方向性をより確立したいと考えています。

カロリーナ・カスティリオーニ

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⎯⎯ この5年間で新型コロナウイルスのパンデミックや戦争、テクノロジーの進化など、世界は目まぐるしく変化しましたね。

 とても厳しい時期でした。プランシーは、年に2回のコレクションを発表する小規模なブランドとして始まりました。そのおかげで、コロナ禍においても大きく戦略を変える必要はありませんでしたが、規模を縮小したことで売上には影響が出ましたね。また、ロシアは私たちにとって大切なマーケットでしたが、戦争の影響で事業を停止せざるを得なくなった。加えて、物価も高騰しました。それでも価格には反映させず、利益を抑えることで乗り越えています。

⎯⎯ 以前カロリーナさんにZoomインタビューをさせていただいた際、スキーをしにスイスを訪れていたことが印象に残っています。

 あの時期は、さまざまな変化に対応する必要があり、心理的な影響も大きかったと思います。そんな中でも、私は家族との時間を大切にし、できるだけ日常の楽しみを見つけるようにしていました。スキーは今も続けていて、スキーウェアのデザインがコレクションのインスピレーションとなっています。

スキーウェアが着想源となっている「プランシー」2025-26年秋冬コレクション

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パーソナルなデザイン哲学

⎯⎯ デザインする上で大切にしていることは何ですか?

 プランシーはとてもパーソナルで、私自身の経験や感性をベースにしています。デザインする上で大切にしているのは、クオリティ(品質)、ディテール(細部)、そしてクリエイティビティ(創造性)の3つです。私たちは常にユニークな素材を探してリサーチを重ね、着る人が特別な気持ちになれるような日常着を提案したいと考えています。例えば、2025年春夏コレクションでは、コットン素材にフォーカスし、より自然素材を重視しながらも、一見しただけでは気づかないような特別な質感や個性を感じられるデザインに仕上げました。毎日着られる服でありながらも、配色やシルエットに少し遊びを加えることで、洗練されたクリエイティブな要素を楽しめる服づくりを心がけています。

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⎯⎯ 素材選びに関して、サステナビリティも考慮されていますか?

 ファッションのサステナビリティを語るのはとても難しいテーマだと感じています。私たちは年2回のコレクションに絞ることで、過剰な生産を避けるようにしています。またすべてのアイテムがイタリア製なので、これもサステナビリティやブランドの価値の一部だと考えています。イタリアには優れた職人がいる小さな工房がたくさんあり、伝統を守りながら、クオリティの高い製品を作ることができる場所です。また日本に向けて、特別にアーカイヴテキスタイルを使ったバッグを販売しました。このような取り組みも一例です。

アーカイヴのテキスタイルを使ったバッグは4月1日に阪急うめだ本店で先行発売した後、4月23日から全国で発売予定。

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日本顧客待望のメンズへの挑戦

⎯⎯ 2025年春夏には、ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Imagine Uomo)で初のメンズコレクションを発表されました。母であるコンスエロさんとカロリーナさんが手掛けていた時代の「マルニ(MARNI)」には男性ファンも多く、待望のローンチと感じられます。メンズとウィメンズのデザインは、どのように異なりますか?

 日本では、男性のお客さまがウィメンズのプランシーを購入してくださることも多く、メンズコレクションの要望が高まっていました。ウィメンズは自分自身を投影して作っていますが、改めてメンズウェアを作るとなると、どのようなアプローチで始めるべきか当初はとても悩みました。その時に思い出したのが、普段コレクションを製作する際によくメンズのユニフォームや作業着を扱う店舗に行って生地やディテールをリサーチし、その要素を女性向けの服に落とし込んできたことで。だったら、“その逆をやろう”と思いたち、私たちのアーカイヴから最もメンズらしいシルエットのアイテムを選び、このコレクションが生まれました。

ピッティ・イマージネ・ウオモで発表された「プランシー」初のメンズコレクションとなった2025年春夏

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 プランシーは、もともとマスキュリンな要素とフェミニンな要素をミックスしているので、メンズコレクションも自然に溶け込みました。実は、今日私はメンズジャケットとシャツを着ているんですよ。メンズとして販売していますが、ジェンダーを問わず共有できるワードローブを提案したいと思っています。

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家族経営の強みと受け継がれる美意識

⎯⎯ プランシーは家族経営ですね。それぞれどのような役割を担っていますか?

 はい、私たちのブランドは家族で支え合っています。父のジャンニ(Gianni)はCEOとして経営を担い、世界中の販売店やサプライヤーと強い関係を築いています。弟のジョバンニ(Giovanni)は主に生産と物流を、そして私はクリエイティブ全体を統括しています。

「プランシー」2025-26年秋冬コレクション

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⎯⎯ 母であるコンスエロさんも携わることはありますか?

 母はアドバイスをくれる存在です。実は、母はプランシーの上顧客で、時には1店舗分の注文以上の個人オーダーをしてくれることもあります(笑)。いつも私がデザインした服を着てくれていますね。

⎯⎯ 娘のマルガリータさんによるイラストも継続してデザインに取り入れられていますね。彼女も将来はデザイナーを目指すと思いますか?

 プランシーのアイコンとなったフィリッポとビアンカのイラストは、マルガリータが5歳の時に描いたものでした。その彼女も11歳になり、今はファッションよりもアートに興味があるようです。

娘のマルガリータが描いた弟のフィリッポと友人のビアンカのイラストを用いたアイテム

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⎯⎯ カスティリオーニ家の美意識はどのように受け継がれているのでしょうか?

 祖父はシーウィーファーズ(Ciwifurs)という毛皮会社を経営し、大手ブランド向けに毛皮を生産していました。その後、1990年代に父と母が独自の毛皮を用いたファッションブランド「マルニ」を立ち上げ、それが成長して大きなビジネスへと発展。私は幼少期からアトリエを訪れて、美意識に触れ、またシーウィーファーズからマルニのビジネスが転換してく過程を見てきました。家族の中でとても自然に受け継がれ、私のブランドもその延長線上にあると思います。

⎯⎯ プランシーの店舗やショールームに行くと、家具や壁紙といったインテリアにもブランド独特な世界観を感じられます。

 私はアートとデザインに非常に強い情熱を持っています。ショールームはゲストを迎える家のような温かい雰囲気を大切にしています。インテリアは、個人的に蚤の市で見つけたものを取り入れたり、素材や色のバランスに気を配ったりしています。異なる要素を組み合わせることが好きで、コレクションと同じように直感的に選んでいますね。また明るい色と暗い色を交えたり、光沢とマットの質感を組み合わせるなど、コントラストも大切にしています。

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⎯⎯ 日本のファッションや文化についてどのように感じていますか?

 日本は私にとって特別な場所です。日本の女性の美意識や、人々が自由に組み合わせる個性ある着こなしが参考になりますね。

ライフスタイルブランドとしての未来

⎯⎯ これからデザイナーやクリエイターを目指す人にアドバイスするとしたら、何を伝えますか?

 常に自分の直感を信じるということですかね。ファッションビジネスにおいて“アイデンティティ”はとても重要で、その軸がないと埋もれてしまいます。あとは信頼できる人たちと一緒に働くことも大切です。

カロリーナが撮影した写真にイラストを載せたグラフィックアイテム。右のバッグは娘のマルガリータが被写体に

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⎯⎯ プランシーでの今後の目標はありますか?

 ライフスタイルブランドとして成長していきたいと考えていて、今はホームウェアの新しいカテゴリー開発に取り組んでいます。ミラノで9月に発表し、キャンドルなどのアイテムを年末のクリスマスには販売する予定です。また、ミラノに初の店舗をオープンするプロジェクトも進行中なので、是非楽しみにしていてください。

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カロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)
「マルニ(MARNI)」創業家の娘として生まれ、同ブランドではスペシャルプロジェクト・ディレクターとしてフラワーマーケットの企画などを手掛け、キャリアを積んだ。2018年に独立し、ミラノで「プランシー(Plan C)」を立ち上げる。

ファッションジャーナリスト

大杉真心

Mami Osugi

文化女子大学(現文化学園大学)でファッションジャーナリズムを専攻、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」記者として海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当。2019年、フェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家を取材。2021年8月に独立後、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。2022年4月より文化学園大学非常勤講師。

最終更新日:

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