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Culture インタビュー・対談

「TOKYO DANDY」2人の目に映る東京の10年

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 東京のファッション&パーティーシーンに欠かせない2人組。イギリス出身のDANと沖縄出身のJOEが東京で出会い、2008年に立ち上げたウェブメディア「TOKYO DANDY」が、今年で10周年を迎える。流行り廃りの激しい業界で走り続けてきた2人の目に、東京の10年間はどのように映ってきたのだろうか。

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リアルな日常を記録するためのプラットフォーム

FASHIONSNAP.COM(以下、F):今年で結成から10年とのことですが、TOKYO DANDYを始めたきっかけは?

JOE(以下、J):当時からファッションパーティーやアングライベント、ライブハウスなどによく行っていて、その頃から撮っていた写真を何らかの形で共有できたらなと。アウトプットしてシェアする場所が必要だったんだよね。当時はまだ紙媒体には勢いがある時代だったけど、時間とお金がかかる雑誌より、タイムリーかつスピーディーに発信することができるウェブによりメリットを感じて「TOKYO DANDY」がスタートした。

DAN(以下、D):その頃、海外のエディトリアルやキャンペーンビジュアルがすごく面白かったから、いつもチェックして「今月のあの雑誌のあのページ見た?」っていうのが友達との会話のトピックだった。でも海外の情報は日本に届かなかったり、タイムラグがあって。それとパーティーフォトは、雑誌に掲載されるのが1ヶ月以上後で量も少しだけだったり。だからTOKYO DANDYを始めた頃は、パーティーフォトをなるべく翌日に掲載するようにしていた。熱感を伝えたかったし、日々起こっているリアルな日常を記録したかったんだよね。

J:それで、パーティーレポートや当時見ていた海外のファッションサイトからキュレートするようになって、そしたら自然と波が押し寄せてきたという感じ。ルイ・ヴィトンやグッチなどのメゾンブランドや、ウォルト・ディズニー、レーン・クロフォード、アディダスジャパン、モエ・エ・シャンドンといった企業からのタイアップやプロジェクトの仕事の依頼が舞い込んでくるようになった。特にプロモーションはしてなかったけど、立ち上げて半年も経たないうちにどんどん輪が広がっていって、ファッションストーリーの撮影からショーウィンドウのディスプレイ、デジタルに特化したプロジェクト、次第にキャスティングの依頼やインフルエンサー誘致まで色々な仕事を受けるようになった。

D:ほとんどが口コミで声がかかるようになっていったね。「TOKYO DANDYを見て上京してきました」と言ってくれる人もいたり。彼らも今は20代後半くらいかな。

GUCCI - 「TOKYO DANDY FOR GUCCI」




F:「TOKYO DANDY」という名前の由来は?



D:DANDYってスーツやハットとか「紳士」を想像する人が多いと思う。でも語源を辿っていくと、19世紀に装いやカルチャー、アクティビティ、レジャーに関心があってこだわりを持っている人や、その人たちの「アティチュード」を意味してるんだよね。そのイメージを今の時代に置き換えた感じかな。伝統と現代をミックスしつつコントラストを表す名前にしたかったから「東京」と「DANDY」を組み合わせた。



J:そうだったね、忘れてた(笑)。でもファッションだったりカルチャーだったり、顧客として招待されるんじゃなくて、ファッション産業というサークルに自ら足を踏み入れることで、東京で起きている"何か"の一部になりたかったんだよね。

東京カルチャーの変化

F:10年前と比べるとパーティーシーンは変化したと感じる?



D:TOKYO DANDYを始めた頃のファッションパーティーは、ファッション誌の編集長やエディター、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、アートディレクター、セレブリティやブランドのプレスとか、来る人が限られていて比較的規模が小さかった気がする。同時に、「トランプ ルーム」や「ラ・ファブリック」(2010年に閉店した渋谷のクラブラウンジ)とかで行われていたインディーパーティーには、年齢、性別、職業、人種と音楽的傾向にかかわらず、多くの若者たちが週末の夜に集まっていた。デジタル時代の今はそういった「分類」がなくなって、もはやアンダーグラウンドすら存在しない気がする。誰もがどこにでも行ける時代になった。パーティーがオープンになったことはすごく良いことだと思う。

J:当時のファッションパーティーってエクスクルーシブだったからこそ、みんなが行きたがったよね。「ル バロン ド パリ」(2015年に閉店した南青山のクラブラウンジ)がその中心で、そこに足を運ぶことがある種のステイタスだったり。僕らも初めて行った時は興奮した。業界人はもちろん幅広い年齢層のイケてる人が集う大人の遊び場的な。SNSが普及する前のトランプ ルームもそういった場所の一つだった。

D:写真文化も変わったと思う。前はもっと踊って話しているところをみんな無防備に晒していたけど、今は写真がネットに上がってどこに拡散されるかわからないから、写真写りから遊び方まで気にするようになった。そういった意味では、昔の方がいい写真はいっぱい撮れたかも。

TRUMP - 「TOKYO YOUTH IN TRUMP ROOM」

F:ファッションのコミュニティーは排他的とも見られますが、どうやって溶け込んでいったんですか?



D:僕は日本人じゃないから距離感に少し戸惑ったことはあったかな。日本人は相手に話しかける時、丁寧であまり迷惑をかけちゃいけないって礼儀作法があるから、少し待ちの姿勢の方がよかったり。でも僕たちは早い段階で、違うフィールドで活躍している友人がたくさんできたからラッキーだったと思う。

J:立ち上げ時に出会ったアーティストやクリエイターたちとは、今でも親交が深い。その頃の出会いや繋がりから自然とビジネスに発展していくことが多かった。

イベントの主催も大切で、ネットワークを広げる一つの機会だったと思う。自分たちのプロモーションだけじゃなくて、例えば当時から活躍しているクリエイター陣の中には、TOKYO DANDYのイベントで初めてDJに挑戦した人もいたり。

 ヘアメイクやスタイリスト、モデルがDJをすることで、彼らの周りを取り巻く友人やファンたちがパーティーに足を運ぶという集客のサイクルがあった。

F:一方で、ファッションの変化は?

J:前はその人の服装を見ただけで、どこのクラブに行くか分かった。でも今は高い物と安い物、新しい物と古い物をミックスしたハイ&ロー スタイルが定番になって、ファストファッションだけでもそこそこおしゃれに着こなせる時代になったよね。誰がどこに行くかなんて見当もつかない。ファッションが民主化してオープンになったことは素晴らしいけど、逆に強烈な個性がなくなったというか。パーティーの変化と似てるのかもね。



D:若い人たちはそういった状況の中で、ユニークな存在になるのは難しくなってきているのかな。

J:カラフルなファッションをした子も多かったけど、最近ではあまり見ないね。今は一昔前に戻ってきている感じもする。リバイバルブームでもあるしね。

D:でもファッションの面白いところは、今話してることが明日には変わっていること。独立系のパーティーは減ったけど、新しいクラブやバーもまたどんどん出てくると思ってる。

TOKYO DANDYの原点




F:ファッションは流れが早い。SNSなどのツールも多様化しています。情報が溢れる現代の中で、存在感を発信していくには?



J:自分たちのスタイルを貫いてきたからこそ、人との繋がりが生まれて、見てくれる人が声をかけてくれたり、海外からの仕事の依頼も増えた。ファッションも音楽もアートも、自分たちの好きなものをキュレートする。そのスタイルはずっとブレていなくて、一番の強みでもあり、これからもそれを続けてオリジナルのコンテンツを強化し伝えていけたら。



 情報が溢れる時代だからこそ、ブランドも人もやりたいことを明確にする必要があるのかも。僕たちも何をしていきたいか、アイデンティティが何なのかを日々問いかけている。

D:軸となるスタイルはブレず、でもこれからは時代の変化と共に自分たちも変わらないといけないよね。その一つがアイデンティティを明確にすることなんじゃないかな。テクノロジーの発展でAIがキュレーションして記事を書く時代が来るかもしれないし。自分たちにしかできないことを表現しないといけないね。




F:これから挑戦したいことは?

J:挑戦したいことは山ほどあるけど、夏の終わりにダンの初めての作品集が刊行される予定。日本の若者、季節、伝統、通過儀礼などを過去7年間撮りためた写真をまとめている。

 その後は、TOKYO DANDYの集大成となるような本の制作に取り掛かろうと思っている。東京に住む人のライフスタイルやファッションを記録した一冊で、読めば東京の10年間の歴史がわかるような内容にしたい。



J:TOKYO DANDYとしての活動だけじゃなく、個々の活動でもあるスタイリストやカメラマンとして、ファッションに限らず、違う業種と絡んで何かクリエイティブで面白いことを仕掛けていければ。

D:僕ら個人のことを知らなくても、TOKYO DANDYのことは知られている。ここまで認知されてきたのは、バイリンガルで記事を発信していることも大きな理由の一つ。オリンピックもあるし、世界に東京を発信していくことはこれからもっと大事になってくると思う。



F:最後に、10年を振り返って改めてTOKYO DANDYの原点は?

J:今も昔もTOKYO DANDYは「アイデンティティを表現する場所」であり続けるんだと思う。

D:自分たちにとってTOKYO DANDYは「オンラインの履歴書」みたいなものじゃないかな。東京を舞台に自分たちが何をしているかを表現しているプラットフォームだから。イベントをオーガナイズしたり、僕は写真、ジョーはスタイリングというように。

 そもそもTOKYO DANDYって「シェア(共有)」することを目的に始まったわけだから、それが原点。ユニークな視点を10年間持ち続けてそれを共有してきたこと。それをこれからも続けていたい。

(聞き手:今井 祐衣)

TOKYO DANDY
東京を拠点にフォトグラファーとして活動するダン・ベイリーとスタイリストやモデルとして活動するジョーによって、2008年に誕生したウェブメディア。イベントの写真やキュレーションしたニュースを通して、東京の視点に着目し、ハイファッションとストリートファッションの架け橋となるさまざまな「モノ」「コト」「ヒト」を発信している。TOKYO DANDY 10周年を記念してアニバーサリーイベントを6月29日(金)に開催を予定。
http://www.tokyodandy.com/

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