黒字転換の鍵はデジタルシフトと接客
―オミクロン株の感染が広まっていますが、2022年は「ウィズコロナ」「アフターコロナ」どちらの想定で事業に取り組んでいきますか?
完全に「ウィズコロナ」ですね。コロナを経て価値観が大きく変化した中で、アフターコロナだからと言って元には戻らないでしょう。
―喫緊の課題は黒字化だと思いますが、最も重要な施策は?
今後もEコマースをはじめとするデジタルシフトは絶対的に進んでいくと思います。当社のEC比率は30%程度ですが、今後伸ばしていく方針です。とはいえ、お客さま観点で考えると50%以上はリアル店舗で商売していくのが望ましいはずですから、EC比率がハーフを超えることはないとは思っています。
―売上の70%はオフライン。リアル店舗の課題についてはどのように捉えていますか?
やはり体験価値の創出は重要課題です。イベントやポップアップだけで事が足りるかと言われたらそうではないので、模索していきたいと思います。
―以前の決算会見ではコロナ禍の接客に課題感を示していました。
感染拡大リスクの観点から来店客へ不安を与えないように声がけを控えるようにしていたことで、これまで強みにしていた接客の力を発揮しきれなかったんですが、10月に緊急事態宣言が解除されてから、接客を望まれるお客さまが多く、逆に接客時間が短かったり、販売員側が接客を少し遠慮してしまうとお叱りを受けることもあるほどです。いま一度、一人ひとりのお客さまに対応していきたいですね。
―接客を求めるのはやはりリピーターが多いですか?
そうですね。いわゆるハウスカードホルダーのお客さまが多いです。
―新規とリピーターの比率は?
だいたい7割がハウスカードホルダーのお客さまです。新規のお客さまも増えてはいるのですが、ECでは会員登録せずに購入できる仕組みになっていますから、正確なデータは取れていないのが現状です。

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―「選択と集中」という形で店舗の閉店も進めています。閉店店舗にいたスタッフの人員配置はどのような対応をとっていますか?
スタッフの希望を聞きながら、その近隣の店舗に配置したり、本部業務のプレスを手伝ってもらったりしています。販売員はほぼ当社社員ですので、配置転換で対応しています。
―今春には、デジタルシフトの重要な要となる自社開発のECのローンチを控えています。
予定通り進んでおります。いよいよ大詰めなので、トラブルが起きないよう慎重に慎重を重ねています。
―強みはなんでしょう?
操作性が大きく変わってしまうとお客さまがわかりにくくなってしまうので、UIは今とそんなに変わりませんが、検索のスピードや精度などの機能を大幅に改善しています。これによりページビューが増え、滞在時間が伸び、そしてお買い上げが増えていく、という流れを想定しています。アプリに関しても改善を進めています。
“服屋の感覚”を武器に多角化へ
―2022年のアパレル業界はどんな一年になりそうですか?
おそらくですが、私達の競合他社も同じことを考えていると思うんですよ。アパレル以外のこともやってみる。デジタルを駆使する。その考え方自体は各社で差はないですから、「中身」で勝負するしかない。そうしないとどんどん淘汰されてしまう。そういう観点で考えると、2022年も回復できるところとできないところである程度明暗が分かれてくるのではないかと。
―2021年は新しい事業が続々と立ち上がりましたが、いずれも後発の印象がありました。他社とどのように差異化を図りますか?
先駆的ではないとは思いながらも、顧客からの要望に応えるのが一番という判断からこれらの事業を立ち上げました。顧客の要望を満たすだけではなく、共感を得ていく活動をすることがウィズコロナでは重要だと思っています。
―共感を得るために最も重要視していることは?
ユナイテッドアローズというブランドのイメージを広げていくための「発信力」ですね。「ユナイテッドアローズがやるなら面白い」と思ってもらえるような、ブランドの幅と厚みをつけていかなきゃいけないなと思います。

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―オリジナル商品が多いので、企画力も問われると思います。
顧客に一番近い存在は社員ですから、メンバーの得意領域や想いを形にしていけばお客さまへの共感を生むことができるのではないでしょうか。
―ボトムアップ型の施策に取り組む企業もありますが、ユナイテッドアローズではどのようにして社内の意見を取り入れてますか?
事業提案書を提出してもらっています。この間募った時は全部で100件くらい集まったんですよ。ゴルフやアウトドア、お酒など、ほとんどの事業はそこから生まれました。特に20代の感覚をきちんと取り入れるのは非常に重要だなと思ってます。社員も高齢化してきたので、若年層の感性や感覚が捉えきれてないのも課題です。
―ちなみに2020年のコロナ禍に立ち上げた初のコスメブランドの進捗は?
コロナ前から準備を進めていたプロジェクトだったのですが、コロナになってあまりコストもかけられず、開発も進められずという状況で。コスメはメンズコスメがようやく浸透し始めてジェンダーレスなものになってきていますから、まだ可能性はある。仕切り直してちゃんとやりたいなと思ってます。
―サプライチェーンの混乱が続きそうですが、国内に製造拠点をシフトするという構想はありますか?
国内は工場が少なく、我々が求める生産量は難しい状況なんですよね。ただ、国内でよりクオリティの高いものづくりをするという意味では、ドゥロワーで取り組んでいます。ただそれはロットが少ないから回せているという状況です。
―新疆綿の使用をめぐって各社で対応が迫られています。
綿のクオリティが高いという単純な理由で使用していただけでしたから、新疆綿であるなしに関わらず、人権問題の疑いが少しでもあり、それによって信頼を損ねるのであればやめていく方向で考えたいと決めました。
―では代替素材は問題なかった?
新疆綿の繊維が長くて肌触りがいいのが特長なので、それをアピールした商品はいくつかありましたが、問題が表面化してからはそういった商品開発はやめました。
でも新疆綿も結局は中国綿の一種なので、中国から調達される綿の中に、ウイグル自治区で人道的に問題がある環境下で作られた新疆綿がブレンドされている可能性はゼロではない。そこまで追えていないのが正直なところです。中国綿の生産の大半は新疆ですから、中国綿を全く使わないとなると服が作れなくなる。ここが問題で、各社も悩んでいるところではないでしょうか。仮に中国綿を使わない判断をした場合、インド綿かアメリカ綿等を代用することになりますが、それなりにコストがかかってしまう。新疆綿を含んでいるかどうかトレースができない中国綿については、「疑わしきは減らしていくべき」という策に則り、何シーズンかかけながら他の綿に切り替えていく方針で検討を進めています。
―今後ますます経営とサステナビリティの両立が求められそうですね。
どの問題も極端に言うと「作らないのが1番いい」となるんですよね。そういう意味では「ファッション」という大きな括りの中で、服以外のところで我々が提供する意味や共感を得る価値を作っていかなければいけないなと思います。
―アパレル以外の領域に成長の可能性があると。
服屋の感覚で事業を多角化することが、成功の要点だと考えています。金融など全く畑の異なるジャンルはありえないですけど。
―松崎社長にとって、いま必要な人材とは?
自分とは異なる考えを持つ人は必要ですね。異なる考え方をできるだけ持った人が集まっている集団企業でありたいなと。若い人の発想も面白いなと思いますし、一番可能性があると思います。自分が20代の時に「なんだこのおっさん」と思っていた感覚ってあるじゃないですか。そう思われないようにしなきゃなと(笑)。

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―松崎社長は販売員出身ということで、これからのアパレルの販売員のあり方についてはどうあるべきと考えていますか?
DXを中心に利便性が進んでいく中で、逆にヒューマンタッチであることがカウンターとして求められている部分もあると思います。物を売るのが上手、説明が上手といった物を売るスキルも大事ですが、内面的に優しい人じゃないと販売員は務まらないですから。
とはいえ、1年前に話していたことと全く違うことが求められるのが今の時代のスピードです。今の感覚ではそう思っていますけど、来年になったらまた変わっているのかもしれません。そういう意味では、時代の変化に対応できる人でいる必要がありますね。
(聞き手:福崎明子、伊藤真帆)
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