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【トップに聞く 2022】ポーラ及川美紀社長「ダイバーシティ実現がライフワーク」 女性管理職比率を上げる理由

及川美紀(ポーラ代表取締役社長)

Video by: FASHIONSNAP

仕事は常に次世代への責任が伴う、道をひらくシスターフッドの重要性

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ー基準ができると管理職試験を受ける女性も増えそうですね。

 実はどうしても管理職は大変というイメージがあるのか、受けるのを尻込みする人もいます。「私なんて無理」と自己完結してしまう人だって能力があるかもしれない。まずは挑戦していただきたい。もちろん忙しいですが、その分できる仕事も増え可能性が広がります。これまでの経験で、「管理職が大変なので辞めさせて下さい」と言ってきた人はおらず、それぞれ奮闘してステップアップしていってます。ですから、管理職経験者が自身の充実や成果を、20〜30代の女性社員たちにもっと伝えていかなければと思っています。

ー及川社長自身も先輩の“言葉”が後押しになったのでしょうか?

 私が部長職だったころは、女性が多い部署だったこともあり、問答無用で全員が管理職試験を受けるような環境でした。1回で受からず、翌年に受かった人もたくさん見てきました。私もそうでしたし(笑)。だから躊躇している人にも、落ちてもいいから挑戦すればいいと伝えます。役員になる時は、それ以前に4人の女性役員の方がいて、皆さん本当にパワフルだったので「あの人たちには敵わない」と思っていました。でも「及川さんやってみなよ」と背中を押してくれたおかげで今の私があります。私は、自分の仕事は常に「後進への責任」が伴うと思っています。私が社長になったことで開けた道もあると思います。道を切りひらいてきてくれた先輩方がロールモデルとなるというシスターフッドが女性社員たちの働き方と能力に繋がるのではないでしょうか。

2016年に作成したヴィジュアルイメージ「ポーラドッツ」。ポーラ製品を雫に見立て、一滴一滴の雫が時を超えて無限に広がっていく様子を表しているという。

ーまた、委託販売契約を結んだビジネスパートナーのビューティーディレクターは10代後半〜100歳と幅広い方が従事しています。ダイバーシティというと男女など性別に焦点が当たりますが、年齢のダイバーシティも今の課題です。

 現在、90歳以上は約300名の方が働いてくださっています。皆さん心身がとても健康で、「もうちょっと頑張って、この先に何があるのか見てみたい」という好奇心が旺盛です。それから、皆さん口を揃えて「次の世代への責任」ということもおっしゃいます。人間は誰しも老いますが、90歳以上の方々が現役で楽しく過ごす姿と見ていたら、年齢を重ねるのもポジティブに思えませんか。

ー90歳、100歳の方々が第一線というのは勇気付けられます。

 ダイバーシティやサステナビリティの議論は、いかに目先の課題を解決するかという話になりがちですが、もっと長い時間軸で見るべきではないでしょうか。たくさんの先輩方が作ってくれた道があったからこそ今があり、自分の仕事は次の世代へのバトンだということを、私は現場から学びました。数字を達成するだけの一過性のものではなく、現場にいる方々のバトンの受け渡しで現在の当社があるわけですから。

環境問題も”自分ごと化”できる組織に

ー一方で社会課題として、環境負荷の削減など「エコロジー」についてはいかがでしょうか?

 創業100周年に向けたスローガンで「We Care More.」を掲げており、その中で人と人とだけではなく、地域と地球環境の繋がりも意識するべく、「私と社会の可能性を信じられる繋がりであふれる社会」をヴィジョンとして再設定しました。大きな軸としては「リフューズ・リデュース・リユース・リサイクル」の4Rに取り組んでいます。

ー御社ならではの取り組みはありますか?

 各地域に根差したエステ併設型店舗「ポーラ ザ ビューティー」の活用は特別だと思います。各店舗でワークショップを開催してお子さんと一緒にゴミ削減を学んだり、地域のゴミ拾いや、化粧品の空容器を使ったリユースコンテストなども実施しています。そうした地道な啓発活動をすることで、化粧品を買う時にエコバッグを持ってきていただくとか、デジタルリーフレットにご理解をいただくとか、企業からの押し付けではなく納得した上で化粧品を楽しんでいただく土壌ができると思っています。

 ほかにも、トータルビューティー事業のビジネスオーナー約3200人とサステナビリティについて考える会を開くなど、関連事業を含めた社内でのセミナー活動も行っています。

ー化粧品業界では製品の膨大な廃棄が問題でもありますが、御社の考え方は?

 精度の高い発注が返品・廃棄削減に繋がると考えており、CRMの強化を進めています。これは当社の強みであるポーラ ザ ビューティーなどダイレクトチャネルで得られる情報をいかに使いこなせるか。どの商品をいつどれだけ買い、買い替え、リピートしたか…。その情報がデータベース化されると、ショップオーナーが顧客の購買データをもとに必要な分だけ発注することで、廃棄のほか輸送コストの削減にもなるでしょう。そういう意味で先ほどのセミナー実施など、ショップオーナーひいては現場と共に進める意識が重要だと思いますね。

ー「B.A」シリーズや「ホワイトショット」シリーズなど、リフィル対応アイテムも多く販売しています。

 個人的には、素材や容器など細かい部分は企業の責任として粛々と、できることはなんでもトライアル&エラーで進めているところです。代替原料や回収、物流の面でも手を付けられるところはたくさんありますが、会社のリソースとしてどこまで投資できるかが、多くの企業の課題でもあります。ですから、サステナビリティ推進のためにも母体のビジネスで体力がないといけないと思います。

 それから、化粧品で環境負荷が低い容器を作るというのは、単純にプラスチックを削減が良いというわけではないんです。極力原料が少なく、品質を保持し、ブランドの世界観を反映して、尚且つお客さまに選ばれる容器を作らなければならない。これにはデザインチームの力も必要不可欠です。そのために、社員一人ひとりがサステナビリティを自分ごと化していかないといけないんですよね。

ポーラ2021年12月期第3四半期決算
・売上高:771億4600万円(前年同期比5.8%増)
 売上構成比:委託販売チャネル68.8%、海外18.7%、国内EC5.0%、百貨店・BtoB7.5%
・営業利益:817億8200万円(同64.2%増)

「やらなきゃいけない」ではなく「やりたい」人に

ーサスティナビリティ推進における社員教育は?

 最初にお伝えしたように、サスティナビリティ推進室を設けておりますが、私の要望で4人の最小人数のチームにしました。なぜなら、大きな組織を作ってしまうと、組織外の人間はどうしても「やらなくてもいい」と自分ごと化できないからです。チームをコンパクトにすると、絶対に他部署との連携が必要になりますから、さまざまな部署を巻き込んで実行する体系になっています。

 スローガンの「We Care More.」に繋がる話ですが、「この仕事の先に地球環境を守ることに繋がるよね、だから私たちがもっとケアできることがあるはず」「可能性の蓋がちょっと開いていない人がいる、では何ができる?」など、社員一人ひとりが考えて、そして実践する。サステナビリティだけではなく全てに言えることですが、「やらなきゃいけない」ではなく「やりたい」と言う人であってほしい。失敗してもそこから何か学べば良い。手を挙げて実践してみる人をどんどん育てていかないとと思いますね。

ーでは採用ではどういった人を求めますか?

 採用では、感受性豊かに、物事の本質やストーリーを大切にし、未来に向かって、常に貪欲に成長していく、共創力を備えた人、を求めており、ポーラではそういった人のことを「バリュークリエイター」と呼んでいます。新卒採用では、「あなたは2029年のポーラをどうしたいですか?」というテーマでプレゼンをしてもらいます。プレゼンの上手さを問うわけではなく、自由な形式ですし、限られた場で自分の価値をどうにかこうにか伝えられる、人間力のある人に来ていただきたいですね。

ー最後に、社長自身が取り組まれているサステナビリティについて教えてください。

 私のライフワークは「ダイバーシティを実現する」ことと、社内外問わずさまざまなディスカッションの場や登壇する講演、メディアでの発信などを通して、自分の経験や意思を包み隠さず伝えて、「後進への責任」を果たすことです。またダイバーシティの一環として昨年はご縁があって、視覚・聴覚障害者などとの共生社会を目指しているダイアローグ・ジャパン・ソサエティの理事に就任しました。竹芝に体験型ミュージアムがあるんですが、私自身も物凄く感銘を受けました。

 実際に視覚・聴覚障害者の方に当社の商品開発の官能試験やバリアフリーな接客などにアドバイスをいただいたのですが、私たちにはない新しい視座と精緻な観察でフィードバックをくださいました。今後も私自身がまず積極的にプロジェクトに参加して、また体験者を増やしていくことで、新たなビジネスの可能性を広げていけると思っています。

(文:平原麻菜実、聞き手:福崎明子)

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