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公園から昔の街に戻そう、広島有力店が仕掛ける蚤の市「トランクマーケット」が支持されるワケ

 広島市袋町で年に2回開催されている「トランクマーケット」が回を追うごとに存在感を高めている。"ユニークでハイエンドな蚤の市"と銘打つイベントでは、ジャンク品は並ばずにそれぞれが"本物"を持ち寄り、原爆死没者慰霊碑の立つ公園で過ごす2日間という時間を共有する。「公園から昔の街に戻そうと思ったんです」とイベントの原点について語るのは、仕掛け人でありref.代表を務める中本健吾氏だ。参加者には人気ブランドが名を連ね、東京からも多くの業界関係者が訪れている「トランクマーケット」は、なぜ支持されるのか?中本氏に話を聞いた。

ートランクマーケットの開催に至った経緯は?

 若い人がおしゃれをして出かけるカルチャーが失われつつあると感じていました。ECや商業施設が注目を浴びていますが、実はそれがファッション離れを加速させているようにも思えます。昔、若者が面白がって集まったファッションエリアにはファッション業態以外のお店が目立つ様になり、どんどん昼の街から夜の街へと変貌していきました。これは広島に限った話ではなく、47都道府県どこでも抱えている悩みではないでしょうか。10年前に「ビズビム(visvim)」がF.I.L.を公園沿いに出店しました。その頃からこの公園を使って街を元どおりにできないかを考え始め、それがトランクマーケットになりました。

ーなぜ袋町公園で開催を?

 お店の目の前にある公園という事もあるのですが、街の中心に位置していて人が集まりやすい事、そして緑が多い事と、程よい大きさも決め手でした。袋町は、原爆の爆心地から半径1km以内に位置していたので最も被害が大きかったエリアの一つなんです。周辺は学校もあり住宅が多かったので、2万人以上の一般市民が亡くなられました。そういった歴史的背景から、公園には原爆死没者慰霊碑として母子像が設けられています。ここから発信することは意味があると感じました。

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ー初回はどのようにスタートしたのでしょうか?

 ある日、目の前を後輩の商店組合の副理事が歩くのが見えたので彼を呼び止めてアイデアを伝えたところ、興味を持ってくれて。彼は行政に明るいし、僕は県外からクリエーティブに強い人たちを呼ぶことができる。在庫処分市ではなくて"それぞれの自信作が集まる市にしよう"と、県外だけではなく周辺のお店にも参加してもらい、現在のトランクマーケットのコンセプトが決まりました。それが9月の終わりごろの話で、初回は11月に開催したんです。

ートントン拍子でしたね。参加ブランドはどうやって集めたのですか?

 私がたまたま衣食住に携わる仕事をしていたので、それぞれのジャンルへ声を掛けさせて頂きました。例えば飲食店だとマーケット慣れしてるお店が出てもワクワクしないので、ミシュランスターのお店や看板の無いお店に声をかけたり。どこも人気店なのに引き受けてくれて、初回は広島のお店が20店舗、県外から20店舗が集まってくれましたね。初めから1回で終わりではなく継続開催に意味を感じていましたから、思い切ってオリジナルのテントを作成しインパクトを作れました。1回目の開催では5,000人ほどが来場してくれて、メディアやSNSなどで拡散されたおかげで現在では安定して20,000人以上の集客となっています。

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ーこれまで参加したブランドは?

 ファッションでは「ビズビム(visvim)」をはじめ、「メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)」や「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」「ダブルタップス(WTAPS)」「アーペーセー (A.P.C.)」「マリメッコ(Marimekko)」「シテラ(CITERA)」など様々です。飲食だと猿田彦珈琲やビズビムのコーヒーショップも参加してくれています。

ーその中で、広島に出店したブランドも多いとか。

 僕自身で袋町の空き物件への誘致も行っているんですが、「A.P.C.」「ザ・ノース・フェイス(The North Face)」「ネイバーフッド」など6店舗が、この袋町エリアに店舗を出されました。出店形式は直営でもいいですし、難しいようでしたら代行でもフランチャイズでも。要望によってはパートナー企業を紹介することもあります。

ーブランド誘致もトランクマーケット開催の狙いなのでしょうか。

 そうですね。出店の半分を県外からにしている理由はそこにもあって、イベントをきっかけに地元ショップは刺激を受けるでしょうし、逆に出店を考えている県外ブランドは地元ショップの強さに刺激を受けることもある。お店だって人間と同じでライバルがいてこそ伸びるもの。切磋琢磨する事によって、何処にも無い魅力的な街になると思うんです。

ーテントで売られるのは通常のショップにも並ぶ正規価格のアイテムがほとんどなんですね。

 これだけものが溢れた時代ですから、手にするものが"本物"かどうかはすごく重要だと思っています。年々いらっしゃる方が増えるのを見て、今は逆にそういったものを求めてるんだと感じますね。だから、出店する方には「気にせずに貫いてください」と伝えています(笑)。

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ー"本物"とはどういったものを定義しているのでしょうか。

 例えばビズビムが「たこ焼きを売ります」と言ったら、当然反対しますよね(笑)。「普段やっていることで勝負してください」と。ステーキが自慢のお店はステーキを出してほしいですし、服で勝負している店は服を並べてほしい。以前、建築事務所が「ポップコーンでも売ろうかな」と言っていたときには、「いいえ、家を売ってください」と伝えました。このブレのなさがトランクマーケットの強みを担っていると思います。

ー出店の条件は?

 会社、屋号、お店を持っていることです。あとは出店料が2日で3万円かかります。現在では、ありがたいことにお断りするほどオファーをいただいています。

ー運営はどのように行っているのでしょうか。

 ボランティアや協力で成り立っているんです。県外企業が出店しやすいようにと、地元のアンティーク家具屋のファニチャーバンクさんが什器を無償で貸し出してくれたり。ポスターのイラストはIC4の神垣さんというイラストレーターの方が無料で引き受けてくれています。音響は広島FMさん、企画とリーシングはうちで、運営は商店組合、会場設営は日頃お世話になっている施工業者さん、テントのデザインや補修は設計事務所さんなど、地元企業からは多くの協力を得ています。

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ー地域をあげて盛り上げているんですね。

 「将来ビッグブランドが日本に上陸した際に『日本1号店は東京、2号店は広島に』と言われるような感度の高い街に」と、大げさなことも想像しながら持ちかけた話なんですが、地元の商店街や企業の人たちも徐々に「これは本当に変わっていくかもしれん」と感じてくれているみたいですね。

ー実際に体験しましたが、地方ではなかなか出会えないイベントといった印象でした。

 このマーケットが持つ独特の空気感を、僕は"確信犯"だと思っているんです。この日しかない希少性の高いユニークなメンバーが集まるわけですから、自然と人が集まりますよね。鈴木さん(元ハニカム編集長)が初回いらした際に「ユニークでハイエンドな蚤の市」と名付けてくれたんですがまさにそうで、ハイエンドなのは販売される価格ではなくてこの空気感そのものでもあるんです。このムードが、街再生の一歩なんだと思っています。

■The Trunk Market 10
袋町公園(広島県広島市中区9番)
日時:2018年5月19日(土)11:00-20:00 / 20日(日)11:00-17:00
八丁堀福屋本店(広島県広島市中区胡町6-26)
日時:2018年5月19日(土)18:00-23:00
※雨天中止
公式サイト
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