Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】STUDIOUS 谷正人 30歳社長の挑戦

店舗出店の予定は?

 2014年2月に渋谷神南エリアにメンズの大型店舗を出店します。メンズだけで1階40坪、2階50坪、計約90坪のお店になる予定で、左に「JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード )」さん、右に「AMERICAN RAG CIE(アメリカンラグシー)」さんがある場所。ラインナップは「N.HOOLYWOOD(エヌハリウッド)」「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」など海外で活躍しているブランドを取り扱うSTUDIOUSのハイエンド業態になります。分かりやすく言えば大人向けのSTUDIOUSで、初めてドレスラインも展開しますよ。STUDIOUS自体は次の4月で7周年になるのですが、メンズの集大成として位置づけていて、世界に発進していく力強い、リアルな東京を表現していきたいと思っています。

ドレスラインはオリジナル?

 まずは各ブランドとですね。私は今年で30歳になりますが、私くらいの年齢で堅い仕事じゃない人が、少しいいスーツを買うというときに、意外とみなさん買う場所がない。だから結局私たちが取り扱ってるような東京ブランドのセットアップを買うことになってしまうんです。それに今はテーラードジャケットが昔と比べると売れないので、それぞれのお店があまりバイイングしていません。だからこそ今、時代を逆行してテーラードを集積したようなお店があっても面白いかなと思い出店を決めました。

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その他に店舗展開の予定は?

 池袋ルミネ1階の店舗を2階に移して、60坪のメンズ・ウィメンズの複合店として増床リニューアルします。今後は既存店の増床を積極的に進めたり、有楽町・銀座エリアや横浜エリア、難波、神戸、京都、福岡など、まだ出店していない地域に出店したりと、マイナーセレクトショップからメジャーセレクトショップにしていきたいですね。そしてできれば来年中には香港をはじめとしたアジアに出店していこうと考えています。

海外展開に持っていくブランドは?

 うちの中でも強いブランドを持って行く予定。まだメンズだけでやるのか、ウィメンズも入れるのか決めていないのですが、店舗形態は路面店を考えています。

海外でも「日本発のクリエイション」を打ち出すのでしょうか?

 もちろんです。"日本発のクリエイション"を発信していくために、ここ2、3年で台湾、香港、上海、北京、バンコク、シンガポールなどアジア各国を回ってマーケットリサーチをしてきました。現地にいる業界人の話を聞きましたが、メイドインジャパンプラスαのプロデュースドバイジャパンをただ置くだけでは正直武器にならないなと感じましたね。

 日本人からしたら「メイドインジャパンって良いでしょ?」という感じですが、値段も多少上がってしまいますし、それだけでは決定的な武器にはならない。じゃあ何が武器になるかっていうと、日本特有のおもてなしのサービスや緻密な戦略。「こういう仕掛けでこういうショップインショップをやって、こういう顧客管理して、こういうお客様に売っていこう」という具体的な戦略が必要になります。それを体現するためには自社の社員で運営しないとだめ。セレクトショップは小売業であり、売るプロのはずなのに売ることを海外では外注して放棄してしまったらやってる意味が全く無くなってしまいますからね。

言葉の壁の問題は?

 今年行った新卒採用の内定者12名のうち数名は海外出店のために中国出身の子を取ったり、中途でも積極的に採用したりしています。

とりあえず海外はアジアがメインということでしょうか?

 そうですね。まずは、香港を拠点にしながら、基本的にはアジアでの展開を考えています。長期的にはロンドン、パリ、ニューヨークにも出店していきたいのですが、まず今は最初の香港を成功させることに集中します。

ブログでは、上場の話もされていました。

 会社を立ち上げた当初から上場を目指すと決めていたので、その目標は今もあります。アパレル企業史上最年少の上場を狙いたい。上場には資金調整ができるとか、良い人材が採用できるとか、会社の知名度が上がるとか、様々なメリットがありますが、上場する一番の理由は世界における日本アパレルの社会的地位を向上させたいと思っているからです。

 現状、有名大学に行ってアパレル業界に就職となれば、周りから見ると「大丈夫?」という目で見られるところがあります。しかし、私たちのような若い力で上場企業となり、「アパレル業界はビジネスとしてもすごく重要で、収入も良く、世界進出できる」ということをしっかり世の中に見せることで、良い人材が業界に増え、またアパレル業界自体を活性化させていければと思っています。

目指すところはナンバーワンセレクトショップ?

 セレクトショップSTUDIOUSに関してはそうですが、あまりアパレル業界で勝負しようという気はないです。私たちが勝負しなければいけないのは隣のアパレル企業ではなくて、エンターテインメント産業や付加価値産業などの企業。もっと言えば、うちに入ったスタッフがアパレルだけで通用する人材に留まるのではなく、IT企業やコンサル会社にも転職できるようになることが必要だと思っています。そういう人材を育てていかないと他業種との競争には勝てませんからね。

事業自体を広げるつもりは?

 本業からずれたことをやってもなかなか難しいと思いますが、基本的には「日本発ファッションスタイルを世界へ」という企業理念がベース。事業も長く続けるためにしっかり収益性があることと、企業理念を実現、推進できるような人材を得たら新規事業を進めていきます。2年以内にスタートするかもしれないのですが、STUDIOUSよりも幅広い客層に対する新事業も計画しています。ハイブランドを扱うハイエンド業態やブランドをインキュベーションしていく専門事業なんかも面白いなと思っています。

インキュベーションという言葉が出ましたが、具体的にどういうイメージですか?

 うちで扱ってるブランドのショップを僕らが店舗経営をするという新しい形のフランチャイズというのも1つかもしれない。あるいはその先にはファンド的な動きをする事業も考えられます。一般的によくあるファンドでお金だけ出して「はい、よろしく」だけでは絶対に上手く行かないんですよね。だからこそ、自分たちがやってきたノウハウをいかせるようなプロジェクトにする必要はあります。今、日本で散らばってる工場を東京に集めてクリエイションの発信拠点を作るのも良いですね。

今の日本のブランドについてどう思っていますか?

 自分たちへの戒めも含めての発言になりますが、すごく良いものを持っているにもかかわらず、島国精神なのか閉鎖的で海外に本気でチャレンジする人が少ないなという印象です。言語が扱えないだけで海外に目を向けず、諦めている人が多いのですごくもったいないなと思いますね。

野心がないんですね。

 本当に。デザイナーのブランディングとして「売れて有名になりたい!」みたいな人よりもどちらかというとこじんまりして、表に出さないタイプの方がかっこいいという考え方が根強くあります。こじんまりして売れなくて潰れたりした方がかっこ悪いと私は思うんですが、大きくなってしまうとブランドイメージが悪くなるといった変な洗脳が日本人にはあると思います。

イメージが悪くなったブランドの前例が思い浮かばないのですが......。

 大きくなった究極な例を上げるとユニクロになりますが、昔よりむしろ今のほうがよっぽどイメージいいですよね。

育てていきたいブランドはありますか?

 今後育てたいブランドでいうと、昔からやってきたブランドで、今でもSTUDIOUSの期待にこたえてくれる「MofM(man of moods)」や「SHAREEF(シャリーフ)」「Iroquois(イロコイ)」など。育てるというより一緒に大きくなれればと思っています。ただ結局は私が一緒大きくなりたいと言っても、デザイナーや会社が本気で「海外に向かおう」「もっとクリエイションを良くしていこう」という欲がないと絶対上手く行かない。

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現在の国内セレクトショップについての考えを教えてください。

 今の大手セレクトショップは、売り上げのほとんどがオリジナル商品という現実があります。インポートブランドで集客して、オリジナルブランドで利益を得る手法が今日のセレクトショップのスタイル。ビジネスとしては、それはそれでありだと思いますが、私たちの売り方はそうではなく、ブランドと共に伸びていくことを大切にしています。STUDIOUSのオリジナルは他のセレクトショップと比べると少し高いのですが、その代わりメイドインジャパンにこだわった物作りをしています。オリジナルブランドでお客様の窓口を広げ、それを入り口に各ブランドの服を見てほしいですね。

STUDIOUSは委託ではなく買い取りだと聞きました。

 そうですね、完全買い取りです。これはSTUDIOUSに限らずセレクトショップの強み。一部を除き、百貨店がこの20年間で売り上げを落としてしまったのは、全部委託だったことが原因だと思っています。セレクトショップは基本的に買い取るので、買い取ったら自分たちで在庫を捌かなければいけない。捌かなければキャッシュが回らなくなりますし、経営者でなくても、バイヤーだと、在庫を大量に残してしまったら「どうするんだこの在庫」と怒られ、立場を失うかもしれない。この緊張感が、売る事をしっかり考えるベースになります。

セレクトショップの今後の在り方については?

 編集力が問われる時代ですね。とにかく自分たちのコンセプトをしっかり貫いて、エンドユーザーのことを考えることができるセレクトショップが残っていくと思う。新しいスタイルのショップもたくさんできると思いますよ。

 例えばデジタルストア。店員がいないセレクトショップとか、その逆でウェブストアのアナログ版みたいなものも出てくると思います。販売員一人ひとりが端末をもってデータを処理したり、リアル店舗で接客しながらウェブストアで購買を促すスタイルも面白いですね。

実店舗とウェブだとどちらが売れているのでしょうか。

 実店舗です。ただEC比率は全体の20%以上はあります。ウェブにはウェブにしかできない良さがあり、店舗には店舗にしかできない良さがある。うちの実店舗では、ウェブにできないことを徹底的にやっています。

ウェブでできなくて実店舗でできることとは具体的にどんなことでしょうか?

 「ディズニーランドをウェブストアでは買えませんよね」ということです。「時間がなくてディズニーランドまでは行けないから、ミッキーとスカイプで我慢する」というように、なんとなくの世界観は買えるかもしれませんけど、そんなことできないですよね。服を買う行為そのものはウェブでも実店舗でも可能ですが、実店舗では商品そのものよりも、服を買うことによって得られる"何か"の方が重要です。

 販売スタッフとのコミュニケーションを重ねることで自分に自信をつけたり、少し高額な物を買い、大切に電車で持ち帰り、すっきりした気持ちになるなどの体験......非効率かもしれないですが、リアルでなければ出来ない。そのため、STUDIOUSの店舗ではミッキーマウスがいるディズニーランドのような空間を目指しています。だから販売スタッフもオペレーターはいりません。決められたことをマニュアルのように回すのはウェブストアの中のシステムだけで十分で、自分の世界観とかを持って自分の判断で仕入れもできて、売る事も出来る人間しか残っていかないと思います。

販売員の教育では、まず責任を与えるということですか?

 そうですね。デイトナ時代の不採算店舗のプロジェクトでは販売の現場からPR、仕入れなど一連の流れ全てをやらせてもらえたことが、私自身、一番の経験になった。様々な業務を担当することでお客様の気持ちも分かるようになりますしね。よく「店舗が増えてきたら、非効率でそんなことできない」と周りからは言われるのですが、そんなことはなくてむしろ昔より今の方が社員のレベルが高くなっています。

最後に今後の目標を教えてください。

 まずは新店舗をしっかりオープンさせること。そして、STUDIOUSにとって2014年は第2創業期と掲げています。今までチャレンジしてこなかったようなことをどんどんやっていきたい。神南の新店舗の他、来年に向けての新事業であったり、ハイエンド事業、ブランドのインキュベーションなど様々な事業を展開していきたいですね。そして何よりも海外進出をしっかり成功させたいです。

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■谷正人 (たに まさと)
出身地:静岡県浜松市
出身大学:中央大学商学部
2006年4月 (株)デイトナインターナショナル入社
2007年4月 STUDIOUS原宿本店OPEN 事業部長としてSTUDIOUS業態を一から立上げ
2009年2月 同社STUDIOUS事業部 事業部長を経て退職、MBOにて独立
2009年3月 (株)STUDIOUS 代表取締役として事業開始

聞き手:芳之内史也

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