Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】17年間変わらない姿勢で"名品"を作り続ける「サイ」初めての店作り

Scye 宮原秀晃
Scye 宮原秀晃
Image by: FASHIONSNAP

 ブランド立ち上げから17年間、変わらない姿勢で"名品"とも言える質の高いリアルクローズを展開し根強いファンから支持される「サイ(Scye)」が、初の直営店「サイ マーカンタイル(Scye Mercantile)」をオープンした。場所は、アパレル関連企業が多い千駄ヶ谷に構える本社1階。店舗名の「マーカンタイル」は「商売、取引所」、古くは「雑貨屋」の意味も持つ。その名の通り、店内には丁寧に仕立てられた服や小物に加え、デザイナー日高久代氏とパターンカッター宮原秀晃氏がセレクトした好きなものが並ぶ、言わばサイならではの"よろずや"だ。

■宮原秀晃 Scye パターンカッター
文化服装学院ファッションビジネス科卒業。 数社のアパレルでチーフパタンナーを務め、独立。デザイナーの日高久代と共に2000年に「Scye」をスタート。19世紀のエドワーディアンスタイルに見られる英国式のテーラリングをベースに、現代的な解釈を加えて再構築することでクラッシックとモダンが融合した新しいスタイルを提案している。ブランド名の「Scye」とは「袖ぐり」や「鎌」を意味するテーラー用語から。

【関連】"名品"と呼ばれる「Scye」の服の秘密とは? デザイナー日高久代とパタンナー宮原秀晃に聞く

17年目のサイ(再)スタート

ーブランドの立ち上げから初めての直営店ですね。

Scye 宮原秀晃:特に17年待っていたというわけではないんですよ。1階が店舗、2階がショールーム、3〜4階が事務所といった、全てが完結できるような場所でやりたくて、5年ほど前から物件を探していました。自分たちの目の届く範囲で展開したかったので。

ーなぜこの千駄ヶ谷エリアの、少し奥まった立地にしたのでしょうか。

 片山さん(インテリアデザインを務めたWonderwall代表の片山正通)が「お店やるんだったら俺がやるから」と言ってくれていて、一緒に探していたんです。ワンダーウォールの事務所もこの近くで何度か来ていたんですが、閑静な住宅街で明治神宮にも近くて気分的に良い感じがしたし、この辺で良い物件があるといいなと。それで運よく見つけたのがここでした。最近色々なお店もできてきていて、以前に比べて人通りも多いと思うんですが、うちは大通りというよりはちょっと外れたところにこじんまりとある方がいいと思っています。

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ー「マーカンタイル=商売、取引所」という店名がユニークですね。

 イメージとしては「サイ商店」ですね。商店のように色々なものをそろえたいと思っていたので、店名もそういったイメージで考えました。日高と相談して、言葉の響きから最終的に「サイ マーカンタイル」がいいなと。サイだけじゃなく自分たちの好みのものも置いて、世界観ごと表現できたらと思っています。

ーブランドの全アイテムがそろう店になるのでしょうか。

 全てではなく、「サイ」と「サイベーシックス」のメンズとウィメンズから、ある程度厳選しています。「サイ マーカンタイル」という一つの世界観で、自分たちがバイヤーになったつもりで毎シーズンピップアップした服だけをそろえる形ですね。なので、もし取り扱いがない商品があったら「近くだとここに売ってますよ」と卸先のセレクトショップさんを紹介するということもあると思います。逆に直営店だけのカラー展開を作ったり、店ごとの特色があっていいと思うので。

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Scye Mercantile 店内。床や什器のテラゾーは経年変化が楽しめる。

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奥の壁には1800年代のアンティークのパターン定規。服のパーツや各部の名称が添えられている。

ー直営店限定ラインの「サイ マーカンタイル」はジェンダーレスの提案なんですね。

 メンズとかウィメンズに区切らない服の売り方をしたくて、ものによっては6サイズで誰でも着られるようにしました。定番のTシャツやニット、スーツ、ジャケット、あとエプロンも。男性にも女性にも合うようにカッティングを工夫しています。

ー自社ブランド以外はどういったセレクトを?

 自分たちが好んで普段から身につけているものが多いですね。どこか変態的とも言えるほど何かに特化していたり、背景があるものが好きで、ブランドの世界観とも結びつくと思っています。例えば、僕の古くからの友人で、アクセサリーブランドの「アームデザインルーム」をやっている古川広道は、今根室に移住して町おこしをしながら1日に1個しかできないようなものを作っていて。そのサンプルを店に置いて、お客さんからサイズや文字とかのオーダーを受けたりとか。

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アームデザインルームのアクセサリー

ーブランドとしては新しい試みになりますね。

 これまで卸でやってきたので、卸先によってはポロシャツとチノパンだけとか、なかなかブランド全体の世界観が伝わらなかったと思うんです。何年も前からイタリアで作っているレザーシューズも、卸としてはなかなか難しい。なのでそういったレザーアイテムも直営店のみの展開にして、世界観が伝わる店になれば。なので「靴もやってたの知らなかった!」とか言われるかもしれない。そういったことが17年目の新しいスタートになるのかなと思っていて、僕らにとってはサイ(再)スタートなんです(笑)。

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直営店のみの展開になるシューズ。伝統的な製法で作られている。

少し懐かしい商店のような

ーEC市場が拡大するなかショールーム形式など色々な店舗形態がありますが、サイにとって直営店の位置付けは?

 自分も含めて今、ネットで買うことって多いと思いますが、便利な反面で味気なさを感じることはありますよね。ものを買う時の人と人との交流とか、少し懐かしい商店のような対面販売を目指していきたいと思っています。上の階には僕がいるので、必要なら「こういう風に作っているんですよ」とか、そういう話もしますよ。それを望んでいるお客さんもいると信じています。

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昔の薬局のカウンターをイメージした特製の什器。棚にはレジ周りの機材が全て収納されている。

ーエンドユーザーの生の声も聞けそうです。

 良いことも悪いことも、直接お客さんから聞けるというのは一番良いことですね。バイヤーさんに聞いても「売れてますよ」くらいしか分からないものなので。それが今後のモノづくりにどう活かせるか、自分たちも楽しみにしています。

ー看板の下の数字「3/54/13」にはどんな意味が?

あれは住所なんです。実は隣のビルも同じ住所で、結構間違えてしまう人がいるので「ここも3-54-13だよ!」って見えた方が良いなと思って。ロゴやアートディレクションは平林奈緒美さんにお願いしています。通常のブランドロゴは1つだけですが、織りネームなどメインに使う強いイメージのロゴと、柔らかいイメージのロゴの2つを作って、使い分けています。

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Scye Mercantileの看板

ーこの一帯はアパレル関連の企業が多いロケーションですね。

 そういった方々もお客さんも「あ、ここにあった」と見つけてくれたらいいなと。コラボレーションしている「ループウィラー」の店も近いんですが、お客さんの層も近いので口コミしてくれたり。片山さんと鈴木さんとは「千駄ヶ谷祭りやろうよ」と話したりしていて、エリアを盛り上げたいとも思っています。

ー人と人との繋がりですね。

 ここに来たのも何かの縁なので大切にしていきたいと思っています。入り口の前はポップアップスペースにしていて、そこでフリマをやったり、花屋とか古本屋と組んだり、色々な人と面白いことをやっていきたいですね。

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エントランスに設けたポップアップスペース。

ただ良いものを作りたい

ー今後、多店舗展開は視野にありますか?

 まだ分からないですね。でも理想としては、大阪・名古屋・福岡とか、出店できたらと思う土地はたくさんあります。片山さんには「早く次の店作ろうよ」と言われるんですが、まだ早いって(笑)。

ー今後は直営店がビジネスのメインになっていくのでしょうか。

 直営店を始めるので卸先が減る想定もしていたんですが、実際は変わりませんでした。これまでも急に売り上げが伸びたりすることなくやってきたので、直営店もその延長として卸とバランスを取りながらやっていくと思います。今は安易にものが買える時代なのでこの先どうなるか分からないですが、僕たちがやっていることは基本的にずっと変わらないんです。ただ良いものを作りたくてこれまで続けてきて、それが受け入れてもらえたから、この厳しい時代にもお店が出せるのかなと思います。

ー服作りも変わらない。

 そうですね。細かい部分までこだわってはいますが、工場を泣かせないのが我々のやり方なんです。無理を言って難しいものを安く作ってもらっても、いい服はできません。産地と行き来しながら、量産しやすいパターンや工程とか、見合った工賃とか、きちんと意思疎通するモノづくりが大事なのかなと、ずっと思っています。

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直営店のみのサービスとして、シャツを購入するとスタックボックス入りで提供する。

■サイ マーカンタイル(Scye Mercantile)
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷 3-54-13
電話:03-5414-3531
営業時間:12:00〜20:00
定休日:火、水

【詳細】「サイ」立ち上げ17年で初の直営店出店、千駄ヶ谷の本社1階に

(聞き手:小湊千恵美・西本梨歩)

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