中国の調査会社・星図数据によると、2023年の中国ダブルイレブン(独身の日)の主要ECプラットフォームの流通取引総額(GMV)は1兆1386億元(約23兆9106円)で、前年比2.08%増と微増にとどまった。
今年はTmall(天猫)やJD.com(京東)など大手プラットフォームが“最安値”を売り文句に、これまで煩雑だった割引の仕組みを簡素化し、より簡単に即時値引きで購入できるなど割引を重視する戦略をとった。またライブコマースを中心とするプラットフォームでは、抖音(Douyin)や快手(Kuaishou)が売り上げを拡大。ライブコマースアプリ全体のGMVは2151億元(約4兆5171億円)に上った。
商品カテゴリー別ではパーソナルケア・美容は全体の8%にあたる786億元(約1兆6506億円)を売り上げた。代表プラットフォームの売れ筋ランキングとともに、注目の美容ブランドや商品を紹介する。
Tmallの美容部門のトップに立った中国ブランドとは?
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Tmall美容スキンケア部門の販売実績ランキングでは、中国ブランド「PROYA(珀莱雅)」が1位を獲得。欧米ブランドを割ってトップ3に中国ブランドが入るのは2017年以来で、同ブランドは抖音の美容ブランドランキングでも1位となり健闘した。「PROYA」は2003年に誕生し、有効成分に関する研究に注力するスキンケアブランドで、独自の「環状ペプチド」をキー成分とするエイジングケア商品「紅宝石面霜3.0(ルビークリーム3.0)」が人気。
またメイクアップ部門で2位になったブランド「TIMAGE彩棠」は「PROYA」の姉妹ブランド。スキンケア・メイクアップのいずれでも中国ブランドの人気が高まった。
新興ブランドのみに限った店舗販売実績ランキングでは、1位にヤーマン(YAMAN)の関連会社、MACHERIE BEAUTY TECHNOLOGY CO.,LTD(中国)が展開する美容機器ブランド「FLOSSOM(花至)」がランクイン。2019年に設立された「FLOSSOM」は、医学的視点で開発された製品を展開し、すべての美容機器を皮膚やRF技術応用の研究を行う専門家と共同開発している。
また、同ランキング3位の「稀物集SHE LOG」は中国の高原植物を使用した中国のスキンケアブランドで、希少な天然松茸から得られるマツタケエキスを使用したスキンケアシリーズが人気を集める。
Image by: 「稀物集SHE LOG」のWeiboから
Image by: 「稀物集SHE LOG」のWeiboから
そのほか日系ブランドは美容スキンケア部門で14位に「SHISEIDO」が入った。例年と比較して苦戦した背景には、処理水の海洋放出の影響を受けライブコマースなどプロモーション活動が縮小したことなどが響いたとみられる。またメイクアップ部門では4位「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」、19位「シュウ ウエムラ(shu uemura)」がラインクインした。
抖音ECでは中国国産の美顔器ブランドが人気
抖音によると、抖音ECブランドショップのGMVは前年比約3.5倍に増加で、4年連続で最高値を更新。売り上げ1000万元(約2億1000万円)を超えた人気商品は昨年の2.7倍に達し、「PROYA」「韓束KANS」「ロレアル パリ(L'Oreal Paris)」「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」などが1億元(約21億円)以上を売り上げた。
「韓束KANS」は美容ブランド部門で2位に入り、ブランドのスター製品「红蛮腰」シリーズのセットは美容商品部門で累計販売トップに立った。2003年に設立された「韓束KANS」は、科学的エイジングスキンケアブランドとして知られ、近年は自社配信のライブコマースや抖音KOLとの協力で成長している。
また美容ブランド部門のトップ10には2つの中国産美顔器ブランドが入った。5位の「Jmoon极萌」は、美容脱毛器で有名なブランド「ユーライク(Ulike)」から2021年にサブブランドとして登場。人気アイテムの「ビッグアイロン美顔器pro」はマイクロカレントと高周波の2in1技術を採用し、大きなアイロン形のヘッドが肌との接触面を増やし、素早くケアできると評価を得た。
Image by: 「Jmoon极萌」のWeiboから
Image by: 「Jmoon极萌」のWeiboから
8位にランクインした「AMIRO覓光」は、LED付きの化粧鏡で美容市場に参入し、2020年から家庭用美顔器の分野で拡大。ダブルイレブンで売れた新作「コラーゲンキャノン第二世代」は、高周波エネルギーを使用する美容医療機器サーマクールから着想を得たエイジングケア美顔器で、敏感な中国人の肌に合うように摩擦を避けるデザインを採用したという。
美顔器やスキンケアカテゴリーは、これまで欧米を中心に海外ブランドが人気を独占していたが、今回のダブルイレブンでは新興ブランドから中堅ブランドまで、中国人のニーズを把握した国産品が注目を集める結果となった。
Image by: 「AMIRO覓光」のWeiboから
Image by: 「AMIRO覓光」のWeiboから
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社サンケイスポーツ編集局記者職を経て、「WWD BEAUTY」記者として中国や欧米などの海外美容市場やビューティテック、スタートアップなどを中心に取材。2020年4月に独立し、現在は美容業界情報を中心に若者トレンドや中国市場に関する記事を執筆。
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