【後編】名門セントマーチンズ学生が語る本音『高い英語の壁、卒業後の将来について』

 ロンドンのファッション名門校セントラル・セント・マーチンズ(通称:セントマ)にお邪魔して、日本人学生5名に学びと本音を語ってもらう座談会企画。前編では「学校」をテーマにセントマの授業スタイル、日本の教育との違いなどについて話していただきましたが、後編では、さらにグローバルな視点で「言語」「将来」「日本」について日々感じていることを語ってもらいました。 

>>【前編】名門セントマーチンズ学生が語る本音 『入学した経緯、授業、学費は?』

参加者:

中澤 氷名子(2年ファッション・プリント科)
具志堅 幸太(3年ファッション・ニット科)
谷本 和美(3年ファッション・プリント科)
富永 航(ファッション・プリント科 卒業)

 


台頭するアジア系学生


今回ロンドンでコンペや卒コレを見て回ってきたのですが、そのほとんどが日本人以外のアジア系の学生(中国人と韓国人)だったという印象があります。

具志堅:分母の問題なのかな。中国だと圧倒的に人口も違うし、全体的に富裕層のレベルが違う。


谷本:私が思うのは日本は先進国として成熟しているからファッションへ対する熱が低い気がする。中国の子はもっと素直にファッションが好きっていう子が多い。だから飛びつくものが全部新鮮なのかなって。それを素直に作品に出してるから勢いがあるように見えるのかな。

クラスにアジア人は多い?


具志堅:僕のところはいない。


谷本:私のクラスはほとんど韓国の人。ここは韓国かな?みたいな(笑)


具志堅:NYのパーソンズはここよりもっと学費が高いよね。MA(修士課程)はびっくりするぐらいほぼ中国人。もしくは、奨学金をもらっている日本人かヨーロッパの学生。授業料を全額出して通っているのは中国の人だけ。

富永:この間日本に戻った時に、「アーツカウンシル東京」っていう若手の芸術家を支援する機関で、どのアーティストを支援するかを決めている人に会ったんだよね。演劇とか絵画のアートにはあるんですよね、そういった支援が。でもファッションって日本に昔からあるものではないから、その点で不利な所はあって、「芸術」でカテゴライズされない。ロンドンやパリって国がファッションでお金を生み出しているから、表面的な部分もあるけど若い人をデビューさせるために周りの力が働いて、形に持っていく。それでみんながロンドンに集まってきて、ブランドになっていくんだろうね。ファッションが生まれるサイクルがちゃんとできている。ある程度でっち上げても良いのかもね。本当かは別にして、ファッションが盛んに見えるようにしている。

谷本:確かに無理やりまわしている感じはある。

でもそういう力も必要だよね。

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言語の壁はやはり高い?


自分の作品をアピールするプレゼンテーションなどの場で言語を壁と感じる?



富永:言語は完全なる「壁」だよね
。

谷本:うん。「壁」だね。


中澤:見映えが良くても、どういうプロセスで、何を考えてその作品を作ったのかっていうポイントをちゃんと説明出来ないと、見ている側も理解してくれない。




具志堅:そこはもう場数を踏むしかない。あと友達と飲みに行く。これはすごく大事。


谷本:そうだね。

具志堅:僕はあまり「壁」と感じたことはなくて。もちろん日本語の方が100倍喋れるけど、自分の作ったものに関しては自分の言葉で伝えられているとは思う。逆にプレゼン関係で言語を問題に感じたことある?


中澤:あるっていうよりも、説明したいことを説明しきれてないんじゃないかって不完全燃焼みたいに感じる時はある。


谷本:文化が違うから、日本人なら感覚で通じる所もそれを汲み取ってもらえない時がある。そこは言語で補うべきなんだろうけどそこまでの言語能力がないって感じるときはあるかな。


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富永:でもビジュアルでプロセスって伝わるから、僕は割りと普段喋らずに、ポイントだけ説明するようにしていてそれで困ったことはない。


谷本:私も基本そのスタンス。それで問題はないんだけど、消化不良な感じはする。十分に伝わっているかどうかが微妙って感じで。


具志堅:でもさ、山縣さんがファイナルのコレクションの時に審査員に向かってなんて言ったか知ってる?「ジャストインパクト!」って(笑)。


谷本:それはそれで合ってるからね(笑)。


具志堅:それで通じると思うし、彼の作品の場合。
みんなはロンドンに来た時英語喋れた?


谷本・中澤:全然。


中澤:ファンデーションの時は、喋れないなりにどうやって生きていくかって感じだった。チューターと話すにしても言ってることがわからなくて。作品を説明するのに自分の語学力でどうやって話せばいいんだろう、っていう恐怖はあったな。


具志堅:そういえば、ファンデーションの時は僕もそう思ってた。BA(学士課程)に入ってからはなんとなく慣れてきたけど。当時は怖かった。


中澤:そうそう、ただのチュートリアルが面接以上に怖かった。あれで鍛えられた感じはするけど。

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卒業後の活動拠点


将来に向けてどういった活動をしていますか?今後拠点を含めどこで活動をしていきたい?

富永:今はロンドンが拠点だけど、将来はどこでも良いと考えていて。ロンドンって生活するにも大変なのにましてや自分の好きなことを外国人としてやっていくとなるとかなりのお金が必要。友達では起業する子もいる。ロンドンで起業するには1000万円くらいの資本金が必要だからどのみちお金はかかる。

具志堅:個人的には日本以外でやりたいと思ってる。中国でもブラジルでもどこでも良いんだけど自分は「外国人」っていう立場が好きで。「外国人」としてワンレイヤー置いてから人とコミュニケーションをとるのが好きなんですよね。パトロンを見つけてとなるとあまり現実味がないから、どこかブランドに就職してニットのデザイナーとして働けたらな、と。ビザの問題は常にあって、フランス語と英語喋れるヨーロッパの子と日本語と英語喋れる僕が面接に行っても採用されるのは当然ながら、ビザと言語の面でヨーロッパの人なんだよね。そこでどうアピールできるかなんだけど。

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中澤:私は日本を拠点にするのも全然ありだと思ってる。でも日本での下積みはあまりしたくはないかな。海外で経験を積んで自分のスキルもそうだし、やりたいことを明確にしてから日本でやっていくのは良いと思う。でもまだ2年生だからインターンとか色々経験してわかることもあるのかな、とは思ってるけど。

具志堅:海外での経験があると周りからの見方も変わるからその方がきっとやりやすいよね

谷本:私は日本を拠点にすることに特に抵抗はないな。日本でインターンもやっていたし。労働環境的には結構厳しかったけど。

富永:でもロンドンも厳しいらしいよ。僕の友だちも某メゾンでインターンしてたけど。

具志堅:僕の友達はインターンで毎日深夜3時まで仕事して、その後朝8時に出社するっていうのを聞いたことがある。インターンだから残業代も出ない。出てもせいぜい家賃程度。

富永:でもそこまで酷使しないとあのスピードであのクオリティーと量とで回らないでしょう。

具志堅:僕は去年1年イヤーオフを取ってNYやパリ、アントワープとか色んな都市でインターンをしたけど、そこまで厳しくなかった。帰れるときはみんな6時とかに帰ってたし。NYの都市は楽しかったけど会社はきつかった。やっぱりキャリア志向なんだよね。「私がこの作品を作りました」って言う自己主張が強い。パリとアントワープはNYよりゆるくてすごく楽しかった。ヨーロッパで仕事した中で感じたのは「みんなでいいデザイン作ろうよ」っていうのが目的意識としてあったこと。そこでアメリカとヨーロッパの違いは結構感じたな。ヨーロッパではインターンとか社員とか関係なくて「いいもの」を作れば評価してくれる。某メゾンで働いていた時は自分が作ったニットが評価されてみんな知っている超有名クリエイティブディレクターの前でプレゼンもした。NYはインターンにはデザインはやらせてくれなくて「配送やっといて」みたいな扱いだった。

谷本:日本もどっちかというとアメリカよりかな。

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日本人は日本人のこと意識しすぎ?



日本のファッションについて

富永:僕もこの前出たんですけどね、若い人たちが「東京ニューエイジ」とかでやっているのはいい流れだと思う。20代の若いデザイナーがショーに出て自分の作品を見せれる場があるって大事。こうゆう面白い人達がいますよ、ってPRができる機会がこれからも増えていけばいいと思う。ファッションは学校を卒業して働いてからじゃないとブランドが立ちあげられないものではなくて、システム自体が整ってなくても作品を見せられる、そうゆう概念が広がればいいよね。

でも一つ、この前日本でファッションショーをやって思ったんだけど、自分のやりたいことがあんまり通らなくって。音楽も「渋谷でやるから渋谷系で」って言われてちょっとびっくりした。若い人を出そうっていう企画なのに音楽の指定があって、僕はメンズをやってるんだけど、ウィメンズの方が人が見に来るから女の子にも服を着せなきゃいけなくて。基本的にヨーロッパの男の子のサイズで作っているから女の子に着せるのは難しかった。だからズボンなしで上だけでタイツ履かせたりして。でもそれもいい勉強にはなったかな。ただ音楽に関しては、僕のこの服にオザケンが流れたから(笑)。ちょっとイメージが違うかなって。

※東京ニューエイジ:デザイナーの坂部三樹郎、山縣良和がプロデュースする若手デザイナーを集めたプロジェクト。

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谷本:日本のファッションってどんな風だっけ。ファイナルイヤー(最終学年)だから自分のことで一杯一杯で日本で何が起きているかわかんない(笑)。覚えてないんだよね。



具志堅:やっぱり日本は地理的に遠いし、情報もあまり入って来ない。ロンドンでは日本人の友だちの方が少ないし、日本のファッションについて特別話したりはしないよね。

富永:そうだね、日本人ってみんな日本人のこと意識しすぎだと思う。島国だから当たり前っちゃそうなんだけど。日本を離れてて分かることもたくさんあるから、僕は僕のペースでこれからもやっていくかな。でもこれからも日本国内での面白い動きには参加していきたいとは思ってる。

今日はありがとうございました。みなさんの今後のご活躍期待しています。

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(聞き手:今井 祐衣)

セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アーツ・アンド・デザイン(Central Saint Martins College of Arts and Design)
 1854年設立。英国国立の6カレッジからなるロンドン芸術大学(University of the Arts London)に所属しており、現在約750名(うち留学生約半数)の生徒が通う英国で最大の芸術学校。これまでにアレキサンダー・マックイーン、ジョン・ガリアーノ、ステラ・マッカトニーなどのデザイナーを輩出している。今年、ファッションウェブ媒体の「ビジネス・オブ・ファッション」が発表した世界のファッションスクールランキングでBAプログラム(学士課程)の総合ランキングで1位、MAプログラム(修士課程)では2位にランクインしている。
>>公式サイト

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