
柴田麻衣子
Image by: FASHIONSNAP
ラグジュアリーセレクトショップ「リステア(RESTIR)」の創業とともに1987年にスタートしたオリジナルブランド「ルシェルブルー(LE CIEL BLEU)」が、2025年春夏からリブランディングに着手した。同ブランドはこれまで大人の女性のためのリアルトータルコーディネートを提案してきたが、新たな取り組みの一環として注目度の高い気鋭ブランドとのコラボレーションを積極的に行い、リステアとの相乗効果を強化していく。リブランディングを機にディレクションを担当することとなったリステアの柴田麻衣子クリエイティブディレクターに、リブランディングの目的、今後のプランについて聞いた。
新生ルシェルブルーは柴田麻衣子のワードローブ提案
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── ルシェルブルーがリブランディングに着手した理由は?
ルシェルブルーはリステアの創業とともに1987年にスタートし、これまで、トレンドを程よく取り入れたモードとリアルクローズの融合を提案してきましたが、今までと同じことをやっていても顧客にクリアなメッセージが届かないのではないかと考えるようになったからです。ファストファッションに加え、インフルエンサーブランドが市場に参入したことで、よりマーケットが飽和状態になってきている中、長い歴史を持ち、多くの人たちに愛されてきたルシェルブルーがこの先ブランドとしてどのようにサバイブしていくのか、考え直す必要があったんです。
── 柴田さんが全面監修に至った経緯について教えてください。
ファッション業界で長年仕事をするなかで痛感したのは、「現代の女性にどこまで寄り添えるか」ということでした。ファンタジーな装いに憧れる一方で、日々戦闘服だけで過ごすことはやっぱり疲れてしまいますよね。私自身もリラックスできる服を着たいと思う時もあり、リステアで取り扱うブランドとルシェルブルーのミックスを一番体現してきたという自負もありました。そうした経緯もあり、現代女性の想いを汲み取れるんじゃないかとリブランディングの監修に携わることになりました。
新生ルシェルブルーでは、私のワードローブを再現し、従来のファンに加え新たな層にもリーチしていければと考えています。現在デザイン制作チームは、私とファブリック担当のほか、外部デザイナーが2人、パタンナーが2人、MDが1人です。単なるワードローブではなく、さまざまなプロジェクトを通して、新生ルシェルブルーを丁寧に育てていくつもりです。
── 30年以上の歴史をもつルシェルブルーですが、既存のファンに加え、新たな顧客層獲得のための具体的な戦略とは?
長い歴史を持つが故に、良くも悪くもブランドイメージが固定化していたと思うんです。あらゆる選択肢がある現代において、「可愛い」だけでは消費者には響きません。その服にどんな意味やストーリーがあるのか、さらなる付加価値が必要になっています。リステアとルシェルブルーは同じ会社に属しながら、あえて独立した世界観を保ってきました。しかし、両者の距離を少し縮めれば、新しい魅力がより鮮明に伝わるのではないか、と考えています。ベーシックでありながら仕立ての良さにこだわったルシェルブルーのアイテムは、リステアで扱うハイブランドとも自然にコーディネートできる。そこに可能性を感じています。
また新たな取り組みとして、新鋭ブランドとのコラボレーションや年に数回プレミアムなカプセルコレクションの発売なども予定しています。ルシェルブルーを土台に、ラグジュアリーブランドとの化学反応を楽しめる点が私たちの強み。その相乗効果をどこまで高められるかが、これからの課題です。

ヴィヴィアーノとルシェルブルーのコラボアイテム
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── デザイナーとのコラボレーション企画第1弾である「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」との協業ではどのような反応がありましたか?
ヴィヴィアーノはこれまでリステアでの展開がほとんどありませんでしたが、今回のコラボはとても好評でした。シンプルなタンクトップには、2025年春夏ショーで象徴的だったバラのモチーフを一輪だけ配し、さりげないポイントにして、シルエットは綿密に話し合い、ルシェルブルーらしいリラックス感のあるフォルムに仕上げました。ジャージー素材のドレスは、花の分量を微調整しながら、一枚でさらりと着てもドレッシーに映えるメリハリの効いたデザインになったと思います。

ヴィヴィアーノとルシェルブルーのコラボアイテム
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韓国発のヘアアクセサリーブランド「ヘイップ(HEYEP)」とのコラボもとても好評でした。実は日本人デザイナーが手掛けているブランドで、日本と韓国を結ぶブランドとして注目を集めています。限定発売した携帯ストラップは、完売するほどの人気でした。

ヘイップとルシェルブルーのコラボヘアアクセサリー
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このほか、ルシェルブルーの核となるベーシックラインは月に数回のペースでリリースしていく予定です。トータルコレクションで提案するというより、リステアでセレクトしているインポートブランドと「ミックスしても楽しめる」という点がポイントになります。

マネキンはルシェルブルーとrokhをスタイリング
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例えば、このコーディネートもスカートはルシェルブルーで、トップスは「ロク(rokh)」なんです。キャンペーンで着用しているのも同じスカートで、その時のパンプスは「バレンシアガ(BALENCIAGA)」をセレクトしました。
── ルシェルブルーのアイテムの価格設定やディテールのこだわりについて教えてください。
ベーシックなラインはシャツが2万5000円前後、パンツでも2万円前後なので色違いで購入しやすいと思います。忙しい女性には、一枚でも様になるレイヤリングしているようなデザインのシャツが好評です。ジャケットはメンズテーラリングの技術を取り入れ、胸元にさりげなくチーフ風ディテールを仕込みました。大人のウィットを効かせたこれらのアイテムは、ラグジュアリーブランドとあわせても引けを取らず、マッチしてくれると思います。

ルシェルブルーとミズアソビのコラボアイテム
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── 新たにスイムウェアブランド「ミズアソビ(MIZUASOBI)」とのコラボアイテムを発売しましたが、ルシェルブルーらしいこだわりとは?
ミズアソビは「Swimwear but not Swimwear」をコンセプトに掲げたスイムウェアブランドです。日常でも着られる機能性とデザイン性を備え、環境保護やサステナビリティにも配慮したものづくりを行っています。今回のルシェルブルーとのコラボは、インスタグラムでたまたま見つけてDMしたことから実現しました。既存のトップスをボディスーツ仕様にしていただき、海やプールに入らない人でも着られるようにデザインして。だから商品名は「ミズアソバナイ(MIZUASOBANAI)」です(笑)。シャーリングデザインによって程よくホールドしてくれる上、ボディラインのイヤな部分を拾わず細く魅せてくれるのがこだわったポイントです。カラーは、使う頻度が高いであろうブラックとルシェルブルーのアイコンであるブルーの2色に絞りました。

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またパッケージには、環境負荷を抑えるために従来のミズアソビが使用している生分解性素材を採用し、アクセントとして「バナナ」のステッカーを貼っています。

ルシェルブルーとミズアソビのコラボアイテムのパッケージ
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── 柴田さんがコラボしたいブランドの基準は?
気鋭デザイナーとのコラボには積極的に取り組みますが、あくまでリステアのお客様に響くということが大前提です。手に取りやすい価格で、奇抜すぎず、ファッション初心者にも寄り添えるアイテムを提案していきたいと考えています。その思いの背景には、現代女性の多様化したライフスタイルがあります。仕事と子育てで忙しい毎日を送りながらも、ファッショナブルでいたいと思う人はたくさんいる。ルシェルブルーを通して「こんなブランドあったんだ!」とか、「こんな着こなしができるんだ!」といった発見をしてくれると嬉しいですね。個性的なブランドとのコラボであっても日常に落とし込めるアイテムを提案し、毎日のコーディネートのお手伝いができればと思います。

柴田麻衣子
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── ヴィジュアル作りも監修されていますが、どのような世界感を目指しているのでしょうか?
モダンでモードなニュアンスを目指しています。ロゴもブラックに一新し、ショッパーもリステアと同じブラックで、エンブレムもモードなニュアンスにしました。インスタグラムでの発信も力を入れており、コメントやキャプション、写真の選定も自分で行っています。これまでは他社のように戦略的に広告を打つことはしてこなかったのですが、今後は積極的にプロモーションにも取り組む予定です。
今、セレクトショップに求められるものとは?
── ファッション感度の高い顧客を多く抱えるリステアですが、変化する消費者の嗜好をどう捉えていますか?
ルシェルブルーは日本を中心に、その他アジア圏のお客様がメインです。一方リステアでは、ラグジュアリーブランドの価格が高騰している今でも「ファッショナブルでいたい」という根底の欲求は変わりません。ただ、「上質な服を知っている分、新しく合わせられるアイテムが限られる」という声もあります。その点、ルシェルブルーはベーシックでありながら素材の良さを保っているため、既存のワードローブと自由にミックスしやすい。ファッションの選択肢を広げる役割を果たせるのではないかと考えています。
── ルシェルブルーは都内百貨店やセレクトショップのほか、名古屋・京都・大阪・兵庫にも展開しています。今後、新規出店の予定はありますか?
現時点で店舗を増やす計画はありません。代わりに、現在大丸京都店で「RESTIR GROWND」と題したポップアップを開催しており、ラグジュアリーブランドではなく日本のブランドをフィーチャーし、ルシェルブルーとのミックスを提案しています。今後は、定期的に大丸京都店でさまざまなイベントを行い、限定アイテムも発売する予定です。この「RESTIR GROWND」を通してラグジュアリーな環境や体験作りに注力していきたいです。

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── 海外ラグジュアリーの価格高騰でバイイングすら厳しいと言われる昨今ですが、柴田さんが考えるセレクトショップの今後の在り方とは?
それこそひと昔前は、SNSやインフルエンサーが存在せず、ブランドと顧客をつなぐのはセレクトショップの役割でした。しかし今は状況が一変していますよね。この時代に、セレクトショップに求められるのは、消費者の知らないものをどういう見せ方で届けられるか、スペシャルな空間でSNSでは得られない情報をいかに早く届けられるか、だと考えています。顧客の好奇心をどんな形で満たすかが大切だと思います。
── リブランディグがスタートしたばかりですが、ルシェルブルーの3年後のヴィジョンとは?
先ほども話したように、歴史があるがゆえに「母親が着ていた」というイメージを持っている人もいれば、「コンサバなイメージ」を持たれている人もいます。リステアが、「ひとつのクローゼット」としての役割を果たせることをアピールしていくとともに、中国や韓国を中心にアジア圏にまでルシェルブルーの認知を広げていきたいと考えています。
女性ファッション誌の編集を経て、2012年INFASパブリケーションズに入社。季刊誌「WWD JAPAN マガジン」でエディトリアルを担当。2016年からフリーランスに。国内外のセレブリティインタビューをはじめ、トレンドファッション、ビューティ、ライフスタイルなどのコンテンツで執筆を行うほか、カタログ制作も手掛ける。20年以上に渡り全国各地のサウナを巡り歩き、コラムを執筆するなどプロサウナーとしても活躍中。
最終更新日:
◼️ルシェルブルー
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