コロナを経てビューティ業界も徐々に勢いを取り戻している中、日本政府観光局(JNTO)によると、2023年11月の訪日外国人観光客数(推定値)は、2019年同月とほぼ同数の244万800人にまで回復。日本百貨店協会のデータでは11月時点で全国百貨店の売上高は21ヶ月連続でプラスとなり、インバウンド売上は円安の影響もあり394億と過去最高を更新した。コロナ前の百貨店化粧品売り場といえば、「インバウンド全盛期」で歩く隙間がないほど訪日外国人客であふれていた。3年の月日を経て、化粧品市場のトレンドは移り変わったが、インバウンドで人気アイテムに変化はあったのか?そこで、百貨店をメインに展開する日本のプレステージブランドから、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」「SK-II」「ポーラ(POLA)」の「B.A」「カネボウ(KANEBO)」「スック(SUQQU)」にアンケートを実施。各ブランドの売上トップ3と、買い方の変化について聞いた。
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SHISEIDO
1位:バイタルパーフェクション ブライトリバイタル ローション
1位は、主力エイジングケアライン「バイタルパーフェクション」の化粧水「バイタルパーフェクション ブライトリバイタル ローション」。使い心地やケア効果が“価格以上”と好評かつ、続けやすい価格が魅力だという。中国の大規模セールイベント「独身の日(W 11)」でも売れ筋の商品だ。
同率1位:バイタルパーフェクション ブライトリバイタル エマルジョン
バイタルパーフェクションの乳液「バイタルパーフェクション ブライトリバイタル エマルジョン」が同率1位。化粧水と同じくケア効果の高さが支持を集めランクイン。
3位:フューチャーソリューションLX エクストラ リッチ クレンジングフォームe
3位にランクインしたのは、SHISEIDOブランド最高峰シリーズ「フューチャーソリューションLX」の洗顔料「フューチャーソリューションLX エクストラ リッチ クレンジングフォームe」。中国や台湾、香港、タイなどのアジアを中心とした40代以降のお客から支持。“汚れが取れるのにクリーミーな洗い上がり”で人気を集めている。
クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)
1位:ヴォワールコレクチュール n
ブランド全体として、インバウンドの中心客層は中国。現地のSNSで人気の商品を、画面を見せて「指名買い」する人が多いという。人気トップ3のアイテムは、自家需要のほか家族や友人用に3〜5本まとめて購入も。1位のヴォワールコレクチュール nは、テクスチャーやほどよいトーンアップ効果、しっとり感で人気。中国で「ノーファンデ派」が増えていることから、カバー力と使用感のクオリティに支持が集まっている。さらに商品特徴の「色ムラ補正」が、トーンアップを求めるお客に刺さっているという。20〜30代を中心に60代まで幅広い層が購入。
2位:ムースネトワイアントA n
泡立ちの良さや洗い上がりのなめらかさが高評価。ヒアルロン酸などのうるおい成分や天然由来のアミノ酸を配合し、洗い上がりや付け心地で「しっとり感」の商品特徴が、特に中国国内の乾燥した地域のお客から人気が高いという。
3位:クレームUV n
中国に加えて、シンガポールなど日差しの強いアジア圏のインバウンド客が購入。肌に乗せるとしっとりするクリーミーなテクスチャーやツヤ感が人気で、高い紫外線カット効果が備わっていることも支持の理由。今年2月のリニューアル後も人気は継続。日本に旅行する度に購入しているリピーターの「指名買い」も多いという。
SK-II
1位:フェイシャル トリートメント エッセンス
コロナ前から引き続き圧倒的な人気を誇り、現在も1位。中国では「神仙水(妖精の化粧水)」の愛称で知られている化粧水で、若々しい印象へ導く使用感やうるおい感が高く評価されている。
2位:スキンパワー アドバンスト クリーム/スキンパワー アドバンスト エアリークリーム
発売前からインバウンド客からの問い合わせが多かったアイテム。8月に発売したばかりだが、直近3ヶ月で特に売れ行き好調。軽い付け心地のエアリークリームは、「ベタつきが気になる」「クリームに抵抗がある」という東南アジアの人からも使いやすいと好評だ。使用感に加え、肌タイプや気候によって好みのテクスチャーを選べる点も特徴で、2商品ともに売上を伸ばしている。
3位:ジェノプティクス ウルトオーラ エッセンス
メラニンの蓄積によるシミや肌の暗さ、乾燥による肌荒れ、睡眠不足が原因とされる黄味色の曇りといった“4つの肌曇り”に着目した美白美容液で人気。さまざまな肌悩みにアプローチする実力から、リピート買いする人が多いという。
B.A
1位:B.A ウォッシュ
2019年から現在まで人気が継続。それ以前は美肌サプリメント「B.A タブレット」が人気だったが、中国版インスタ「小紅書(RED)」などで美容家や女優といった著名人がB.Aのアイテムを紹介したことから、認知拡大、売上につながった。2019年からのリピート購入者が人気を支えているという。
2位:B.A アイゾーンクリーム
以前は口コミを見て購入する人が多かったが、コロナ後はリピート購入やプレゼントのほか、知人に紹介されて購入する人が増えたという。中国では「アイクリームと美容液は必須」とされ、コロナ前から高い人気を誇る。
3位:B.A ライトセレクター
コロナ以前から引き続き好調。店頭で試すことで商品の良さを体感して購入するケースが多いのが特徴で、美容液のような軽い塗り心地や、肌に良いとされる「赤色光」の説明から、購入につながることが多いという。
カネボウ(KANEBO)
1位:ヴェイル オブ デイ
日本国内でのベストコスメ受賞を機に、中国のSNSで話題に。SPF50・PA+++という安心感のあるUVカット効果で紫外線から肌を守り、みずみずしいテクスチャーで乾燥を防ぐという点が人気につながっている。
2位:コンフォート ストレッチィ ウォッシュ
2020年の発売以降、年々売上が伸長している。糸を引くような粘りのあるテクスチャーで、うるおいを与えながら汚れを素早く落とす“美容液洗顔”として注目。2023年からは新年(春節)に向けた干支デザインの限定パッケージで、新たな年を迎える時期に「希望」を届けることを目指したコミュニケーションも奏功した。2024年は中国および、国内インバウンド需要に向けたプロモーションを予定している。
3位:ライブリースキン ウェア
1位のヴェイル オブ デイと同じく、日本国内ベストコスメ受賞を機に中国のSNSで話題に。生命感あふれる肌を演出する素肌感のある仕上がりと、表情の動きにフィットする使用感が好評。
スック(SUQQU)
1位:ザ ファンデーション
ブランド全体としてインバウンド売上の中心層は中華圏。1位のザ ファンデーションは、今年リニューアル。リニューアル前から人気だったが、進化したことでなめらかな使い心地や肌なじみの良さ、軽いつけ心地、さらにはツヤ感が時間とともにより一層感じられる点が好評。
2位:プロテクティング デイ クリーム
高いUV効果と優しい着け心地を兼ね備えた、スキンクリームのような日焼け止め。保湿力の高さとトーンアップ効果、ツヤのある肌印象を作る仕上がりが注目を集めている。
3位:シグニチャー カラー アイズ
今回のランキングで唯一のポイントメイクアップアイテム。質感が良く透明感のあるフォーミュラは、重ねても濁らないことで「理想の仕上がり実現しやすい」と人気に。重ね塗りしやすい発色が初心者でも使いやすいと好評だ。
売れ筋アイテムから見るインバウンドの「今」
各ブランドで人気を集めているアイテムは、化粧水や美容液、日焼け止めなどのスキンケアアイテムが中心。2019年は洗顔やクレンジングなどの“落とすケア”が人気だったと語るブランドも多かったことから、今は“与えるケア”へのニーズも高まりを感じる。また、「美肌」「美白」や「エイジングケア」を訴求するアイテムはコロナ前・現在で変わらずインバウンドの“花形”だ。
購買行動として、コロナ後は従来の“爆買い”はポピュラーな購入方法ではなくなりつつあり、自分に合うアイテムを求めるお客に対するカウンセリングが重要だと語るブランドも多い。訪日観光客数が2019年に追いついている昨今、化粧品売り場もコロナ前のような賑わいを見せ始めている。コロナ禍を経て、越境ECもより充実してきていることから、ECでの利便性とリアルの売り場での丁寧な接客、さらにはニーズが高まると予想されるトラベルリテールのOMO戦略は、インバウンド需要に対しても重要になりそうだ。
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